我が家の地球防衛艦隊

ヤマトマガジンで連載された宇宙戦艦ヤマト復活篇 第0部「アクエリアス・アルゴリズム」設定考証チームに参加しました。

金剛改型宇宙戦艦(2203年改修型)

2018-02-10 22:30:12 | 宇宙戦艦ヤマト2202
【注記】
以下の文章は『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第四章 天命篇』時点の情報を元に一個人が書いた根も葉もない妄想駄文です。
当然、第五章以降のストーリーや公式設定とは一切関係しませんので、その点を予め御理解いただいた上で御笑覧いただけましたら幸いですm(__)m

金剛改型宇宙戦艦(2203年改修型)


 2202年末は、ガミラス戦役後の地球にとって新たな危機の予兆とも言うべき事件が相次いだ。

 ・八番浮遊大陸基地奪回作戦
  (地球防衛軍初のガミラス軍との大規模協同行動)
 ・ガトランティス軍カラクルム級戦闘艦 地球到達
  (太陽系及び地球の所在座標をガトランティス軍が認知)
 ・テレザート星へ向けヤマト出動
  (当初は艦単位の叛逆行動とされたが、後に地球連邦政府に追認)
 ・ガトランティス軍第八機動艦隊 第十一番惑星襲来
  (第十一番惑星開拓団・外洋防衛師団壊滅/ガトランティス機動艦隊は活動停止)

 僅か一か月程の間に重大事件が矢継ぎ早に発生していることが理解できるだろう。
 当然、これら事件に対するカウンターアクションも速やかに行われなければならなかった。なぜなら、これら事件の過程で帝星ガトランティス(ガトランティス帝国)の極めて高い侵略性と残虐性、そして圧倒的なまでの軍事力が明らかになっていたからだ。特に、十一番惑星に襲来した第八機動艦隊はカラクルム級戦闘艦を主力に構成され、その総数が万の単位に及んだことは、地球のみならず同盟国たるガミラス軍関係者までもを驚愕させた。

 当時の地球防衛軍(地球防衛艦隊)の基本ドクトリンは二つ――『波動砲艦隊構想』と『地球・ガミラス安全保障条約(通称:地ガ安保)』であり、二つの戦略は敵性勢力の侵略に対する短期的/長期的対応という点で表裏一体の関係性を有する。
 つまり、ガミラスからの本格的救援が間に合わない危機の初動においては波動砲艦隊を機動的に運用することで侵攻戦力を各個撃破しつつ(短期的対応)、長期的には大マゼランから長駆来援するガミラス基幹艦隊でもって敵戦力を包囲殲滅してしまおうという雄大なプランだ。
 こうした地球防衛軍の戦略構想に対し、予想される対ガトランティス戦の形態は完全に合致していた――しかし、敵の数があまりにも多過ぎた。
 当時、『波動砲艦隊構想』において想定された戦役初動における敵来襲戦力は数千隻規模に過ぎなかったのに対し、本格侵攻時のガトランティス軍予想戦力はそれを優に二桁以上上回るものと考えられた(『波動艦隊構想』において来襲艦隊の規模が当初数千隻と設定されていたのは、往時のガミラス軍余剰機動艦艇が約一万隻であったことに起因する)。

 また、より戦術的な観点で言えば、カラクルム級が示した異常なまでの強靭さも大きな問題だった。
 八番浮遊大陸基地奪還作戦の終盤、アンドロメダによる拡散波動砲射撃は敵味方識別を厳重に行ったことで、初見故に識別データになかったカラクルム級をターゲットから除外した。だが、直撃こそ免れたものの拡散波動砲の圧倒的なエネルギー奔流はその余波だけでも巨大なカラクルム級を焼き尽くすのに十分であり、この時点で完全に沈黙したかに見えた。
 しかし実際には、艦内には未だ生き残りの乗員がおり、艦の機能も多くが健在だった。復旧を果たしたカラクルム級は残敵掃討の為に接近してきたアンドロメダを掠めるように大加速をかけると、直前に地球へと長距離ワープを行った防衛軍艦艇を追ってワープドライブしてしまう。
 この際、アンドロメダは後部主砲にて咄嗟射撃を行い、その第二射がカラクルム級を捉えたものの、撃破どころか足を止めることすら叶わなかった。
 結果的に件のカラクルム級は、改装中の状態から無理やり稼働状態に持ち込まれた“ヤマト”の主砲射撃によってからくも撃破されている。
 だが、この顛末こそが地球防衛軍に深刻な懸念を抱かせることになったのである。



