Peace of Mind を求めて…

悲しいことがあっても、必ず新しい朝は来るのですよね

『おおかみこどもの雨と雪』(監督:細田 守)

2012-07-12 23:11:52 | 映画・テレビ
『時をかける少女』や『サマーウォーズ』を作った細田監督の最新作「おおかみこどもの雨と雪」を観てきました。

毎月購入している「タウン情報おかやま」に特別試写会の記事が載っていたので応募してみたら、なんと当選し、招待券が送られてきたのでした★


『時をかける少女』も『サマーウォーズ』も一緒に観に行った娘Tが、「私も行きたい~!」と騒いだのですが、定期試験真っ最中で無理 代わりに、たまには親孝行もせねば(?)…と実家の母(78歳)を誘い、映画館(岡山メルパ)で待ち合わせました☆

……大学で、寂しげで孤独なおおかみおとこと出会い、恋に落ちて結婚、出産する主人公・花……学生結婚して出産したとなれば、大学でも話題になりそうですが…花の、大学での友人はおろか、花の家族もおおかみおとこの家族も一切出てきません。。。

そのかわり、2人だけのつましい結婚生活が描かれます…
つわりに苦しむ花のために、おおかみおとこが(どこで仕留めたのか)キジを捕まえて帰ってきたのには笑いました!…キジと格闘したのか、おおかみおとこの服は汚れ、あちこちに傷が…でもちょっと誇らしげにキジをつかんで帰ってきたおおかみおとこの姿はとても愛おしかったのです☆
おおかみおとこ手作りのキジのスープは、花のつわりを和らげます…

…それから、あっという間に子どもも2人になり、これから家族4人で助け合って…というときに、おおかみおとこの突然の死!!!
…オオカミの姿で川から引き上げられ、ゴミ回収車に積まれていく場面はあまりに悲しくて切ない…

そして、ここからがこの作品の本当の始まりです☆

2人の幼子(それも「おおかみこども」!)を抱え、1人で家事、育児に奮闘する花の苦労は並大抵のものではありません!
子どもたちは人間になったり、おおかみに変身したり…大暴れで部屋中がぐちゃぐちゃになることも!。。。それでも母親・花の、なんと穏やかで優しさにあふれていることか。。。
雨が病気になったとき、小児科へ連れて行くべきか、動物病院へ連れて行くべきか花が悩む場面は(その設定がユニークで)ちょっと笑えたり…

子どもたちをのびのびと育てるために、人里離れた田舎のあばら家へ引っ越し、自給自足の生活を試みるも、初めての野菜つくりは失敗続き…。あばら家を修理し、掃除して磨き、畑を耕し、種をまく…生きていくために孤軍奮闘する花のたくましさ、芯の強さ…そして子どもたちへの慈しみ…
姉の雪に比べ、幼いころの弟・雨は繊細な子どもで、不安になると花に「だいじょうぶってして~」とすりより、花が「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と言いながら優しく背中をなでてやるのです☆(この場面がとても素敵でした☆)
雨が「おおかみってどうしていつも悪者なの…」とつぶやいたときも、花は凛として子どもたちの味方であることを告げます☆
3人で銀世界の中を駆け回るシーンの、なんと素晴らしいことか☆☆☆ 雨や雪になって自分自身が雪原を駆けているかのようなカメラワークもあり、ドキドキワクワクしました☆

村の人たちに助けられ、子どもたちも学校に通うようになるのですが、成長するにつれ、雪・雨、それぞれが、人間として生きていくのか、おおかみとして生きていくのか、悩みながら自分で選択していくことになります。
いろんな事件が起きる中、花はいつでも、精一杯の愛情で2人を見守り、助けようとします。

そして、雪と雨の成長、これから生きていく道が暗示され、すがすがしいエンディング。。。
アン・サリーさんの歌う主題歌がこれまたのびやかで、しっとりと美しく…この作品の最後にピッタリでした☆

実は「おおかみこども」という言葉がどうも私にはしっくりこず、おおかみと人間の間に子どもが生まれるなんて…ちょっと生々しすぎやしませんか~という気持ちもあり、少しばかりの違和感?を感じながら出かけたのでしたが。。。さすが細田監督の作品☆観終わった後に、すがすがしさと前向きさに心洗われ、温かいものが心に満ちてくるような…希望が見えてくるような…とても気持ちの良い作品でした

母も、行く前は「え~。。。アニメ~??」と気乗りしない様子でしたが……観終わったときには「よかったね~!画面がすごくきれいだったね~!」と気に入ってくれたようで。。。よかったよかった☆ 親孝行ができました




