
県立図書館で資料を入手して帰る途中、やはり80代の北島さんの生の舞台を見ておきたいと思い立ち急いで沖縄大学に向かった。ぎりぎりのところで、彼女の紹介の冒頭のあいさつの時に滑り込みセーフで約35分ほどの「赤いぶくぶく」を見た(聞いた)。以前宜野湾の美術館でも観劇したことがあるが、彼女の生の声・身体・演技に触れたいという思いが勝った。続く憲法9条のウチナーグチ翻訳がとても分かりやすく、すべらかなウチナーグチで耳に心地よかった。渡嘉敷島の集団死(強制・強迫観念の闇)は何度聞いてもおぞましい。死と生の境界のすさまじさがこれでもかと迫ってくる。何度も何度も迫ってくるのである。日常のたわいもない対話の中で過去の修羅が語られる。愛する家族を殺さざるを得なかった父親がいたのだ。それに耐えて生きてきた人々の苦悩の痕跡が今でも残り続ける島々。捕虜になったら強姦され殺される、と洗脳されていた人々は自らの死によって自らの尊厳を守ろうとしたのである。家族一緒になってー。死ぬなら皆一緒にの思いが渦をまいていた。あの刹那の悪夢!しかし、それでも生き延びてきた。「人殺し」と揶揄されながらも。しかし残酷な場面が語りの中で描かれることの「力」がある。ことばの力、語りの力があるね。赤いぶくぶくは語り継がれる。1000回以上もすでにこの一人語りは繰り返されてきた。北島さんの戦争を否定する意志の強さゆえでもあろうか。「沖縄芝居女優、北島角子」の語りは継承されないといけないね。しかし彼女の語り口を誰がまねできるだろうか?