Peace of Mind を求めて…

悲しいことがあっても、必ず新しい朝は来るのですよね

岡山映画祭2009

2009-11-29 23:04:56 | 映画・テレビ
岡山映画祭2009」が11月14日~29日まで開催され、日頃なかなか観ることのできない貴重な作品16本(特別企画の岡山映像祭も加えると25本)が上映されました。

新藤兼人監督のお孫さんの新藤風さんをはじめとする上映作品の監督さんたちもトークゲストとして招かれ、とても充実したプログラムが組まれていました。

ほとんどが映画館で上映されることのない作品で(実行委員会の方々が一つひとつ丁寧に選考を重ねてくださった作品)…私も3日間で8本の作品を楽しませてもらいました☆

●『ジンジャーエール』(監督:田淵 史子)(47分)
監督の田淵さんは、岡山の高校演劇で活躍し、東京の大学に進んで演劇を専攻した後、仲間と結成した劇団で俳優や脚本家として活動されるのですが、23歳で血液のがんを発症…。体力的に演劇活動を続けられなくなった田淵さんは、「形になって残る作品を」と映画製作に取り組まれ、初めて監督した作品がこの「ジンジャーエール」です。(2001年ぴあフィルムフェスティバルで観客賞受賞)
 15歳の男子中学生3人が、10年後の自分にあてて手紙を書き、ジンジャーエールの空き瓶につめ、地中に埋める…。東京の大学に進学した主人公は都会の生活で自分を見失いかけ…そんなとき、地元で就職した仲間から「結婚するからみんなでまた会おう、空き瓶をみんなで掘り出そう」というメールが届く。主人公は溜まり場だった定食屋で仲間を待ち続けるが3人(仲間2人+婚約者)はついに現れない…。
 その理由があまりにも定石だったので、えっ?、と思ってしまったのですが、提灯を持った行列が山道を遠ざかっていくシーンがとても印象的で…監督はきっとこのシーンが撮りたかったのかも…と思いました。主人公がジンジャーエールの瓶を掘り当て、「あったー!!!」と叫び、中から取り出した紙切れを読むシーンは、役者さんの熱演もあり、もらい泣きしてしまいました!とてもいい演技をされていたんです☆短い作品の中に、田淵監督の想いがいっぱい込められていたように思います。
 会場は立見も出るほど大勢のお客さんであふれていました。32歳の若さで亡くなられた田淵さんの関係者の方々が集まってこられたのでしょう…才能豊かで、これから!という方だったのに…本当に無念だったことでしょう…。田淵さんの撮られた第二作「月に星」もいつか上映していただきたいです。

●『しゃけは涙』(監督:福田 良夫)(70分)
劇団「銀仮面団」や演劇工舎「ゆめ」の役者さんたちが出演されていて、うれしく拝見しました。赤ん坊のときの事故が原因で知的障害を負った主人公を、赤木英雄さんが自然に演じておられ、切なくなる作品でした。年の離れた兄役の藤澤さんが、どうしても主人公の父親に見えてしまいましたが…なかなかの力作だったと思います。

●『笑え』(監督:太田 真博)(43分)
やられました!!!終盤まで、真面目な青年たちの熱いぶつかり合いを描いた青春映画だと思ってたんですよ!ほんとに!!
「舞台・阪神淡路大震災」の千秋楽前夜…被災経験のある役者と被災経験のない役者たちが、お互いにわかり合おうとして熱い思いをぶつけ合う!…実際、私なんぞ感動して涙こぼしてたんですから~!なのに~、どうしてくれるんですか~!(笑)
 最後の最後で、ど~っと脱力してしまい、あまりの展開にバカバカしくなって笑うしかなかったのでした!あの~、これって、ひょっとしてギャグ映画だったの???それまでの真面目~な議論は、最後に観客をズッコケさせるための伏線だったのか~!まんまとやられました!!も~、最高におもしろかったです☆☆
 上映後、太田監督が挨拶をされたのですが、ユーモアたっぷりの方で、主役の滝藤賢一さんの宣伝(「クライマーズ・ハイ」で重要な役を演じているのでツタヤでDVDを借りて帰るように)をされていました。役者思いの監督さんです☆ 「笑え」の予告編が下記で観られます!
http://vision.ameba.jp/watch.do?movie=1837730

