ビレッジマンズストアは2016年1月のQueblickでの打首獄門同好会とバックドロップシンデレラのWレコ発のトップバッターだったバンドでした。途中からしか見れなかったんですが、極端なほどに全員真っ赤なスーツ、羽の首巻を羽織ったボーカリスト、さらに熱くもどこか歌謡曲的な叙情的なメロディもちりばめたメロディとがなり声、独特の勢いを感じたバンドでした。いつかライブに来るときはまたきちんと行きたい。そんな中での「正しい夜明け」のリリースツアーでした。
しかもDroogとポルカドットスティングレイというマイブームなバンドの3マン。会場のgrafはONTAQ以来ですが、入り口付近がすべて撤去されバーカウンターから丸見え状態になってて解放感ありました。
対バンライブはこれまで何度も見てきました。ただ、この日のライブは、そのビレッジマンスストアも含めて、互いのバンドの個性を剥き出しにぶつかり合っている、飽和状態な雰囲気がありました。盛り上げるのは当然ですが、「危機感」「挑む」という姿勢がそれぞれに色濃く出ていたように思います。
トップバッターのポルカドットスティングレイは初っ端から「テレキャスターストライプ」で盛り上げつつ、「ハルシオン」「エレクトリックパブリック」「シンクロニシカ」「新曲」「人魚」と、持ち前のカラフルな音楽性に乗せてコロコロと展開しつつ、終盤に向かって段々と深淵にはまっていくかのごとくミディアムテンポの曲を入れ込んでいました。ラストの「心ここに在らず」では絶叫したまま、放心状態で終えるという前回とはまた違った余韻を残して終了。
でもその音がポップに感じてしまう位、2番手に登場したDroogは「トリの前って一番盛り上げてつないでいかないといけないからよろしく!」というMCにもあったように、前月のワンマンの時の福岡での「ホーム」な雰囲気と打って変わって「アウェイ」の中に挑むような鬼気迫る演奏、フロントマンが身を乗り出してステージ上を客に乗せられながら歌いまくる等、ポルカドットスティングレイには申し訳ないんですが、その熱や勢いの度合いが雲泥の差でした。それによって客席の熱気が高まっていくのを感じていました。「命題」でスタートした演奏は「TOKYO SUBMALINE」「ロックンロール以外全部嘘」や「LOVE SONG」等ひたすらアッパーな曲で突っ走って、見事にラストのビレッジマンズストアへの「繋ぎ」の役割を果たしていました。印象的だったのは終盤にさりげなく挿入された「夜明け前」。アップテンポのサウンドの中で明らかに異なった雰囲気を放ったこの曲は主催でありラストでもあるビレッジマンズストアへのはなむけのようにも聞こえました。
上昇した熱気の中、満を持してのビレッジマンズストアでした。
1.夢の中ではない
2.ビレッジマンズ
3.WENDY
4.僕を撃て
5.スパナ
6.盗人
7.逃げてくあの娘にゃ聴こえない
8.帰れないふたり
9.PINK
ENCOLE
眠れぬ夜は自分のせい
前回のミニアルバムの主催ライブには行っていないのですが、当時はまだ福岡での知名度が低く、地元バンドでの共演をNGされたうえ、急きょ登場した地元福岡の弾き語りの男性にすべて持って行かれてしまい、主催としての立場が無かったとMCでギイさんが話していました。その時の悔しさなどを忘れないまま、この時を迎えたに違いありません。最初に感じていた緊張感や挑むような雰囲気の理由がここで分かった気がしました。主催といっても彼らにとってはまだまだアウェイな雰囲気を拭えないんだろうと。
「正しい夜明け」出てくる「正しい」という言葉は、ギイさんにとって嫌な言葉でネガティブなイメージしか持たない。敢えてそれをタイトルに持ってくることで皆の気持ちを救えるような感覚を与えたかったという話ですが、これはその気持ちが消えうせいてくようにというメッセージでもあると思っています。このミニアルバムは凄く好きなんですよね。全編を通してガレージ的でもありながらリフ展開がどの曲もカッコいいなと、でも対照的にどことなく繊細な部分も目立つ歌詞。その繊細さや陰鬱さの何かで、自分たち自身が何かをを変えようとして、ステージ上で暴れ、もがき、演奏しているというのが最初に聞いた感想です。そんな自分たちのことを歌った「ビレッジマンズ」、人生の主人公になり切れず大人になってしまった人の述懐でもある「WENDY」、ファンへのメッセージでもある「スパナ」や、関係性等の大きな愛を歌った「帰れないふたり」等、会場の熱気をさらに上げていくその暑苦しいサウンド。振り返ると「福岡すごいやん!」というMCにもあったように、そこに集まっていた観客は皆必死にビレッジマンズストアの音楽に共鳴し拳を突き上げ、体を揺らしながら全体で盛り上がっていました。スーツ姿で汗だくで体を揺らしながら時にステージに下りて激しく動きまくるメンバー。笑顔を見せるなど、あの時間の中で、彼ら自身福岡もアウェイではなく、今この空間はホームの中だということを、自分たちがやりたいと思っていたライブをすることが出来た解放感があったんじゃないかと思います。
きっとたぶん次からはもっともっと福岡に来て自分たちのライブが出来る、そんな夜になったのなら良いと思います。