native dimensions blog

新潟市の住宅設計事務所ネイティブディメンションズ=狭小住宅や小さい家、構造計算、高気密高断熱が好きな建築士のブログ

「51C」家族を入れるハコの戦後と現在

2018-10-09 22:47:15 | 建築書籍
私が設計人生で一番ケツバットされた本の続編です。

上野先生がこき下ろした相手が登場するというバトルロイヤル。

それを企画した著者が私より年下で、それが14年も前の出来事というお尻のヒリヒリが冷めやらぬ内のもう一発です。



「真実は一つ。じっちゃんの名に懸けて。スリット丸っとごりっとお見通しだ」


上野先生にこき下ろされた方と言うのが、LDK+個室の間取りの元祖と言われる51C型を設計した東大吉竹先生であり、その時大学院生として研究室にいた鈴木成文先生。

こき下ろした理由は、今時の世帯構成は様々な形態がある。
しかも、夫婦と子供からなる世帯は全体の1/3しかない少数派なのに、なぜか、夫婦と子供を想定したLDK+個室プランが住まいの主流になっている。
51Cは悪の権化か。
LDK+個室の住まいしか提案できない建築家は馬鹿なのか。
LDK+個室の住まいを欲しがる消費者が馬鹿なのか。
と、言いたい放題。

鈴木先生の解釈はこう。

戦後焼け野原を目の前にして、これからの快適な住まいの答えが51Cだった。
51Cは2DKと言われるけど、襖を開ければ続き間で、閉じれば個室にもなる。そして、食事する場所をキッチン側に寄せ、畳のスペースは、くつろぐこともできれば寝ることもできる。畳の部屋を二間にすることで寝る場所を二つにすることができる。

その二間を夫婦と子供に分けるのか、夫婦別室とするのかは、建築の仕掛けではなく、住み手自身が作っていくように仕向けるべきと考えている。

そして、戦後の貧しい時にできる精一杯が51C(面積は35㎡)で、日本が豊かになる過程でどのように住まいも大きくなっていくかというポイントに立った時に、

公団が、単に一部屋足した大きい家を売り出した。
さらに、ハウスメーカーが部屋数が多いと豊かというブランディングをした。

ライフスタイルはみんな別なのに、住まいを商品化して、住むことよりも売ることを目的にしたハウスメーカーが本当の悪で、それと51Cを結びつけるのは、無知としか言いようがないと。

さぁ、盛り上がってきました。



「理由」

ライフスタイル別に商品を展開したとしても、商品を欲しがる住み手は、結局「早い」「安い」「近い」が理由になる(鈴木先生)

強烈な考察ですね。
この深い意味分かります?
商品ではなく、住まい方を大切にされている住み手はライフスタイルを重要視するけど、商品として家を見ている住み手は、結局ライフスタイルよりも早い・安い・近いを優先していると言ってるんです。
人それぞれなので、どっちが正しいとかではないんですよ。そういう要望の種類があるっていうだけ。
だから「家というハコ」が欲しい人は早い・安い・近いで売ればいいし、住まい方を大切にしている人には、建築家が誘導しつつもプランは住み手の自由で(なぜならライフスタイルが全部別だから)、建築家はさらに、単体と街とのつながり方に精力を向けるべきと唱えました。

どっちにしても、プランじゃないところでどのように設計の職能を発揮するのかという事を言ってるようです。



「個室の意味」

例えば大家族であれば、個室が必要かもしれません。(または、極端に小さければ、個室が必要かもしれません)
しかし、豊かになった日本において、せいぜい3-4人暮らしの住まいで個室は必要でしょうか。
仕切られてなくても、自分の場所なんて自由に持てます。

個室は、一人で過ごす事で自立すると考えられていますが、躾なしの自立はありえません。

鈴木先生、さっきから格好良すぎ。

上野先生から、LDK+個室しか作れないバカギョーカイ(大元は51C)とののしられて、51Cの生みの親である鈴木先生が明確な答えを出すのがおもしろい。

この本を読んで、

私も住まいを商品として売ることはできないな。
ただ、「小さい家」という理想は持っています。
ある程度の型はありますが、不思議とオーナーの住まい方はバラバラです。

数あるライフスタイルに対応できるフリはせずに、数あるライフスタイルの中から小さい家に住むスタイルを選びました。

作り手側の私が。

好きだからってのが一番の理由です。

一つにしたら面白いことがありました。
次回ご紹介します。












コメントを投稿