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Peace of Mind を求めて…

悲しいことがあっても、必ず新しい朝は来るのですよね

『ビルマVJ 消された革命』(監督:アンダース・オステルガルド)

2010-06-06 22:23:59 | 映画・テレビ

娘Tと一緒にシネマクレールで『ビルマVJ 消された革命』を観た。

2007年にビルマで起こった大規模な市民デモが武力で鎮圧され、日本人ジャーナリスト長井健司さんが軍の発砲によって殺害されたのは記憶に新しい。長井さんが狙撃された、まさにその瞬間をとらえた映像が何度もテレビニュースで流されていたのを今でも鮮明に思い出す。その衝撃的映像を、危険を冒し、命がけで撮影し、全世界に向けて発信してくれたのが、「ビルマVJ(ビデオ・ジャーナリスト)」たちだった。

ガソリン代がある日突然倍に値上がりし、市民の生活が脅かされるようになったとき、まず立ち上がったのは赤い袈裟に身を包んだ僧侶たちだった。大勢の僧たちが列を作り、デモ行進する姿は美しく、力強く、胸が躍るような感動的シーンだった。勇気を得た市民たちも僧侶達を囲むようにしてデモに加わり、10万人規模のデモへとふくれあがった。

僧侶に率いられたデモは平和的で非暴力を貫き、「今こそ和解を!」「今こそ対話を!」と叫んでいただけだった。だれもが、「国が変わる」という希望に胸を高鳴らせていた…。

それが…それなのに…
デモに対する軍事政権の答えは、市民に向けての発砲という形で表れた。

武器をもたない僧侶たちは兵士に取り囲まれ、袈裟をはぎとられ、殴り倒され、トラックに放り込まれた!…あまりの恐ろしさに心が凍りついた!!!

この残虐な軍事独裁政権は、その独裁者の顔が全く見えてこないのが不気味だった。
ヒットラーもムッソリーニもスターリンも
金正日も……みんな、国民の前で演説したり、ポスターを作ったり…指導者として前面に出てきて指揮を執っていたけれど、ビルマ軍の指導者は一体だれなのか…?、名前さえも出てこないのが不思議でもあり、恐ろしくもあった。

軍に連行された数百人もの僧侶たちは、いったいどこへ連れ去られたのだろう…
過酷な状況に置かれているとしても、なんとか生き延びているのだろうか…

映画の最後にも出てくるが、この「消された革命」後の2008年、追い討ちをかけるようにビルマをサイクロンが襲った…。
死者10万人、行方不明者20万人と言われる恐ろしい被害を出しているにもかかわらず、軍事政権は各国の救助部隊が入国することを拒んだり、国内で人道的活動を行っている人たちを投獄したりしているとあの当時、新聞で読んだ。

現在は…少しずつでも、人々の心は落ち着きを取り戻し、笑顔が戻ってきているのだろうか…

娘Tも、この作品を観て、ものすごくショックを受け、いろんなことを考えたようだった。

帰りの車の中でも、「お母さん、国連は何をするところなん? どうして何にも助けてあげんの?」 「私には何ができるん?」…と一生懸命気持ちを話してくれた。

文章を書くのが苦手なTは、担任の先生に毎日提出する生活ノートに、ほんの2、3行の生活記録を書く事すらできず、いつも先生から「何か書いて!」「また白紙か!」(笑)と赤字でコメントされているのに…

帰宅してから机に着き、一心に、思いつめたように、コピー用紙に何やら書き始め…
夜中の1時ごろまでかかって、コピー用紙3枚に、映画の感想を書き綴っていた。
(もう遅いから寝たら?と声をかけても、明日になったら忘れるかもしれないから…と言い、頑張って最後まで思いを書き留めていた…)

本当に自分が書きたいと思ったら、こんなに一生懸命になれるんだな。。。

娘がこの作品をしっかりと受け止めてくれたことをうれしく思ったと同時に、こんな非人道的で国民のことなど眼中にない
軍事政権なんて早く消え去ってほしい!!!
ビルマが一刻も早く民主国家になってほしい、と心から願わずにはいられなかった。

 


『牛の鈴音』(監督:イ・チュンニョル)

2010-03-06 23:43:54 | 映画・テレビ
久しぶりにシネマクレールへ行き、『牛の鈴音』という韓国映画を観ました。

主人公の牛もおじいさんもおばあさんも、み~んなヨボヨボでした。

79歳のおじいさんは子どものころから足が不自由で、片足が棒のように細いのに、地面にはいつくばって農作業をし、山のような草を背中にかつぎ、足をひきずりながら運びます。手はガサガサでひびわれ、爪には土がこびりついています…。

おばあさんは16歳でお嫁に来て以来、頑固なおじいさんと苦労を共にし、9人の子どもたちを育て上げましたが、みんな村から出て行ってしまいました。年をとって腰も曲がり、少しは楽をしたいのに、おじいさんがトラクターも使わないし、農薬もまかないので、田植えも草刈も牛の世話も重労働です。

40歳になる牛は今にも死にそうで、身体に泥がこびりついた汚い牛です。
ふらふらなのに、毎日おじいさんを荷車に乗せてよろよろと田んぼに出かけます。

おばあさんのグチが延々と続きます…。
ほんとにこれだけ苦労して生きてきたら、グチもこぼしたくなるでしょう…。
それにおじいさんは、苦労をかけてきたおばあさんよりも牛の方が大事みたいなんですもの…。

こんなに年をとった2人と1頭なのに、これほどまでに働き続けなければならないなんて…
傷だらけの足で歩くおじいさん、頭が痛くて苦しんでいるおじいさん、頼むから少しは休んでください~!!!
老いぼれ牛も、もうゆっくり休ませてやってください~!!!

観ているのがつらくて、何度も心の中で叫んでしまいました。

「亭主も牛もボロボロだ~」というおばあさんの言葉には笑ってしまいましたが、自分の身体を痛めつけるように働く姿が、私にはちょっと耐えられませんでした…。
苦労して作った貴重なお米を、自分たちを捨ててさっさと出て行った(多分!)薄情な子どもたちに一番に送ってやる姿は、やっぱり切なくなりますね…。

ユーモラスなシーンもありました☆

おじいさんが新しく飼った牝牛が子どもを産むのですが、その子牛が実のお母さんよりもヨボヨボ牛の方にばかりくっついていくんです。それでおばあさんが「お母さんはこっち!」と言って子牛をひっぱっていくところ。。。微笑ましくて笑えました☆

頭痛に苦しむおじいさんが、よぼよぼ牛にひかせた荷車に乗って街中の病院へ出かけて行くのですが、駐車場の黒塗りの高級車の横に停まっている牛と荷車のものすごい違和感!。。。笑えました☆

ナレーションはなかったけれど、おばあさんが必要以上にしゃべりまくるので、十分ナレーションの役割を果たしていました(笑)。
音楽の代わりに、これまた必要以上に「鈴の音」が鳴るのはちょっと気になったかな~。
おじいさんやおばあさんを映した後に、あたかもその話を聞いている牛、という感じで牛の顔を映すのはちょっとわざとらしい感じがしたかな。。。

いろいろ気になるところはあったけれど、動物ものには弱い私なので、牛の目からこぼれる涙を見て、胸をつまらせてしまったのでした。。。

『今度は愛妻家』(監督:行定 勲)

2010-01-23 23:45:14 | 映画・テレビ

行定勲監督の『今度は愛妻家』を観ました。

脚本がおもしろいし、役者さんも適役だったし、とてもよくできた作品でした☆

自分に関して惜しむらくは、(もともと演劇で上演されていた作品だったので、実際舞台を観たわけではないのですが)、この作品の結末を知っていたこと…

前半のコミカルな場面で、お客さんたちが笑っているとき、私は一緒に笑えなかったんです…。何も知らずに観ていれば、後半になるにつれて、前半から絶妙に張られていた伏線の存在に気づき、う~む!すごいな!!と素直に感嘆し、唸らされたと思うんですね!!
結末を知っていたため、後半の予想外の展開に対する驚き、醍醐味を味わえなかったのが返す返すも残念だったのです。まだ観ていない人は決してネタバレのレビューなど読まずに観にいってくださいね~!!!そして、監督もインタビューで言われていますが、この作品は2度観て、2回目に「なるほど、そうだったのか…」と思いながら観るといいのでしょうね☆

主役の2人(豊川悦司と薬師丸ひろ子)の掛け合いが最高で、薬師丸ひろ子さんの演技が本当にキュートでした☆…プロポーションが良いわけでもなく(ごめんなさい!)、ヘアスタイルも衣装もやぼったくて、もう少しセンスのいい服を着せてあげればもっと素敵に見えるのに…と思ったりもしましたが、表情やしぐさ、声の出し方…すべてが可愛らしくて、女性から見ても愛おしくなるような健気な女性を演じていました。(教え子の純粋な美青年から慕われるのも理解できますよね☆)

でもね…前半の夫婦のやりとりは一見コミカルに描かれているんだけど、実際夫婦がああいう状況になったら、妻はとてもつらいだろうな…

精神的に未熟で自分勝手で…自分を大切にしてくれている妻を平気で裏切り…そんなわがままなダメ男を、トヨエツの好演によって「男はそんなものだ、だけど本当は優しいんだよな」みたいな肯定的な捉え方をして、許容してしまうのはどうかな…?