『裸の島』(監督:新藤 兼人)

2012-07-07 22:18:07 | 映画・テレビ
先週末に観た『第五福竜丸』が素晴らしかったので、今週も続けてシネマクレールへ、新藤監督の『裸の島』を観に行きました。


この作品もまた、『第五福竜丸』とは別の意味で刺激的な作品でした。

瀬戸内の、水も電気も通わない小さな島に暮らす一家(夫婦と幼い息子2人)の日常を描いているのですが、セリフは一切なし! 白黒の、ドキュメンタリータッチの映像で、淡々とした日々の暮らしが紡ぎだされます。

それは…観ているのがつらくなるくらい…本当に過酷な日常です。

夫婦は、日に何度も隣の島まで舟をこいで水汲みに行き、桶いっぱいの水を天秤棒でかついで帰ります。自分たちの生活に使う水も、山肌を開墾して植えているじゃがいもや麦の成長に必要な水も、すべて天秤棒でかついで運んでくるのです…

夫役の殿山泰司さんは、いかにも貧しい小作人…といった風情で違和感はなく、足取りもしっかりと天秤棒をかついでおられましたが、妻役の乙羽信子さん。。。一生懸命演じておられるのですが、どうしたって華奢で気品がある方ですから……並々と水が入った桶をかつぐ姿は悲壮で、今にも足がもつれて倒れてしまうのでは…と心配になったのでした。

この、水を汲んで天秤棒で運ぶ……というシーンが何度も何度も何度も何度も繰り返されるのです。
ゴツゴツした岩場を……すべりそうな山の斜面を……夫婦は、自家製のわら草履で、一歩一歩注意深く踏みしめながら、もくもくと水を運びます。。。

も~!!! こんな生活、絶対無理~!!!!!
だれも、私に水を汲んで運べと言っているわけではないのですが(笑)、もし自分だったら…と考えずにはいられません。。。
夫婦で体格も全然違うのに、同じ大きさの桶に同じ量の水を運ぶなんて。。。不公平じゃないか~!!! 乙羽さんの水桶は半分の大きさにするか、運ぶ水の量を半分にしてあげて~!…と要らぬ心配までしてしまう私なのでした(笑)。
(きっと乙羽さんは、首の後ろがみみずばれになって、赤くすりむけたんじゃないかしら… ← またまた要らぬ心配

休む暇もなく1日中働きどうしの夫婦ですが、幼い子どもたちも親を助けてよく働きます!
両親が水汲みに行っている間に、食事の用意をするのは子どもたちの役目だし、ときには貴重な現金収入となる鯛を釣りあげ、家族に束の間の楽しい休日(隣の島へ出かけてカレーライスを食べたり、シャツを買ったり…)をもたらしたり…。このときだけは母親にも笑顔がこぼれていて、美しかった☆

薪で煮炊きをし、屋外の吹きさらしの机で食事をする家族に団らんの会話はなく(「いただきます」も「ごちそうさま」も無し!)、食べ終わったら即、労働が始まるのですが、この家族の絆、愛情は、どんな家族にも負けないくらい強かったと思います。。。

……そんな、過酷だけれど、ささやかな幸せの中で暮らしていた家族を突然、大きな不幸が襲いかかるのです!!!

夫婦が水汲みに出かけている間に、急病で長男があっけなく死んでしまうのです。。。
父親が必死に船をこいで隣の島から医者をつれて帰りましたが…間に合いませんでした。。。

棺桶を夫婦自ら島の上まで運び、穴の中におろし、火をつけます……
参列者は、亡くなった長男の担任の女先生とクラスメイトたちだけです……(夫婦には、親兄弟も親戚もいなかったのでしょうか…)
仲良しの兄弟だったので、残された弟が不憫で不憫でたまりませんでした…

そして。。。こんなに酷くてつらいことがあっても…次の日からまた、水汲みの生活が始まるのです。。。

しかし……畑に水をまいていた母親は、突然水桶の水をぶちまけ、地面につっぷして大声で泣きじゃくるのです…
母親の全身から、抑え込んでいた大きな悲しみが一気に溢れだしていました…
これまでずっと無言で、セリフのない映像が続いていて、登場人物が声を発したのはこのときだけでした!(この演出はうまいですね!)

貴重な水を無駄にしたら、以前なら殴りつけていた夫ですが、このときばかりは妻の悲しみ(だれに対して向けてよいのかわからない怒り?)をただただ見守るしかありませんでした…

そして……泣きじゃくったあと、妻はまた、何事もなかったかのように起き上がり、水やりの仕事にもどるのです…

あ~、本当に厳しい、過酷な生活!!! それでも忍耐強くたくましく生き抜いていく夫婦の姿に感服した作品でした!!!

