ミューズの声聞こゆ

なごみと素敵を探して
In search of lovable

このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。

大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。 また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。

フードペーパー

2021年11月15日 | 日記

 

 いい年をしてこんなことを書くのはやや気が引けるが、白い紙を見るといまだわくわくするし、ノートや鉛筆が大好きだ。といっても、二本前に書いたとおり、もう20年近く手書きするのはモレスキンへ年一冊で、あとはすべてノートPCでのデータ入力としているため、文房具店へ行っても眺めるだけになっているのだが。

 諸般の事情により20代で家業を嫌々継いだころ、右も左もわからなかったことから、毎日びっしり業務日誌をつけた。好んで使ったのは、ナカバヤシのB5、糸綴じ、30枚。安価なのに紙質が良かった。同製品の糸綴じは1万回の開閉にも耐えうるのだそうだ。30枚は割とすぐ終わってしまうのだけれど、飽きなくていい。ノートの意外な大敵は「飽き」だ。使い切らないノートが何冊もたまって行くのは罪悪感をかき立てられるし、自分が無能に思えてくる。だから当時は薄いノートが向いていた。

結局、今の会社を起業するまでの約17年間でおよそ150冊のノートを書き、遅まきながらノートを使い切る習慣と自信を身に着けた。そしてそれは今も続いている。

 そんな僕が、久しぶりにノートを購入した。

たまたま観たテレビ番組がきっかけだった。

越前和紙の老舗に育った小学生の男の子が、食べ物をまぜ込んだ紙を作る自由研究を5年間続け、その成果にインスパイアされた工芸士の母が捨てられるニンジンやミカンの皮を漉き込んだ和紙を作った。それが「フードペーパー」と命名され、ノートやカードが市販されているという。

さっそくノートを取り寄せてみた。ブドウは品切れのようでミカンを。

1冊550円。送料350円。表紙は楮(こうぞ)と麻にミカンの皮を混ぜた和紙=フードペーパーで、思った以上に凹凸があるが、決して嫌な触感ではない。慣れそうにないカンジが逆に面白い。ただ、鼻を近づけてみたものの、ミカンの香りはしなかった。かえって本文(中身)の再生タブロ紙独特のにおいの方が強い。

やや残念だったのは、SDGsサイクルのくくりで紹介されていたこのノートが無線綴じ(紙の背を接着剤で綴じる製本法)だったこと。

僕自身は単に、大事なことを書きつけた大切なノートが酷使や経年劣化でもバラバラになりにくい糸綴じが好みなだけだが、少し考えてみれば、エコなフードペーパーに化学接着剤を使うのはナンセンスだ。(たぶん企画・デザインは別なのだろう。)

それでもなお僕の胸を打ってやまないのは、家業に取り組む男の子のまっすぐなまなざしだ。

彼とその家業の前途が明るいものであることを心から願いながら、このノートを使って行こう。さあ何を書く?

 

 

 

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