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Peace of Mind を求めて…

悲しいことがあっても、必ず新しい朝は来るのですよね

「カタロゥガン!ロラたちに正義を!」上映&講演会

2013-10-27 23:19:41 | 映画・テレビ
岡山シティミュージアムで開催された、フィリピン人元「慰安婦」の方たちの闘いを追ったドキュメンタリー映画「カタロゥガン!ロラたちに正義を!」の上映と竹見智恵子監督講演会に参加してきました。

 
太平洋戦争時、フィリピンを占領した日本軍は「アメリカの支配から解放し、フィリピン人のための国家を建設する」と言いながら、フィリピンの人たちに対し過酷な統制を行い、略奪、暴力、強姦を繰り返しました。

映画の中には、道を歩いていて…洗濯をしていて…そんな日常の生活の場から突然連れ去られ、「慰安婦」にされた被害女性たちが次々と登場し、つらい過去を語り始めます。まだ十代の幼い少女だった彼女たちの体験は、あまりにむごく衝撃的で…人間はそこまで残虐になれるものなのかと震撼しました……

ゲリラをかくまっているという容疑をかけられた父親は日本兵に銃剣で皮膚をはがされ、その父親を助けようとした弟と妹は目の前で銃剣で突き刺されて殺され…その後自分も連行され、強姦された女性もおられました……

こんな酷い目にあって……その後の人生をどれだけ苦しんでこられたのか…心にどれだけ大きな傷を負って生きてこられたのか…

もしも自分だったら…もしも自分の娘だったら……と考えるとあまりに恐ろしく…胸が張り裂けるような思いでした。

某大学で学生さんを対象に「慰安婦」の勉強会?をした際の様子も紹介されていましたが、その大学の中国人女子留学生は「慰安婦」について教科書で習ってよく知っていたのに対し、日本人学生はみんな全く知らなかったのにはショックを受けました。…おまけに「自分も同じことをしたかもしれない。」「家族には言えないから、なかったことにする」と平然と話す男子学生に、かなりガックリきました。

実際の残虐行為を実行した元日本兵(BC級戦犯として服役後釈放)の老人も登場し、ゲリラとみなした民間人を家族もろとも容赦なく殺害した様子、若い日本兵に「人間らしい生き方」(!!!???)をさせてやるため「慰安婦」をあてがったことなどを話されるのですが、ただ上官からの命令に従っただけで、従わなければ自分がひどい目にあわされたと主張されるだけで、今でも反省しているような様子は見受けられませんでした。

その当時は、明日は死ぬかもしれないという極限状態にあり、暴力の渦の中に巻き込まれ、その波に逆らうことはむずかしかったのかもしれないけれど、時がたち、冷静に客観的に考える余裕ができたとき、自分の犯したとてつもない大罪と、どのように向き合われたのでしょうか…
被害者の方たちに謝罪し、何らかの形で償いたいという気持ちは湧き起ってこなかったのでしょうか……

勇気をふりしぼり名乗り出てくださった被害者の方たちに対し、「お金がほしいから」「でっち上げだ」などと心無い言葉を浴びせる人たちがいます。せめてそのような無知な人たちに対し、真実を…人間としての尊厳を奪われた多くの女性たちがいたことを語り続けていくことは、せめてもの贖罪なのではないでしょうか。

「女性への暴力がなくなるように」「次の世代のために何かを残したい」…年老いた元「慰安婦」の方たちは強い思いを抱き、最後の力をふりしぼって闘っておられます!!!お金のためなんかじゃないんです!!!!!

上映後のトークで竹見智恵子監督は、元「慰安婦」の女性たちが年老いて次々亡くなっていく中、今しかインタビューできない!と強い危機感を持ち、撮影を開始されたことを語ってくださいました。
最初は弱々しかった彼女たちが、Victim(被害者)→ Survivor(生き残った人)→Activist(活動家)として仲間と共に成長し、元気を取り戻し、活動を続けておられる…その勇気に胸が熱くなりました。

被害者のお一人であるレメディアス・フェリアスさんが描かれた絵日記『もうひとつのレイテ戦-日本軍に捕らえられた少女の絵日記』を購入して帰りました。

本当につらい、記憶から消し去りたい出来事だったと思いますが…悲しみのいっぱいつまった、とても美しい絵本です。 

久しぶりの映画

2013-08-12 23:30:03 | 映画・テレビ
久しぶりにTSUTAYAへ行き、DVDを借りてきました。

映画を観ることが一番の楽しみなのに、精神的に余裕がなくて、ず~っと観ていなかったんです。
たくさんの作品の中から今回選んできたのは「孤独な惑星」と「鍵泥棒のメソッド」です。

★「孤独な惑星」(監督:筒井 武文)

DVDの写真から私の好きな自主制作映画風の雰囲気が感じられたので、監督にも役者さんにもなじみがなかったのですが、イチかバチか(笑)借りてみました。

これが大正解!!!
主役の2人(竹厚綾さんと綾野剛さん)が不思議な透明感ある演技で…とても素敵でした☆

ストーリーは、事務員として都会で単調な日々を送る真里(竹厚綾)のアパートのベランダへ、隣の部屋で気性の激しい彼女と同棲している哲男(綾野剛)がころがりこみ、数日間を過ごして帰っていく…という、なんじゃそりゃ?(笑)という内容なのですが…

きりっとしているのにどこか寂しそうな竹厚さんと、中性的で母性本能をくすぐる綾野さんの嫌味のない演技が、静かにすっと心に入り込んできて…最後はすごく切ない気持ちになりました…

2人を隔てるガラス窓越しの、味噌汁や携帯電話の受け渡し、物干しざおを使って、ソファーで眠ってしまった真里に哲男が毛布をかけるシーンなど、ユーモアのセンスもよくて…

ちょっとだけ寂しくて…
ちょっとだけだれかに甘えたくて…
ちょっとだけ今より幸せになりたくて…

自分の心の奥底に普段は封じ込めている、静かな願いが揺れ動いてしまう…そんな作品でした。

綾野剛さんは、8月の「キネマ旬報」の表紙を飾っています☆(髪型が変わられましたね!)

今が旬の役者さんなんですね♪

★「鍵泥棒のメソッド」(監督:内田 けんじ)

内田けんじ監督の作品は、いつも途中でだまされていたことに気づき、あっ、そうだったんだ~!!!と驚かされ、うれしくなってしまうのですが、この作品にも、その手腕が120パーセント発揮されていて、すっかりだまされてしまいましたよ~(笑)

最初のシーンはちょっと衝撃的で……
だからその後、香川照之の生真面目で几帳面な行動や、広末涼子に対する微笑ましい言動に、ちょっとあったかい気持ちが湧いてきても、「でも、この人は…」と否定的な感情がそれを打ち消してしまっていたのです。

しか~し、香川照之扮する殺し屋の謎が解き明かされていくうちに、心の中でわだかまっていたこのマイナス感情がさらっとプラスに転換され、とても気持ちよく、安堵と共に納得させられました。

堺雅人も広末涼子もよかったけれど、香川照之さんの、記憶をなくす前と後の演技の違いに笑わされました。
家族みんなで楽しめる作品ですね☆


こらーる岡山・設立15周年記念 映画上映会

2012-10-14 22:03:18 | 映画・テレビ
夫が4年前からお世話になっている精神科診療所「こらーる岡山」が開設15周年を記念して、岡山県立美術館の大ホールで映画上映会を開催されました。

「こらーる岡山」は、1997年に県精神保健福祉センター所長を退職された山本昌知先生が開設された、患者主体の診療をしてくださる、本当に貴重な診療所です。

それまでの5年間、長時間待ってほんの10分ほどの診療、大量の抗うつ剤を処方するクリニックに通っていた夫は、心身ともにボロボロになり……それが病気のせいなのか、大量の薬のせいなのか、わからない状態に陥っていて……

幸運にも山本先生に巡り合えたことで、一から薬の見直しをしていただき…
5年かかって、徐々に薬を減らしていき……
ようやくこの春、抗うつ剤と縁を切ることができました!!!(睡眠薬はまだ手放せませんが。。。)

長く苦しい年月を、こらーるへ通うことを心の支えにして、夫も私も生きてきました。。。
山本先生の適切なお言葉に、何度夫ともども救われたか知れません。。。

………最初の挨拶で山本先生が、(20周年ではなく)15周年というはんぱな年に記念の会を開催するのは、自分が高齢になり、いつまで続けられるかわからないから、今のうちに皆さんに感謝の気持ちを表したかった…と話され、いつかそんな日が来るのか…いや、そんな日は永遠に来てほしくない!……でも、山本先生の姿がいつか見られなくなる日が来るのか…そんなことを考えると、ちょっと悲しくなってしまいました。