私の周りでも、幼稚でわがままな夫のため、家庭崩壊の危機に陥っている友人が何人もいます。きれいごとで、笑ってすませられる状況ではないんですよね…。
後で反省し、後悔するくらいなら、今すぐ妻への態度を改め、感謝の気持ちの一つも言葉で表わしてほしい!!!!!

自己中心的な夫の言動に耐えながら、子どもを守り、懸命に日々を生き抜いている友人たちに思いを馳せながら、そんなことを強く感じた作品でもありました。


『戦場でワルツを』 (監督:アリ・フォルマン)

2009-12-19 23:07:10 | 映画・テレビ

アリ・フォルマン監督の実体験を描いたノンフィクションとして話題の『戦場でワルツを』を観た。

一足先に観られたY先生の助言に従って、レバノン内戦について予習をしてから観に行った。

最初のシーンから恐ろしい緊迫感に包まれる…
見るからに凶暴な、血に飢えた26匹の野犬たちが、どこか目的地に向かって一直線に疾走していく!!!…一体どこへ行こうとしているのか、これから一体何が始まるのか、どんな過酷な事実を突きつけられるのか…
不安感を呼び起こしつつも、作品に対する期待が否応なく高まっていく、見事なすべり出し!!!

結局この恐ろしい犬の場面は、アリ監督の友人が戦時中、26匹の野犬を射殺したことに起因する悪夢だったのだが、この後も、監督の友人たちが体験したトラウマや幻想が次々に語られる…

安全だと過信していた戦車部隊の兵士が、敵の猛攻撃に遭って1人だけ生き残り、夜の海を命がけで泳いで逃げ帰る話…
巨大な裸の女性の身体にしがみつき、船から離れたら、船が炎上し、仲間が炎に包まれていたという幻想的なシーン…

友人たちを訪ね歩き、1982年の「サブラ・シャティーラ大虐殺」のとき、自分は一体何をしていたのか、その記憶を取り戻そうとする過程で、明確な命令や指揮を執る者もいなかった、目的もわからず銃を乱射させられた、あの無意味な戦争の一端でどんな悲劇が起こっていたのか…それをつきつけられることになる。

日本の画一的なアニメを見慣れた目には、この骨太なアニメはとても刺激的で、新鮮に映ったし、大虐殺に加担していたイスラエル側から、この作品を制作したことは大きな意義がある…作品としても評価できる…

でも…
どうしても自分の中でもやもやと、何か納得できないものが残った…

監督は、結局あの大虐殺のときに、(虐殺がやりやすいように)照明弾を打ち上げていた、ということが分かるのだが…

自分は実際に手を下していたわけではない、ただ照明弾を打ち上げていただけだ…と分かり、社会的にもそれほど糾弾されることはないと安堵したことで、この作品を撮ることができたのかな…と。。。
(映画の中でも、監督の友人?が、照明弾を打ち上げていただけで、実際に手を下したわけではないのだから、そんなに罪悪感を持つことはない…というようなことを監督に話す場面があったが、それってあり!!??…そんな場面を挿入してあること自体に、どこか違和感を感じた…)

実際に監督が、難民たちに銃を向けた張本人であったとしたら、この作品を撮った本当の意義があったように思うけれど、おそらくそれは危険すぎる賭けだろうし、そこまで勇気のある人物がいるとは思えないし、社会的にも許されないような気がする…

だから、この作品にこれ以上のことを望むのはお門違い…という気もするのだが…
どうしても心から賞賛する気持ちになれなかった、後味の悪さが残る作品だった。


岡山映画祭2009

2009-11-29 23:04:56 | 映画・テレビ
岡山映画祭2009」が11月14日~29日まで開催され、日頃なかなか観ることのできない貴重な作品16本(特別企画の岡山映像祭も加えると25本)が上映されました。

新藤兼人監督のお孫さんの新藤風さんをはじめとする上映作品の監督さんたちもトークゲストとして招かれ、とても充実したプログラムが組まれていました。

ほとんどが映画館で上映されることのない作品で(実行委員会の方々が一つひとつ丁寧に選考を重ねてくださった作品)…私も3日間で8本の作品を楽しませてもらいました☆

●『ジンジャーエール』(監督:田淵 史子)(47分)
監督の田淵さんは、岡山の高校演劇で活躍し、東京の大学に進んで演劇を専攻した後、仲間と結成した劇団で俳優や脚本家として活動されるのですが、23歳で血液のがんを発症…。体力的に演劇活動を続けられなくなった田淵さんは、「形になって残る作品を」と映画製作に取り組まれ、初めて監督した作品がこの「ジンジャーエール」です。(2001年ぴあフィルムフェスティバルで観客賞受賞)
 15歳の男子中学生3人が、10年後の自分にあてて手紙を書き、ジンジャーエールの空き瓶につめ、地中に埋める…。東京の大学に進学した主人公は都会の生活で自分を見失いかけ…そんなとき、地元で就職した仲間から「結婚するからみんなでまた会おう、空き瓶をみんなで掘り出そう」というメールが届く。主人公は溜まり場だった定食屋で仲間を待ち続けるが3人(仲間2人+婚約者)はついに現れない…。
 その理由があまりにも定石だったので、えっ?、と思ってしまったのですが、提灯を持った行列が山道を遠ざかっていくシーンがとても印象的で…監督はきっとこのシーンが撮りたかったのかも…と思いました。主人公がジンジャーエールの瓶を掘り当て、「あったー!!!」と叫び、中から取り出した紙切れを読むシーンは、役者さんの熱演もあり、もらい泣きしてしまいました!とてもいい演技をされていたんです☆短い作品の中に、田淵監督の想いがいっぱい込められていたように思います。
 会場は立見も出るほど大勢のお客さんであふれていました。32歳の若さで亡くなられた田淵さんの関係者の方々が集まってこられたのでしょう…才能豊かで、これから!という方だったのに…本当に無念だったことでしょう…。田淵さんの撮られた第二作「月に星」もいつか上映していただきたいです。

●『しゃけは涙』(監督:福田 良夫)(70分)
劇団「銀仮面団」や演劇工舎「ゆめ」の役者さんたちが出演されていて、うれしく拝見しました。赤ん坊のときの事故が原因で知的障害を負った主人公を、赤木英雄さんが自然に演じておられ、切なくなる作品でした。年の離れた兄役の藤澤さんが、どうしても主人公の父親に見えてしまいましたが…なかなかの力作だったと思います。

●『笑え』(監督:太田 真博)(43分)
やられました!!!終盤まで、真面目な青年たちの熱いぶつかり合いを描いた青春映画だと思ってたんですよ!ほんとに!!
「舞台・阪神淡路大震災」の千秋楽前夜…被災経験のある役者と被災経験のない役者たちが、お互いにわかり合おうとして熱い思いをぶつけ合う!…実際、私なんぞ感動して涙こぼしてたんですから~!なのに~、どうしてくれるんですか~!(笑)
 最後の最後で、ど~っと脱力してしまい、あまりの展開にバカバカしくなって笑うしかなかったのでした!あの~、これって、ひょっとしてギャグ映画だったの???それまでの真面目~な議論は、最後に観客をズッコケさせるための伏線だったのか~!まんまとやられました!!も~、最高におもしろかったです☆☆
 上映後、太田監督が挨拶をされたのですが、ユーモアたっぷりの方で、主役の滝藤賢一さんの宣伝(「クライマーズ・ハイ」で重要な役を演じているのでツタヤでDVDを借りて帰るように)をされていました。役者思いの監督さんです☆ 「笑え」の予告編が下記で観られます!
http://vision.ameba.jp/watch.do?movie=1837730

●『己が魂のために』(監督:中島 裕作)(50分)
俳優を目指しながらも、いつしか夢破れヤクザになってしまった主人公が、慕っていた兄貴分を無残に殺され、不本意ながらも仁義にはずれた道へと流されていく…しかし欲得にまみれ、薬や人身売買に手を染めていく仲間を「己が魂のために」裏切り、売られていく1人の女を逃がそうとしたことから、主人公は森へ迷い込み、そこで60年以上前に消息不明になったはずの祖父と出会い助けられる。
 「バイオレンス&シュール」な作風で映画を制作されているそうで、森の中での戦闘シーンは迫力があったし、ヤクザの悲哀も描かれていたし、SFっぽい部分もあり、ハラハラドキドキしながら楽しませてもらいました。役者さんがちょっと素人っぽいところもよかったです!?
 上映後挨拶をされた中島監督は、かなりのイケメンさんで、ちょうどすぐ前の席に座っておられたので、「おじいさんは最後、おばあさんのところへ帰れたんですか~?」と思わず尋ねたら、「そこは観る人のご想像にまかせているんです」とのこと。中島監督☆ありがとうございました!

