閑静な住宅街のど真ん中に、そのお屋敷はあります。
入り口には「鬼塚組」と書かれた大きな看板。絶えず強面の人達が見張りをしています。
周りの住民は、怖いから決してこのお屋敷の前を通りません。そこはまるで、海に隔てられた孤島のようです。人々はそこを、鬼が島、と呼びます。
おやおや?
そんな誰も近寄らないようなお屋敷に、一人の若い女性が入ろうとしています。高校生でしょうか、制服を着て、うっすら化粧もしています。
入り口には見張りのお兄さんがいます。2メートルはあろうかという巨体です。
お兄さんはその女性に気づくと、深々とお辞儀をします。
「お嬢ちゃん、お帰りなさいませ」
お嬢ちゃんは当たり前のようにお兄さんの横を通り過ぎ、大きな門をくぐります。
大理石の立派な門です。
お屋敷に入り、お嬢ちゃんは靴を放る様に脱ぎ捨てます。慌てて後についていたお兄さんがそれを直します。
「お嬢ちゃん、どちらへ?」
お嬢ちゃんは平然と答えます。
「んー。パパのとこ」
お兄さんはまた慌ててお嬢ちゃんの前に立ちふさがります。身長差は40センチ以上あります。
「いけません・・・。組長は今読書中です・・・・」
「うるさいなぁ!どいて!」
ドンと右肩をどつかれ、お兄さんはよろけました。その隙にお嬢ちゃんはスタスタと奥へ向かいました。
古風で上品なお庭を横目に、お嬢ちゃんは組長の部屋へと続く廊下を歩きます。この家にいるとどうも落ち着かない。お嬢ちゃんは思いました。
そしてノックもなく組長が読書をしている部屋に入りました。
「誰だ!ノックも無く勝手に入ってくる無礼者は!」
腹の底から響くような声です。そしてその顔は鬼と全く区別がつきません。
「あたしだよ、パーパ」
お嬢ちゃんは全く怯みません。
「ああん!ヤヨイちゃんじゃないでしゅか~」
甘えるような声です。態度は一変して、父親、いえ、赤ん坊のようです。
ヤヨイは呆れたように言い返します。
「・・・・もう!その言葉遣い止めてって言ってるでしょ!」
「ごめんなしゃ~い」
『面目にゃい☆』みたいな感じで組長は舌を出しながら軽く頭をこづきました。腹立ちます。
軽い殺意にさいなまれながら、ヤヨイは言いました。
「何読んでるのさ?」
本に目を戻しつつ組長は答えました。
「『ストップ!!ひばりくん!』の3巻ですよ。これが面白いんだにゃー」
すでに組長はマンガに夢中です。ヤヨイは呆れ果てました。
ヤヨイは組長の前まで寄り、マンガを取り上げ、ニヤニヤ笑いながら言いました
「パーパ!お小遣いちょうだい!」
それに応えるように、パパも笑いながら「いくらだい?」と尋ねました。
「500万」
破格です。しかし、
「うんいいよそこの金庫にあるから。番号はいつもの」
即答です。ヤヨイは「ありがと~!」とパパに抱きつき、マンガを返してさっさと金庫へ向かいました。
金庫を開けると、札束が1束2束3束・・・・・数え切れないほどあります。
ヤヨイは高校のカバンに次々とその札束を入れました。カバンが福沢諭吉で溢れかえりました。でもまだまだ金庫には札束があります。
(まぁ、これくらいで十分か)
金庫を閉め、部屋を出ます。パパはマンガに夢中です。
部屋を出ると、そこには先ほどのお兄さんが心配そうに立っていました。
「あら赤沢、まだいたの」
つまらなそうにヤヨイは言いました。
「お嬢ちゃん、まさかまた組長にお小遣いもらったんじゃ・・・?」
「そうだけどぉ」
ヤヨイは廊下を歩き出します。カバンの紐が肩に食い込んで痛いので、手持ちに替えました。
後を追いながら赤沢は言います。
「あの・・・うちの組もですね・・・最近経営難に追われてまして、なんと言いますか・・・お嬢ちゃんもそこら辺をご承知いただきたいのですが・・・・」
口をあんぐり開けてヤヨイは振り返りました。
「あ?文句あんの?親父に言いつけるぞ?」
赤沢は身の毛のよだつ思いがしました。これ以上何もいえません。
お屋敷を出るヤヨイ。ほっと一息つきます。大理石の門が夕日に映えて綺麗です。
門をくぐると、別の人が見張りに立っていました。
「お嬢ちゃん、いってらっしゃいませ・・・どちらへ?」
深々と礼をします。
「青田」
ヤヨイはダルそうに言いました。青田は顔だけ上げました。
「余計なことは聞かない」
「ははっ」
また深々と礼。
優越感に浸るように堂々と道の真ん中を歩き出すヤヨイ。ここは車すら通りません。
「ふふ、いっちょあがり。これで資金は調達できたわ」
そうつぶやくと、口笛を吹きながらヤヨイはカバンを持つ手を持ち替えるのでした。
第1話
第2話
第3話
第4話
入り口には「鬼塚組」と書かれた大きな看板。絶えず強面の人達が見張りをしています。
周りの住民は、怖いから決してこのお屋敷の前を通りません。そこはまるで、海に隔てられた孤島のようです。人々はそこを、鬼が島、と呼びます。
おやおや?
