今冬の寒さはなんだかやけに体にこたえる。
そんな理由からでもないのだが、例年になく手持ちのコートをたくさん出して、とっかえひっかえ着ている。
その中の一枚に、ジョシュア・エリス社のカシミア生地で仕立てたものがある。
同社は創業250年以上の、イギリスで最も古い生地ファクトリーの一つだ。
もう20年以上前のこと、初めて訪れた出張先で、時間調整にと古いデパートに立ち寄った。
地場の銘菓をお土産に買い、それでも時間があったので紳士服売り場へ足を向けると、陳列棚の一番上に光沢のある毛足の長いグレーの反物が置かれ、そこに場違いなほど可愛らしいポップがちょこんと載っていた。
「ジョシュア・エリスの最高級カシミア生地でコートを作りませんか、セールです!!」
ミスマッチだなあ、としげしげ眺めていると、いかがですか?と声を掛けられた。
顔を上げると、店員さんの屈託のない笑顔があった。
「遠方なのですが、送っていただけますか?」(何を言っているのだ、僕は!)
もちろんです!
「じゃあ、お願いします。」
ちょうど腕に抱えていたラルフ・ローレンの紺のロングコートの寸法を参考にしながらで、採寸はあっという間に終わった。
ずいぶんお安くなっていますね、と尋ねると、最後の一枚分なので、お値引きさせていただきました、と納得の答えが明るく返ってきた。
今思うと一つだけ残念なのは、完全アウェイだったのと、値段が値段だけに、冒険せず無難な同系色の裏地を選んだことだ。
こんなにも長持ちして、今年これほど着るのなら、裏地をもっと派手なものすればよかった、いっそのこと交換しようか、とも考えたけれど、工賃だけでちょっとしたスーツのお仕立て代ほどかかってしまう。
あと何年、何回着るかと思うと、ためらいが胸に湧き上がってくるのだ。
日本での取扱法人のHP↓
http://greenwich-showroom.com/brand/joshua_ellis/history