今日上映された映画はこれ↓ 『ショージとタカオ』(監督:井手洋子)です。

昨年、シネマクレールで上映されていたのは知っていたけれど、見逃していた作品だったので、今回観ることができ、とてもラッキーでした☆

20歳のショージと21歳のタカオが、布川事件と呼ばれる強盗殺人事件の犯人にされ、29年もの間、獄中生活を強いられた後、仮釈放されたその日から14年間、井手監督は、2人の姿を撮り続けていきます。
冤罪で29年間…青春時代をすべて獄中で過ごしてしまったなんて…なんて酷いことでしょう!
最近では、東電OL殺人事件や村木厚子さんの事件や…日本のエリートと言われる人たちが次々に冤罪をでっち上げている事実に驚愕します。
人間の良心というものが欠けているとしか思えません!!! 無実の人間を自分の作り上げたシナリオ通りになるよう自白を強要し、犯人に仕立て上げていく、こんな理不尽なことが公然とまかりとおっているなんて…

無実を訴えて再審請求しても、その結果が出るまで10年近く待ち続け、再審請求が棄却されれば、また10年近くかけて再審請求…気の遠くなるような年月が空しく過ぎ去っていったのです。

仮釈放されて刑務所から出てきた2人は、49歳と50歳のおじさんになっていました。

でもね、この2人、とっても魅力的でおもしろいオジサンなんです☆
ショージさんはよくしゃべるし、よく動く!タカオさんは口ベタだけど、粋でオシャレ♪
2人とも、なんとか仕事を見つけて自活していこうと、めげずに一生懸命頑張るんです☆

くじけないこの2人も本当にりっぱだけれど、私はこの2人を長年に渡り支え続けてきた、大勢の支援者の方たちの姿に感動しました!!!
2人が獄中から、毎日毎日たくさんの手紙を書き、いろんな方たちに無実を訴えてきた、その懸命な姿が人々の心を動かしたのか…
2人の周りには常に支援者の方たち、強力な弁護団がついていて、仮釈放後の2人の住む場所を用意したり、仕事を紹介したり…
再審請求のために、事件が起きた家を再現し、実際にショージさんが事件の供述調書どおりに行動してみて指紋がどんなふうに残るかを実験したり…
「冤罪に遭遇した以上、弁護士として見て見ぬふりはできない!」と、常時20名をこえる弁護士さんが、手弁当で頑張ってきたそうです!
(カッコイイぞ~!!!)
70年代から2人のために闘い続けてきた、柴田五郎弁護団長の仏様のような柔和な笑顔には心が癒されました~

そしてうれしいことに、明るく前向きな2人は、仮釈放後数年のうちに素敵な伴侶を見つけて結婚されるのですよ~
タカオさんなんて、50歳を過ぎて、パパさんになっちゃうんですよ~

ショージさんの奥さんは知的で優しそうな方☆映画にも登場されるのですが、タカオさんの奥さんは撮影を断られたようで…一体どんな方なのかな~と想像を膨らませていたら。。。最後の最後に一瞬だけタカオさん一家3人が、そろって姿を見せてくださいました!……明るく美人で、しっかり者の奥さん(私の想像☆)と、素直で真面目そうな男の子☆
ショージさんもタカオさんも幸せになって本当によかった~

この映画の完成後の2011年5月24日、ついに2人に無罪判決が言い渡されます。\(^o^)/\(^o^)/

158分の作品でしたが、ちっとも長いと感じませんでした。
信念を貫く2人、それを支える弁護団・支援者の方たちの姿にずっと魅了され、心の中で応援し続けていました


上映後は、井手監督、主人公の杉山卓男(タカオ)さん、山本先生の対談もありました。

さっきまで大きな画面で、生き生きと動き回っていたタカオさんが目の前の舞台に登場すると、大きな拍手が起こりました。(帽子といい、シャツといい、ブーツといい、オシャレ~!)

タカオさんは、「獄中で自分は一度もあきらめなかったし、必ず無実が証明されると信じていた。支援者の方たちにも助けられた」と話し、「現在心の病に苦しんでおられる方も、絶対にあきらめないでください」と、エールを送ってくださいました。これからも冤罪で苦しんでいる方たちのために闘っていくと言われていました。

井手監督は、大勢の支援者が2人のために働いたのは、2人が獄中から毎日書き続けた手紙が人々の心に訴えかけたのだと話され、2人のあきらめない姿勢に敬意を表しておられました。でも、これだけの年月、膨大な量の映像を撮り続け、構成、編集し、主人公2人や周りの人々が年を重ねていく様子を記録されたことは、ものすごく偉大な仕事だったと思います。穏やかに語られる監督の姿を拝見しながら、きっとここへ辿り着くまでには、幾多の苦悩があったに違いないと思いました。

山本先生は、「岡山なら、病気になっても大丈夫なんだ、と思ってもらえるようになることを妄想している(笑)」と言われていました。
病気になっても、治せばいいんだよ、安心していいんだよ。。。と言われているのだと思います。

山本先生☆ いつも本当にお世話になり、ありがとうございます!!!
これからもずっとず~っとお元気で、妄想を持ち続けていってください。
先生のご健康を心からお祈りしています☆

『おおかみこどもの雨と雪』(監督:細田 守)

2012-07-12 23:11:52 | 映画・テレビ
『時をかける少女』や『サマーウォーズ』を作った細田監督の最新作「おおかみこどもの雨と雪」を観てきました。

毎月購入している「タウン情報おかやま」に特別試写会の記事が載っていたので応募してみたら、なんと当選し、招待券が送られてきたのでした★


『時をかける少女』も『サマーウォーズ』も一緒に観に行った娘Tが、「私も行きたい~!」と騒いだのですが、定期試験真っ最中で無理 代わりに、たまには親孝行もせねば(?)…と実家の母(78歳)を誘い、映画館(岡山メルパ)で待ち合わせました☆

……大学で、寂しげで孤独なおおかみおとこと出会い、恋に落ちて結婚、出産する主人公・花……学生結婚して出産したとなれば、大学でも話題になりそうですが…花の、大学での友人はおろか、花の家族もおおかみおとこの家族も一切出てきません。。。

そのかわり、2人だけのつましい結婚生活が描かれます…
つわりに苦しむ花のために、おおかみおとこが(どこで仕留めたのか)キジを捕まえて帰ってきたのには笑いました!…キジと格闘したのか、おおかみおとこの服は汚れ、あちこちに傷が…でもちょっと誇らしげにキジをつかんで帰ってきたおおかみおとこの姿はとても愛おしかったのです☆
おおかみおとこ手作りのキジのスープは、花のつわりを和らげます…

…それから、あっという間に子どもも2人になり、これから家族4人で助け合って…というときに、おおかみおとこの突然の死!!!
…オオカミの姿で川から引き上げられ、ゴミ回収車に積まれていく場面はあまりに悲しくて切ない…

そして、ここからがこの作品の本当の始まりです☆

2人の幼子(それも「おおかみこども」!)を抱え、1人で家事、育児に奮闘する花の苦労は並大抵のものではありません!
子どもたちは人間になったり、おおかみに変身したり…大暴れで部屋中がぐちゃぐちゃになることも!。。。それでも母親・花の、なんと穏やかで優しさにあふれていることか。。。
雨が病気になったとき、小児科へ連れて行くべきか、動物病院へ連れて行くべきか花が悩む場面は(その設定がユニークで)ちょっと笑えたり…

子どもたちをのびのびと育てるために、人里離れた田舎のあばら家へ引っ越し、自給自足の生活を試みるも、初めての野菜つくりは失敗続き…。あばら家を修理し、掃除して磨き、畑を耕し、種をまく…生きていくために孤軍奮闘する花のたくましさ、芯の強さ…そして子どもたちへの慈しみ…
姉の雪に比べ、幼いころの弟・雨は繊細な子どもで、不安になると花に「だいじょうぶってして~」とすりより、花が「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と言いながら優しく背中をなでてやるのです☆(この場面がとても素敵でした☆)
雨が「おおかみってどうしていつも悪者なの…」とつぶやいたときも、花は凛として子どもたちの味方であることを告げます☆
3人で銀世界の中を駆け回るシーンの、なんと素晴らしいことか☆☆☆ 雨や雪になって自分自身が雪原を駆けているかのようなカメラワークもあり、ドキドキワクワクしました☆

村の人たちに助けられ、子どもたちも学校に通うようになるのですが、成長するにつれ、雪・雨、それぞれが、人間として生きていくのか、おおかみとして生きていくのか、悩みながら自分で選択していくことになります。
いろんな事件が起きる中、花はいつでも、精一杯の愛情で2人を見守り、助けようとします。

