坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

彫刻とデッサンの関係

2010年08月27日 | 展覧会
デッサンというと彫刻家や画家にとって、下図やスケッチという意味合いが大きいのですが、20世紀を代表するイギリスの彫刻家のヘンリー・ムアの場合、熟練期に入っていくと、デッサンは一つの作品として密度が高まっていきます。これはちょっと余談ですが、独特の女性像として有名なモディリアニは最初彫刻家として出発し、原始美術に影響されたデフォルメにより細部をそぎ落としたような絵画の女性像と彫刻は造形上とてもつながりがあるように思います。
現在、ブリヂストン美術館で開催中の「ヘンリー・ムア」展では、「横たわる人物」や「母と子」のモニュメンタルな野外彫刻で知られる代表作とともに、「ストーンヘンジ」の版画作品を含むパステルや水彩、リトグラフなども数多く出品されています。
自然の石や骨から創作のインスピレーションを得た彫刻家の作品として求心的力へと集約していく源が版画や水彩などから伝わってくるようです。

●「ヘンリー・ムアー生命のかたち」/開催中~10月17日/ブリヂストン美術館(東京・京橋)

◆2007年1月に開館した国立新美術館(東京・六本木)が早くも入場者1千万人間近のニュースが入ってきました。「陰影礼讃」展が開催されますが、初日あたりにセレモニーが行われるようです。