そんな誰も近寄らないようなお屋敷に、一人の若い女性が入ろうとしています。高校生でしょうか、制服を着て、うっすら化粧もしています。
入り口には見張りのお兄さんがいます。2メートルはあろうかという巨体です。
お兄さんはその女性に気づくと、深々とお辞儀をします。
「お嬢ちゃん、お帰りなさいませ」
お嬢ちゃんは当たり前のようにお兄さんの横を通り過ぎ、大きな門をくぐります。
大理石の立派な門です。
お屋敷に入り、お嬢ちゃんは靴を放る様に脱ぎ捨てます。慌てて後についていたお兄さんがそれを直します。
「お嬢ちゃん、どちらへ?」
お嬢ちゃんは平然と答えます。
「んー。パパのとこ」
お兄さんはまた慌ててお嬢ちゃんの前に立ちふさがります。身長差は40センチ以上あります。
「いけません・・・。組長は今読書中です・・・・」
「うるさいなぁ!どいて!」
ドンと右肩をどつかれ、お兄さんはよろけました。その隙にお嬢ちゃんはスタスタと奥へ向かいました。
古風で上品なお庭を横目に、お嬢ちゃんは組長の部屋へと続く廊下を歩きます。この家にいるとどうも落ち着かない。お嬢ちゃんは思いました。
そしてノックもなく組長が読書をしている部屋に入りました。
「誰だ!ノックも無く勝手に入ってくる無礼者は!」
腹の底から響くような声です。そしてその顔は鬼と全く区別がつきません。
「あたしだよ、パーパ」
お嬢ちゃんは全く怯みません。
「ああん!ヤヨイちゃんじゃないでしゅか~」
甘えるような声です。態度は一変して、父親、いえ、赤ん坊のようです。
ヤヨイは呆れたように言い返します。
「・・・・もう!その言葉遣い止めてって言ってるでしょ!」
「ごめんなしゃ~い」
『面目にゃい☆』みたいな感じで組長は舌を出しながら軽く頭をこづきました。腹立ちます。
軽い殺意にさいなまれながら、ヤヨイは言いました。
「何読んでるのさ?」
本に目を戻しつつ組長は答えました。
「『ストップ!!ひばりくん!』の3巻ですよ。これが面白いんだにゃー」
すでに組長はマンガに夢中です。ヤヨイは呆れ果てました。
ヤヨイは組長の前まで寄り、マンガを取り上げ、ニヤニヤ笑いながら言いました
「パーパ!お小遣いちょうだい!」
それに応えるように、パパも笑いながら「いくらだい?」と尋ねました。
「500万」
破格です。しかし、
「うんいいよそこの金庫にあるから。番号はいつもの」
即答です。ヤヨイは「ありがと~!」とパパに抱きつき、マンガを返してさっさと金庫へ向かいました。
金庫を開けると、札束が1束2束3束・・・・・数え切れないほどあります。
ヤヨイは高校のカバンに次々とその札束を入れました。カバンが福沢諭吉で溢れかえりました。でもまだまだ金庫には札束があります。
(まぁ、これくらいで十分か)
金庫を閉め、部屋を出ます。パパはマンガに夢中です。
部屋を出ると、そこには先ほどのお兄さんが心配そうに立っていました。
「あら赤沢、まだいたの」
つまらなそうにヤヨイは言いました。
「お嬢ちゃん、まさかまた組長にお小遣いもらったんじゃ・・・?」
「そうだけどぉ」
ヤヨイは廊下を歩き出します。カバンの紐が肩に食い込んで痛いので、手持ちに替えました。
後を追いながら赤沢は言います。
「あの・・・うちの組もですね・・・最近経営難に追われてまして、なんと言いますか・・・お嬢ちゃんもそこら辺をご承知いただきたいのですが・・・・」
口をあんぐり開けてヤヨイは振り返りました。
「あ?文句あんの?親父に言いつけるぞ?」
赤沢は身の毛のよだつ思いがしました。これ以上何もいえません。
お屋敷を出るヤヨイ。ほっと一息つきます。大理石の門が夕日に映えて綺麗です。
門をくぐると、別の人が見張りに立っていました。
「お嬢ちゃん、いってらっしゃいませ・・・どちらへ?」
深々と礼をします。
「青田」
ヤヨイはダルそうに言いました。青田は顔だけ上げました。
「余計なことは聞かない」
「ははっ」
また深々と礼。
優越感に浸るように堂々と道の真ん中を歩き出すヤヨイ。ここは車すら通りません。
「ふふ、いっちょあがり。これで資金は調達できたわ」
そうつぶやくと、口笛を吹きながらヤヨイはカバンを持つ手を持ち替えるのでした。
第1話
第2話
第3話
第4話
桃太郎話w
ヤヨイのこれからが気になります(*´艸`)