先週、こんなものを入手しました。
蟻育成キット、その名も『アントクアリウム』です。説明書の言葉を拝借すれば、「NASAの科学者達に連れられて、スペースシャトルSTS107に搭乗し」たアイテムだそうで、無重力状態での蟻の生態を調べるのにつかったそうです。下半分が青くて透明なジェルで敷き詰められていて、「栄養分に富んだ透明で無害なジェルは、アリが生活する巣となり、 またアリが生きていくために必要な水分やエサにもなって」いるんだそうです。すげぇなこりゃ。
蟻を飼いたいとは、以前からここでも言っていたことですが、俺は生き物を飼うことに対して抵抗感を抱いていたんですよね。
なぜって、家を2,3日空けることがざらにあるからなんです。餌やりとかその他管理が怠り、生き物を早死にさせてしまったら申し訳ない。だから飼うのをためらっていました。
でもこのアントクアリウムは餌をやらなくても平気。たまに蓋を開けて換気や掃除をしてあげればいいだけだそうです。手軽で楽しそうでいいですよねぇ。
これを俺のために探してくれたマイハニーに感謝だぜ!
さて、これからはこのアントクアリウムをケース、もしくは箱と呼ぶことにしましょう。なぜってアントクアリウムっていちいち長ったらしいしネーミングがダセェから。
本日4月24日から、このケースでの蟻の生活が始まります。逐一ここで観察日記を更新したいと思います。興味のある方は是非ご覧いただきたいです。
初回はイベント盛りだくさん、長い日記となりそうです。覚悟して読むべし。
朝10時。蟻捕獲作戦開始。幸運にも俺の家の軒下にでっかい蟻コロニーがあります。ここなら雨にも打たれないし人通りも少ないので踏まれたりしない。蟻って頭いいなぁ。
ウチのベランダ(?)のすぐ下にでかい蟻の巣があります。この写真だと分かり難いですね。巣穴が10個くらいあるのです。今日は天気がいいのでついでに布団も干しました。
さて、この複数の巣穴はきっと地中でつながっているんだと思いますが、なるべく同じ穴から出てきた蟻を捕まえたいのです。なぜって「同じ巣から出てきたアリ同士でないと喧嘩をしてしまう」かもしれないからです。
つーわけで同じ巣から出てきた蟻を5,6匹ゲットするどー!って意気込んでいた俺だったのですが・・・。
これがね、すっごい難しいの。
「蟻なんて捕まえるの簡単じゃん」って思っている方、甘い甘い。問題はね、捕まえた後なんですよ。
手で掴むとばい菌がついて蟻が弱ってしまうので、ケースに付属していたガラス棒に一匹を乗せ、難なくケースの中へ入れた俺。すかさずもう一匹捕まえてケースの中へ入れようとするのですが・・・蓋をあけた瞬間にさっき捕まえた蟻が脱走するんですよ。延々これの繰り返し。3匹以上ケースに入れることができない。
慣れない環境に放り込まれた直後の蟻ってすっごく活発で、手に負えません。無理です。磐石な方法で攻めてもラチがあかなそうです。
さらに付属している小さいケースがあるんですが、これに蟻を入れたところで・・・
どうしろと言うのか。携帯用でしょうか?ちなみにこっちには空気用の小さい穴がないのでいれっぱだと確実に死にます。
そこで考えたのが「餌で釣るぞ」作戦。固まっている砂糖を地面に置いて、蟻が複数群がっているところをすかさずゲットです。一網打尽です。まぁ説明書に書いてあった方法なんですけどね。
砂糖を置いて30分、様子を見てみると確かに蟻が群がっていました。
うん、予想通り集まってる・・・・うん・・・・・。ってここからどうすればいいんじゃー!!