●『想う力inひろしま』(監督:いくまさ鉄平)(34分)
「ワークショップ型プロジェクト」として制作されている作品。
広島の街中で、「あなたの生涯において核は無くなると想いますか?使われると想いますか?」と書かれた赤いボードを手に持った人たちが、1人1人カメラの前で自分の想いを答えていく。延々とその場面が繰り返されていくのですが、いろんな場所でいろんな方たちが、それぞれ異なった意見を述べられるので、観ていて飽きません。語られる言葉に耳を傾けながら、自分だったらどう答えるかな~とずっと考え続けていましたが…結局納得できる言葉が思い浮かばなかったな~。。。むずかしい問いかけですよね!

●『YOKOHAMA34~オールドボーイたちの歌声~』(監督:待場 勝利)(34分)
昭和34年に横浜国立大学を卒業した男声合唱団の方々が、定年を過ぎてから再結成したコーラス隊「YOKOHAMA34」☆…お揃いのブレザーをビシッと着込なされ、背筋もピンと伸びて若々しく、目を閉じて歌声だけ聴いていたら70歳を過ぎた方々だとは気づきません!「はるかな友に」の合唱の響きが本当に美しかったです!(昔から私も大好きな曲なんです☆)
 事故に遭われたり、愛妻を亡くされたり…団員の方たちもつらい思いをされながら…でも仲間と歌い続けることが支えになっていくんですね!奥様を亡くされた方が、「妻の死に顔がとても安らかだったから、自分も死ぬのが恐くなくなった」と話しておられたのが印象的でした。。。彼らと同じ年になったとき、自分は何を生き甲斐にしているのだろう…考えたとき、ちょっと心配になりました!

●『ふたりだけの同窓会』(監督:下倉 功)(29分)
泣かされました。下倉監督は「シルク」という作品もそうでしたが、ちょっと気恥ずかしいくらい純粋で、まっすぐ観る者の心に訴えてくる作品を作られるんですね!!あまりに人が良すぎるだろ~!と突っ込みたくなるような愛おしい男同士の友情に心があったかくなりました☆卵焼きのシーンがすごく切なかったです。3人の役者さんの意気もぴったり合っていてとてもいい雰囲気を出しておられました☆ウエディングドレス姿の娘と一緒に写った花嫁の父2人の笑顔☆…美しいモノクロ写真から控えめな喜びが溢れていました。。。でもお婿さんになる人はちょと大変かもね(笑)…音楽も静かで品があって美しかったです!
 育ての父親役の東康平さんが会場に来られていて最後に挨拶をされましたが、映画の中よりもず~っとカッコよくておしゃれな方でした東さんのブログで「ふたりだけの同窓会」の予告編が観られます~♪

●『勝子』(監督:竹内 洋介)(37分)
暗い色調の画面から、生まれつき心臓に重い病気を抱える勝子(宮あおい似の、美しさと痛々しさを併せ持つ原田樹理さん)のうめきともあえぎともつかない苦しげな声が聞こえてきます…美しくレトロな映像の反面、これってホラー映画じゃないよね…?と途中で思ってしまうような妖しさもあり、勝子役の原田樹理さんがとにかく魅力的でした!!! 真っ白なバレエ着で突然目の前に現れるという奇行に、同級生の男性は恐れをなして逃げ帰ってしまうけれど、私には瀕死の白鳥のようにも見え、痛々しくてたまりませんでした!
 竹内監督はフランスで絵画を学ばれたそうで、撮り方(構図?)や色調にもどことなく絵画的なセンスが感じられたような気がします。エンドロールの後にも続きがあって、希望の垣間見える終わり方にほっとしました。勝子が色鉛筆で描いていた鳥たちの絵もすごく素敵でした☆
 監督が目の前に座っておられたので「原田樹理さんってどういう女優さんなんですか?」「あの鳥の絵はだれが描かれたんですか?」…と質問して、少しお話させてもらいました。竹内監督☆ありがとうございました。

もっともっといっぱい観たかった!どれもユニークな作品ばかりでした!!!

それにしても…私が観た際は、(「ジンジャーエール」以外)いつも観客が10人前後しかおらず…せっかくはるばる来てくださっている監督さんたちに申し訳ない気持ちでいっぱいでしたよ~。。。
次回2年後にも、また岡山映画祭は開催されるのでしょうか…???心配です。

次は絶対、夫も娘も友人も大勢誘って観にいきたいです!
実行委員会の皆様、お疲れ様でした!素敵な作品を上映してくださって本当にありがとうございました☆次回もどうぞよろしくお願いしま~す!!!!!

『ココニイルコト』と『のんちゃんのり弁』

2009-11-08 23:26:42 | 映画・テレビ
週末に2本映画を観ることができました。

1本は『ココニイルコト』(DVD)、もう1本は『のんちゃんのり弁』(シネマクレールにて)です。

『ココニイルコト』は、随分前にツタヤで借りて観て、とても気に入っていたのをもう一度観たくなり、Y先生宅(本とDVDの宝庫☆)からお借りしました。

東京の広告代理店でコピーライターとして働いていた相葉志乃(真中瞳)は上司との不倫がばれ、大阪支社へとばされてしまいます。子どものころのつらい記憶(父親の死?)から、何かを願ってもどうせ無駄だ…と生きることにどこか冷めたところのある志乃が、大阪支社で「まっ、ええんとちゃいまっか」が口癖の、飄々とした青年・前野(堺雅人)と出会います。

東京から来た志乃にとって大阪は勝手の違うことも多く、失敗もするけれど、前野に案内されて、古道具屋、プラネタリウムや居酒屋へと出かけていくうち……「人生は小さな幸せの積み重ねで豊かになる」(願って叶わないとしても)「願えること自体が幸せ」…と前向きな言葉を投げかけてくれる前野にしだいに心を開いていきます…。

志乃の気持ちを察し、闇に向かって
「ハシヅメ(志乃の不倫相手)のアホー!!」
「ハシヅメの女房のアホンダラー!!!」
「女房の買うたパンツはいてくんなー!!!」
「何万回留守電チェックしたと思うてんねん!!!」etc

って大声で叫んでくれる前野の優しさ☆…グッときます…。
誕生日というのに「初めてハシヅメから何の連絡もなかった…」と寂しくつぶやく志乃に
「お誕生日おめでとうさん」と声をかけ…「こんなんで生きていていいのかな…」と自信を失くしている志乃に「好きなように生きとったらええんちゃいますか…」と答える前野…。心がほっこり温かくなる素敵なシーンです☆

大好きだった劇団「カクスコ」の中村育二さんが気のいい上司役で出ておられて、さりげなく笑わせてくれるのもうれしい☆
カメのぬいぐるみが「カメヘン カメヘン」と右手を上げ下げする大阪ギャグにも笑いました☆
 それに、スガシカオの主題歌「ココニイルコト」♪♪なんて素敵な曲なんでしょう♪♪思わず口ずさんでしまう、心地よいメロディーが、この作品にピッタリでした☆ 

『のんちゃんのり弁』は、チラシを見たときは軽いコメディーなのかな?、観るのどうしようかな…とも思ったのですが、監督はあの「独立少年合唱団」や「いつか読書する日」を撮った緒方明監督です!
どちらもとても好きな作品だったので、今回もきっと何かある!…と期待して出かけました。

思ったとおり後味がよく、元気の出てくる気持ちのいい作品でした☆

…とにかく主人公・永井小巻(小西真奈美)の境遇は身につまされることばかり!!!
私も32歳のとき幼い娘Sをつれて実家に出戻ったのですが、同じような経験をしましたから…。

妊娠・出産で仕事を辞め主婦になり、経済的に依存していた30歳すぎの女子が、再び自活していこうとするとき、目の前に立ちふさがる壁を乗り越えるのは容易なことではありません!
年齢の壁もあるし、子どもにもまだ手がかかるし…これといった特技もなく、経験もなければ、正社員の職なんてなかなか見つかるもんじゃありません…。このときほど自分のふがいなさを実感したことはありませんでした…。

…毎日毎日、新聞広告をながめ、職業安定所に通い、紺色スーツに身を包み、面接にも出かけました…
それまで、自分には絶対無理!っと敬遠していた運転免許も、「岡山で就職するなら絶対必要!!!」と友人に強く言われ、泣き泣き教習所へ通いました…

仮免に1度落ちながらも(笑)なんとか無事に運転免許を手に入れ、幸いなことに、新聞広告で見つけた現在の職場に就職でき(食事ものどを通らないくらい過酷な選抜試験を受けました!)、今の生活があるのですが、これまで続けてこられたのは、ひとえに実家の両親の助けがあったからだと思います。
30代のころは深夜近くまで働くのが普通の部署にいたので、保育園へ6時までにお迎えに行くなんてできるはずもなく、両親に迎えを頼み、娘に夕食を食べさせてもらうことでなんとか切り抜けてきました。女性が働く際、親の手助けがあるのとないのとでは大きな違いがあると思います…。

だから小巻が親に頼ることもせず、自分の見つけた「行き場所」に向かって懸命に進もうとする姿に強いな~本当にすごいな~と心を打たれました。早朝、大きなお釜に炊き上がったご飯をしゃもじで切るようにまぜている小巻の真剣な眼差しに胸が熱くなり、うるうるしてしまいました!