●『己が魂のために』(監督:中島 裕作)(50分)
俳優を目指しながらも、いつしか夢破れヤクザになってしまった主人公が、慕っていた兄貴分を無残に殺され、不本意ながらも仁義にはずれた道へと流されていく…しかし欲得にまみれ、薬や人身売買に手を染めていく仲間を「己が魂のために」裏切り、売られていく1人の女を逃がそうとしたことから、主人公は森へ迷い込み、そこで60年以上前に消息不明になったはずの祖父と出会い助けられる。
 「バイオレンス&シュール」な作風で映画を制作されているそうで、森の中での戦闘シーンは迫力があったし、ヤクザの悲哀も描かれていたし、SFっぽい部分もあり、ハラハラドキドキしながら楽しませてもらいました。役者さんがちょっと素人っぽいところもよかったです!?
 上映後挨拶をされた中島監督は、かなりのイケメンさんで、ちょうどすぐ前の席に座っておられたので、「おじいさんは最後、おばあさんのところへ帰れたんですか~?」と思わず尋ねたら、「そこは観る人のご想像にまかせているんです」とのこと。中島監督☆ありがとうございました!

●『想う力inひろしま』(監督:いくまさ鉄平)(34分)
「ワークショップ型プロジェクト」として制作されている作品。
広島の街中で、「あなたの生涯において核は無くなると想いますか?使われると想いますか?」と書かれた赤いボードを手に持った人たちが、1人1人カメラの前で自分の想いを答えていく。延々とその場面が繰り返されていくのですが、いろんな場所でいろんな方たちが、それぞれ異なった意見を述べられるので、観ていて飽きません。語られる言葉に耳を傾けながら、自分だったらどう答えるかな~とずっと考え続けていましたが…結局納得できる言葉が思い浮かばなかったな~。。。むずかしい問いかけですよね!

●『YOKOHAMA34~オールドボーイたちの歌声~』(監督:待場 勝利)(34分)
昭和34年に横浜国立大学を卒業した男声合唱団の方々が、定年を過ぎてから再結成したコーラス隊「YOKOHAMA34」☆…お揃いのブレザーをビシッと着込なされ、背筋もピンと伸びて若々しく、目を閉じて歌声だけ聴いていたら70歳を過ぎた方々だとは気づきません!「はるかな友に」の合唱の響きが本当に美しかったです!(昔から私も大好きな曲なんです☆)
 事故に遭われたり、愛妻を亡くされたり…団員の方たちもつらい思いをされながら…でも仲間と歌い続けることが支えになっていくんですね!奥様を亡くされた方が、「妻の死に顔がとても安らかだったから、自分も死ぬのが恐くなくなった」と話しておられたのが印象的でした。。。彼らと同じ年になったとき、自分は何を生き甲斐にしているのだろう…考えたとき、ちょっと心配になりました!

●『ふたりだけの同窓会』(監督:下倉 功)(29分)
泣かされました。下倉監督は「シルク」という作品もそうでしたが、ちょっと気恥ずかしいくらい純粋で、まっすぐ観る者の心に訴えてくる作品を作られるんですね!!あまりに人が良すぎるだろ~!と突っ込みたくなるような愛おしい男同士の友情に心があったかくなりました☆卵焼きのシーンがすごく切なかったです。3人の役者さんの意気もぴったり合っていてとてもいい雰囲気を出しておられました☆ウエディングドレス姿の娘と一緒に写った花嫁の父2人の笑顔☆…美しいモノクロ写真から控えめな喜びが溢れていました。。。でもお婿さんになる人はちょと大変かもね(笑)…音楽も静かで品があって美しかったです!
 育ての父親役の東康平さんが会場に来られていて最後に挨拶をされましたが、映画の中よりもず~っとカッコよくておしゃれな方でした東さんのブログで「ふたりだけの同窓会」の予告編が観られます~♪