『第五福竜丸』(監督:新藤 兼人)

2012-07-01 23:15:42 | 映画・テレビ
今年5月に亡くなった新藤監督の代表作が、6月から7月にかけてシネマクレールで上映されており、今日は『第五福竜丸』を観てきました。


冒頭の出航式のシーンから、画面に引き付けられました!!!
夫や息子、恋人を見送る大勢の人たち、それに答える誇らしげな船員たち…みんなの笑顔が輝いています☆
音楽も溌剌としていて…この場面が輝かしければ輝かしいほど、この後に起きる悲劇に対する怒りや悔しさが湧いてくることを、新藤監督は意図したのでしょうか。。。とても素晴らしいカメラワークの滑り出しでした!!!

船上での生き生きとした仕事ぶり、日々の生活ぶりも観ていて楽しく…このシーンがいつまでも続いてくれたらいいのに……と心の中で願ったのですが…

1954年3月1日午前3時45分、第五福竜丸の乗組員23名は、ビキニ環礁でアメリカの水爆実験にまきこまれ、被曝してしまうのです…

広島・長崎の悲劇の9年後だというのに、原爆について一般の人々にあまり知らされていなかったため、23名は船に白い雪のような物体(放射能を含んだサンゴの破片)が降り注ぐ中、何時間も甲板でマグロを積み込む作業に追われていて…(この白い物体がどれほど恐ろしいものかを知っている現在、早く船の中に入って~!!!と心の中で叫ばずにはいられませんでした!)

アメリカの秘密を見てしまったので、無線で助けを呼んだら受信され撃沈されるかもしれない!…と恐れた乗組員たちは、連絡も一切せず、2週間かけて自力で戻ってくるのです…全員が火傷のため真っ黒にただれた顔で……水揚げされたマグロはそのまま次々と市場へ運ばれていき……(あ~!それを出荷しちゃダメです~!!!…心の中でまたまた叫んでしまいます!)

新聞社の知るところとなり、日本中に第五福竜丸の被曝が知れ渡ると、東京から調査団がやってきます。
ガイガーカウンターをあてるたびに、大きな音が鳴り響きます!…被曝した船員の身体から!、第五福竜丸の船体から!、そして新聞記者の靴からも!!!(福島でも同じような状況だっただろう…と想像しました)

東京の病院へ送られた船員たちは、治療に総力を挙げて取り組む医師や看護師たちの力で少しずつ回復に向かうのですが……仲間や医師、看護師の見守る中、無線長の久保山愛吉さんだけが、とうとう亡くなってしまいます…

久保山さんの妻と3人の幼い女の子たちが、酷い状況の中で、泣き叫ぶでもなく、怒るでもなく、淡々とその悲しみに耐えている様子が痛ましく…その後、お骨を抱えて汽車で焼津まで戻る車中での様子…(列車内の乗客が次々に家族の席まで訪れ、黙礼していきます)、焼津の駅で家族を出迎え、静かに見守る大勢の市民たち……まるでドキュメンタリーかニュース映像を観ているかのようで、自分もその場に加わっているような気持ちになり…強く心を打たれました。

当然、船員たちを悪意や偏見の目で見る人たちもいたと思うのですが、この作品に登場する関係者たちは、みんな人間味のある人物ばかりで、船員たちを心から心配し、船員の家族も含め、一生懸命全力で守ろうとします。

東大病院で久保山さんを含む船員たちの治療にあたった医師の姿に、特に心を惹かれました。誠意のある言葉かけ、親身になって治療を続ける様子が胸に響きました。この俳優さんのお名前がよくわからないのですが……時代劇ではいつも悪代官役でお見かけしたような…。こんな素敵な役で活躍されていたこともあったんですね~!

主役の宇野重吉さん、乙羽信子さんは言うに及ばず、俳優さんたちが本当に、みんな素晴らしかったです☆
『七人の侍』にも出演されていた稲葉義男さん、チョイ役で殿山泰司さん、田中邦衛さん、風車の弥七の中谷一郎さんの姿もありました。

謝罪の言葉ひとつなく、責任を逃れようと船員たちをスパイ呼ばわりし、実験対象として扱おうとするアメリカ側には強い憤りを感じた一方、被曝した船員やその家族のことを、自分の家族のように大切に思う人々の姿に心が慰められ、日本人としてのアイデンティティーを呼び覚まされるような気持ちになりました。