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流野精四郎&東澤昭が綴る読書と散歩、演劇、映画、アートに関する日々の雑記帳

障害者美術展を観る

2013-03-18 | アート
 3月16日(土)午後2時半、東京芸術劇場5階展示ギャラリーでこの日まで開催されていた豊島区障害者美術展「ときめき想造展」の表彰式に出席した。
 豊島区在住・在勤・在学または区内施設に通所・入所する障害を持った人たちの展覧会で今回が6回目となる。主催:豊島区・豊島区社会福祉協議会、共催:財団法人日本チャリティ協会。
 61点の応募作品のほか、歴代最優秀賞受賞者の作品12点、障害者アート教室の作品16点が展示され壮観である。
 今回、最優秀作品賞を受賞したのは久保貴寛さんの「高原の街並み」で、遠く低い山並みの上を雲が流れ、その手前にヨーロッパ風の建物が立ち並んで街並みを作っている。画面の3分の2ほどは菜の花畑が占め、その真ん中を街につながる道が続いていて、2匹のウサギが寄り添うように歩いている。街の上には気球が浮かび、そんな街並みを雲と一緒にのんびりと眺めている、そんな絵である。
 表彰式終了後、ご挨拶した久保さんとお母様からは、ご自身の作品81点を収めた素敵な画集をいただいた。画集に収載された作品を見ながら、久保さん独特の世界が広がっているのを感じて感嘆する。
 私は絵画に関してまったくの素人なので的確なことを言えないのだが、展示された作品からは、見る側の感性であったり、感受性であったり、人間性そのものが逆照射されるのを感じる。なかなか怖い作品たちなのだ。

 さて、今回の展覧会では、特別企画として、NHK大河ドラマ「平清盛」の題字で一躍日本中に知られることとなったダウン症の書家・金澤翔子さんの作品展が同じギャラリーで同時開催されていた。
 金澤翔子さんとは書の師でもあるお母様とご一緒に12日(火)、作品展の初日にお会いすることが出来た。その小柄な身体のどこからあの力強い作品が生まれるのかと訝しく思えるほどだが、日常の翔子さんはどこまでも無垢で愛らしい。
 一方、その書の修行は相当に厳しいようで、必ず涙を流すほどだというが、その涙を乗り越えるとまさに神が降りてきたとしか思えない瞬間があるのだそうで、そこからあの作品群が生まれたのだ。
 絵画以上に書にはまったく造詣のない私だが、その作品のパワーは十分に感じることができた。多くの人がこれらの作品を前にして元気付けられ、生きるための一歩に向けて背中を押してくれるような励ましを感じたに違いないのだ。
 得がたい貴重な瞬間なのだった。


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