●『勝子』(監督:竹内 洋介)(37分)
暗い色調の画面から、生まれつき心臓に重い病気を抱える勝子(宮あおい似の、美しさと痛々しさを併せ持つ原田樹理さん)のうめきともあえぎともつかない苦しげな声が聞こえてきます…美しくレトロな映像の反面、これってホラー映画じゃないよね…?と途中で思ってしまうような妖しさもあり、勝子役の原田樹理さんがとにかく魅力的でした!!! 真っ白なバレエ着で突然目の前に現れるという奇行に、同級生の男性は恐れをなして逃げ帰ってしまうけれど、私には瀕死の白鳥のようにも見え、痛々しくてたまりませんでした!
 竹内監督はフランスで絵画を学ばれたそうで、撮り方(構図?)や色調にもどことなく絵画的なセンスが感じられたような気がします。エンドロールの後にも続きがあって、希望の垣間見える終わり方にほっとしました。勝子が色鉛筆で描いていた鳥たちの絵もすごく素敵でした☆
 監督が目の前に座っておられたので「原田樹理さんってどういう女優さんなんですか?」「あの鳥の絵はだれが描かれたんですか?」…と質問して、少しお話させてもらいました。竹内監督☆ありがとうございました。

もっともっといっぱい観たかった!どれもユニークな作品ばかりでした!!!

それにしても…私が観た際は、(「ジンジャーエール」以外)いつも観客が10人前後しかおらず…せっかくはるばる来てくださっている監督さんたちに申し訳ない気持ちでいっぱいでしたよ~。。。
次回2年後にも、また岡山映画祭は開催されるのでしょうか…???心配です。

次は絶対、夫も娘も友人も大勢誘って観にいきたいです!
実行委員会の皆様、お疲れ様でした!素敵な作品を上映してくださって本当にありがとうございました☆次回もどうぞよろしくお願いしま~す!!!!!

蜷川実花 展

2009-11-22 23:35:09 | アート
西宮市大谷記念美術館へ「蜷川実花展」を観に行きました。

岡山から山陽本線、赤穂線、東海道本線…と3回乗り換え、さくら夙川まで片道3時間近い電車の旅☆…家族を残して1人で出かけるのは少し後ろめたかったけれど、自分だけの1人の時間がほしくて…家族のお昼ごはんを用意してから意を決して出かけました。

電車の中ではゆっくり読書ができ(向田邦子さんの『男どき女どき』を読み終えました)、お昼過ぎには無事さくら夙川駅に到着☆
さくら夙川駅からは夙川オアシスロードという素敵な散歩道を通り、閑静な住宅街を15分ばかり歩くと美術館へ到着です。
 

この美術館へ来たのは初めてなのですが、広々としたモダンで明るい建物で、とてもいい雰囲気です。階段部分の大きな窓ガラスにも蜷川さんの明るい色彩の作品がはめ込んであり、外の光を通して花々が輝きを放っています。

8つの部屋にそれぞれ「花」「初期1995~2002」「金魚」「造花」「旅」「新作2007~2008」「人」「ポートレイト」とタイトルがつけられていて、鮮やかで(着色してあるのかな?と思うくらい)強烈な色の花や金魚たちが生き生きと写し出され、キッチュな魅力に溢れた作品の数々が目を楽しませてくれます。

子どものころお祭りの夜店で、「アメリカのヒヨコ(笑)」と称して赤や緑に着色されたヒヨコを買って帰り、よく育てたものですが(もちろん大きくなるにつれて色は抜け落ち、真っ白で凶暴な白色レグホンに育っていきました…笑)、蜷川さんの作品を観ていて、そんなことも思い出しました。

色鮮やかな作品が並ぶ中で、モノトーンのポートレート(1995)はひときわ異彩を放っていました。自分をさらけ出した凄みのある作品だけどすごく美しかった!!!(あまりにもお父さんの蜷川幸雄さんに似ておられるのでビックリ!)