そして、雪と雨の成長、これから生きていく道が暗示され、すがすがしいエンディング。。。
アン・サリーさんの歌う主題歌がこれまたのびやかで、しっとりと美しく…この作品の最後にピッタリでした☆

実は「おおかみこども」という言葉がどうも私にはしっくりこず、おおかみと人間の間に子どもが生まれるなんて…ちょっと生々しすぎやしませんか~という気持ちもあり、少しばかりの違和感?を感じながら出かけたのでしたが。。。さすが細田監督の作品☆観終わった後に、すがすがしさと前向きさに心洗われ、温かいものが心に満ちてくるような…希望が見えてくるような…とても気持ちの良い作品でした

母も、行く前は「え~。。。アニメ~??」と気乗りしない様子でしたが……観終わったときには「よかったね~!画面がすごくきれいだったね~!」と気に入ってくれたようで。。。よかったよかった☆ 親孝行ができました




『裸の島』(監督:新藤 兼人)

2012-07-07 22:18:07 | 映画・テレビ
先週末に観た『第五福竜丸』が素晴らしかったので、今週も続けてシネマクレールへ、新藤監督の『裸の島』を観に行きました。


この作品もまた、『第五福竜丸』とは別の意味で刺激的な作品でした。

瀬戸内の、水も電気も通わない小さな島に暮らす一家(夫婦と幼い息子2人)の日常を描いているのですが、セリフは一切なし! 白黒の、ドキュメンタリータッチの映像で、淡々とした日々の暮らしが紡ぎだされます。

それは…観ているのがつらくなるくらい…本当に過酷な日常です。

夫婦は、日に何度も隣の島まで舟をこいで水汲みに行き、桶いっぱいの水を天秤棒でかついで帰ります。自分たちの生活に使う水も、山肌を開墾して植えているじゃがいもや麦の成長に必要な水も、すべて天秤棒でかついで運んでくるのです…

夫役の殿山泰司さんは、いかにも貧しい小作人…といった風情で違和感はなく、足取りもしっかりと天秤棒をかついでおられましたが、妻役の乙羽信子さん。。。一生懸命演じておられるのですが、どうしたって華奢で気品がある方ですから……並々と水が入った桶をかつぐ姿は悲壮で、今にも足がもつれて倒れてしまうのでは…と心配になったのでした。

この、水を汲んで天秤棒で運ぶ……というシーンが何度も何度も何度も何度も繰り返されるのです。
ゴツゴツした岩場を……すべりそうな山の斜面を……夫婦は、自家製のわら草履で、一歩一歩注意深く踏みしめながら、もくもくと水を運びます。。。

も~!!! こんな生活、絶対無理~!!!!!
だれも、私に水を汲んで運べと言っているわけではないのですが(笑)、もし自分だったら…と考えずにはいられません。。。
夫婦で体格も全然違うのに、同じ大きさの桶に同じ量の水を運ぶなんて。。。不公平じゃないか~!!! 乙羽さんの水桶は半分の大きさにするか、運ぶ水の量を半分にしてあげて~!…と要らぬ心配までしてしまう私なのでした(笑)。
(きっと乙羽さんは、首の後ろがみみずばれになって、赤くすりむけたんじゃないかしら… ← またまた要らぬ心配

休む暇もなく1日中働きどうしの夫婦ですが、幼い子どもたちも親を助けてよく働きます!
両親が水汲みに行っている間に、食事の用意をするのは子どもたちの役目だし、ときには貴重な現金収入となる鯛を釣りあげ、家族に束の間の楽しい休日(隣の島へ出かけてカレーライスを食べたり、シャツを買ったり…)をもたらしたり…。このときだけは母親にも笑顔がこぼれていて、美しかった☆

薪で煮炊きをし、屋外の吹きさらしの机で食事をする家族に団らんの会話はなく(「いただきます」も「ごちそうさま」も無し!)、食べ終わったら即、労働が始まるのですが、この家族の絆、愛情は、どんな家族にも負けないくらい強かったと思います。。。

……そんな、過酷だけれど、ささやかな幸せの中で暮らしていた家族を突然、大きな不幸が襲いかかるのです!!!

夫婦が水汲みに出かけている間に、急病で長男があっけなく死んでしまうのです。。。
父親が必死に船をこいで隣の島から医者をつれて帰りましたが…間に合いませんでした。。。

棺桶を夫婦自ら島の上まで運び、穴の中におろし、火をつけます……
参列者は、亡くなった長男の担任の女先生とクラスメイトたちだけです……(夫婦には、親兄弟も親戚もいなかったのでしょうか…)
仲良しの兄弟だったので、残された弟が不憫で不憫でたまりませんでした…

そして。。。こんなに酷くてつらいことがあっても…次の日からまた、水汲みの生活が始まるのです。。。

しかし……畑に水をまいていた母親は、突然水桶の水をぶちまけ、地面につっぷして大声で泣きじゃくるのです…
母親の全身から、抑え込んでいた大きな悲しみが一気に溢れだしていました…
これまでずっと無言で、セリフのない映像が続いていて、登場人物が声を発したのはこのときだけでした!(この演出はうまいですね!)

貴重な水を無駄にしたら、以前なら殴りつけていた夫ですが、このときばかりは妻の悲しみ(だれに対して向けてよいのかわからない怒り?)をただただ見守るしかありませんでした…

そして……泣きじゃくったあと、妻はまた、何事もなかったかのように起き上がり、水やりの仕事にもどるのです…

あ~、本当に厳しい、過酷な生活!!! それでも忍耐強くたくましく生き抜いていく夫婦の姿に感服した作品でした!!!

『第五福竜丸』(監督:新藤 兼人)

2012-07-01 23:15:42 | 映画・テレビ
今年5月に亡くなった新藤監督の代表作が、6月から7月にかけてシネマクレールで上映されており、今日は『第五福竜丸』を観てきました。


冒頭の出航式のシーンから、画面に引き付けられました!!!
夫や息子、恋人を見送る大勢の人たち、それに答える誇らしげな船員たち…みんなの笑顔が輝いています☆
音楽も溌剌としていて…この場面が輝かしければ輝かしいほど、この後に起きる悲劇に対する怒りや悔しさが湧いてくることを、新藤監督は意図したのでしょうか。。。とても素晴らしいカメラワークの滑り出しでした!!!

船上での生き生きとした仕事ぶり、日々の生活ぶりも観ていて楽しく…このシーンがいつまでも続いてくれたらいいのに……と心の中で願ったのですが…

1954年3月1日午前3時45分、第五福竜丸の乗組員23名は、ビキニ環礁でアメリカの水爆実験にまきこまれ、被曝してしまうのです…

広島・長崎の悲劇の9年後だというのに、原爆について一般の人々にあまり知らされていなかったため、23名は船に白い雪のような物体(放射能を含んだサンゴの破片)が降り注ぐ中、何時間も甲板でマグロを積み込む作業に追われていて…(この白い物体がどれほど恐ろしいものかを知っている現在、早く船の中に入って~!!!と心の中で叫ばずにはいられませんでした!)

アメリカの秘密を見てしまったので、無線で助けを呼んだら受信され撃沈されるかもしれない!…と恐れた乗組員たちは、連絡も一切せず、2週間かけて自力で戻ってくるのです…全員が火傷のため真っ黒にただれた顔で……水揚げされたマグロはそのまま次々と市場へ運ばれていき……(あ~!それを出荷しちゃダメです~!!!…心の中でまたまた叫んでしまいます!)

新聞社の知るところとなり、日本中に第五福竜丸の被曝が知れ渡ると、東京から調査団がやってきます。
ガイガーカウンターをあてるたびに、大きな音が鳴り響きます!…被曝した船員の身体から!、第五福竜丸の船体から!、そして新聞記者の靴からも!!!(福島でも同じような状況だっただろう…と想像しました)

東京の病院へ送られた船員たちは、治療に総力を挙げて取り組む医師や看護師たちの力で少しずつ回復に向かうのですが……仲間や医師、看護師の見守る中、無線長の久保山愛吉さんだけが、とうとう亡くなってしまいます…

久保山さんの妻と3人の幼い女の子たちが、酷い状況の中で、泣き叫ぶでもなく、怒るでもなく、淡々とその悲しみに耐えている様子が痛ましく…その後、お骨を抱えて汽車で焼津まで戻る車中での様子…(列車内の乗客が次々に家族の席まで訪れ、黙礼していきます)、焼津の駅で家族を出迎え、静かに見守る大勢の市民たち……まるでドキュメンタリーかニュース映像を観ているかのようで、自分もその場に加わっているような気持ちになり…強く心を打たれました。

当然、船員たちを悪意や偏見の目で見る人たちもいたと思うのですが、この作品に登場する関係者たちは、みんな人間味のある人物ばかりで、船員たちを心から心配し、船員の家族も含め、一生懸命全力で守ろうとします。

東大病院で久保山さんを含む船員たちの治療にあたった医師の姿に、特に心を惹かれました。誠意のある言葉かけ、親身になって治療を続ける様子が胸に響きました。この俳優さんのお名前がよくわからないのですが……時代劇ではいつも悪代官役でお見かけしたような…。こんな素敵な役で活躍されていたこともあったんですね~!