この作品を観た人の100人中93人が「サバの味噌煮」を食べたくなり、お弁当作りをしている人の100人中98人が「のんちゃんのり弁」を真似して作ろうとするに違いありません!!!

『ココニイルコト』も『のんちゃんのり弁』も、悪い人が出てきません。みんなあったかい人ばかりなんですね☆
どちらの主人公にも、さりげなく支えてくれる優しい男性が現れ、恋愛関係になるのかな~と思ったら結局結ばれることもなく、主人公たちは元気に自立していくのです☆

真中瞳さん(あんなに素敵な女優さんだったのに、今は引退されているらしい…)、小西真奈美さんの、さわやかですがすがしい演技・笑顔で私の心もしばしの間、幸福感に満たされたのでした☆

映画「精神」と「ふりかえりの会」

2009-07-19 23:44:58 | 映画・テレビ

映画「精神」を公開初日の7月18日初回に観ました。

10時からの上映に合わせ、一緒に行く友人Kを迎えに行くため9時前、車に乗り込んだちょうどそのとき、映画仲間のY先生から携帯にメールが届きました。

「シネマクレールの前にもう20人以上行列ができています」
「チケット必要なら買っておくので連絡してください」とのありがたい申し出です!

すぐさま、「2枚お願いします!」と返信しました!

9時25分ごろシネマクレールに到着したら、入口の外は長蛇の列!!!
既に同伴割引チケットを購入してくださっていたY先生と無事に合流し、列に並ぶことなく中に入ることができました☆

初回は想田監督の舞台挨拶やティーチインもあるため、大勢のお客さんが来られたようです。今日は特別に2階と1階の2会場で、15分時間をずらせて「精神」が上映されました。

映画の中に映し出されるのは、毎週毎週夫と2人で通っているこらーる岡山の見慣れた光景…
 古めかしい民家の、とても病院には見えない、田舎の温泉宿のような受付窓口…(患者さんたちがいつも職員の方たちと雑談をしている…)
 待ち時間に患者さん同志がしばしば大きな声でおしゃべりしている畳の待合室…

そして、いつも夫の深刻な話にも飄々と淡々と…でも静かに共感しながら耳を傾けてくださる山本先生!
映画に出てくる患者さんたちの診察風景を観て、「あ~、他の方たちにもいつもこんな風に対応されているんだな~」「そうそう、山本先生はこう言われるんだよな~」とすっかり身内感覚!心と身体にすっかりなじんだこらーるの居心地のよい空間です…

映画に登場された患者さんたちの話してくださるお話はどれも身につまされ、共感することばかり…

特に夫と同じ病気の女性(岸本さん)が、「うつは本当に苦しくて、なったもんにしかわからない」「死ぬことばかり考えている」「ごはんも食べたくないし、お風呂にも入りたくない」「自分はダメだダメだと自分を責め抜く」…と言われていたのを聞き、改めて夫の苦しみを思いました…(全く同じ症状なのです!)

夫もこの方たちのように、自分のつらい気持ちを言葉にしてはき出し、同じ苦しみを抱えた方たちと話すことができたら…少しは心が慰められるのかも…と思ったり…(でも今の夫は何も考えられず、ベッドに横たわっているのがやっとなので、そんな気持ちにはなれないんだろうな…)

映画の中で、好きだった場面(言葉)は…

●カメラに向かって自分の病気のことを語っていた岸本さんが突然、「口紅してくりゃよかったな」と言ってニコッと無邪気に表情をゆるめるシーン

●患者さんたちを通して語られる山本先生の言葉
 ・「自分に○をつけなさい」
 ・「ウサギになるのではなく、カメになりなさい」

●摂食障害の患者さんをこらーるの薬剤師として雇用し、すべてを任せているところ…(これについては賛否両論あるかもしれませんが、これだけ人を信じられるのは山本先生らしい!)

●所持金が20円になってしまった患者さん(菅野さん)が、コレクトコールで1年ぶりに山本先生に電話をしたら、次の日に山本先生が名古屋まですっ飛んできて助けてくれた話

ず~っと身内感覚で、患者さんたちと以前からお友達だったような気持ちで観ていた私にとって、やはり最後の場面はショックでした。(その原因は実際、だれにもわからないことだと思います。)

でも、こういう酷い現実と隣りあわせで、患者さんたちそれぞれが、かろうじて生き抜いているのだと思います。(それを実感する日々です!)

上映後のティーチインでは想田監督、山本先生、そして出演された今中さん、美咲さん、吉澤さんが壇上に上がってくださいました。

美咲さんのサービス精神旺盛な受け答えに会場は笑いに包まれ、患者さんたち1人1人が話すたびに温かい拍手が沸き起こり、終始なごやかな雰囲気で会は進行しました。地元岡山の観客のみなさんは、とても好意的だったと思います。

そしてその夜………

岡山城近くの三光荘屋上ビアガーデンで、想田監督ご夫妻、山本先生や出演者の方々が集まって「ふりかえりの会」が開かれるのを、こらーるに置いてあったチラシで知り、勇気を出して私も参加させてもらいました。

知り合いも無く、1人みんなと離れたテーブルにポツンと座っていた私を気遣って、山本先生の息子さんご夫婦である山本真也さん、明子さんが話に来てくださいました。

お二人は映画の中でもいろんな場面に登場されていたし、監督の書かれた「精神病とモザイク」の中でもカッコイイお二人の様子が詳しく記述されていたので、お話ができてとても光栄でした。笑える裏話もお聞きしたし…

映画の影響がこらーるに出ているのかどうかお聞きしたのですが、特に脅迫電話もかかってこないし、患者さんが特別増えている様子もないとのことでした。(ほっ☆)

そして…想田監督のパートナーである想田規与子さんともお話することができました。

実は、ぜひお聞きしたいことがあったのです。
(ティーチインのときに会場で手を挙げてお聞きしようかとも思ったのですが、勇気が出なくて実行できませんでした…)

規与子さんは、監督の撮影に付き添い、「患者さんの話に100パーセント耳を傾け続けた」ため、どんどん精神状態が不安定になっていき、とうとう山本先生の診察を受けたそうなのです。(監督は自分の妻の診察場面をも撮影しようとしたのですが、規与子さんに一喝され、世紀の名場面の撮影はなされなかったらしい…)

1時間たっぷり診察を受けた規与子さんは晴れ晴れとした表情で出てこられ、その後順調に回復されていった…とのことなのですが、山本先生の、それほどまでに即効性のあるアドバイスとは一体どんな内容だったのか…???

毎週夫の診察に付き添って山本先生にお会いするけれど、本当は私自身もつらくてしんどい!!私だってカウンセリングを受けたい!助けてほしい!!…と思っている…

だから、患者さんに感情移入して病気になりかかった規与子さんを、1回の診察で救ってしまった山本先生の診察の様子を私にも教えていただきたかったのです!

規与子さんはモダンダンスのダンサーで、ものすごく美しくて素敵な方なのですが、サッパリとした性格で、初めて会った私に対してもざっくばらんに気持ちよく話をしてくださいました。
…山本先生は、自分も病気なのではないかと不安定になっていた規与子さんに対し

「病気じゃないよ」
「でもな、病気になってもええんじゃ(いいんだよ)」
「病気になったら治せばええんじゃから」
…と言われたそうなのです。

この言葉は規与子さんにとって「目からうろこ」だったそうです。
うんうん、やっぱりさすが!山本先生だな~と納得しました。
他にもいろいろと話してくださったのですが、それはちょっと書くのを控えます。

真面目で誠実な監督と、さっぱりした性格の規与子さん☆
このお二人のコンビだからこそ、様々な苦難を乗り越えてこの作品が完成したのでしょう!!!

私にとってとても充実した1日になりました☆
今日お会いした皆さん全員に心から感謝したいと思います。
ありがとうございました!!! 