数え切れないぐらい大勢の芸能人(栗山千明、土屋アンナ、後藤久美子、中川翔子、佐藤江梨子、深田恭子、夏帆、麻生久美子…)や宝塚のスターたちのポートレートも作品としてとても素敵でした☆
おとなしい、地味なイメージの木村佳乃さん、中越典子さんや乙葉さんも、明るく派手な衣装に身を包み、濃い目のお化粧で変身していて、別人のようでした!

1階の休憩室の前面はガラス張りになっていて、水の流れる日本庭園をゆったりと眺めることができます。

日本庭園もゆっくり散策したかったのですが、あいにく雨が降ってきたため残念でしたが諦めました。

アートショップでは蜷川さんの写真集、メモ帳、ポスター、絵葉書、クリアファイル、キーホルダーなどが売られていて、若い女の子たちが群がっていました。
私も何か買いたいと思って絵葉書を手にとってみたのですが、実物の色合いと全く違っていて、紙質が悪いのか、あの輝く色彩感とつやが損なわれていて…ちょっと違うな~と思いながらも記念に1枚だけ買いました。

それにしても、周りを見渡すと、来場者は今時の若くておしゃれな女の子2人組か、これまた粋な感じのカップルばかり!!
私のような中年女子は、ほとんど姿なし!
なんでやねん!!!


強力助っ人登場!

2009-11-20 22:48:59 | 友人・知人

我が家に強力な助っ人が現れました!!!

我が家の斜め前に住むA子さんです☆
A子さんの息子さんと娘Tは同級生なので、道で会うと挨拶したり立ち話をしたりする間柄ではありましたが、それほど深い付き合いをしていたわけではありません。

いつも笑顔で溌剌とされているA子さん☆…そんなA子さんが先月、何を思ったか、突然私に「エステさせてくれない?」と声をかけてきてくださったのです。
息子さんの喘息を治すために通った整体&マッサージの先生に5年前から弟子入りしていて、コツコツと勉強を続けてこられたとのこと…

自分の力を試してみたいと思われたらしく、まず最初の実験台として私が選ばれたようなのですが(笑)、私のエステよりも何よりも、長年に渡る闘病と薬漬けの生活で身体が弱りきっている夫の整体&マッサージをやってほしい!!!

「天の助け!」「渡りに舟!」とばかり、このお誘いにこちらもすぐにしがみつきました

夫が病気になってから、人を家に招くこともほとんどなくなり、人目を避けるようにして暮らしていましたが、A子さんには以前、夫の病気のことも話していたので、我が家の窮状もよくわかってくれていて、最初は週1回だったのが、今では週3回来ていただき、すっかり我が家になじんでくださっています。毎回一生懸命丁寧に夫の整体&マッサージをしながら話し相手になってくれています。
「奥さんも大変だから」…と、私のことも心配してくださり、時間があるときには私の肩や首もマッサージしてくださったり…

情が深く、明るく前向きなA子さんですが、実は妹さんが精神病を患い、今も施設で暮らしておられるとのこと……そんなこともあってか、夫の病気に対して偏見もなく、「大丈夫!絶対よくなるから!!!」 …といつも力強く、親身になって励ましてくださるのです

しばしば胃痙攣に苦しめられていた夫…胃痙攣が起きた日は(土曜日が多かった)本人もつらいけれど家族も悲しく、私まで気力が失せてしまい、どうしたらいいのかわからず、家に閉じこもってウツウツとしたこともよくありました…

そんな悩みの種だった胃痙攣が、A子さんに来てもらうようになってからいつしか消え去りました!!!

目に見えて体調がよくなっているわけではなく、相変わらず表情は暗いまま…家では布団をかぶって寝ているばかりの夫ですが…胃痙攣が無くなっただけでも我が家にとっては大きな救いです!