主役の宇野重吉さん、乙羽信子さんは言うに及ばず、俳優さんたちが本当に、みんな素晴らしかったです☆
『七人の侍』にも出演されていた稲葉義男さん、チョイ役で殿山泰司さん、田中邦衛さん、風車の弥七の中谷一郎さんの姿もありました。

謝罪の言葉ひとつなく、責任を逃れようと船員たちをスパイ呼ばわりし、実験対象として扱おうとするアメリカ側には強い憤りを感じた一方、被曝した船員やその家族のことを、自分の家族のように大切に思う人々の姿に心が慰められ、日本人としてのアイデンティティーを呼び覚まされるような気持ちになりました。



電信柱エレミの恋(監督・脚本・撮影:中田秀人)

2012-05-04 22:33:11 | 映画・テレビ
今日は娘Tと2人で「電信柱エレミの恋」というストップモーションアニメーション作品を観てきました。

会場は石関町にあるギャラリーシファ
 
(階段も可愛らしくて素敵です☆)


「電信柱エレミの恋」は、中田秀人さんを中心とした「ソバットシアター」(男性4人の制作チーム)が8年の歳月をかけ、人形、街並み等すべてを手作業で作り上げ、細部にまで神経を行きわたらせて撮影された大変な力作です。緻密な人形、動物、街並みそして電信柱たちの細やかな動き、感情表現…

「撮影前の表情の調整だけで数時間、撮影作業も1日かけて数秒撮るのがやっと」…という気の遠くなるような作業を根気強く淡々とこなし完成されたこの作品は、あまりにも素晴らしく…あまりに切なく…最初から涙がこぼれてとまらず……最後は号泣しそうになりました…

すべてにおいて、気品に満ち溢れている作品なのです☆

携帯電話のない一昔前の時代…
レトロな赤い郵便ポストに公衆電話、黒電話、ラジカセ、手動の鉛筆削り…なつかしい昭和の香りが見事に再現されています…
道端の雑草、電信柱に貼られたポスターが剥がれた後の糊の跡まで、手を抜いていません…

ランドセルをしょった小学生の女の子と黒猫の悲しいエピソードには胸がつまりました。
…幼い女の子が、どうしようもない状況の中でとった精一杯の行動…理屈ではなくわかるんですよね………こういう繊細な状況設定を思いついた監督のセンスもすごいと思いました!

…電信柱と人間の恋???…あまりにシュールで、そんなの絶対ありえない!…と普通は思いますよね!?
でもね…ありえないのに本当に切なくて…全然違和感を感じないんですよ。。。エレミを心から応援したくなるんですよ!!!

今日は上映会の後、中田監督と、主催者である県立大学の齋藤先生とのトークイベントもありました。

中田監督は、見た目が強面なのですが(笑)、優しさと情熱を兼ね備えた素敵な方でした☆

声の収録は作品が完成する前に行わなければならず、結局8年もかかってしまったため、完成したときには声優さんの行方がわからなくなってしまっていた話。。。

原作「電信柱電子の恋」の作者に映画化の許可をもらうまでのエピソード。。。

それぞれのキャラクターには、映画の中では描かれていないバックグラウンドがあり、それを基に動きを考えていった話。。。(長老の木兵衛さんは、停電の翌日撤去される設定になっているらしい…

ある日偶然、駅で流れてきた音楽に魅せられ、tico moonさんに作品の音楽を依頼することになったいきさつ。。。

「優しくて、少し温かい。でも、何もかもすべてが幸せってわけじゃない。」

中田監督がこの作品で目指したこだわりも感じられ、興味深いお話ばかりでした。

トーク後に、監督と少しお話することができ、とても感動したことをお伝えしました。
監督は次の作品にとりかかっておられることを話してくださいました。
何年でも待ってますよ~!!!!!
パンフレットにサインをいただきました。


ギャラリーシファでは5月27日(日)まで「電信柱エレミの恋の世界展」と題し、作品に登場するキャラクターたちや造形物が展示されています。
いろんな表情をした(気高さを感じる)エレミにも出会えます!

tico moonさんの演奏会やエレミの顔をつくるワークショップも…

上映会は後3回【5/12(土)・5/18(金)・5/26(土)】開催されるので、また観に行こうと思っています。


美しい中国映画☆

2011-11-22 20:39:33 | 映画・テレビ
11月に入って、心洗われるような美しい中国映画を2本観ました。

海洋天堂」(監督:シュエ・シャオルー)と「サンザシの樹の下で」(監督:チャン・イーモウ)という作品です。

「海洋天堂」は、余命わずかと宣告された父親が、男手ひとつで育ててきた自閉症の1人息子を、残された時間の中でなんとか独り立ちさせようと懸命に奮闘する姿がときには深刻に、ときにはユーモラスに描かれていて…涙ぼろぼろになりながら、心に深く刻み込まれる作品でした。

水族館に勤める父親シンチョンは、毎日息子のターフーを連れて出勤します。息子は泳ぐのが大好きで、巨大な水槽の中でいつも魚たちと一緒に泳いでいるのです。この、ターフーと魚たちとの競泳シーンがため息がでるくらい素敵です☆

残された時間で、息子に教えなければならないことはたくさんあります。。。服の脱ぎ方、卵の割り方、買い物の仕方、水族館の床のモップのかけ方、バスの乗り降り、…特にバスを降りる時の声の出し方を自宅で練習する場面はユーモラスで、とても微笑ましかった!

ターフーに淡い恋もめばえます。お相手は大道芸人の女ピエロさん☆
「藍色夏恋」や「言えない秘密」で魅力をふりまいていたグイ・ルンメイが演じていて、またまたそのキュートさに魅了されました☆本当に可憐な方ですね☆

実際、息子のターフーは21歳にもなれば、性的な問題も出てくるだろうし、こんなきれいごとばかりじゃなすまないだろう、もっとドロドロした事件も起きるだろう!と斜に構えた見方もできると思うのです…。
悪い人が一人も出てこない、周りのみんながこの親子を温かく見守り、助けようとする……美しい場面の連続に感動の涙をこぼしながらも、どこか心の片隅で、そういうマイナス面への思いが頭をもたげそうになったのも事実です…。

だけどね、な~んかね、あえてね、そ~んな見方をする自分がちょっと嫌になる…っていうか……主役の2人の熱演を観ていると、親子の強い愛情に胸がいっぱいになって、もうわざわざそんな偏屈な見方をすることはやめて、素直にこの作品の美しさに浸りたい!!!…と思ってしまった私なのでした。

ターフー役のウェン・ジャンは自閉症の青年役を見事に演じきっていたし、父親役のジェット・リーは抑えた演技で、愛情豊かに息子を慈しむ父親を淡々と演じていて、本当に心打たれました。

帰宅してからも、いろんな場面が次々に思い出されて…心に深い余韻を残してくれる作品でした。

「サンザシの樹の下で」は、文化革命下の中国で、農村に送られた女子高校生ジンチュウと、地質調査隊で働く青年スンとの出会いと別れを描いた悲恋物語。


この作品は、主役2人の組み合わせが最高ですね☆
こんなに清楚で無邪気な女の子をよくぞ探し出したな~と感心したし、相手役の青年もさわやかで明るく、嫌味が無い笑顔で、この純愛物語にはぴったりでした☆

チャン・イーモウ監督といえば「初恋のきた道」も素敵な純愛映画だったけれど、主役のチャン・ツィイーの一途な可憐さに対し、相手役の男性があまりにも不細工で(すみません!)その点だけが残念だったので(笑)、今回は安心して作品に浸ることができました☆

この映画の予告編は何度か観ていたため、最後に青年スンは死んでしまうんだな~ということはわかっていたのですが、文化革命下だし、きっと反革命分子として迫害を受けて亡くなるのだとばかり思っていました。(勝手に想像してました!)

ところが、なんと、スンは白血病を発症し、観るも無残な姿になって亡くなるのです!!!

