自由広場

穿った独楽は廻る
遠心力は 今日も誰かを惹きこむ

西澤保彦著「七回死んだ男」

2012-02-16 12:07:15 | きままに一冊。
どのカテゴリに入るのか難しいですが、著者があとがきに書かれているのに従い、ミステリーのくくりでしょうか。高校生の主人公が「同じ日を9回繰り返してしまう体質」の持ち主という設定を礎に、祖父の会社の後継者争いの渦中で起こってしまった事件を、繰り返される同じ日の過程を試行錯誤して、未然に防げるように思索していくという物語。ホラーのようでありアドベンチャーのようでもあり、なによりもエンターテイメント性に秀でた作品です。


さして内容には触れず、思ったことなどを。一人称視点で描かれており、同じ日がリセットされて繰り返されるという設定は、サウンドノベルゲームを連想させます。作品が世に送り出されたのは95年。「弟切草」が93年で「かまいたちの夜」が94年か。サウンドノベルゲームブーム真っ盛り、ほんと寝る間も惜しんでプレイしていたよ。

どんな選択肢を選べばハッピーエンドを迎えられるのか。各登場人物のその日の行動を把握し、目論みや因果を探る様子などは、読本として斬新で、ゲームブックのようでもあります。


ただこの本、読むのにちょっとコツが要りそう。著者が元教師だからなのか、随所に説明をし過ぎるぐらいに行を割くことが多く、教科書的な赴きがあります。ここらへんは割り切った読み方が必要で、「あ~ここはあれに関して詳しく書いてるんだな」と事前に踏んで、流れがつかめている部分はサラッと読み飛ばすくらいの覚悟が必要です。一言一句逃さず読みたいタイプの人には、その辺りとても煩雑に感じてしまうかもしれません。

独特の語り口が私個人としてはとても好ましいので、他の何冊かにもあたってみます。



ちなみに、著者はカバーそでの部分にて、本作は映画「恋はデジャヴ」をヒントにして生まれたと記しています。「え、あの映画ってそんな昔だったっけ」と思い調べてみたら、なんと93年かよ。もう20年も前。主演ビル・マーレイはあの頃すでに頭が薄かったんだなあ。同じく主演の「ゴーストバスターズ」は84年公開。自分もおじさんになってしまったのう。できることならリセットしたいところだ。

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1 コメント

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この独特な語り口はどこから生まれる? (茉那)
2013-07-12 07:13:42
西澤さんの作品は結構面白い割に、意外に知られていない気がしますね~。
いろんなサイトで感想とか読んでいると、次は何を読むか悩みますが、
http://www.birthday-energy.co.jp/
ってサイトで、作者の西澤さんを評価する記事を見つけました。
相当変わり者らしいですよ・・・。

新作短編集の『ぬいぐるみ警部の帰還』を読んでみましたが、こちらも面白かった。
読後感も良い感じでした。脱力系も悪くないです。
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