最近、夫は不機嫌で怒りっぽくなってきていて…そんな夫の言動が悲しくて、どうして…と胸が張り裂けそうになることもあります…でも、そんなときも、明日になればA子さんが来てくれる☆…と思うと心が落ち着き、乗り切ることができるのです。

まだ見習い中だからとわずかな報酬しか受け取ってくださらず、そのご好意に甘えていて申し訳ないのですが、もうしばらくA子さんに助けていただき、夫が少しずつでも心身ともに良い方向に向かっていってくれることを願っています。


『わたしを離さないで』(カズオ・イシグロ著、土屋政雄訳・早川書房)

2009-11-15 23:02:23 | 

カズオ・イシグロ著『わたしを離さないで』を読んだ。

明るく楽しい話ではない。読み終えて、主人公の少年少女たちの置かれた境遇を思うとき、現実の世界ではないと自分に言い聞かせてみても、なんともいいようのない無力感に囚われ、物悲しくてたまらなくなった…。

ヘールシャムという施設で保護官に見守られながら、「人道的で文化的」な生活を送る少年少女たち…。揺れ動く友情、ちょっとしたいじめ、先生たちとの些細なやりとり…萩尾望都の作品を彷彿とさせる彼らの日常生活は、どこにでもあるようでいて、そのときどきに顔をのぞかせる小さな謎が、読む者の内奥を終始不安定な息苦しさでよどませていく…。

彼らが何のために生まれてきたのか…彼らはどういう運命をたどっていくのか…

「介護人」「提供者」という言葉の意味が徐々に明らかになっていくとき、彼らを生んだあまりに無情で身勝手な背景に心が凍り付いていく…

ヘールシャムでの「人道的で文化的」な教育環境での生活は、彼らにとって幸せだったとしても、それは本当に必要なことだったのだろうか…
感受性豊かに「人間的」」に成長した彼らが、自分に定められた、決して逃れることのできない運命を迷うことなく受け入れるためには、こんな教育を施したことは、かえって彼らを苦しめることにしかならなかったのではないか…

ただ単に偽善者たちの自己満足に過ぎなかったのではないか…

ヘールシャム出身の愛し合う2人…キャシーとトミーは、2人での生活を望むようになり、「提供」を猶予してもらおうと、ヘールシャムの責任者を捜し歩くが、そこで聞かされたのは、すべての望みを打ち砕く、無慈悲で残酷な事実だった…

それでも彼らは最後まで、ヘールシャムでの豊かな思い出を大切に胸に残し、静かに、抗うことなく…自分の使命を全うしていく…

理不尽で、奇異な世界を淡々と描いているのに、土屋政雄さんの翻訳が美しく(翻訳と感じさせない)、読み終わった後もずっとヘールシャムとそれを取り巻く森の風景が浮かんできて、切ない気持ちに囚われている…

この作品、マーク・ロマネク監督によって映画化されるらしい…
原作のイメージを損なわない作品になるよう切望している。。。


『ココニイルコト』と『のんちゃんのり弁』

2009-11-08 23:26:42 | 映画・テレビ
週末に2本映画を観ることができました。

1本は『ココニイルコト』(DVD)、もう1本は『のんちゃんのり弁』(シネマクレールにて)です。

『ココニイルコト』は、随分前にツタヤで借りて観て、とても気に入っていたのをもう一度観たくなり、Y先生宅(本とDVDの宝庫☆)からお借りしました。

東京の広告代理店でコピーライターとして働いていた相葉志乃(真中瞳)は上司との不倫がばれ、大阪支社へとばされてしまいます。子どものころのつらい記憶(父親の死?)から、何かを願ってもどうせ無駄だ…と生きることにどこか冷めたところのある志乃が、大阪支社で「まっ、ええんとちゃいまっか」が口癖の、飄々とした青年・前野(堺雅人)と出会います。

東京から来た志乃にとって大阪は勝手の違うことも多く、失敗もするけれど、前野に案内されて、古道具屋、プラネタリウムや居酒屋へと出かけていくうち……「人生は小さな幸せの積み重ねで豊かになる」(願って叶わないとしても)「願えること自体が幸せ」…と前向きな言葉を投げかけてくれる前野にしだいに心を開いていきます…。

志乃の気持ちを察し、闇に向かって
「ハシヅメ(志乃の不倫相手)のアホー!!」
「ハシヅメの女房のアホンダラー!!!」
「女房の買うたパンツはいてくんなー!!!」
「何万回留守電チェックしたと思うてんねん!!!」etc

