みみずのしゃっくり

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太陽の中の男たち

2015-09-08 | その他

前回の事件で、以前、文化団体によってウィーン大学講堂で上映された映画(シリア映画)を思い出しました。

その題名が「太陽の中の男たち」


原作の著者はパレスチナ人作家ガッサン・カナファーニ


カナファーニの肖像グラフィティは独語ウィキからのものです。

太陽の中の男たち・あらすじ
1948年の第一次中東戦争から数年後。故郷を追われ難民となったパレスチナ人がイラクの難民キャンプで暮らしています。イラクも政情不安で、パレスチナ難民は極度の貧困に苦しんでいます。4人の友人たちが相談し、クウェートへ行って仕事を見つけ少しでも稼ごうと決めます。水を運ぶタンク車(砂漠地帯では当然の車両)の中を空にして3人が中に隠れ、ひとりがクウェートに水を運ぶということで運転します。そのための書類を偽造したかどうか、1回しか見ていない映画なので忘れました。
途中の道でも、砂漠の中ですから、ひどい暑さ(この物語の季節は忘れましたが砂漠は冬でも暑いです)。でも、見られる心配のないところでは、タンク上部の蓋を開けて何とかしのぎます。
クウェート国境の検問所に近づき、運転手役が「すぐ戻るから」と言ってタンク車の蓋を閉めます。ところが、検問所の役人が意地悪で、なんだかんだと話しかけたり質問したり。運転手役は焦るのですが、怪しまれないために返事をしなければならず、数時間が過ぎます。やっと解放された彼が急いでタンク車に戻り、声を掛けますが何の返事もありません。慌てて上の蓋を開けますが、中の3人は既に死んでいました。

熱中症、脱水症、酸欠などが原因でしょう。恐らく、こういう悲劇は本当にあったのだと思います。強烈なショックを受け深い印象の残る名画でした。が、残念ながら、こういう名画は広く知られる機会がありません。
日本語訳では「太陽の男たち」となっていますが、アラビア語、英語、ドイツ語では「太陽の中の男たち」です。

本は読んでいませんでしたが、ドイツ・アマゾンにあるようなので、近く読んでみようと思います。カナファーニの別のドイツ語版は持っています。これもショッキングな物語で、又の機会に紹介するかも・・・

ドイツ語版表紙



日本語版はないと思いましたが、アマゾンにありました。ペーパーバックになるほどは売れないせいか単行本で高いです。


蛇足ながら・・・アラビア語の本を買うのは簡単ではありません。私のアラビア語蔵書は全て平和な時代のダマスカスで買ったものです。
多くの国にアマゾンがありますが、アラビア語圏のアマゾンはありません。
以前ウィーンにアラビア語本専門の小さな本屋さんがありましたが、その場所は別の店舗になっており、今もアラビア語専門書店があるかどうか不明。


 今日の蛇足

友達同士でも、外部の事情により、上記のような悲惨な結果になるのです。海路、陸路を問わず、金さえ巻き上げれば難民の命なんてどうでもいいという難民マフィアの犠牲になった人たちは本当に気の毒です。

逆に、このところの難民危機で、ハンガリーに足止めされた難民を少しでも救おうと、オーストリアからマイカーでハンガリーに出掛けた数人の女性(つまり数台)がハンガリー警察に逮捕されるという事件も起きましたが、幸い、すぐ釈放されました。オーストリアの道路を歩いている難民らしき人たちに話しかけ、目的地はベルギーだと聞いてベルギーまで送ってあげたオーストリア人夫婦もあります。

こういう人たちもいますが、逆に難民を犯罪者扱いする人たちもいます。
この週末ハンガリーに「たまっていた」難民が1万5000人ほど、オーストリア国鉄の特別列車やバスなどで目的地ドイツ(ミュンヘン)へ到達しました。ミュンヘン駅でも、赤十字、支援団体やボランティアの人たちが難民の世話をしていますが、ドイツ各地の難民用宿舎が焼き討ちされる事件も続いています。


欧州連合諸国の難民受け入れ姿勢を示す地図


緑は受入国:北からスウェーデン、ドイツ、ベネルックス3国、フランス、オーストリア、イタリア、ギリシャ
黄色はかなり制約している国:イギリス、デンマーク
朱色が拒否国:フィンランド、バルト3国、東欧諸国、スペイン、ポルトガル
明るいグレーは欧州連合以外の国々。


難民を受け入れるか否かより根本的な問題は、戦争や内戦がなくなることです。しかし、それは今日明日で実現できるものではありません。
戦争、内戦、紛争のある国や地域を全部挙げれば、以前にも書いたとおり「ばらばらモザイク世界大戦」になります。
シリアとイラクで勢力を広げるイスラム国の拠点を、これまでアメリカが空爆してきました。
難民危機を受けて、イギリスはシリアへも空爆を行うとし、フランスが空爆参加を表明していますが、どれほど効果があるでしょうか?
地上部隊は派遣できないのです。派遣される兵士の人命尊重も大切ですが、派遣すれば本当の世界戦争になる恐れがあるからだと思います。

かなり深刻な現状と言えるでしょうが、興奮したり絶望したりせず、可能な平和的解決法を模索し実行するよりほかないと思います。


 もうひとつの蛇足

ヨーロッパ各国の国境をどう越えるか、ちょっとややこしいシェンゲン協定を御覧ください。