――地球防衛艦隊最新・最強艦であるアンドロメダの主砲を以てしても、カラクルム級戦闘艦は撃破できないのではないか?――

 その懸念を端的に言い表せれば以上のようになる。
 実際のところ、より旧式である筈のヤマトがカラクルム級を撃破できたのは射角や相対速度によるところも大きく、アンドロメダ級でも同様の条件であればカラクルム級の正面装甲を射貫可能であったことが後の調査によって判明したが、軍人という人種は何よりも戦場での実績を重んじる人々である以上、その懸念は容易には払拭されなかった。
 また、更に切実な問題として、アンドロメダ級ならばともかく、実質的な主力であるドレッドノート級やそれ以下の中小艦艇は、より小口径の主砲しか有しておらず、威力不足に対する懸念は一層深刻だった。
 アンドロメダ級以降の新型艦艇の主砲は射程と発射速度が何よりも重視されており、その陽電子ビームはエネルギー量こそ少ないものの、非常に高いエネルギー密度によって優れた非減衰性と貫通力を誇っていた。しかしその代償として、射貫後の破壊力においては、エネルギー量の乏しさから旧来砲に劣るというのが艦載兵器開発を所管する艦政本部の偽らざる評価であった。
 ガミラス戦役中に実用化された地球独自の陽電子ビーム砲――陽電子衝撃砲――はガミラスやガトランティスの砲熕兵器に対して相対的に高威力を誇り、それら列強艦艇の防御力・抗堪性に対して過剰なほどの破壊力を有しているという評価故に、新型砲では射貫後の破壊力よりも射程や速射性能というスペックがより重視されたのである。事実、新型砲は既知のガトランティス艦艇(ククルカン級,ラスコー級,ナスカ級)に対しては十分な威力を有しており、単位時間あたりの撃破効率は既存砲に数倍するというのが各種シミュレーションでの評価だった。
 だが、ガトランティス軍が新たに投入したカラクルム級は、ここまで概ね正しいと信じられてきた地球防衛軍の兵備開発方針を大きく揺さぶった。

――敵を撃破できない砲に存在意義はない――

 それは、ガミラス戦役において自らの砲威力の決定的不足から辛酸を嘗め尽くした地球防衛艦隊にとって当然且つ切実過ぎる主張であり、それ故に砲熕兵器を含む兵備行政全般を担当する艦政本部の混乱と動揺は大きかった。
 混乱のあまり、新型艦艇群の主砲を全て貫通後破壊力に優れる陽電子衝撃砲に換装するといった極端な意見も出たが、さすがにこれは即座に却下されている。必要な工業力や工期、資源といった物理的制約は勿論だが、カラクルム級追撃の際、金剛改型“ゆうなぎ”がほぼゼロ距離から三六サンチ陽電子衝撃砲を多数命中させたものの、目に見えるほどの損害を与えられていなかったからだ。
 事実、ヤマトに撃破されたカラクルム級の残骸を回収し調査した結果、陽電子衝撃砲であれ新型砲であれ、カラクルム級のヴァイタルパートを決戦距離内で射貫するには、最低でも16インチ口径以上の砲が必要と判定された。地球艦隊において之に該当するのは、ヤマトとアンドロメダ級を除けば、金剛改型の艦首砲(46センチ陽電子砲撃砲)のみであったが、本砲は艦首固定砲という特性と速射性能の低さから運用の柔軟性にやや難があるだけでなく、単装故に火力が根本的不足していた。カラクルム級追撃の際、ゆうなぎも本砲を使用することは遂になく、仮に使用していた場合、射貫は可能でもカラクルム級の艦体破壊は爆発威力の不足から達成できなかったであろうというのが調査と分析にあたった地球防衛軍艦政本部の公式見解であった。
 結果、半ば苦し紛れの決定ではあったが、仮に多数のカラクルム級が一斉に襲来してくるような状況が発生した場合には、通常火砲での撃破は断念され、『波動砲』を以て撃破するという方針が再確認された。
 しかし、その想定は一ヶ月も経たずして現実のものになってしまう。それも、彼らが“最悪”と考えたケースを数百・数千倍にした形で。



