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OSTRICH FEATHER BOA

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ダークナイト・ライジング

2012-09-24 15:43:39 | REVIEW

   

かなり前の話ですが、映画「ダークナイトライジング」に公開初日に行って来たので、その時の感想を書こうかと思います。

元々「ダークナイト」という映画であのジョーカーの番宣で予備知識無しで当時の彼女と行っ俺は、思いがけない面白さにぶったまげてバットポッド付きのDVDまで買ってしまうという、そこまでさせてくれた作品です。ライブDVD以外で洋画のDVDを購入したのは初めてだったんです。そんなシリーズの最新作なので、あの頃からずっと追いかけてきました。ネットではジョニーデップが...エディマーフィが...リドラーになるとか、タリアアズグールが出るとか、ヒューゴ・ストレンジが出るとか出ないとか..色々な噂が駆け巡りましたが、所詮は噂は噂。トム・ハーディ演じる「ベインが宿敵という結果になったりまあ紆余曲折ありましたが、行きたいという気持ちに変わりはありませんでした。ベインというキャラクターも予告とかで結構良い感じにクローズアップされていましたからね。

もともとこの作品がIMAXカメラで撮影されている事が多いって事で、IMAX盤で見てきたんですが、やっぱり通常の2Dと違って音の迫力ありまくりでした。視覚・聴覚的にも、まさに映画館でしか味わえない体験でしょうかね。200円追加払ってもIMAXで見るべき作品と思いました。

肝心のストーリーはもう書かなくても分かりますよね。思いがけず冒頭からブルースウェインが登場しますが、松葉杖を着いていて、髭もはやしている等、前作までのばりばりのビジネスマンで大富豪・プレイボーイで会社の代表という面影から遠く離れた姿でした。前作「ダークナイト」から8年後という設定ですが、彼はもっと老けているように感じられました。レイチェルという恋人を失い、ハービーデントの罪を被り警察に追われる事になるなど、彼はブルースとしてもバットマンとしても、何もできず隠遁し、かつ自警市民としての顔も無くしていたんではないでしょうか。そんな彼の喪失感や虚無感が薄暗いウェイン邸の様子も合わせて表現されているように感じました。

 そんな中にあらわれたセリーナ・カイルことキャットウーマン。彼女は堂々と食事を運ぶ振りをしてブルースの部屋に侵入。指紋を採取し、ブルースの母親の形見である真珠のネックレスを盗み出します。ブルースにはバレてしまいますが、結局はネックレスも指紋採取も成功し脱出するセリーナ。それがきっかけでブルースはバットマンに戻るようになっては行くと...。
劇中を通してセリーナの過去の経緯などは不明のままです。彼女がいつからゴッサムシティにいて、どういう生活をしてきたのか、8年前とか何やってたんだと気になるんですが、分かっている事は度重なる逮捕歴がある事だけです。
しかもセリーナの行動は矛盾している事が多くて分かりづらい所も多かったです。彼女は今作で犯罪を行う理由は、自身の犯罪歴を全て洗い流し、自由を手にするという事が一義的な目的なんです。が、自身の自由を手に入れたい割にはボロいアパートに友人の女性と一緒に住んでいたり、金持ち等から物を盗んでも、弱者や子供からには何もしないという彼女なりの線引きがありと利己的にも関わらず変な所で規範的だったりする所とかです。矛盾なキャラクターなんですよね。あと、ウェイン邸に侵入したのも、ブルースの指紋を採取し、ウェインエンタープライズの乗っ取りをたくらむ関連企業の社長に売りつけ、その身代わりとして自身の自由を保証してもらうソフトウェアを引き換えにしている筈なんですが、その社長宅に侵入あし、盗みを働こうとするも発覚しバットマンに助けられるという始末。ただここに関しては今思うにバットマンへの自身への信頼を植え付ける為のトリックだったかもしれません。ベインとバットマンが初対決する際に、バットマンをベインの元へ案内したのはほかならぬセリーナですから。
まあ、ベインが本性を曝け出した後は、こんな嵐は望んでいなかったとか言って海外へトンズラしようとするんですが、ジョン・ブレイクに捕まって取り調べを受けて、警察署に連行されるハメになると。セリーナの行動は殆どが自身の目的の為だけに動いているので、ヒーロー然とした様子はまるでありません。利己的でかつ非情だと思うんですが、最終的にバットマンに協力します。
だから、本当は良心みたいなのがあって、ベインにバットマンこてんぱんにさせてしまった事や、にも関わらずブルースが自身の犯罪歴を抹消してくれた事、結局はバットマンがベインの横暴を止めるっていう中で、彼女の中に後ろめたい気持ちがあったからこそ協力したのかなとは思うんですが、いかんせん彼女の怪盗としての信条は分かっても過去の経緯を含め人間的な部分の考え方が描かれていないこの作品ではアンハサウェイの演技と行動から推測するしかないんですよね。しかも最後はバットマンにキスをするという、最後まで読めないキャラクターでした。
本当は優しい心を持っているけど、生きていくために犯罪行為を行い必要最低限の情け以外は捨てた。でも、最後は自分を信じて、分かってくれる人が現れたからこそ、素直になる事が出来た...という感じですかね。意外に「尽くす」人になるんじゃないかと予想したり。
 
