天神山文化プラザへ、演劇工舎「ゆめ」公演 「蠅取り紙-山田家の5人兄妹-」を観にいきました。
この劇団については何も知らなかったのですが、たまたまどこかで手にした公演のチラシに「原作:飯島早苗・鈴木裕美」と書かれているのを見つけ、とてもなつかしい気持ちになり、出かけてみることにしました☆
飯島早苗さん、鈴木裕美さんが活躍されていた「自転車キンクリート」という劇団の芝居を、東京で生活していたころ、何度か観にいきました(「蠅取り紙」は観ていない)。
…たしか日本女子大学出身者が中心の劇団で、初めのころは女性だけで演じておられたのが、だんだんと男優の方も交えた作品作りをされるようになったと記憶しています。(もう20年以上昔のことです……)
脚本がしっかりしているから、岡山の素人劇団が演じても、まぁ~それなりに楽しめるんじゃないかなぁ~と、あんまり期待せずに出かけたのですが…(劇団の方たち、ごめんなさい!)
これが、期待をはるかに超えたすばらしく上質の作品に仕上がっていて、2時間40分の長いお芝居だったのですが、最後までとても楽しく拝見させてもらいました☆
山田家の5人兄妹
…婿養子にいってしまった長男、行かず後家の高校教師で、33歳になっても母親に弁当を作ってもらっている長女、雑誌のライターで同業者と同棲している次女、不倫相手と結婚した三女、芝居にのめりこみ、親のすねをかじり続ける26歳の次男…
両親がハワイ旅行に出かけるというので、見送りのため長男・次女・三女が実家に戻り、久しぶりに5人が顔を合わせます。三女の夫も加って、宴会が始まります…
トイレに行く順番を決めるのも一騒動、姉たちに命令される末っ子の次男、三女に対する姉たちのやっかみ…5人兄妹の力関係、各々に対する微妙で複雑な胸中が会話の中に巧みに盛り込まれていて…ううむ、その気持ち、わかるわかる!、そうそう、そうだよね~!と脚本のうまさに感じ入ることしきり…役者さんたちも、役になりきっていてうまいんです!
全員が寝静まった深夜、ハワイにいる父から、母親が盲腸で入院したとの電話があり、一同慌てるのですが、盲腸で死ぬことはないだろうと考え、とりあえず父からの次の連絡を待つことにし、全員眠りにつきます…
ところが翌朝、眠りこけた兄妹たちを起こしに来たのは、なんと!ハワイの病院で麻酔が醒めずに眠ったままの母親だったのです…。
母親は、子ども達のことが心配で、幽霊?になって家まで帰ってきたのではないか???。。。そう考えた兄妹たちは、一番心配をかけているのはおまえだ!おまえだ!!…と口々に相手を糾弾し始めるのです!!!
この場面は、今まで口に出せずに各々兄妹が心に留めていた不満が一気に爆発し、壮絶なバトルが繰り広げられ、観ている方もとても緊張しました!
三女の夫が中国で実際に起きた同じような事件について話したことから、とにかく母親の魂?には、おいしいものを食べさせ、兄妹みんな大丈夫と安心してもらい、気持ちよくハワイの肉体の元へ帰ってもらおう…ということになり、兄妹たちは今度は母親のために一生懸命力を合わせることになります…
母親を囲んでトランプのダウトをしながら語り合ううち、兄妹たちは素直な気持ちになり、母親に対し、今までの身勝手な自分を詫び、これからどう生きていくのか前向きに語り始めます……「蠅取り紙」にまつわる兄妹のエピソードも笑えるんだけど、ほろりとさせられました。。。
5人の子どもたちを育ててきた母親の人生は、決してつまらないものではない…
他の人の5倍は楽しんだと言える人生であってほしい…
子どもたちはやっと、母親がどれだけ自分たちにとって大切な存在であったかに気づきます…
三女の夫が、離婚した元妻の死を受け入れられず、出るはずのない元妻へ電話をかけ続ける様は、このストーリーの中で少し異様で浮いている感じもしましたが、そこにいるのが当然と思っていた人を失うこと…そんな喪失感を描いていたのでしょうか…
舞台美術もすばらしく、いかにも日本の典型的中流家庭!といった空間を作り出していたし、(たった2日間の公演だけで撤収してしまうのは惜しい!)、芝居の前後に流れていたリコーダーとパンフルート?のアフリカっぽい音楽等、センスが良かったと思います。
観終わった後も気持ちの良い余韻が残り、今日は家族のためにちょっと手をかけて夕食を作ろうかな…なんて殊勝なことを思いながら帰宅しました☆