 


8月に観た映画

2008-09-01 23:59:08 | 映画・テレビ
8月はいろんなジャンルの映画を観ました

☆映画館にて…

●『美しすぎる母』(監督:トム・ケイリン)
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大富豪の妻となり、可愛い息子にも恵まれたのに、上流階級の生活に溶け込もうとすればするほどいびつな言動を繰り返すようになるバーバラ…。
映画の中ではバーバラが貧しい家庭で育ったこととか、どうして歪んだ行動をとってしまうのか…という説明的な場面が一切ないので、観客は同情する余地も無く、ただただバーバラが狂気へと突き進んでいく有様をあっけに取られながら傍観し、悲劇的な最後まで、見届けるしかなかった…
繊細な息子アントニー(演じたエディ・レッドメインが愛おしかった!)が本当に哀れだった…
内容的には醜悪であったりもするのだが、どこか上質なものを感じさせる作りだった。

●『いまここにある風景』(監督:ジェニファー・バイチウォル)

この写真のチラシを見たとき、いったいこれは何の写真なんだろう…とず~っと疑問に思っていたのですが…
この巨大な工場(何かの部品を作っているようでした)の中を延々と移動していく冒頭のシーン…(どこまでいっても終わりがない)…を観ただけで、そのあまりにも大きいスケールに圧倒されます!
 世界中から集まったのかと思われる産業廃棄物の山を素手で分類していたり、かなづちのようなものでガンガンたたいて分別していたり…(大量の有害物質で土壌が半端じゃなく汚染されているに違いない!)
 こんな大規模汚染の現場では、「環境問題」なんて言葉を持ち出すことすら空しくなってくる…

●『靖国』(監督:李 纓)

終戦記念日に観にいったら、戦争体験者と思われる年配の方たちで普段よりも混雑していた。
観る人によって、いろんな捉え方ができる作品なのだろうが、時代錯誤な軍服姿で登場する右翼や、小泉首相の靖国参拝に賛同する得体の知れないアメリカ人(最後には「ヤンキーゴーホーム!」「ヒロシマを忘れないぞ!!」と罵声を浴びせられていた!)の姿は、私にはとても滑稽に見えた。
 反面、合祀取り下げを訴えるため台湾からやって来た女性運動家の凛とした佇まいには激しく心を揺さぶられた。
 父親を戦争で亡くした寺の住職(その方の父親も住職だった)が、戦死者の家族は、国をうらみたいのに、勲章を与えられてしまうため、怒りのぶつけようがないのだ…ということをおっしゃっていたのにすごく共鳴した!!
 全体を通して、90歳の現役最後の刀匠の映像が靖国の象徴のように流れるのだが、インタビューする監督の日本語がへたくそでわかりにくく(日本在住19年なのに!)、刀匠がとんちんかんな答えをするので気の毒だった。刀匠に南京大虐殺や百人斬りに対する反省のことばを述べさせようとしているのかな…という印象を受け、(実際、刀匠の作った刀でアジアの罪のない人々が切り殺されたのかもしれないが)それを刀匠1人に背負わせるのは、あまりにも重すぎる問題なのではないかとますます気の毒になった。

●『接吻』(監督:万田 邦敏)

この映画を観てから、我が家では必ず玄関の鍵をかけるようになりました。
娘たちが帰宅するころには、前もって鍵をあけてやっていたのですが、もう絶対にそんなことはしません!!
それから、家族の誕生日の夕食時には必ず「ハッピーバースディ」の歌をうたっていましたが、しばらくこの歌はうたえそうにありません…
 いつものように娘たちが「どんな映画だった~?」と尋ねるので、トヨエツ演じる殺人犯がどのようにして一家3人を惨殺したか、小池栄子がどれほど真に迫った演技をしたかを話してやり、「小池栄子が、こ~んな顔をしてニタ~ッと笑うんよ~!!」と、あのすごみのある、不敵な笑顔をやってみせたら、「お母さん!やめて~!!!」と心底気味悪がられてしまいました(笑)
2箇所出てくる「ハッピーバースディ」のシーンは娘たちを恐怖のどん底に陥れてしまったようです!!!
 小池栄子はこの作品で、今年の主演女優賞を獲得するのは間違いないでしょう!!

●『片腕マシンガール』(監督:井口 昇)

悪趣味で、節操が無くて、やりすぎで…ってことを重々承知の上で、あえて本気で撮ってしまったB級血まみれ映画です!!!
本編が始まる前に、この映画の見方?っていう感じの短編が流れ(ポプコーンを買ってきましょう、血しぶきの場面では拍手をしましょう!…などなど)、監督自らがあられもない姿で登場し、説明してくれるのがおかしくて、笑ってしまいました!
出演者たちがビミョーに素人っぽかったり、撮影場所にもお金をかけてなくて、いかにも低予算で作りましたっていう感じが気に入りました(???)

●『マンデラの名もなき看守』(監督:ビレ・アウグスト)

黒人たちの言葉がわかるということで、大物テロリスト(!)マンデラの担当に抜擢された刑務官グレゴリーが、最初はアパルトヘイト政策の忠実な信奉者だったのに、早々にマンデラの思想に傾倒していくのが、特に大きな転機とかきっかけが描かれていなかったので安易に思われたのですが、もともと、子ども時代には黒人少年と仲良しだったのだから、根っこには黒人に対する強い偏見はなかったんだな~と考えることで納得しました。
 グレゴリーの奥さんがいつもおしゃれで、まるで外交官の奥様のように着飾っていたので金持ちなのかと思っていたら、刑務官は身分が低く、子どもに靴も買ってやれない、子どもを大学にいかせるのは珍しいことなのだという会話があり、ちょっと違和感がありました。
 マンデラはガンジーとは違い、暴力に対しては武器を持って闘うことを指示していたし、支え続けてくれた奥さんとも結局離婚したのですね…それも人間的な一面なのかも…
文科省推薦って感じの正統派作品で、子どもに観せるとよさそうです。

☆DVDで…

●『HINOKIO』(監督:秋山 貴彦)

多部未華子ちゃんの魅力がいっぱいつまった作品でした。
内容的にはちょっと幼稚な作品で、中村雅俊が真面目に演じれば演じるほどうそ臭い感じがして観ていてしらけてしまったのですが、男の子の格好をして悪がきを演じていた未華子ちゃんが、最後にセーラー服姿で現れたときには、そのあまりの可愛らしさに後光がさして見えました
このシーンのためだけに、それまでの物語があったのだと思えるくらいまぶしかったです☆

●『LOVE GOGO』(監督:陳 玉勲)

1997年の台湾映画です。3つのストーリーから成っているのですが、その主人公たちがいずれも無器用で、ぶさいくで(あっ、3作目の男の子はちょっとハンサムだったかな?)…
でもとても純朴で、健気なんです!!
相手のことを思う気持ちを、あっと思うような、切なくて涙ぐましいかたちで表わすんですよ☆…だれの思いも実りはしないんですけどね…
愛おしい映画です


9月も観たい作品が目白押し!!!!!
頑張ってシネマクレールに通います!!!!!

『ぐるりのこと。』と『歩いても 歩いても』

2008-07-21 23:21:51 | 映画・テレビ
身につまされる映画を2本観ました。

『ぐるりのこと。』(監督:橋口亮輔)と『歩いても 歩いても』(監督:是枝裕和)です。

●前者は、生まれた赤ん坊を亡くしたことが引き金になり、徐々に精神を病んでいく妻、そしてその妻を静かに受け止め、決して見捨てることなく寄り添っていく夫…2人が時間をかけて夫婦の絆を取り戻していく作品。。。

リリーフランキーさんって、小説「東京タワー」もお母さんに対する愛情があふれていていいなぁ~と思ったけれど、俳優さんとしても才能のある方だったのですね!
いつも淡々としていて穏やかで、頼りなさそうなのに、一緒にいると安心できる…

夫婦が再生していく10年という年月を、少しずつ変貌していく夫婦の姿を描くと同時に、カナオが法廷画家として傍聴した数々の痛ましい事件の裁判を通して辿っていく…

裁判の被告人役に、前作「ハッシュ!」で活躍した片岡礼子さん、「それでもボクはやってない」の加瀬亮さん、「松ヶ根乱射事件」の新井浩文さん等が次々に登場してきて、とても豪華でした。

木村多江さんが、カナオの包容力により、徐々に生きる気力を取り戻し、尼寺?の天井画を描くことに取り組んでいくのだけれど、絵筆を持ち、明るい色彩の光輝く季節の花々を描く木村多江さんの横顔が本当に美しくて見とれてしまいました。。。

心の病気に苦しむ妻が再び笑顔を取り戻すことができたのは、穏やかな包容力で見守り続けた夫の力があったから……

この作品を観た後、私はなんだか自分の至らなさを感じて反省してしまったのでした…
うつ病5年目の夫の病気が良くならないのは、優しさの足りない私のせいなのかなぁ~

●後者は、町医者だった頑固な父親と専業主婦の母親のもとへ、次男が久しぶりに家族(妻は子連れで再婚)を連れて帰省したことから起きる、親子・兄弟・夫婦間のどこにでもありそうなのに、実に細やかに感情のゆれ(ときには静かに酷い)を描いた作品。。。


細かいところまで神経が行き届いている作品で、その緻密な構成に感嘆し、連休中2度観にいってしまいました。

年老いた両親が住む実家の、お風呂場のはがれたタイル、とりつけられた手すり…
母娘が料理をしながらの会話(「かわいい顔してるんだから、おでこ出しなさいよ」とか「(枝豆の)薄皮もちゃんととってよ」とか…)
小学生の孫たちがはいている、大人用の脱げそうなつっかけサンダルとか…
「おばあちゃんち」特製のとうもろこしのかき揚げとか…
かわいそうなヨシオくんの、汗びっしょりの背中にはりついたワイシャツとか…
次男の嫁の夏川結衣さんが、家の中でもいつもきちんとストッキングをはいているところとか…

う~ん!うまいな~!!と感心してしまいました。。。

子連れで今の夫と再婚した私は、やっぱり夏川結衣さんに自分を重ねてしまいましたよ!
夫の両親は素朴でとても心優しい人たちなので、私自身はあんなにシビアな、トゲのある言葉を発せられたことは一度もないのですが、やっぱり姑さんからすれば、心のどこかに息子かわいさから「何もお古を…」という気持ちもあっただろうな~と詮索してみたり…

映画友だちのY先生ときたら、この作品を観た後「夏川結衣が○○さん(私)とだぶり、樹木希林が憎らしくてたまらなかったです」とメールをくださいました!