 そして敵役であるベインです。正直ベインというキャラクター一人でジョーカーの次のヴィランを一人で張るのは難しいんじゃないだろかなんて思っていましたが、クリストファーノーランの予告動画等でのベインの演出が上手く、ジョーカーとは違う意味での怖さや狂気を感じさせました。魅力、ですかね。実際肉体派のパワーファイターでもありながら、頭脳派でもあるという原作通りの描かれ方をされています。あとは、作品全体としてベインの肉体を活かした派手なシーンが多かったですね。これは今までのノーラン版バットマンではなかった事だと思います。
ジョーカーがどちらかというと恐怖や狂気に満ちながらも孤独であり、仲間にも何をするか分からない、殺されるかもしれないと思わせる恐怖による節制、ナイフで傷口を抉るような生理的な痛みや怖さを感じさせるキャラクターだとすれば、ベインは見た目も行動も派手で大胆。スタジアムやゴッサムシティにつながる橋を爆破、収監者を開放しゴッサムシティを統率・支配する等大規模なもので、逆らっても勝てない服従しなければならない絶対的覇王。何でもかんでも破壊しまくって滅ぼしてやるというカタストロフィー・破滅的な意味での怖さを感じさせました。ジョーカーが混沌であれば、ベインはむしろ破壊・終焉という感じですかね。
しかもベインは飛び道具に頼らなくても強靭な肉体があり、生身ならバットマンも上回る強さを持っている事も魅力と思います。劇中、バットマンにしろジョーカー、スケアクロウも何かしら武器を持って戦ったりしているんですが、ベインは自らが戦う時は生身でやるんですよね。で、それでバットマンをぼこぼこにして背骨を折るという強靭な肉体、戦闘中でさえ余裕を漂わせるようなカリスマ染みた口調、トムハーディの演技の妙技もさることながら、ジョーカーとは全く違うキャラクターとしてノーラン監督がいかにベインというキャラクターに強い思い入れを感じさせたか感じるものでした。
だからこそ最後のあのタリアアズグールが出た時からのベインのキャラクターが落ちていく感じは...。思うに無理にラーズアズグールからの続きを引っ張らずに、ベインはベインとしてテロリズムな面が強調されていたのだから、B級どころかC級レベルの恋愛話を無理に持ち込んでしまって、ベインとして立っていたキャラクター性が一気に落ちてしまった感が今作の残念な所です。というかサプライズでタリア持ってくるにしても、持って生き方が...しかもあのあっけなさは...マリオンコティヤール面目躍如。

 他にもジョゼフゴートンレヴィットのジョンブレイクは今作には欠かせないキャラクターでしたね。ジョンはバットマンを正体を一発で掴む洞察力と、発想力、行動力等、バットマンの自警市民的な面と、ハービーデントにも重なる正義感的な面を一身に体現したような人物です。バットマンが「奈落」でライズしている間、ベインに支配されたゴッサムをライズする為の行動は主に彼の視点から語られます。ジョンは、そういう意味じゃこの作品の2人目の主人公のような存在として描かれています。しかも警察という組織の中で規律に従い市民を守る事を信条としていた彼は、ベインが現れた事により、ルールを破らなければどうにもできず、彼自身の立場ではどうにもならないという現実に直面します。そして彼はブルースと同じく強靭な正義感を持っており、最終的には警察を退職します。そして、 彼のファーストネームがロビンで、最後はブルースの後を継いでバットケイブを発見し、新たなバットマンを予感させるという幕切れは素晴らしいと思います。

 3部作の最終章でありながら、この物語は登場人物全員のRISEの物語なんですよね。ベインとタリアはラーズの遺志を継いでゴッサムを破滅させる、ゴードンは過去の密約の為に誤魔化してきた自分へのライズ、セリーナは自身の自由を手にする為のライズ、そしてブルースはバットマンに復帰する前に、信頼していた執事のアルフレッドから、自身がブルースとしてではなくバットマンとしての自分に固執している事を見抜かれ、そして抜け出す事の出来ない姿を見て辞職してしまいます。さらにウェイン産業が倒産に追い込まれベインとタリアに乗っ取られた挙句、バットマンとしてもベインに破れて奈落に突き落とされて何もかも失います。それでも、ブルースは奈落をよじ登り、何のためにマントを羽織って戦うのかの意味を見つけます。そして大切な人達を守る事であると気付き、バットマンとなって最後の戦いを挑みます。彼はバットで核爆弾を運ぶ際、「誰もがヒーローになる事ができる」と呟いて海の彼方へ晴々とした表情で消えていきます。それはバットマンとしての自身のすべきことが終わったと思ったからではないでしょうか。そういう意味じゃ、太平洋の海の上で、バットマンは死んでいるんですよね。
ブルースはバットマンとしてではなく、家も全て売り払い、完全に表舞台から姿を消します。しかし、最後にアルフレッドの前に現れます。その時の彼はバットマンの表の顔ではなく、ブルースウェインとしての新たなライズが終わった事を意味しているように感じました。もっとも、彼のやった事が罪にならないとは言いませんが、彼自身はその贖罪のやり方を分かっているんじゃないでしょうか。

僕個人としてはダークナイトを超えるものではありませんでしたが、それでも3部作の完結編として、そしてダークナイトの続編としてしっかりと決着のついた作品だったと思っています。「誰でもヒーローになる事が出来る」っていうのが、だれしも夢を掴み、なりたい自分になる事は出来るというノーラン監督なりのメッセージだと感じています。

ありがとう!DVD買うぞ!!


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