坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

「印象派イヤー」の中盤の見どころ

2010年08月18日 | 展覧会
この美術ブログをチェックして頂いている方は、今年は「印象派イヤー」印象派のあたり年であることをもうご存じでしょう。春先のルノワール展から始まって、オルセー美術館展も大入りだったようで、印象派展というと日本ではとくに人気が高いと言われています。
今年の後半もドガ展、ゴッホ展他大型展が続いています。今年はとくにそれぞれの展覧会の質の高さ、充実度が挙げられます。
1874年第1回の「印象派展」がパリでモネ、ピサロ、ルノワール、シスレーなど前衛画家が集い、サロン派に対抗して開かれ、回を重ねるごとに市民権を得ていきます。この中にはドガもいますが、一口に印象派と言ってもそれぞれ個性の違いがあり、それはルノワールが徐々に人物画へと主軸を移していくようになり、技法的に特徴であった筆触分割(小さいタッチを並置することにより光の陰影をとらえる)においても、統一的な法則はありませんでした。外光派と言われるように風景作品が多く戸外の光の移ろいを、光の色の変化を画面に定着しようとしました。
掲載作品のアンリ・マルタンはシニャックら新印象派の仲間で、細かいタッチの並列で淡い光に包まれる山合いの牧歌的な光景をとらえました。緑の中に民家を俯瞰した構図でどこの風景というのではなく、どこかで見たような懐かしさを誘う風景です。市民社会を描いた印象派の作品は誰もが共感する幸福の調べを紡ぎだしています。

●モネ・ルノワールと印象派・新印象派展/開催中~9月26日まで
 /東京・港区松岡美術館/Tel03-5449-0251