夫の頭痛も治まり(一過性のものでした。ご心配をおかけしました!)ホッと一安心したので、月曜日の夜はさっそくシネマクレールのレイトショーに出かけた。
20時45分から上映された『パンズ・ラビリンス』!!
何の予備知識も持たず、チラシに書かれていた「驚くべき作品」「美しい。わくわくした」…等の文字に惹かれ、大人のファンタジーかぁ~どんなんだろ~?…くらいの軽いノリで観にいったのだが…。。。。。。
娘Tを一緒に連れていかなくてホントによかった!…(PG-12でしたけど)
ハリーポッターを観るような気分で行くと、どんな目にあうか保障できない!!…それくらい衝撃的でダークな作品で、観終わった後(夜の11時)、駐車場までの道を、あまりに重い余韻のため、なかなか現実の世界に戻れず、フラフラ・クラクラしながら歩いた…
この映画についてなんと形容してよいものやら…
「美しい」?…確かに美しいけれど、おどろおどろしくて胸が悪くなる美しさ…
「わくわくする」?…というより、私は最初の10分で、ものすごい不安感にとりつかれ、今に何か悪いことが起きるぞ、起きるぞ…という底知れぬ恐怖感からずっと逃れられなかった…
あまりに残酷なシーンに絶えられず、目を閉じ、耳をふさいだことも1度や2度ではない…
時代は1944年スペイン…
独裁者フランコ将軍が築き上げたファシズム体制に対し、人民戦線の残党たち?が必死の抵抗を続けている…
主人公の少女オフェリアは、本が大好きな11歳の少女…
未亡人だった母親が冷酷無比な大尉と再婚したため、危険な戦地へ臨月の母親と共に連れてこられる…
武器、食料の面からも圧倒的に不利な状況の中、死を省みず勇敢に戦う人民軍に対し、残虐非道な大尉!(誤って捕らえた無実の農民をも無慈悲に強殺し、すでに死んでいる兵士に執拗に何発もの弾丸を撃ち込む異様さ…)
私は、自由を求め、ファシズムに抵抗して命を落としていくレジスタンス運動に関わった人たちを描いた映画を観るたび、胸が張り裂けそうになる…
20代のころ、高田の馬場のビルの1室にあったACTシアター(今もまだあるのかな?)で観た、ロベルト・ロッセリーニ監督の『無防備都市』やアンジェイ・ワイダ監督の『地下水道』…(今でもその鮮烈なシーンを思い出す…)
イングリッド・バーグマンとゲイリー・クーパーが出演した『誰が為に鐘は鳴る』…(号泣した!)
当時小学校5年だった娘Sを連れて観にいき、Sが今でも一番好きな映画と言い切る、フェルナンド・フェルナン・ゴメス主演の『蝶の舌』…(抵抗運動ではないけどね…)
抵抗運動に関わる活動家たちは、たいてい強力な軍事力を保持するファシスト軍に捕らえられ、拷問されたり惨殺されたりするので、今回も、フランコ軍の下女として働く人民軍のスパイ・メルセデス(少女オフェリアの良き理解者・この作品での演技はとても印象深い…)や、誠実で内に真の強さを秘めた温厚な医師がいつ捕まえられてひどい目に遭わされるのか、心配で心配で、ずっと緊張しながら見守ることになった…(実際、メルセデスは窮地を救われホッとしたのだが、予想外の受け入れがたい、あまりに悲しい結末が待っていた!!!)
義父に対する言い知れぬ恐怖、嫌悪感…死と隣り合わせの危険な外の世界…そんな悲惨な現実から逃れるため、オフェリアはファンタジーの世界へと身を投じていく…
迷宮の守護神「パン」に言われるまま、3つの試練に立ち向かうオフェリア…
次々と現れるグロテスクな化け物たち…
2つ目の試練の際、妖精たちはなぜオフェリアに誤った鍵穴を示したのか??
何も食べるな、飲むなとあれほど忠告されていたのに、オフェリアはなぜ葡萄を口にしてしまったのか…
メルセデスはなぜ、大尉を殺さなかったのか??
オフェリアは、大尉の酒のグラスに何かの薬をたらしたはずなのに、何の効果も表れなかったのはなぜか??
いくつか疑問に思うこともあったけれど、その裏には何か深いものが隠されているような気もする…
ファシズムに対し、自由を求める大人たちが武器を持って立ち向かっていたちょうどそのとき…多感な思春期を迎えた1人の少女は、極限状態の中、迫り来る巨大な力と必死に向き合いながらファンタジーの世界に身を起き、そこでの試練に立ち向かうという、彼女に出来る精一杯の方法で、このファシズムという巨悪に抵抗し、健気に闘っていた!!
とにかくこの作品はものすごいインパクトがあった!
1日経ってもまだ頭の中では、いろんな場面がフラッシュバックしているし、あの場面はどういう意味があったのだろうか…?と思い巡らしたりしている…
でもでも、どうかグロテスクな生き物たちが、夢の中にまでは出てきませんように…