志情(しなさき)の海へ

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『近世琉球の王府芸能と唐・大和』板谷 徹著は読み応え満載ですね!

2016-07-08 22:51:23 | 琉球・沖縄芸能:組踊・沖縄芝居、他

板谷 徹先生がこの間書かれた論稿をまとめられた書籍ですが、琉球王府時代の近世芸能、そして現代に至る沖縄の芸能を見据える目線が試されます。とても貴重な問題提起と発見の研究書ですね。

例えば「親雲上(ぺーちん)の髭」の論稿の最後に書かれている文章を引用します。

「朝薫の女形は、現在の琉球舞踊に誤解を生み、男性舞踊家が歌舞伎に近い女形の芸で女踊りに取り組むこととなる。しかし、親雲上の髭は、近世琉球に行われた御冠船踊りがあくまで士族の日常に立脚した芸能であり、年齢相応の役を務めるのが原則であって、舞台での変身を目指す専業芸能者の芸とは異なるものであったことを示唆する。」などなど。

また若衆芸にも深くコミットしていますね。「衆道」についても言及しています。琉球王府では衆道も織り込みの芸だったのですね。

沖縄《琉球》の芸能研究者・実演者はどうしても紐解く必要のある書ですね。目次を後でUPしたいです。以前読んだ論文もあるのですが、まとまった論稿としてよむと、テーマの重さが深く迫ってくるようです。全く辻やジュリや女性芸能と関係ないのですが、それを照らす可視的、外交芸能(国家芸能)の素顔が浮かび上がってきますね。

御膳進上と薩摩の関係など、また王子使者と薩摩の関係も興味深いですね。それにしても那覇港は賑わったはずですね。年に5,6回も薩摩への使者が送られたのですからー。近世から三重城では美らジュリが『花風』のように見送っていたのですね!

以下は転載です!この書籍は以下の賞を受賞されていたのですね!今ネットで知りました!板谷先生おめでとうございます!

木村重信民族藝術学会賞

 民族藝術学会では2003年に、斯学の振興に寄与するため木村重信民族藝術学会賞を創設しました。「選考規程」と過去の受賞者はご覧のとおりです。会員の皆様の積極的な応募を期待しています。

「木村重信民族藝術学会賞」選考規程

1.本賞は、民族藝術に関する優れた著書(単著)を刊行した会員に授与して、その業績を顕彰することにより、斯学の振興に寄与することを目的とする。

2.本賞の対象とする著作は、審査の前の2年間(前々年1月〜前年12月)に刊行された民族藝術学に関する著書とする。

3.本賞は副賞として50万円を授与する。

4.本賞は会員による応募制とし、応募は自薦、他薦を問わない。応募者は毎年12月末までに応募理由(書式は自由)と応募著書2部を選考委員会(民族藝術学会本部事務所内)に提出するものとする。

5.本賞の選考方法、基金、基金の取り扱いは別に定める。

受賞者

第1回 大橋力氏(『音と文明:音の環境学ことはじめ』の業績にたいして)

    吉田憲司氏(『文化の「発見」:驚異の部屋からヴァーチャル・ミュージアムまで』の業績にたいして)

第2回 西垣安比古氏(『朝鮮の「すまい」:その場所論的究明の試み』の業績にたいして)

第3回 伊從勉氏(『琉球祭祀空間の研究:カミとヒトの環境学』の業績にたいして

第4回 上羽陽子氏(『インド・ラバーリー社会の染織と儀礼:ラクダとともに生きる人びと』の業績にたいして)

第5回 天野文雄氏(『世阿弥がいた場所:能大成期の能と能役者をめぐる環境』の業績にたいして

第6回 阿久津昌三氏(『アフリカの王権と祭祀:統治と権力の民族学』の業績にたいして)

第7回 伊東信宏氏(『中東欧音楽の回路:ロマ・クレズマー・20世紀の前衛』の業績にたいして)

第8回 大久保恭子氏(『「プリミティヴィスム」と「プリミティヴィズム」:文化の境界をめぐるダイナミズム』の業績にたいして)

第9回 竹内幸絵氏(『近代広告の誕生 ポスターがニューメディアだった頃』(青土社、2011年)の業績にたいして)

第10回 兒玉絵里子氏(『琉球紅型』(ADP、2012年)の業績にたいして

第11回 鈴木正崇氏(『ミャオ族の歴史と文化の動態 中国南部山地民の想像力の変容』(風響社、2012年)の業績にたいして)

第12回 岡田裕成氏(『ラテンアメリカ 越境する美術』(筑摩書房、2014年)の業績にたいして)

第13回 板谷徹氏(『近世琉球の王府芸能と唐・大和』(岩田書院、2015年)の業績にたいして)

     萩原由加里氏(『「日本アニメーションの父」の戦前と戦後』(青弓

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以下は、琉球新報に掲載された書評です!