恐る恐る手で砂糖をすくい上げてみます。案の定、蟻たちは一目散に逃げ出します。ダメじゃんこれ。もっとよい方法を考えなくてはなりません。
そこで採用されたのが、急須さん提唱の「下に何か敷いてみれば?」作戦。急須さんは厚紙と言っていましたが、俺オリジナルに改良して手柄を横取りしたいので、サランラップを砂糖の下に敷いてみました。これで蟻が群がった瞬間にラップごとガバっと包んでしまえば蟻たちは袋のねずみです。そのままケースへポイ。完璧です。俺が考えました。
風で飛ぶといけないので石で固定っと。蟻がラップの上へやってくるのを待ちます。
これがね、ラップを警戒して全然砂糖に寄ってこねえの。
さすが蟻、場慣れしています。いくら目の前に砂糖があっても、怪しいものには近寄りません。時々勇敢だか馬鹿だかよくわからん蟻が来て砂糖にしがみつくのですが、それでもせいぜい一匹か二匹。5匹を一気に捕ることはできません。
参ったね。どうしたものか。はて待てよ・・・・。
すでに地面は俺がぶちまかした砂糖のかけらでいっぱいなのですが、これに群がっている蟻たち、まったく動かないんですよね。
俺の幼いころ昆虫図鑑を読んでいた時の記憶によれば、確か蟻は砂糖を見つけたら体内の液体と溶け合わせて腹部に溜め込み、巣に帰って皆に配るか保存するんだったと思います。
だからその液体と溶け合わせるのに集中するため、砂糖のそばで動かずにいるのかもしれません。
この習性を利用できるのではないか?
俺はケースの中に砂糖をチラチラと撒きました。次にさっきと同様に棒で砂糖に群がっている蟻を拾い上げ、ケースの中に入れます。
おぉ!蟻はケースの中の砂糖に夢中です!動きません!
この隙に5匹入れることができる!
作戦は成功です!5匹捕まえることができました!
試行錯誤すること1時間15分、ついに蟻捕獲作戦は任務完了です。
蟻たちは捕まったことも知らずジェルの上に撒かれた砂糖をチューチューと吸っています。
「うひょー砂糖だ砂糖だ!」
「今年は豊作じゃ~」
捕まったことも知らずのん気に砂糖に群がる哀れな蟻たち。
蟻たちにとっては、喜びも束の間、って感じでしょうか。自分たちの置かれている状況に気づきます。まったく見覚えのない場所。俺ん家。
「こ、ここはどこだ!?非常にちらかっているぞ!!」
「俺たちひょっとして捕まったんじゃないか!?」
「うそぉ!?」
「そ、そんな・・・・!」
まさにカオス。いきなり小さなフィールドへと放り込まれた蟻たち。活発にケース内を走り抜けます。
事態は深刻。蟻たちは至急会議を開きだしました。
一箇所に集まって相談を始める蟻たち。一匹蚊帳の外なのはアウトローな奴なんでしょうか。親近感を覚えます。
かと思えば、急に皆散り散りになりケースの中を探索しています。どうやら手分けして地形を探っているようです。
蟻は触覚でコミュニケーションをとります。ってどっかに書いてありました。「こっちに餌があるよ~」とか「あっちは危ないよ~」とか「お腹が空いたよ~」って、触覚を触れ合わせることで察知します。つまり今のこの状況は、手分けしてケース内の地形を知り尽くし、触覚を触れ合わせて情報を交換しようとしているのだと思います。ナイス協力プレーです。
さぁ、ここからが(俺にとって)肝心要の戦いが始まります。
説明書から抜粋しますと、「
私たちも新しい家に引越しをするとワクワクするように、アントクアリウムに来たばかりのアリたちはとても活発に動き回ります。早いチームだと30分、遅いと2週間ほどミーティングをしてからチームワークで穴を掘り始め、アントクアリウムでの生活がスタートします」。そう、穴掘りです。団結力の強いチームだと30分、弱いチームだと何と2週間たってから穴掘りを始めるんだそうです。何ですかこの歴然した差は。ミーティングに2週間て、あんたら官僚かよ。
これってちょっと、見栄をはりたくなりますよね。果たしてウチの子達はどのくらいで穴を掘り始めるか、どうせなら新記録を樹立したいところです。がんばれ蟻たち!早く穴を掘り始めるんだ!