それまでの清らかな2人の交際、胸がきゅーんとなるような切ない思いがいっぱい詰まった名場面(セメントで焼け爛れたジンチュウの足にスンが包帯を巻くシーン、自転車に2人乗りするシーン、2人で写真を撮るシーン、川の両岸でお互いに相手をジェスチャーで抱擁するシーン、サンザシの絵のついたたらいを手品だといって見せるシーン…)…そんな美しい場面が続いた後、突然ジンチュウに届いたのは、スンが危篤だという知らせでした…

そこで見たのは、どす黒い顔に半開きの目、手も足も黒い斑点で覆われた、酷い姿のスンでした…

それまでの若くて健康的でさわやかな青年が、一転してこんな姿になって現れたので、観客も思わず固唾を呑んで見守ることになりました…

映画の中で、声高に説明されていたわけではありません。
病気になったんだ…かわいそうに…とだけ思われる方もおられるでしょう…

でも、でも…地質調査隊という名目で党から命ぜられ、高給を与えられながら、きっとその危険性についておそらく何も知らされないままスンは働かされていたのではないのか…
何も説明がなかったけれど、ウラン等の鉱物を採掘していたのではないのか…

私には、今のこの時期だから…最後のスンの死が、ものすごく気になってしまいました…

白血病って、あんなに酷い死に方をするのか…
劣化ウラン弾のせいで小児白血病になったイラクの子どもたちも、あんな悲惨な姿になるのだろうか…と考えたら胸が一杯になってしまいました…

映画の本筋からはずれたところで、衝撃を受けた作品でもありました。。。

原発関連の映画

2011-10-15 23:46:27 | 映画・テレビ
10月に入って、原発に関わる映画を3本観ました。

「チェルノブイリ・ハート」「あしたが消える-どうして原発?-」はシネマクレールで、「ヒバクシャ 世界の終わりに」
は10月8日(土)に3丁目劇場で上映され、藤田祐幸氏の講演「チェルノブイリ、イラク、そしてフクシマのこれから」も聴くことができました。

「チェルノブイリ・ハート」(監督・プロデューサー:マリアン・デレオ)
チェルノブイリで起こったことが、今現在福島でも起きています。
大量の放射能がばらまかれ、目に見えない放射能の恐怖と人々は闘っています。故郷を捨てざるを得なかった方たち…反対に故郷を離れる事ができない方たち……。

「直ちに人体に影響はない」という政府の見解は、長期にわたる内部被曝により、最大の被害を受けるに違いない子どもたちの命に対して、あまりに無責任で…怒りを禁じえません。

1986年4月26日に起きたチェルノブイリ原発事故の16年後に撮影されたのが、この「チェルノブイリ・ハート」です。16年経っても、事故現場に近づいたとき、探知機は恐ろしい数値を指し示し、長時間の滞在は危険と警告します。
 
事故当時幼児だったと思われる若者たちが、何人も甲状腺がんを患っています。チェルノブイリハートとよばれる心臓に穴があく病気に苦しむ若者たちも映し出されます。
 
子どもたちが危険に晒されているとわかっていても、「故郷を離れ、仕事を見つけるのは簡単ではない、生まれ育った地を離れて生きてはいけない」…と答える親たちの苦悩…。

強制避難地区には今も避難せず、生活を続けるお年寄りが何人もいます…(「アレクセイと泉」にもそんな老人たちが登場しました)…そんな村を取材中に、監督は偶然、幼い子どもの姿を発見するのです!!! 「映すな!」と叫ぶ親の脅しにもひるまず、カメラはしっかりと、あどけない瞳の可愛らしい子どもの姿を捉えます! アル中の両親には、子どもを安全な場所で育てる能力がないのか…? あの子どもはその後どうなったのか…心配です。

事故後、地区で生まれる赤ちゃんの85パーセント(!!!)がなんらかの障害を持って生まれ、健康な赤ちゃんはたったの15パーセントで(逆じゃないんですよ!)、無事に生まれても免疫力が弱く、病気に罹りやすい…。酷い障害のため親に見捨てられ、遺棄された赤ちゃんが育てられている施設で、監督は重度の障害のある赤ちゃんを愛おしそうに抱き…抱かれているぬくもり、大切に思ってくれる人がいるということを伝えてあげたいと話されます…監督の思いがとても切ないです…。


「ヒバクシャ 世界の終わりに」(監督:鎌仲ひとみ)
今まで知らなかった恐ろしい事実を次々につきつけられ、とてもショックでした。

1991年の湾岸戦争で米軍が使用した劣化ウラン弾の影響で、イラクでは小児白血病の発症率が戦前の4倍になっています。
経済制裁のため薬が不足しており、優秀な医者はいるのに十分な治療ができないまま、子どもたちが次々に亡くなっているのです…。どうしてこんな恐ろしい放射能汚染をもたらす兵器を作り、使用するのか…。無差別爆撃により、一般市民をまきこんでいることがわからないのか…。

そんな常識的な疑問は、残念ながら全く通用しないということが、アメリカのハンフォード核施設(長崎に落とした原爆を製造した核施設)が長年にわたり、風下地区に住む自国民に対しても、放射性物質を大量にばらまいていたという事実からわかってきます。

長年にわたり放射能汚染にさらされてきた、ハンフォード核施設周辺に住む全家族にガン患者が発生しており、そのすさまじい病歴の羅列には耳を疑いました。政府に保障を求める裁判を起こした男性が、鎌仲監督を車で案内して回るのですが、奇形児を産んだ母親が風呂場で子どもを溺死させ、自分も手首を切って死んだ…等、放射能の中で暮らしてきたそれぞれの一家がたどった悲劇は恐ろしいものでした。

しかし、それに加え、心の中にふつふつと湧いてきた言い知れぬ恐怖…それは…、その地区の方たちが、自分たちはこんなにひどい病気になった、と言いながら、その一方で、今でもりんごやじゃがいも等の農作物を広大な汚染地域で大量に作り続けており、その半分が日本へ輸出されている!というとんでもない事実!!!!!(ケンタッキーやマクドナルドのポテトは危険!!!)
自分たちが生きていくためとはいえ、うすうす危険とわかっている作物を輸出するって……ひどい。。。

これを知ってから、もう、私たちはみんな、知らないうちに多かれ少なかれ「ヒバクシャ」にさせられてしまっているのだ。。。と覚悟せざるをえない気持ちになりました。

ハンフォード核施設で働く科学者が、鎌仲監督のインタビューで「危険など全くない。自分は博士号をいくつも持っているんだ。その自分がデータを集め、安全だと言っているんだから間違いなどあるはずがない」とえらそうに言い放ったときの傲慢な顔には、怒りを通り越して唖然としてしまいました!!!

そして……肥田舜太郎さん(広島での被ばく後、60年にわたり内部被曝の研究を続けてこられた医師)が厚生省のデータを閲覧し、作り上げた統計結果には、戦慄を覚えました…

チェルノブイリ事故の10年後、北海道と東北地方で、乳癌患者が劇的に増加している事実が発見されたのです……
あの事故は、他人事ではなく、知らないうちに日本にも恐ろしい影響を及ぼしていたのです……
世界はつながっている…福島の放射能も、きっと世界中に広がっていく……
本当に考えれば考えるほど、絶望的な気持ちになりました……


●「あしたが消える-どうして原発?-」(製作:平形則安、溝上潔、里中哲夫)
チェルノブイリ事故の3年後、1989年に作られたこのドキュメンタリーを観て驚愕しました!
22年前のこの作品の中で、今回の福島原発事故は、ハッキリと預言されていたのでした…!

…このドキュメンタリーは、原発の現場監督として働いていた父親が、52歳という若さで骨癌死したことから、原発の安全性に疑問を持ち始めた1人の主婦の新聞投稿がきっかけで製作されたそうです。

原発で最先端の技術に携わることに誇りを持っていた父親は、原発建設の当事者であると同時に、原発に従事することで健康を害し、結局は被害者として無残な死をとげていたのです…
娘としては、原発=悪として、そこに従事していた父親までも非難されることは、本当につらかっただろうと思います。
でも、父親の死を無駄にしたくない!という思いで、医師や設計者たちを訪ね、真実を探っていきます。

知れば知るほど恐ろしく、悲しくなったのは、一番危険な場所で働いている原発作業員の方たちのことです。

藤田祐幸氏の講演の中でも、思わず泣いてしまったのは、この原発作業員の方たちの件でした。

作業員として原発で働いている方たちの中には、貧困に苦しむホームレスの方たちも多く、生きていくためには、危険とわかっていても自分の身体を犠牲にするしかないのです。被曝による体調不良で路上に横たわるホームレスの方たちを、スーツ姿のサラリーマンやハイヒールの女たちが、蔑むような目で見ながら通り過ぎていく…。原発労働により身体を壊し、ついには路上で亡くなる方を藤田氏は何人も見てこられたそうです…。人々が快適な生活を謳歌するその陰で、ひっそりと死んでいく人たちがいる…。こんな酷い犠牲の上に成り立っている私たちの生活って、いったい何なんだろう…