芸能・文化

『近世琉球の王府芸能と唐・大和』 「異国」政治的に演出

 

 
『近世琉球の王府芸能と唐・大和』板谷徹著 岩田書院・9900円+税

 江戸時代、「鎖国」下の日本を訪れた琉球の外交使節は、珍しい「異国」の使者として大いにもてはやされた。なかでも将軍の御前で中国伝来の管弦楽(御座(うざ)楽(がく))を披露する楽(がく)童子(どうじ)という役職はその花形的存在であった。この役職に就くのは元服前の良家の子息で、女性のようなきらびやかな装束で、使節の行列に加わり注目を集めた。―ここまでは琉球の歴史に関心を持つ人であれば、多少なりとも聞いたり読んだりしたことのある話だろう。

 しかしこの役職はなぜ、誰によって設けられたのか、そもそも「楽童子」という名称はいつ登場したのか、といった点に関しては、基本的な事項であるにもかかわらず、これまで十分解明されておらず、従ってほとんど知られてこなかった。
 本書は、日本・中国との外交儀礼の場で国家(首里王府)によって上演された芸能―中国伝来の御座楽・唐躍(中国演劇)、琉球固有の組踊・端踊など―についての、精緻な史料分析に基づく極めて実証的な考察である。そこでは前述の楽童子に関する諸問題をはじめ、王府芸能の知られざる細部が次々と明らかにされる。
 本書が着目するのは、王府芸能の外交的な役割である。では外交戦略としての王府芸能の最大の価値とは何であろうか。本書によれば、それは琉球の異国性である。中国皇帝の使者には「異国」情緒溢(あふ)れる琉球の芸能が、「鎖国」下の日本人に対しては「異国」琉球の芸能に加え、中国から伝習された芸能も上演された。
 このように非対称かつ重層的な異国性を、首里王府は緻密な政治的計算とそれに基づく綿密な準備の上で(外交相手によって使い分けつつ)アピールし、それによって主体性を発揮し、かつ中国文化の受容を誇示したのである。
 武力ではなく文化に依拠せざるを得なかった小国琉球の外交において、王府芸能がいかに重要であったか。貴重な絵画を含む多彩な史料を使って「事実」を追い詰めていく本書は、圧倒的な説得力をもってそのことを我々に教えてくれるのである。(渡辺美季・東京大学准教授)
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 いたや・とおる 1947年、東京生まれ。早稲田大学文学部哲学科卒。同大大学院博士課程芸術学専攻単位取得満期退学。

Ⅰ 御冠船踊りの相貌
1 御冠船踊りの相貌 ―芸をめぐる人と場―
2 親雲上(ぺーちん)の鬚 ―御冠船踊りにおける芸の前提―

 Ⅱ 唐・大和の御取合と若衆の役割
3 唐・大和の御取合と若衆
    ―琉球における躍童子と楽童子―
4 楽童子の成立 ―紋(あや)船使から江戸立へ―
   島津氏と琉球の御座楽 ―紋船使末期から寛永年間へ
   江戸立における楽童子の成立

 Ⅲ 冊封使の観た御冠船踊り
5 御冠船踊りを観る冊封使 ―唐の御取持―
6 故事としての御冠船踊り ―尚敬冊封の画期―

 Ⅳ 王子使者の御膳進上と薩摩藩主
7 近世琉球における王子使者と御膳進上
8 近世琉球の対薩摩関係における芸能の役割

 Ⅴ 琉球に伝承された中国演劇
9 唐躍について
10 唐躍台本『琉球劇文和解』の成立と島津重豪

資料
楽童子一覧/仲秋宴御礼式之御次第/王子使者一覧/薩琉関係芸能年表/ほか

巻末カラー写真14p
仲秋宴の舞台/楽童子/琉球劇文和解/唐躍の写本台本と絵画資料


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