Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

タヌキはどこへいった?

2009年07月21日 | 
 先週の金曜日、休みをとって二年ぶりに奥湯沢の貝掛温泉を訪れた。山の中の一軒宿。お湯は37度の低温ながら、1時間も入っていると体がポカポカしていくる温泉で、「ぬるいお湯派」の私が大のお気に入りの温泉である。
 2年前に訪れたときの感想を私はこのブログに記しているのだが、なぜかその時、印象に残ったのはユニークな格好をしたタヌキの剥製(2007年7月2日のブログに写真あり)。今回はこのタヌキとの再会も楽しみであった。剥製は、温泉(お風呂)に行く階段の途中にあったために、必ず見ることができるはずなのである。「さあ、タヌキでも見に行きましょうか」というK氏の言葉に促され、浴衣を片手に階段方向に向かう。以前とまったく変わっていない旅館の風情を楽しみながら、タヌキとの再会を心待ちにして胸が高鳴る・・・。「ナイ?タヌキガ ナイ?」口に出す前に数度、心の目で確認してそれを反芻する。「確かここにありましたよね。」と私が言うと「あっ、ないですね」とK氏も驚きの表情。あるはずの場所にタヌキがなくなっていたのである!
 タヌキの代わりに金属性の梵鐘の置物などが並べられ、この部分は以前とすっかり趣が変わっている。以前は雑多に剥製や人形が並べられたコーナーが妙に小奇麗な空間になってしまっているのだ。しかし考えてもみれば旅館なのだから、置物や調度品が季節などによって並べ変えられるのは当然の成り行きなのだが、それでも期待を裏切られ、タヌキと再会できないことを悟った瞬間は、すべての思考がネガティヴに働き、突然、仕事のことを思い出したり、上演するワヤンの筋書きで決まっていない部分を心配したり、悲しいかな真っ暗な深海に一人乗りの潜水艦で取り残されたような気分に陥ってしまった。そして「どこへいったの?貝掛のタヌキは・・・」と《花はどこへいった》の旋律を付けて心で悲しく歌ったのだった。