Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

今年はもうお別れだね

2010年05月08日 | 玄関飾り
 5月5日の子どもの日が終わると、なんだかそれまで元気よく泳いでいた鯉のぼりが、松の内を過ぎても玄関先にかかっている正月飾りのようにみえてくるものだ。同じ鯉のぼりであるはずなのに、何か生気の無い、うつろな表情で流れに身をゆだねながら浮遊しているような鯉……。
 そんな鯉はしばらくすると真っ暗な深海のような川底――どんな川にもそんな鯉のぼりたちの魂がほぼ11ヶ月にわたって身を潜める隠れ場所があるものなのだ。それを僕らは知らないだけ。魂の抜けた「鯉の布」もまた、箪笥や衣装ケースの真っ暗闇の中に、たいていはきれいにたたんでしまわれる。中には忘れられて、これっきり太陽の光のもとに戻れない鯉だっているはずだ。そんな鯉の魂は、永遠に川底で生き続けているにもかかわらず。
 わが家の玄関の鯉もまた、そんな季節がやってきた。一ヶ月、おもいきり飛んで、跳ねて……でも今はもう一枚の額におさまった手ぬぐいに描かれた鯉にすぎない。もう鯉の魂は深い川底へ戻っていったのだから。でも君はこれっきりじゃない。また11ヵ月後には、こうして沖縄のこの場所へ戻ってくるんだ。しばらくの辛抱さ。ゆっくりお休み。