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ミューズの声聞こゆ

なごみと素敵を探して
In search of lovable

練り切り

2019年01月04日 | 珠玉

 大晦日、喫茶店アルファヴィルの入り口ドアを押して入ってきたNPO法人なごやかの理事長は、オーナーと並んでカウンターの中にいる私を見て、お約束のセリフを発した。

「きみは、ウチの管理者じゃなかったっけ?」

「アルバイトのIさんが弘前へ帰省中なので、年末年始、事業所が休業の私がお手伝いしているんです。」

そうなんだ、と言いながら、彼はカウンターのスツールイスに腰掛けた。

「来客へお持たせするお土産を和菓子店へ買いに行ったら、とてもきれいな練り切りが並んでいたので、みなにごちそうしようと思って。」

私がお店に出ているのもお見通しだったのか。

理事長から差し出された菓子箱を開けたオーナーは、小さな驚きの声を上げた。

私ものぞいてみた。

みかんや梅、寒椿などに混じって、雪だるまがいた。

なんだか目が合ったような気がした。

「可愛らし過ぎて、とても食べられませんね。」とオーナー。

「賞味期限がありますから。」

 理事長は次の約束があるので、とコーヒーを一杯飲んだだけで出て行った。

ねえ、高梨さん、このお菓子をじっと見つめていると、あの方の優しさが伝わってきて、とっても暖かく幸せな気持ちにならない?

再度箱をのぞき込みながらそう独り言のように言ったオーナーの笑顔は、写真に収めたいほど可憐なものだった。

 

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