って大声で叫んでくれる前野の優しさ☆…グッときます…。
誕生日というのに「初めてハシヅメから何の連絡もなかった…」と寂しくつぶやく志乃に
「お誕生日おめでとうさん」と声をかけ…「こんなんで生きていていいのかな…」と自信を失くしている志乃に「好きなように生きとったらええんちゃいますか…」と答える前野…。心がほっこり温かくなる素敵なシーンです☆

大好きだった劇団「カクスコ」の中村育二さんが気のいい上司役で出ておられて、さりげなく笑わせてくれるのもうれしい☆
カメのぬいぐるみが「カメヘン カメヘン」と右手を上げ下げする大阪ギャグにも笑いました☆
 それに、スガシカオの主題歌「ココニイルコト」♪♪なんて素敵な曲なんでしょう♪♪思わず口ずさんでしまう、心地よいメロディーが、この作品にピッタリでした☆ 

『のんちゃんのり弁』は、チラシを見たときは軽いコメディーなのかな?、観るのどうしようかな…とも思ったのですが、監督はあの「独立少年合唱団」や「いつか読書する日」を撮った緒方明監督です!
どちらもとても好きな作品だったので、今回もきっと何かある!…と期待して出かけました。

思ったとおり後味がよく、元気の出てくる気持ちのいい作品でした☆

…とにかく主人公・永井小巻(小西真奈美)の境遇は身につまされることばかり!!!
私も32歳のとき幼い娘Sをつれて実家に出戻ったのですが、同じような経験をしましたから…。

妊娠・出産で仕事を辞め主婦になり、経済的に依存していた30歳すぎの女子が、再び自活していこうとするとき、目の前に立ちふさがる壁を乗り越えるのは容易なことではありません!
年齢の壁もあるし、子どもにもまだ手がかかるし…これといった特技もなく、経験もなければ、正社員の職なんてなかなか見つかるもんじゃありません…。このときほど自分のふがいなさを実感したことはありませんでした…。

…毎日毎日、新聞広告をながめ、職業安定所に通い、紺色スーツに身を包み、面接にも出かけました…
それまで、自分には絶対無理!っと敬遠していた運転免許も、「岡山で就職するなら絶対必要!!!」と友人に強く言われ、泣き泣き教習所へ通いました…

仮免に1度落ちながらも(笑)なんとか無事に運転免許を手に入れ、幸いなことに、新聞広告で見つけた現在の職場に就職でき(食事ものどを通らないくらい過酷な選抜試験を受けました!)、今の生活があるのですが、これまで続けてこられたのは、ひとえに実家の両親の助けがあったからだと思います。
30代のころは深夜近くまで働くのが普通の部署にいたので、保育園へ6時までにお迎えに行くなんてできるはずもなく、両親に迎えを頼み、娘に夕食を食べさせてもらうことでなんとか切り抜けてきました。女性が働く際、親の手助けがあるのとないのとでは大きな違いがあると思います…。

だから小巻が親に頼ることもせず、自分の見つけた「行き場所」に向かって懸命に進もうとする姿に強いな~本当にすごいな~と心を打たれました。早朝、大きなお釜に炊き上がったご飯をしゃもじで切るようにまぜている小巻の真剣な眼差しに胸が熱くなり、うるうるしてしまいました!

この作品を観た人の100人中93人が「サバの味噌煮」を食べたくなり、お弁当作りをしている人の100人中98人が「のんちゃんのり弁」を真似して作ろうとするに違いありません!!!

『ココニイルコト』も『のんちゃんのり弁』も、悪い人が出てきません。みんなあったかい人ばかりなんですね☆
どちらの主人公にも、さりげなく支えてくれる優しい男性が現れ、恋愛関係になるのかな~と思ったら結局結ばれることもなく、主人公たちは元気に自立していくのです☆

真中瞳さん(あんなに素敵な女優さんだったのに、今は引退されているらしい…)、小西真奈美さんの、さわやかですがすがしい演技・笑顔で私の心もしばしの間、幸福感に満たされたのでした☆