俺の思いは絶対に届いてないことでしょう、蟻たちは相変わらずウロチョロしています。ジェルの揮発性からかどうかは知りませんが、ケースの壁はやけに水滴がたまっています。湿気には注意しないといけませんね。で、蟻たちはこの壁に付いた水滴を足ですくい上げてはペロペロとなめています。か・・・かわいい!
先ほど入手した砂糖と溶け合わせ、腹部に溜めておくのでしょう。
他にもその水で触覚を洗っている子とかいたりします。猫が顔を洗うように・・・か、かわいすぎる!
蟻って意外とデリケートなんですねー。ちょっと歩いてはすぐ触角洗ったり足の水を払ったりします。
また、口いっぱいに水玉を乗っけた蟻がいました。これを他の蟻のところへ持っていき、少しずつ分け与える、なんて光景も見られました。蟻は一度体内に含んだ栄養分も、他にお腹が減って困っている蟻がいたら、それを吐き出して平等に分け与える、アンパンマン的慈善活動を行います。僕らも見習わないといけませんね。いや一度食ったものを吐き出して食わせろってことじゃないよ。
俺は小さいころ虫が好きで、図鑑ばかり読んでいる頃がありました。特に蟻に興味がわき、種類はよくしらんけど生態については結構な薀蓄をためこみました。蟻を育てること。夢だったなぁ。いや育てようとしたことはあったんだけど、結局虫かごだと巣の中が見えないから、薄っぺらいケースが欲しくて欲しくて・・・。でもガキの到底及ぶところじゃなかった。今ではこんな便利グッズをどっかの誰かさんが作っているんですね。
閑話休題。
ケースでさまよう事25分。蟻たちが急に真ん中に集まりだしました。そう、何を隠そう、そこには俺があらかじめ空けておいた浅い穴があるのです。別にズルとかじゃなくて、真ん中から掘ってもらうと見た目にも良いから誘導しているだけですよ。
「なんだこの穴はぁ!?」
「お前ちょっと覗いてみろよ」
「や、やだよお前行ってこいよ!」
穴を気にする蟻たち。結局穴には入らず、掘ることもなくひとまず保留。再度探索に励みます。
しかしかわいいっすね・・・。よぉーく見ると一匹一匹体のつくりも微妙に異なります。よく動く奴もいればほとんどサボっている奴もいるし、興味津々の奴もいればずーっとふてぶてしく触覚を洗っている奴もいる。蟻にも性格はあるんですねー。
ついに、ケースに来てから45分。蟻たち5匹は穴を掘りはじめました。ふむ、なかなかのタイムです。さすが俺が選んだ猛者たちです。
ってどこ掘ってんだてめぇら!俺が空けてやった真ん中の穴はどうした!?
俺が空けた穴は気に入らなかったですかそうですか。蟻たちはせっせと角を掘ります。といっても実際に掘っているのは3匹くらいの模様。他の2匹のうち一匹も時々掘削作業に参加するのですが、あごの力が弱いのか、どうも上手くできません。残る一匹は働いているように見せかけてサボってます。
「5匹で力を合わせてがんばって穴を掘るぞ!」な図。明らかに一匹サボっている感じです。
「よし皆、がんばって掘るぞ!」
(3匹)「おー!」
掘削作業に燃える3匹。対して反対側で休んでいる二匹は・・・。
「はぁ。やってらんねぇやってらんねぇ。何が「おー!」だよ。な?お前もやってらんねぇよな?まぁ一緒にダベろうや」
「は、はぁ・・・・」
一時間に5ミリくらいのペースで掘る蟻たち。本人たちからすれば気の遠くなる作業です。
現在作業開始から4時間。休憩中のようで作業ははかばかしくありません。果たしてこれからどうなることやら・・・・。目が離せません!!