想田和弘監督のドキュメンタリー映画『精神』が、いよいよ7月18日(土)からシネマクレールで上映されます。
でも、それまで待ちきれない!!! そこで…
映画の公開にあわせて、監督がそれまでの紆余曲折、この作品に込めた思いを綴った著書『精神病とモザイク』(タブーの世界にカメラを向ける)を買ってきて読みました。
想田監督とは…
絵に描いたような優等生で、当然のように東京大学へ入学し…でも、「東大新聞」の編集長に祭り上げられた末、「燃え尽き症候群」になり…
「学歴をドブに捨てるようなものだ」と言われながら手探りでニューヨークへ渡り、美大の映画学科で学んだ後、ドキュメンタリー作りにのめり込む…
そして、優れたNHKのドキュメンタリー番組を何本も発表していくのですが、前もって入念に作り上げられた台本をなぞる「やらせ」に近い撮影、パワハラだらけの日本のテレビ制作現場に身も心もボロボロにされ…
リストラされたのをきっかけに、自前で、割の良い企業用ビデオの製作会社を設立し…気力と体力を少しずつ回復させながら、自主制作で自分の作りたいドキュメンタリーを追求していくだけの精神的・経済的な準備を整え……
奥さんのお母様が関わっておられる「こらーる岡山」へ撮影の申し込みをするに到った…と書かれています。
こらーる岡山では、テレビのやり方の正反対をしよう!と、撮影前の打ち合わせ、リサーチを一切せず、台本も書かず、奥さんと2人だけで長回しで撮影されたそうです。
患者さん1人1人に声をかけ、撮影の許可を求め、許可してくれたらその場で撮影を進めていき…だから、撮影する時点では、被写体である患者さんとは面識も信頼関係も無く、その人がどういう病歴なのかも全く知らなかったとのこと…
しかし撮影後に、監督は被写体になってくれた方たちと否応なしに深く、誠実に、責任を持って付き合っていかざるをえなくなります…
撮影した後で「やっぱりやめて欲しい」と心変わりされたり…
釜山国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した後、岡山で当事者の方たち対象の試写会を行った際、一番心配していた当事者の女性から、自分の大事な場面は流れてないですよね…と言われたり…(このときの監督の心情は「人生最大級の修羅場」だったとか…)
それでも当事者の方たちと「振り返り会」を設けたり、座談会を開いたり、何度も話し合う中で、監督は「信頼し、信頼される関係」を構築していくのです…
当事者の方たちとの座談会の内容がものすごくおもしろかった!!!
山本先生の診察の様子など、思わず「そうそう!うちもそう!!」と共感して笑えたり…
こんなにユーモアのある会話をされる患者さんたちにすごく好感を持ちました!
いつかこらーるでお会いしたら、お話してみたい!
でも当事者の方たちにとっては、「精神」は予告編であり、自分たちの本当の苦しさはあんなもんじゃない!「1日1日をどんなに苦しい思いで暮らしているかが全然映し出されていない!」と不満もあるようです。(診察に来ているときは、比較的症状が安定しているときですものね。本当にしんどいときは外に出られないでしょうから…)
しかしこの作品で、タブーに挑んだ監督は、これから先、重い責任を負うことになります…
被写体となった患者さんたちが、心無い人たちから非難を浴びる可能性だってある…
「映画がきっかけで自ら命を絶つ患者さんが出るのではないか」
「映画を公開することで傷つく人々に対して自分は責任を取れるのか」
モザイクをかけさえすれば、何の問題もなかったであろう当事者の方たちへの重い責任を、監督はこれから一生背負っていかなければならないのでしょう…
(これは本当にしんどいと思います…)
まだ、映画を観ていないのに、被写体となった患者さんたちにとても親近感を覚え、作品の中で(そして実際にいつの日か、こらーる岡山で!)お会いするのがとても楽しみになってきました☆
初日にシネマクレールへ駆けつけようと思っています!!!
…そして…
具合の悪い状態が続いていて、「生きているのがしんどい」と訴える夫に観せるのは、まず私が観て、内容的に大丈夫かどうか判断してからにしようと思います…。