今現在も、福島原発では、放射能にさらされながら、危険を冒して原子炉の復旧作業に取り組んでくださっている大勢の作業員の方たちがおられます。この方たちのことを思うと、いつも悲しくてたまらない気持ちになります。

私にはただただ祈ることしかできません…

どうして世界がこんなところに行き着くまで、だれも止めることができなかったんだろう…本当に悲しいです…

上関町長選挙

2011-10-01 23:04:42 | 映画・テレビ
中国電力が上関原発を計画する山口県上関町の町長選が9月25日に投開票され、原発推進派の現職・柏原重海氏が、反対派の山戸貞夫氏を破り、3選を果たしました…

1982年に原発計画が発表されて以来、選挙では推進派と反対派の闘いが続いてきましたが、今回も含めて9回すべて、推進派の勝利となってしまいました……それも、今回は現職の圧勝。。。

今回は福島の事故後でもあり、ひょっとしたら…という気持ちもあり…上関町の方たちの良心を信じ、祈るような気持ちで25日を迎えたのですが………残念です。できることなら、馳せ参じて何かお手伝いがしたかったです。。。

圧勝の理由としては、福島後の社会情勢の変化に対して危機感を持った推進派が、これまで以上に結束し、原発計画が無に帰した場合の町つくりを、反対派の新人ではなく、実績のある現職町長に委ねた…というところでしょうか。

折りしもNHKで、フェイス「密着 上関町長選挙~国策に揺れる町の行方~」という番組が放送され、興味深く観ました。

主役は、勝利した現職の柏原重海氏です。

過疎で、高齢化の進む上関町には原発しか生きる道はない!、生活を明日から止めるわけにはいかない!、と悲壮感たっぷりに明言されます。
そして、これからますます上関町が茨の道を歩んでいく事を知りながら、今ここで身を引くのは「男として」無責任だから立候補を決断した!と、苦渋の思いを語られます。(「男として」というところは「人間として」と言ってほしかったですね!笑)

これまでに国から、温浴施設=9億円、小学校施設=13億円など、70億円が交付され、今後も86億円が交付される予定だったそうです…。番組では、医療や福祉も原発のお金がなければ成り立たないことが強調され、町民の足として活用されている町営バス(交付金の900万円を使用)で、お年寄りが病院に通う姿が映し出されます…。

原発に関わる建設工事を当てにしていた建設会社の社長さんは、もう何ヶ月も仕事がなく、社員のクビを切るしかない…と神妙な顔で語られます。(でもこの社長さん、You Tube で見ると、工事を阻止しようとした祝島の80歳女性を蹴っ飛ばした方です!威圧的で柄が悪いおっさんだな~と思ってました!テレビじゃあ、完全に被害者として扱われていますが…)

柏原氏は、国策ということで今まで協力してきたのに……今までの30年の苦しみを国に届けたい!、そして国が誠意を示してくれれば、我々は敗者ではなくなるのだ!と訴えておられました。(これからも国からお金をもらうことを期待しておられるのでしょう)

この番組は、完全に推進派の柏原氏の立場に立って制作されているので、きっとこれを観た人たちは、推進派に同情的感情を持つだろうな~と感じました…

原発マネーがどれほど無駄な使い方をされてきたか(たとえば、すぐ近くにきれいな海があるのに、少人数の小学校に何億もする温水プールを作り、結局温水ではなく、冷たい水のプールとしてしか使用されていないという事実…)
選挙の際に、どんな汚いお金がばらまかれたか…

そもそも原発が安全でクリーンだと標榜するのであれば、どうして都会に作らないのですか?
なぜ建設予定地の住民に大金をばらまくのですか?…
自然を破壊する、危険なものだとわかっているからでしょう!

いくらお金をもらっても、ひとたび事故が起きて空気や水、大地が汚染されたら、人間は住めなくなるのに…
人間が生きていくこと自体が不可能になるのに…
福島の方たちが、今まさにその苦しみの只中におられるのに…

過疎だ、高齢化だ、というのは祝島でも同じだけれど、祝島の方たちのなんと元気で、生きる力に溢れていることか…
原発マネーなどなくても、自分たちで自立しようと、いろいろな計画をたて、助け合って生活しておられます。
そんな内容は、番組では全く取り上げられていませんでした…

上関町が、これから一体どういう方向に向かうのか…これからも注視していきたいと思います。

『Peace』(監督:想田 和弘)

2011-08-20 11:36:00 | 映画・テレビ
想田和弘監督の『Peace』をシネマクレールで2度観ました。


1度目は、上映初日の初回【7月23日(土)10:00】、想田監督の舞台挨拶もあり、満を持して出かけました。
「選挙」「精神」…と拝見し、監督のドキュメンタリーを制作する姿勢に共感し、作品のおもしろさはもちろんのこと、監督の人間的な面でも魅力を感じ、隠れファンになっていたので、間近で監督にお会いでき、お話がきけてとても楽しかった☆

監督の義父母である柏木ご夫妻が日々取り組まれている高齢者、障害を持たれた方々に対する介護・支援のお仕事には、本当に頭が下がり、そういうお仕事ぶりを拝見するだけでも見ごたえがあるのですが、あちこちにいいな~と印象に残る場面がありました。

前足が不自由な野良猫をなでながら、柏木寿夫さんが「自慢のハートを見せてごらん」というと、猫ちゃんが本当に素敵な大きなハート模様を見せてくれる場面!
見た瞬間、思わず笑ってしまった「泥棒猫」のいかにも悪そうな顔つき!

どうして全く利益のない「福祉有償運送」の仕事を続けているのか、との問いに対する寿夫さんの答え→「惰性じゃな」☆
福祉有償運送の仕事で、知的障害と足に障害がある植月さんの運動靴選びに付き添う寿夫さん、品評しながら靴を選んでいるときの2人の会話の妙☆

夫の野良猫の飼い方に対し、妻の廣子さんが不満を爆発させ、「夫の大キライなとこ!」と言う場面!(場内爆笑!!!)

肺がんの末期である橋本さん…
いつもビシッとスーツを着こなしているのに、住んでいる部屋は、ダニとネズミだらけ…
おしゃれをして診察に行った済生会病院で、優しいお医者さんや看護婦さんに囲まれ、人気者の橋本さんは元気そうにみえるのに、実は自宅ではかなりの血痰が…
来訪者である想田監督のためにわざわざワイシャツを着、ネクタイをしめたけれど、下が股引きのまま…(切ないです。。。)
橋本さんが突然兵隊に行ったことを話し出したときには(「第一線には行かなかった」と言われてはいたのですが)、思わず「ゆきゆきて、神軍」のことが頭に浮かび、これから何か恐ろしい告白(加害者としての橋本さん)が始まるのではないか…と身構えてしまいました。。。(結局私の取り越し苦労でしたが…。)

この日は上映後、、この映画の主役!柏木寿夫さん(監督の義父)も舞台に上がられました。
会場には、前作「精神」の主役・山本昌知先生(夫の主治医!)ご夫妻、「こらーる岡山」のスタッフの皆さんなど、地元岡山の、監督の身内のような方々が大勢来られていて、アットホームな舞台挨拶になりました。

質疑応答の際、一つだけ私もお訊きしたいことがあり。。。勇気を出して手を挙げようかどうしようか…と悩んだ末、結局時間切れで……(いつもながら小心者の私。。。
でも、帰り際、出口付近で柏木廣子さんのお姿を見つけ、意を決して話しかけ、答えをいただいたのでした!

それは…映画の最後に「追悼」という文字と写真で観客に知らされた橋本さんの死についてでした…

映画の中で、いつも穏やかで紳士的で、みんなの人気者だった(でも、見ていると切なくなる)橋本さんが、どのような最後を迎えられたのか…苦しむことなく、みんなに看取られて安らかな死を迎えられたのか…ということがどうしても気になったのです。。。

突然の質問に、柏木廣子さんから「橋本さんのお知り合いですか?」と言われましたが、「いいえ、映画を拝見して橋本さんのファンになり、最後に亡くなられたことを知って、安らかな死を迎えられたのかが知りたくて。。。」と(感極まって涙声になり)答えると、廣子さんは快く気さくに話をしてくださいました。

橋本さんには若い友人(カラオケ仲間?)が何人もおられて、具合が悪くなった際も、介護をしていた廣子さんたちにではなく、その仲間に連絡をされたそうです。病院に運ばれてからも、苦しむことなくみんなに看取られて静かに息を引き取られ、お葬式にも若い方たちが大勢参列されたとのことでした。

穏やかな死であったことをうかがい、私までほっと安らかな気持ちになれました。。。

2度目の鑑賞は、8月17日(水)、夏休みで帰省中の娘Sを連れて、一緒に観にいきました。

するとなんと、この日は主役の柏木寿夫さんが、4、5人の知り合いの方々を引き連れて観にこられていました。その中には、映画の中に登場する、(運動靴を買いに行き、回転寿司を食べておられた)あの植月さんも!(この日はヘルメットはかぶっておられませんでした!)