本人(私)は意外と客観的に観られて、平気だったんですけどね

夏川結衣さんが演じた次男の嫁のように、凛としてたくましく、堂々と胸を張って生きていけたらいいなぁ~と、ラストに流れるゴンチチの心地よい音楽を聴きながら、ちょっぴり自信を失くしている自分を励ました私なのでした

『DIVE!!』(監督:熊澤 尚人)

2008-06-15 23:02:28 | 映画・テレビ

友人Kと『DIVE!!』を観にいきました。

お目当ては、もちろん林遣都くんです

5月に遣都くんの舞台挨拶つき試写会がシネマクレールであり、葉書を2枚書いて応募したのですがハズレてしまったので、生の遣都くんは見損なったけれど、大画面で遣都くんの笑顔が観られる!!とワクワクして出かけました。

『バッテリー』に続き、この作品も岡山でロケが行われたのですよ!
海をバックにした児島マリンプールや、岡山県庁でも撮影したらしい。

オリンピックを目指す飛び込み選手!という設定だから、出演者たちは3ヶ月間猛特訓して身体を作り、本物の飛び込み選手になりきっていたことに心底驚きました!!

10mの高さの飛び込み台に立つだけで、ものすごい恐怖に襲われる気がする。。。
あんなところから落ちたら心臓が止まりそう。。。

恐がりの私は、華麗なフォームで何度も何度も飛び込むイケメン3人の勇気に感動するばかり…(断崖絶壁から海へ飛び込むシーンもあったよ!

今回も遣都くんは、純粋で優しくて友達思いで頑張り屋っていう役柄にピッタリはまっていました!
飛び込みに夢中になっていて、弟に彼女をとられてしまい(ありえね~)ふてくされて投げやりになった遣都くんには思わず笑ってしまったけどね!

謎の美人コーチ役の瀬戸朝香さんが予想以上に素敵でした

1人1人の選手をとてもよく観察していて、厳しいけれど大事なときには必ず適切なアドバイスをして救い上げてくれる、何もかもお見通し!といった偉大なコーチでした

仲間とのつながり、親子の愛情、自分を信じて努力を続けること…大事な気持ちがいっぱい詰まった後味の良い作品に仕上がっていて、さわやかさに包まれて会場を後にしました。


『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(監督:若松孝二)

2008-06-08 23:51:32 | 映画・テレビ

観終わった後、あまりに重い衝撃のため、なかなか立ち上がることができなかった。

これだけの作品を創り上げた若松監督ってすごい!!
今時の若い役者さんたちが、あの時代の、狂気へと突き進んで行くまっすぐな目をした若者になりきり、見事に演じきったことにも驚嘆した!!

1972年2月、あさま山荘事件が起こったときのことは、今でもうっすらと私の記憶の中に残っている…(年がばれるけどね!)
テレビの白黒の画面に、ホースで山荘に水を噴射したり、大きな鉄球をぶつけたり…子ども心に大変なことが起こっているんだなぁと、寝たきりだった祖父と一緒に画面を見ていた覚えがある…

あさま山荘事件を警察の視点から撮った『突入せよ!あさま山荘事件』という作品は昔観たけれど、犯人たちの内面については一切描かれていなかったので、今回少し躊躇しながらも意を決し、勇気を出してこの作品を観に出かけた。

…社会変革のため、権力に立ち向かおうとしていたあの時代の若者たちの大きなうねり…それが間違った方向へと突き進んでしまったのだけれど…それを見届けながら、心が激しくゆさぶられた3時間10分だった。

永田洋子や刑務所内で自殺した森恒夫の名前は、その後もときどき新聞に取り上げられていたのを読んだりして、なんとなく覚えていたけれど、この連合赤軍の2大リーダーは事件前に逮捕されていて、あさま山荘事件には加わっていなかったということを、恥ずかしながら改めて認識した。

あさま山荘事件は期せずして起きた到達点であり、本当に恐ろしいのは、事件前に武装訓練のために立てこもっていた山岳ベースキャンプの密室の中で繰り広げられていた身の毛もよだつ同志へのリンチ、虐殺だった!!

永田洋子、森恒夫の意に沿わぬ者、少しでも目をつけられた者は「総括」の名のもと、次々に殺されていった!! 「総括」は死の宣告であった!!

殺すように命ぜられていた恋人を逃がしたから…
髪をのばし、化粧をし、指輪をしていたから…
「総括」に加わらなかったから…
留置場で刑事と雑談したから…
銃に傷がついていたから…
恋人とキスしていたから…
反論したから…
車の給油に出かけた際、自分たちだけお風呂に入ったから…

些細な理由で因縁をつけられ、「総括」されていく同志たち…そこには逃げ場のない、追い詰められ、息もできないような恐ろしい緊迫感があり、次から次へと繰り広げられる、むごたらしいリンチ場面に、心が凍りついた!!

ついには、異常な精神状態へと追い詰められていき、殺されるとわかっているのに、自分から「総括」を要求する者まで現れ始める…

永田洋子には女性特有の妬みもあったのか、妊娠8ヶ月の同志も容赦なく殺し、美人で有名だった女性には、自分で自分の顔を殴らせ、見る影も無く腫れあがり、醜く変形した顔を、わざわざ本人に鏡で見せたり…(この場面はあまりに長回しで、目を覆いたくなった!)

以前には敵前逃亡したこともある森恒夫がいつのまにか、歯向かうことを許さない暴君へと変貌していき、それに人間的感情のひとかけらもない冷血な永田洋子が加わったことで、残虐さが急激に加速していき、殺らなければ自分が殺られる!という恐怖感がメンバーを支配するようになる…


こんなのちっとも「革命」じゃないよ!!
こんなことをしても何も変わらない!!
社会を変えていきたいという志は一体どこへいったんだ!!??
大事な仲間を殺して何になるんだ!!??

次々に繰り広げられる理不尽な虐殺に対し、私は心の中で怒りと絶望の叫び声を上げたが、目をそらすこともできず、最後のあさま山荘事件まで一気にグイグイ引っぱられたまま全力疾走した感だった。

『赤い文化住宅の初子』でも熱演だった坂井真紀さん、異色作『ある朝スウプは』の演技も素晴らしかった並木愛枝さん、『ピンポン』で好きになったARATAさん、『約三十の嘘』のときよりずっと素敵になった伴杏里さん、『奈緒子』での演技も印象的だったタモト清嵐さん…その他あまり名前を知らない若い役者さんたちが多かったが、アンサンブルが素晴らしかった!!

当分私の頭から、この映画のこと、連合赤軍のこと、あの時代の熱を帯びた空気が離れていきそうにない。。。


 


『赤い文化住宅の初子』(監督:タナダユキ)

2008-05-10 23:23:40 | 映画・テレビ
久しぶりにTSUTAYAでDVDを借りてきて観た。
岡山では上映されることがなかったけれど、シネマクレールに置いてあった他県の映画館のチラシで見て、なんとなく気になっていた作品…『赤い文化住宅の初子』


…チラシの背景が暗いのと、主役の東 亜優ちゃんの、なんともいえない物憂げな眼差しと立ち姿が、一昔前の(昭和の時代の)イジメとか心中とか、そんな暗いストーリーをイメージさせた。。。

確かに明るい話ではない。

父親は行方不明、母親は過労で死亡、兄は高校中退して工場で働くが、大事な給料をパチンコや風俗に使ってしまうし、暴力事件を起こして工場もクビになる…初子もラーメン屋でアルバイトをしていたが、中学生だからと自給を下げられ、気が利かないと言われて結局クビになる…

食べるものも無く(冷や飯に白湯をかけて食べたり、夕食のおかずのコロッケを、自分もお腹がすいているのにもっとすいているであろう兄に半分分けてあげたり…)、電気も止められてしまう…

必要最低限の生活品しかない文化住宅の中で、中学生の初子が茶封筒に、食費、電気代、水道代…とそれぞれ分けて入れ、つつましく家計をやりくりしている様子は胸につまされる…こんなに幼い少女が、こんなに懸命に、自暴自棄になってしまう兄に静かにそっと寄り添い(頼る人が他にいないからね)健気に生きている姿は心痛むと共に、しんとした美しさもある…

そんな初子の心の支えは、学級委員長の三島くんだ。

初子に勉強を教え、同じ高校へ行こうと励ましてくれる三島くん。。。
(たぶん)裕福な何の問題もない家庭に育ったであろう三島くんに、極貧生活のため、お金がなくて高校へ行けない…という初子の境遇など本当には理解できないのではないか…と思いながら2人の淡い気持ちのやりとりを心配しながら見守る…

でも意外なのは、物悲しくて暗いストーリーなのに、なぜか笑ってしまうシーンがあちこちにあって、そのセンスがとてもいいこと!!

