新藤兼人監督のお孫さんの新藤風さんをはじめとする上映作品の監督さんたちもトークゲストとして招かれ、とても充実したプログラムが組まれていました。
ほとんどが映画館で上映されることのない作品で(実行委員会の方々が一つひとつ丁寧に選考を重ねてくださった作品)…私も3日間で8本の作品を楽しませてもらいました☆
●『ジンジャーエール』(監督:田淵 史子)(47分)
監督の田淵さんは、岡山の高校演劇で活躍し、東京の大学に進んで演劇を専攻した後、仲間と結成した劇団で俳優や脚本家として活動されるのですが、23歳で血液のがんを発症…。体力的に演劇活動を続けられなくなった田淵さんは、「形になって残る作品を」と映画製作に取り組まれ、初めて監督した作品がこの「ジンジャーエール」です。(2001年ぴあフィルムフェスティバルで観客賞受賞)
15歳の男子中学生3人が、10年後の自分にあてて手紙を書き、ジンジャーエールの空き瓶につめ、地中に埋める…。東京の大学に進学した主人公は都会の生活で自分を見失いかけ…そんなとき、地元で就職した仲間から「結婚するからみんなでまた会おう、空き瓶をみんなで掘り出そう」というメールが届く。主人公は溜まり場だった定食屋で仲間を待ち続けるが3人(仲間2人+婚約者)はついに現れない…。
その理由があまりにも定石だったので、えっ?、と思ってしまったのですが、提灯を持った行列が山道を遠ざかっていくシーンがとても印象的で…監督はきっとこのシーンが撮りたかったのかも…と思いました。主人公がジンジャーエールの瓶を掘り当て、「あったー!!!」と叫び、中から取り出した紙切れを読むシーンは、役者さんの熱演もあり、もらい泣きしてしまいました!とてもいい演技をされていたんです☆短い作品の中に、田淵監督の想いがいっぱい込められていたように思います。
会場は立見も出るほど大勢のお客さんであふれていました。32歳の若さで亡くなられた田淵さんの関係者の方々が集まってこられたのでしょう…才能豊かで、これから!という方だったのに…本当に無念だったことでしょう…。田淵さんの撮られた第二作「月に星」もいつか上映していただきたいです。
●『しゃけは涙』(監督:福田 良夫)(70分)
劇団「銀仮面団」や演劇工舎「ゆめ」の役者さんたちが出演されていて、うれしく拝見しました。赤ん坊のときの事故が原因で知的障害を負った主人公を、赤木英雄さんが自然に演じておられ、切なくなる作品でした。年の離れた兄役の藤澤さんが、どうしても主人公の父親に見えてしまいましたが…なかなかの力作だったと思います。
●『笑え』(監督:太田 真博)(43分)
やられました!!!終盤まで、真面目な青年たちの熱いぶつかり合いを描いた青春映画だと思ってたんですよ!ほんとに!!
「舞台・阪神淡路大震災」の千秋楽前夜…被災経験のある役者と被災経験のない役者たちが、お互いにわかり合おうとして熱い思いをぶつけ合う!…実際、私なんぞ感動して涙こぼしてたんですから~!なのに~、どうしてくれるんですか~!(笑)
最後の最後で、ど~っと脱力してしまい、あまりの展開にバカバカしくなって笑うしかなかったのでした!あの~、これって、ひょっとしてギャグ映画だったの???それまでの真面目~な議論は、最後に観客をズッコケさせるための伏線だったのか~!まんまとやられました!!も~、最高におもしろかったです☆☆
上映後、太田監督が挨拶をされたのですが、ユーモアたっぷりの方で、主役の滝藤賢一さんの宣伝(「クライマーズ・ハイ」で重要な役を演じているのでツタヤでDVDを借りて帰るように)をされていました。役者思いの監督さんです☆ 「笑え」の予告編が下記で観られます!
http://vision.ameba.jp/watch.do?movie=1837730
●『己が魂のために』(監督:中島 裕作)(50分)
俳優を目指しながらも、いつしか夢破れヤクザになってしまった主人公が、慕っていた兄貴分を無残に殺され、不本意ながらも仁義にはずれた道へと流されていく…しかし欲得にまみれ、薬や人身売買に手を染めていく仲間を「己が魂のために」裏切り、売られていく1人の女を逃がそうとしたことから、主人公は森へ迷い込み、そこで60年以上前に消息不明になったはずの祖父と出会い助けられる。
「バイオレンス&シュール」な作風で映画を制作されているそうで、森の中での戦闘シーンは迫力があったし、ヤクザの悲哀も描かれていたし、SFっぽい部分もあり、ハラハラドキドキしながら楽しませてもらいました。役者さんがちょっと素人っぽいところもよかったです!?