植月さんは女性の方と一緒に坐っておられたのですが、映画の中でいよいよ植月さんが登場すると、その女性が「出た、出た、出た出た~!!!」とものすごくにぎやかになり、こちらも思わず笑いそうになりました(笑)!
植月さんご自身は「うん、うん」という感じで、特に言葉を発しておられなかったのですが、スクリーンにご自分の姿が映っているというのは、どんなお気持ちだったでしょう??

2回目になると、1回目とは違う場面に気持ちが動かされました…。
映画の中であちこちにちりばめられた、何気ない風景…(亀さんたちのユーモラスな日向ぼっこはどこで撮られたのかな???)
…自転車に乗って通り過ぎる黒人男性、手押し車を押し、ゆっくり歩く高齢の女性、松葉杖をついている人、介助の方と腕を組んで歩く白い杖の女性…
きっと監督は、この作品を撮っていく中で、(今までは特に意識して気に留めなかったであろう)こういった方たちの存在を今までよりも強く認識していくようになられたんじゃないかな…と感じました。

上映終了後、この日は出口に向かっておられた柏木寿夫さんに、厚かましく話しかけました☆(笑)
「ハートの模様のネコちゃんは元気ですか?」とおききしたら…「あの猫は死にました」とのお返事が…
「でもまだ、4・5匹います」とのこと…。
「舞台挨拶の初日に観に来て、とてもおもしろかったので、今日は娘も連れてもう一回観に来たんですよ~」とお話すると「そりゃあ、ご苦労さんですなぁ~」と言っていただきました(笑)。

監督の著書『なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか』とパンフレットに、監督のサインをいただきました


岡山が舞台となった「Peace」♪ 是非観ていただきたい作品です

『アレクセイと泉』と『祝の島』

2011-06-04 23:32:30 | 映画・テレビ
ジョリー東宝で『アレクセイと泉』『祝(ほうり)の島』を観ました。(『祝(ほうり)の島』はあんまり素晴らしかったので2回観にいきました!)

こういうマイナーな作品がシネマクレールではなく、ジョリー東宝で上映されたのは珍しいのでは?? 
観客はいつも5,6人しかいなくて…ちょっとさみしかったけれど、この作品を観る機会を作ってくれたジョリー東宝さんに感謝☆

『アレクセイと泉』(監督:本橋成一)はチェルノブイリ原発事故で被災したベルラーシ共和国の小さな村で、移住せず村に残った老人55人と1人の若者アレクセイの静かな日常を描いたドキュメンタリー。

村人の生活の中心にあるのは、こんこんと湧き出す清らかな泉…村のあちこちで高濃度の放射能が検出される中、この泉からはなぜか放射能が全く検出されないのです。
おばあさんたちは毎日この泉で水を汲み、30キロにもなるバケツ2つを天秤棒でかついで家まで運び、真冬の凍える日でもこの泉で洗濯をします。(大変だな~!)
村の男衆は、おばあさんたちにせかされて、泉の周りに丈夫な柵を作り直します。1本のくぎも使わず、組み込み式で柵を作り上げていくおじいさんたちの腕前はさすがです。

村人たちは畑を耕してじゃがいもを作り、丈夫なかごを編み、糸をつむぎ、かまどでパンケーキを焼き、ブタのえさを作ります。木陰のパーティーではウォッカを飲んで陽気に歌って踊り、みんなで楽しく過ごします。馬や犬、がちょうやニワトリ…動物たちも大事に育てられています。
おばあさんたちの身につけている色鮮やかなスカーフやスカートの花柄のなんておしゃれなこと☆☆

小児麻痺の後遺症なのか?、アレクセイの足は少し変形していて、言葉も少し不明瞭だけれど、村で唯一の若者であるアレクセイは優しくて力持ちで(筋肉隆々!)、村人たちからとても頼りにされています。アレクセイが雪の中、白い犬と一緒に走り回るシーンはとても素敵でした

こんなに美しい村なのに……平和で静かで、自然と共に心豊かに生きている人々の姿が美しければ美しいほど、この村を覆っている目に見えない放射能の恐怖を思わずにはいられませんでした。

音楽が坂本龍一だったので期待していたのですが、エスニックなバリ島っぽい?感じの音楽はこの作品にはふさわしくなかったかな?…そもそも音楽は必要なかった気がします。

今もアレクセイや村の人たちが、変わらずお元気で暮らしておられることを心から祈っています。


『祝(ほうり)の島』(監督:纐纈(はなぶさ)あや)は、30年近くも上関原発反対運動を続けている山口県祝島の人たちの日常を丹念につないだ心揺さぶるドキュメンタリー。

対岸に建設されようとしている原発を、命がけで阻止してきた島の人たちの強い信念、筋の通った生き方、生活の糧である宝の海を子どもや孫のためにも絶対に守りぬく!…という圧倒的な思いに心動かされ、かなり感情移入してしまいました!

島での毎週月曜夜のデモ(犬もハチマキして参加してます・笑)、船上での抗議行動の場面もありますが、大部分は祝島の人々の穏やかで平和な日常が静かに描かれています。

岩だらけの山を30年かけて棚田にした祖父のあとを継ぎ、70年間米作りを続け、今も子どもや孫に自分の作った米を送っておられる平さん…(この棚田が素晴らしい! たった一人で田植えをし、稲を刈り、脱穀する平さんの姿も美しい!)

平さんのお向かいの伊藤さんちには、夜になると1人暮らしのお年寄りが集まり、みんなでコタツに入ってお茶会が始まります。いいな~!こんなに気軽に他人の家に上がり込める近所づきあいはなかなかできるもんじゃありません。

一本釣り漁師の正本さんご夫婦は、なんともいえない気品があるステキなカップル☆穏やかな優しさが伝わってきます。

島唯一の女漁師の民子さんが、島へ慰問に来たミュージシャン(あれは、憲法フォークジャンボリーでお見かけした、唄う浪花の巨人こと、趙博さんですね!)の演奏中に、ヘンテコなかつら(黒いゴミ袋に綿でも詰めて作ったのかな?笑)に黒めがねの着物姿で乱入して可笑しな踊りを披露し、爆笑のうずを巻き起こした後、何事もなかったかのように平然とその着物姿のまま愛用のバイクにまたがって去っていく姿には思わず笑ってしまったけれど、何かプロ根性のようなものを感じました!

大工と美容師の橋本さんご夫婦の信念に満ちた行動……中国電力が埋め立て用に運び込んだコンクリートブロックの上に座り込みを続ける久男さん、船上からハンドマイクで「いのちをかけて何かをやったことがあるか」と叫ぶ典子さんの姿には胸が熱くなりました。

祝島の中でも原発推進派になってしまった方たちもいます。推進派と反対派に分かれてしまったことで、それまで仲良く暮らしてきた島の人たちの心がズタズタに引き裂かれてしまった…だけどいつの日か、また仲良く暮らせる日がきっと来る…と語る正本さんご夫婦のさみしそうな目が忘れられません…。

とにかく祝島の方たち一人ひとりが、はんぱなくカッコイイ!!!!!ほれぼれするほど潔い!!!!!
決して物質的に豊かとは言えないけれど、本当の幸せというものがこの島にはあるのです!

3月11日の震災後の悲惨さをみれば、上関原発の建設も当然中止だ!やった!やっと祝島の人たちの反対運動も終止符を打ち、平和な暮らしに戻れるんだ!……と思った私は考えが甘かったのか、その後も中国電力は計画の続行を発表していましたが、少しずつ凍結・中止の方向にも動いてきている様子です。。。どうかどうか祝島の人たちが命がけで守ってきた思いが届きますように!!!!!

この夏、私も祝島へ出かけてデモに参加したいと思っています!