たとえば、怪しい新興宗教に引き入れようとする中年女性(浅田美代子!)にめぐんでもらった5000円で、安っぽい3000円のワンピースと欲しかった参考書を買い…

三島くんとのデートに張り切ってそのワンピースを着ていくのだが、ふと足元を見ると薄汚れた通学用のズック! 思わず足を引っ込めてしまうシーン。。。

帰宅した兄にワンピース姿を見られ、「その服どうしたんだ!」と詰問されて、とっさに「家庭科で作った」と答えるシーン。。。

三島くんが心配して家まで来てくれると、ジタバタジタバタしながら急いで一張羅のワンピースに着替えるシーン。。。

本屋で参考書を買おうとしてお金をかき集めたが、どうしても100円足りず、床に落ちていた100円玉を足で踏んで引き寄せ、ネコババするシーン。。。

郵便受けに入っていたエロチラシを、くしゃくしゃにして捨てようとした初子が、「お兄ちゃんが要るかもしれん」と言って掌でシワを伸ばし、郵便受けに入れ直すシーン。。。

こういうシーンを観ていると、アレッ、これってギャグ映画だったっけ???と錯覚してしまうくらいおもしろくて、私の笑のツボにしっかりはまった!!

それでもやっぱり不幸のてんこ盛りが続き、出てくる大人たちはダメ人間ばかりで誰一人、初子たち兄弟を助けようとはしない…

初子の心情をものすごくうまく描いているとうならされたのは、初子が『赤毛のアン』がきらいだ!という件…

不幸な境遇のアンが、持ち前の明るさや豊かな想像力、前向きな心で人生を切り拓き、周りの人々をも幸せにしていくストーリーを「うまくいきすぎじゃ」と言い、この作品自体が「孤児院のベッドで猩紅熱に侵され、死にかけているアンが見た幻じゃないか」と言うのだ…

夢も希望も持てない閉塞した状況の中で、本当は『赤毛のアン』が大好きで、あこがれているのに、そんな風にしか考えられなくなっている初子が哀れで切なくなった…

住む家も失くし、広島から大阪へと引っ越すことになる初子だが、三島くんが最後まで初子を裏切らなかったことが心底うれしかった!!
最後まで初子の心の支えになり続けた…

これから先、初子の人生はより一層過酷なものになるかもしれない…
三島くんとはもう会えないかもしれない…

でも、多感な時期の初子に、三島くんという大きな大きな信じられる支えがあったということ…それがこの不幸な少女の物語に大きな救いをもたらしていて、あっけないほどにスッキリと終わってしまう作品の最後に、UAの歌う主題歌を聴きながら、私は大泣きしてしまった。。。

この作品かなり好きです☆☆

『ミリキタニの猫』(監督:リンダ・ハッテンドーフ)

2008-03-08 23:59:04 | 映画・テレビ

…というわけで(?)、金曜日の夜、再度『奈緒子』を観にシネマクレールへ出かけた私です!
やっぱり三浦春馬くんは最高ですね~☆ 無邪気な笑顔、シリアスな眼差し…そしてストイックな走り!! これからも応援するよ~!!

そしてそして土曜日は、楽しみにしていた『ミリキタニの猫』がやっと上映されるので、再びシネマクレールへ出かけました!
岡山での上映初日だったからか、開場間近にチケットを買った私の入場番号は22番!(これはかなりの入場者数かも! 通常、4、5人で観る事もよくあるので…)

ニューヨークの路上で、白い画用紙に向かって一心にペンを動かす老人…ジミー・ツトム・ミリキタニさん☆

カラフルなコートにベレー帽!路上生活をされているのに、おしゃれでかくしゃくとされていてたくましく、「おじいさん」なんて呼び方は全く似つかわしくないのです!

自分のことを「Grand Master」で「Pure Artist」だと自負しており、商業主義の芸術家じゃないぞ!といきまき、雪が舞う真冬もビニールで囲われただけのベンチで眠るミリキタニさん…そんな肉体的にも過酷な生活をしていながら、決してお金を恵んでもらったりせず(絵の代金として受け取るのみ)、崇高な生き方を貫いているのです…。

80歳を超えているのに、ペンを動かすその手つきは素早く、自信に満ちていて、休むことなく手を動かしては次々に色鮮やかで豊かなイメージの作品を生み出していきます…毎日毎日雨の日も風の日も、絵を描き続けてきたのでしょう…

自分は偉大な芸術家!と信じ、今日まで生き抜いてきたであろうその強靭な精神力はまた、若き日に4年間も、ツールレークの日系人強制収容所で過ごさねばならなかった理不尽さへの、やり場のない怒りにも裏打ちされているのです…

あの、世界が大きく変わった2001年9月11日…人が姿を消したニューヨークの路上で、砂埃に咳き込みながら絵を描き続けていたミリキタニさんを、監督のリンダさんが「うちへ来ない?」と誘うのです…

リンダさんのアパートに居座ったミリキタニさん
「うどんが冷たいからもっとあっためてくれ」とわがままを言ったり、
真夜中に帰宅したリンダさんに
「こんなに遅く帰ってくるなんて、心配でたまらないよ」
…とぶつぶつ文句を言い、本当に心配なのか自分がかまってほしいのか…??

でも、路上生活のときには首を縮め、背中を丸め、縮こまっていたミリキタニさんが、アパートで人間らしい生活を始めると、すっと背中が伸び、きりっとした表情になり、昔の写真もなかなかの男前でしたが、本当に芸術家らしい風貌になっていきます…
(きっと日本では、由緒ある家柄だったのでは???)

強制収容所の恨みから、生活保護を受けることも市民権を再度取得することも拒否していたミリキタニさんですが、リンダさんの尽力のおかげで、白い壁に囲まれた小奇麗なアパートに入居することが決まります…

真っ白な何も無い空間だったアパートが、壁中、ミリキタニさんの絵で埋め尽くされた素敵な部屋に変わっていきます…

80歳を過ぎてもバリバリの現役なんですよね~!!
絵もとってもポップで、若者にも充分魅力的な可愛らしさがあります!!
「死ぬまで絵を描いていく」と言うミリキタニさんの芸術家としてのエネルギーには、ただただ感服!!

そして、ツールレーク強制収容所あとへの慰霊のバス旅行…
同じ悲しみを抱えて生きてきた人々、またその関係者との旅は、ミリキタニさんの頑なだった心を溶かしていきます…

路上生活をしていたころの、怒り、恨みのこもった鋭い表情はもうすっかり消え去っています…

「皆がわかってくれたから、今はとてもいい気分だ」
「今はただ、思い出が通過するだけだ」…

そうなんですよね…「人が自分のことを分かってくれる」っていうのは、本当に心が癒されるんですよね…

今までのことがすべて水に流されるわけではないだろうけれど、不屈の精神力で生き抜いてきたミリキタニさんが、最後に幸せになれて本当によかった!!!

そして、ミリキタニさんの幸運が、単に「運がよかった」ということで終わるのではなく、その他大勢の路上で暮らす、それぞれに苦しみを抱えて生きている人々の上にも降り注ぎますように…と祈らずにはいられません。。。



『奈緒子』(監督:古厩 智之)

2008-03-04 23:52:34 | 映画・テレビ

日曜日の夜、シネマクレールのレイトショーで娘Sと一緒に『奈緒子』を観ました。

原作のコミックも読んだことはないし、内容も全く知らないまま出かけました。

最初の海でのシーン…海に落ちた奈緒子を助けた雄介の父親が亡くなってしまう冒頭から、目頭が熱くなって必死に涙をこらえる私…(子役の藤本七海ちゃんがうまいんですよ!)