上映後挨拶をされた中島監督は、かなりのイケメンさんで、ちょうどすぐ前の席に座っておられたので、「おじいさんは最後、おばあさんのところへ帰れたんですか~?」と思わず尋ねたら、「そこは観る人のご想像にまかせているんです」とのこと。中島監督☆ありがとうございました!
●『想う力inひろしま』(監督:いくまさ鉄平)(34分)
「ワークショップ型プロジェクト」として制作されている作品。
広島の街中で、「あなたの生涯において核は無くなると想いますか?使われると想いますか?」と書かれた赤いボードを手に持った人たちが、1人1人カメラの前で自分の想いを答えていく。延々とその場面が繰り返されていくのですが、いろんな場所でいろんな方たちが、それぞれ異なった意見を述べられるので、観ていて飽きません。語られる言葉に耳を傾けながら、自分だったらどう答えるかな~とずっと考え続けていましたが…結局納得できる言葉が思い浮かばなかったな~。。。むずかしい問いかけですよね!
●『YOKOHAMA34~オールドボーイたちの歌声~』(監督:待場 勝利)(34分)
昭和34年に横浜国立大学を卒業した男声合唱団の方々が、定年を過ぎてから再結成したコーラス隊「YOKOHAMA34」☆…お揃いのブレザーをビシッと着込なされ、背筋もピンと伸びて若々しく、目を閉じて歌声だけ聴いていたら70歳を過ぎた方々だとは気づきません!「はるかな友に」の合唱の響きが本当に美しかったです!(昔から私も大好きな曲なんです☆)
事故に遭われたり、愛妻を亡くされたり…団員の方たちもつらい思いをされながら…でも仲間と歌い続けることが支えになっていくんですね!奥様を亡くされた方が、「妻の死に顔がとても安らかだったから、自分も死ぬのが恐くなくなった」と話しておられたのが印象的でした。。。彼らと同じ年になったとき、自分は何を生き甲斐にしているのだろう…考えたとき、ちょっと心配になりました!
●『ふたりだけの同窓会』(監督:下倉 功)(29分)
泣かされました。下倉監督は「シルク」という作品もそうでしたが、ちょっと気恥ずかしいくらい純粋で、まっすぐ観る者の心に訴えてくる作品を作られるんですね!!あまりに人が良すぎるだろ~!と突っ込みたくなるような愛おしい男同士の友情に心があったかくなりました☆卵焼きのシーンがすごく切なかったです。3人の役者さんの意気もぴったり合っていてとてもいい雰囲気を出しておられました☆ウエディングドレス姿の娘と一緒に写った花嫁の父2人の笑顔☆…美しいモノクロ写真から控えめな喜びが溢れていました。。。でもお婿さんになる人はちょと大変かもね(笑)…音楽も静かで品があって美しかったです!
育ての父親役の東康平さんが会場に来られていて最後に挨拶をされましたが、映画の中よりもず~っとカッコよくておしゃれな方でした東さんのブログで「ふたりだけの同窓会」の予告編が観られます~♪
●『勝子』(監督:竹内 洋介)(37分)
暗い色調の画面から、生まれつき心臓に重い病気を抱える勝子(宮あおい似の、美しさと痛々しさを併せ持つ原田樹理さん)のうめきともあえぎともつかない苦しげな声が聞こえてきます…美しくレトロな映像の反面、これってホラー映画じゃないよね…?と途中で思ってしまうような妖しさもあり、勝子役の原田樹理さんがとにかく魅力的でした!!! 真っ白なバレエ着で突然目の前に現れるという奇行に、同級生の男性は恐れをなして逃げ帰ってしまうけれど、私には瀕死の白鳥のようにも見え、痛々しくてたまりませんでした!
竹内監督はフランスで絵画を学ばれたそうで、撮り方(構図?)や色調にもどことなく絵画的なセンスが感じられたような気がします。エンドロールの後にも続きがあって、希望の垣間見える終わり方にほっとしました。勝子が色鉛筆で描いていた鳥たちの絵もすごく素敵でした☆
監督が目の前に座っておられたので「原田樹理さんってどういう女優さんなんですか?」「あの鳥の絵はだれが描かれたんですか?」…と質問して、少しお話させてもらいました。竹内監督☆ありがとうございました。
もっともっといっぱい観たかった!どれもユニークな作品ばかりでした!!!
それにしても…私が観た際は、(「ジンジャーエール」以外)いつも観客が10人前後しかおらず…せっかくはるばる来てくださっている監督さんたちに申し訳ない気持ちでいっぱいでしたよ~。。。
次回2年後にも、また岡山映画祭は開催されるのでしょうか…???心配です。
次は絶対、夫も娘も友人も大勢誘って観にいきたいです!
実行委員会の皆様、お疲れ様でした!素敵な作品を上映してくださって本当にありがとうございました☆次回もどうぞよろしくお願いしま~す!!!!!