『ザ・コーヴ』(監督:ルイ・シホヨス)

2010-09-02 23:56:12 | 映画・テレビ

ロンドンに住んでいた20代のころ、長崎県の壱岐島でイルカが大量に撲殺されている映像がテレビで流れたことがある。

ブリ等の魚をイルカに食べられ大きな被害が出るため、漁民たちがイルカを害獣として駆除していたのだと記憶しているが、動物愛護精神の強いイギリスでは撲殺シーンが繰りかえし流され、批判的に取り上げられていた。

そんなときは必ず、通っていた英語学校でも捕鯨やイルカのことが授業中話題になり、ヨーロッパ出身のクラスメートたちから、「クジラもイルカもかわいくて頭の良い動物なのに、どうして日本人は平気で殺すのか」と追及された。

こんなときは否が応でも日本代表として答弁しなければならず、「捕鯨は日本の伝統文化なんだ!」と、たどたどしい英語で弁明したけれど、貧弱な会話力ではみんなを納得させることはできず、後になってあ~言えば良かった、こ~言えばよかった…と悔しさがこみ上げてきて、自己嫌悪に陥った

ヨーロッパ出身のクラスメートたちがクジラやイルカを「かわいいから」「頭が良いから」殺してはいけない、と言うのがいつも理解できなかった。

牛や豚を日本人の何倍も食べているのに、クジラやイルカはかわいくて頭が良いから別格、という考え方なのだ…

思わず、不細工で、頭が悪かったらいくら殺してもかまわないのか~!!!!!
それじゃあまるで、ヒットラーの唱えた思想と同じじゃないか~!!!…と叫びたくなる…

一貫したベジタリアンで、肉類を全く食べないという信念を持った人から、クジラやイルカも殺さないでほしい、と言われるのであれば一応考え方として納得できる…

だけど、「かわいいから、頭が良いから」という主観的感情だけで選別する彼らの主張は、私にとってヒットラーのように偏重したものにしか思えなかった…

そんな昔のことを振り返りながら、日本で上映中止をはじめとする物議をかもしている映画「ザ・コーヴ」を観た。

どうせまた「かわいいから、頭がいいから」と言うんだろう、と斜に構えて観たら、全くそのとおりだった。

しかし…

ロンドンでイルカが撲殺されるシーンを観てから20年以上経った今、この作品を観た私は、激しい衝撃を受け、立ち直るまでに何日もかかった…

クジラやイルカを、魚と同じように海の資源としてみなす日本と、保護するに値する愛すべき人間の友だち!と考える彼らとの間の溝は深く、お互いに理解しあい、歩み寄ろうとする努力は全くなされていない…

制作者側があくまで「正義」であり、太地の漁民や警察関係者たちは、滑稽なまでに悪者として描かれている…昔から自分たちの生活を支えてきたイルカ漁を妨害され、誤った情報を流され、それに対する反論の機会も持てない太地の方たちの悔しさ、やるせなさはいかほどのものであったろう…

その気持ちは十二分に推し量られる…

それでも…

血の海と化した入り江から、血まみれになった瀕死のイルカがかろうじて逃げ出し、こちらに向かって泳いでくるが、途中で力尽き沈んでいく…このシーンを見たときから私は激しく動揺し、号泣しそうになり、それ以後ずっと泣き続けた…

私はもう捕鯨やイルカ漁を、「日本の伝統文化」として、正当な権利であると主張する強い気持ちを持ち続ける自信を失っていた…

20代のころと比べると格段に量が減ったとはいえ、牛も豚も鶏も食べているくせに…

牛や豚、鶏が殺される場面を見ていないから、スーパーにきれいに並べられたパック詰めの肉を平気で買ってかえり、食べているくせに…

偽善的だとはわかっているけれど…動物が殺されることに対して、今までのように平気な気持ちでいられなくなっている自分に気がついた…

この作品に登場するリック・オリバーやルイ・シホヨス監督はベジタリアンなのだろうか…

それとも牛や豚、鶏は頭が悪くて、かわいくないから平気で食べているのだろうか…

そうだとしても、この作品は、私のような、動物の死に対して感情的になってしまうある種の層の人間に、自分がどれだけ偽善的であるかを考えさせるきっかけを与えたという点において、とても大きな影響力を持つ、ある意味優れた作品であったと言わざるを得ない…


『オーケストラ!』(監督:ラデュ・ミヘイレアニュ)

2010-07-11 23:15:39 | 映画・テレビ

娘Tと心待ちにしていた作品。

劇中使用されるクラシックの名曲リストに、現在娘が弾いているラロの「スペイン交響曲」も載っていたので、いつ流れてくるのか今か今かと楽しみにしていたけれど…結局聴き取れませんでした~。。。う~む。

作品自体もちょっと期待はずれ…
演奏を聴くには、以前観たベルリンフィルのドキュメンタリーがあまりに素晴らしかったので物足りなかったし…

ヴァイオリンのソリストも、いかにも素人といったボーイングでがっかり!
もっと演奏技術の指導をしてほしかった…。
娘Tも、のだめの映画(後編)で水川あさみ演じる清良が演奏するシーンの方がずっと素晴らしかったと言ってました。

ドタバタドタバタして人間(人種)の描き方が単純で典型的なのも気になりました…。 コメディーだと言ってしまえばそれまでなのかもしれませんが…お客を前にして演奏をする!ということは(私自身オーケストラに所属していたので思うのですが)責任も伴い緊張もするものだし、一種厳かな気持ちにもなるものだと思うのですが…

そんな心情が全く描かれず… 30年ぶりに音を合わせるというのに、団員はパリで遊び回っていて集まらなくてリハーサルもできず…(ありえない!)…かといって30年の空白を埋めるために自主的に練習していた様子も無く…
遅れてきて演奏直前の舞台で席に着くなんて言語道断!!!…こんな場面には全く笑えないし、一種の怒りさえ感じてしまいました。

なので、美しいソリストの両親が共産主義時代、シベリア送りになって死んだ…という、普通なら心にぐっとくるはずの歴史的悲劇も、いまいち私には響いてこなかったのでした…。

チラシに書いてあったように 「マイケルジャクソン THIS IS IT」をおさえ、パリでオープニングNo.1を記録!。。。って本当なのかな?????

フランス映画の笑いは、私には合わないのかな~???

この作品のあまりにも高い評価が、ちょっと腑に落ちない私なのでした。。。

 


『クロッシング』(監督:キム・テギュン)

2010-06-16 23:15:23 | 映画・テレビ
娘Tとシネマクレールで「クロッシング」を観た。


肺結核にかかった妻の薬を手に入れるため、妻と息子を残し命がけで中国へ渡り、心ならずも韓国へ亡命してしまう父親…その間に妻は亡くなり、息子は孤児となる…。

父親に会いたい一心で、同じく孤児となっていた初恋の女の子と一緒に脱北しようとした息子は途中で捕えられ、地獄の強制収容所へと送られる。人として扱われない収容所で、だんだんと弱っていく女の子を健気に守りながら必死に生き抜こうとする男の子の姿に心打たれる。

瀕死の女の子を荷台に乗せて自転車をこぐシーンは、数ある恋愛映画の自転車2人乗りシーンの中でも群を抜いて美しい…。「このまま天国まで行けたらいいな…」という女の子の言葉に胸が張り裂けそうになる…。

韓国にいる父親は、ブローカーを通して息子を収容所から救い出し、モンゴルの砂漠を横切って脱北させようとする。
父親と電話がつながったとき、「お母さんを守れなくてごめんなさい」と泣く息子…自分のせいなんかじゃないのに…一生懸命頑張っていたのに…11歳の小さな男の子に、こんなに過酷な重荷を背負わせて……かわいそうでこちらももらい泣きしてしまう…。

ブローカーに見渡す限りの荒地にほっぽりだされ、後は歩いて行けと言われても、どっちに向かって歩けばいいの!? どこまで歩けばいいの!? どこにいけば助けてもらえるの!? あまりに無謀な計画に観ている方が絶望し、無力感に襲われる…
 
ブローカーの手配ができ、ここまで逃げてこられただけでも恵まれていたといえるのだろうか…収容所で虫けらのように殺される人々、飢えて死んでいく多くの人々と比べれば…

悲惨な場面が続くこの作品の中でも、一番つらかったのは、主人公一家が飢えのため、飼っていた白い子犬を食べてしまうところ…。

北朝鮮では、犬は食べるために飼われていて、北朝鮮でちょっと気のきいた料理といえば犬の料理だと、この映画を観た後読んだ『わたしは、こうして北朝鮮で生き抜いた!』(梁東河・中平信也 著)にも書かれていたけれど…

食べられる前、男の子と一緒に楽しそうに駆け回っていた子犬の姿、人を信じ切った無邪気でつぶらな瞳が頭から離れず、我が家のリンの姿とも重なって、涙があふれてとまらなくなった。

【最後の回想シーン??(天国でみんなが幸せに暮らしているシーン??)でもまた、この白い子犬がうれしそうにみんなと一緒に駆け回っているものだから、またまた涙腺が。。。】

これは映画なんだから、あの子犬は実際は元気に生きていて大切に飼われているんだから、と自分に言い聞かせてみてもダメ…男の子の健気な演技にも心揺さぶられ(子役の男の子が本当に演技がうまい!!!)大泣きしてしまったのでした。(感傷的ですみません!)