それから話は高校3年生になった奈緒子と、高校1年生で天才ランナーとして活躍する雄介との再会へと移ります…

奈緒子を演じた上野樹里ちゃん…のだめの演技とは全く異なる、目に悲しみをたたえた全く笑わないヒロインを、静かに、ときには真摯な思いほとばしらせて見事に演じていました。

雄介の陸上部のメンバーも個性的でおもしろかった…
娘Sが、「『檸檬のころ』に出てた人(柄本明の息子・柄本佑)とおんなじ雰囲気の人がいる~」というので何のことかと思えば、柄本佑の弟・柄本時生が出演していたのでした!…(わたしゃちっとも気がつかなかった!)
  陸上部のマネージャーの元気な女の子は『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』で陰湿な妹役を熱演していた佐津川愛美ちゃんだったし…(雰囲気の違う役だったので、全然気付かなかった!)
 個人的には、しごきの合宿でみんながヘトヘトになっているときも、1人正座してお経をあげているお寺の息子、五十嵐山人くんがおもしろかった!!

ここぞという場面で、静かに情感あふれる音楽が流れてくるのも好感度大です!

陸上部の仲間たちとの人間関係に悩む雄介の横に座り、なぐさめや励ましの言葉をかけることもできず、ただただ静かに寄り添う奈緒子…そんな切ない場面をそっと包み込み、その気持ちを共有するかのような美しい音楽が印象的でした。。。

全編を通して、奈緒子と雄介の間に流れている、恋愛感情でもなく、罪悪感や嫌悪感でもなく、友情でも同情でもない、複雑で微妙な感情の描き方がとてもうまかったと思います。

しかし、なんといってもこの映画は、主人公の雄介を演じた「三浦春馬」くんが素晴らしいのよ~!!!!!!

春馬くんの純粋でちょっといたずらっぽい、斜め45度(??)から見た、あごの少ししゃくれた横顔がメッチャ素敵!!

嫌味の無いさわやかな笑顔、物腰は控え目なのにひときわ目立ってしまうスマートな容姿、素直なフォームでひたすら走り続ける姿はすがすがしく、いつまで見ていても飽きることがないのです!!
ほれぼれすると同時にこちらもわくわくしてきて、心が元気になってくるのがわかるのです!!

こんなに素敵な男の子に出会ったのは、昨年観た『バッテリー』の林 遣都くんと山田健太くん以来です

物語に多少??と思われる点もあったけれど、さわやかで純粋で後味が抜群に良く、あっという間に2時間が過ぎていました。

帰りの車中でも、「すごく良かったな~!!」「走る姿って素敵じゃな~!!」「雄介メッチャかわいい~!!」「『恋空』のときはそんなにいいと思わんかったのに、三浦春馬くん、ものすごくカッコイイ~!!」と大いに盛り上がる母娘なのでした!!!

【後日談】
春馬くんにほれてしまった母は、彼が火曜10時のテレビドラマ『貧乏男子(ボンビーメン)』に出演するという情報を密かに入手し、日頃はほとんどテレビを観ないにもかかわらず、火曜10時にいそいそとテレビの前に座り込んだのでした(笑)

しかし、待てども待てども春馬くんは現れず、おまけにドラマはうんざりするぐらいつまらない… 観るに耐えかねてあちこちチャンネルを変え、BSでやっていた『アラバマ物語』に見入ってみたり…それでもやっぱり春馬くんが気になって、ときどきチャンネルを戻してみたけれど、結局春馬くんには一目も会えなかった!!くっ、くやし~!!

こうなったら、もう一度『奈緒子』を観にシネマクレールへ行くしかない!! と決意を新たにする私なのでした



週末の映画

2008-02-18 00:32:08 | 映画・テレビ
週末シネマクレールで2本映画を観ました。

☆『たとえ世界が終わっても』(監督:野口照夫)

死んだ母親と同じ病気にかかっていることを知って生きる気力を失い、自殺サイトを通じて集団自殺に参加したはずのヒロイン真奈美(芦名星)が、サイトの管理人・妙田(大森南朋)に導かれるまま、肺がんで余命いくばくもない売れないカメラマン長田(安田顕)と偽装結婚し、彼の実家へ2人で赴くことになる。そこで長田とその両親との15年ぶりの再会に立ち会い、親子の深い愛情に心動かされ…。
 また長田との間に静かで温かい気持ちを通わせるようになり、生きていく希望を見出したかに見えた真奈美だったが…

出だしから映像の色や音声があまりに素人っぽくて、自主制作だったけ~と思ってしまいましたが、全体を通してみれば、温かい優しさに満ちた作品だったように思います☆

ヒロインの芦名星さん、透き通るような美しさで見とれてしまいました☆

長田役の安田顕さんは、演劇ユニットTEAM NACS の人気役者さんだそうですが、芦名さんとの組み合わせはちょっと微妙だったかな…。。。(あまりに地味すぎて存在感が…)

一番感動させられらのは、長田の両親役の平泉成さんと白川和子さんの演技です!! 特に白川和子さんの息子を思う切ないまでの愛情、真奈美をいとおしそうに見つめる優しい眼差しにほろりとしました。。。

音響とか、もう少しセンスのいい音楽を使えば、もっと印象的な作品になったのでは…??

☆『ペルセポリス』(監督:マルジャン・サトラビ)

イラン出身で現在パリ在住の女性監督が、自らの半生を描いたグラフィックノベルを映画化したアニメーション作品☆

今まで観た『運動靴と赤い金魚』や『友達のうちはどこ?』などのイラン映画では、貧しい生活の中でも健気に愛情豊かに暮らす子ども達の姿を通してイランという国を垣間見ていたけれど、この作品では1970~1990年代の混乱したイラン国内で、どんなに理不尽で過酷で、痛ましい出来事が起こっていたのか…主人公マルジの成長と共にその歴史を辿ることになる…

前述のイラン映画に出てくる貧しい子ども達とは異なり、この映画の主人公マルジは、イランの裕福な知識階級の両親とおしゃれで粋なおばあちゃんのもと、のびのび腕白に育っていた。。。

その幸せな生活がイラン革命と同時にどんどん不穏な空気に流されていく…

大好きな叔父さんが投獄され処刑されたり(処刑前、獄中の叔父さんにマルジが1人で会いに行くシーンはものすごく切ない…)、知り合いのおじさんが匿っていた共産主義者の女性がはずかしめられて処刑されたり、おじさんも国境を越えて逃亡しなければならなくなったり…

すぐ身近で死を感じるような圧迫された生活の中でも、マルジはロックやパンク、おしゃれに目覚め、その大胆な行動で両親をはらはらさせ…結局両親は14才のマルジを自由の地ウィーンへ留学させる…

ウィーンでは異邦人としての自分の居場所を求め続け、マリファナやヘロインにも手を出し…(映画ではこのあたりは省いてあったがコミックの中では詳しく書かれている。)
恋もしたがあっけなく裏切られ、その痛手で下宿を飛び出した挙句、誰一人頼れる人もないまま2ヶ月も野宿し、ついに道端で倒れて病院へ運ばれる…

そして傷心のまま「ウィーンでのことは何も聞かない」と約束してくれた両親のもとへ4年ぶりに戻ることになる…

テヘランへ戻ってからも、母国がイラン・イラク戦争で多数の犠牲者を出していたころ自分はウィーンで不届きな生活をしていたことに対する後ろめたさ、結局誰にも愛されなかったという苦しみから逃れられず、うつ状態に…

それでも常に愛情をもって見守ってくれる家族の支えで元気を取り戻し、自分の進むべき道を模索し、美大に入学し…新しい恋人にも出会い結婚する…

結局、結婚生活は破綻し(このときのおばあちゃんのマルジへの励ましの言葉「最初の結婚は2回目の予行演習」には笑った!)、「今のイランはあなたのいる場所じゃない」という両親の願いもあって、マルジはフランスへ旅立つことになる…

とにかく絵が個性的で素晴らしい!! 日本のアニメも世界的な人気を誇っているけれど、悪く言えば画風がどれも似通っているように思っていたので、このエキゾチックでモノクロの、太い線で描かれる簡潔な画はとても新鮮に感じられた。

この映画の中で2箇所「日本」が登場する☆…「ゴジラ」と「おしん」だ(笑)

マルジとおばあちゃんがテヘランで映画「ゴジラ」を観にいく場面がある。
そこでおばあちゃんは映画にケチをつけた後、「まったく日本人ときたら、切腹するか怪獣映画を作ってばかり!!」とつぶやくのだ(爆笑!)

もう1箇所は、うつ状態になったマルジが毎日見ていたテレビドラマが「おしん」だった!映画の中ではほんの数秒流れただけだったけれど、あの着物はどう見ても中国風だった(笑)

…イランの恵まれた階級に育ったちょっと鼻っぱしの強い女性の成長記…ととられるかもしれないが、革命と共に激変し時代を逆行してしまったイランという国を、また、苦悩し、道に迷い、過ちも犯した自分自身を客観的に、ときにはユーモラスに、これだけの表現力で描ききったマルジャン・サトラビという女性は只者ではない!!と思ったのだった。