――主砲では撃破できない巨大戦艦が数十万、数百万の単位で押し寄せてくる――

 ガミラスの背中を追うように地域覇権国家への道を歩みだした地球連邦であったが、帝星ガトランティスの十一番惑星襲来はその覚悟と準備が如何に甘いものであったかを痛感させられる結果となった。
 襲来してきた帝星ガトランティス第八機動艦隊は二百五十万隻というガミラスですら未経験の圧倒的物量で構成されており、しかもその大半が数週間前に地球防衛軍を震撼させたカラクルム級戦闘艦で構成されていたからである。
 幸い、彼らは地球人には俄かには理解できない“芸”に走った挙句、ヤマトの波動砲とガミラスの置き土産――ゲシュタム式人工太陽――を組み合わせた次元波動エネルギー版EMP攻撃によって悉く無力化されたものの、それで地球防衛軍の受けたショックが和らぐ筈もなかった。
 もしもガトランティス軍第八機動艦隊が軍事的定石通り、その圧倒的大戦力で以って太陽系内各地に一斉侵攻を開始していたら、地球防衛軍と太陽系及び近傍に駐留しているガミラス軍(通称:在地ガ軍)は短時間で揉み潰され、太陽系の人類は根こそぎ殲滅されていただろうと判断されたからだ。
 二百五十万隻というどこかに常識を置き忘れてきたような数のカラクルム級戦闘艦を前にしては、二十隻や三十隻の拡散波動砲搭載戦艦など焼け石に水以下の存在でしかなく、どれほどシミュレーションを繰り返しても地球防衛艦隊は敵戦力の一パーセント未満の撃沈破を引き換えに全滅するという以上の結果は得られなかった。
 後に多くの史家は、この時のあまりにも強すぎる恐怖と強迫観念が、それまで比較的バランスの取れた編成を目指していた地球防衛軍の防衛力整備計画を極端な一方向へと暴走させるきっかけとなったと断じている。
 所謂『波動砲至上主義』の萌芽である。
 波動砲とその搭載艦艇を重視する『波動砲艦隊構想』の根幹は従来から変更なかったものの、その戦力整備方針は度重なる改訂により極端に先鋭化していくことになった。建造が進んでいた波動砲搭載艦艇は建造速度が更に引き上げられ、新規建造も追加に次ぐ追加が行われた。これに対応する為、2202年度より民生用に大きく配分比率が改められていた各種物資・資源・エネルギーを再び軍需用に集中する決定が下されている。



 『波動砲艦隊構想』における決戦戦術――統制波動砲戦――の主力はアンドロメダ級(A級)及びドレッドノート級(D級)とされていたが、この必殺の砲列を守護する存在として各種の中小型艦も多数建造中であった。これら艦艇は“補助艦艇”と定義付けられていたものの、その多くは個艦戦闘能力の極大化を目的に波動砲を装備しており、実質的には準主力艦としての機能が与えられていた。
 カラクルム級を睨んだ艦隊構想の改訂にあたり、これら補助艦艇群にも主力艦(波動砲艦)としての役割が明確に定められ、その結果、統制波動砲戦に組み込まれる艦艇数は一挙に数倍化することになる。
 しかし、この改訂にも問題はあった。中小艦まで組み込んだ波動砲隊列の大規模化は、隊列を防護する補助艦艇を決定的に不足させたからである。やむを得ず、新世代艦艇の配備進捗後は空間航路保護などの二線級任務への転換が予定されていた旧世代艦艇群(金剛改型,村雨改型,磯風改型)を補助艦任務に充当することが泥縄的に決定されたものの、その能力不足を指摘する声も大きかった。

 前述した通り、アンドロメダ級を筆頭とする新世代艦艇の主砲には新型ショックカノン『収束圧縮型衝撃波砲』が採用されていた。
 本砲の特徴はエネルギー密度の飛躍的向上による装甲貫徹力の強化と、減衰率の抑制による実質有効射程の延伸、更には一発あたりのエネルギー量低減による速射性能の向上であり、特に速射性能は砲身中間部に設置された陽電子収束器の併用により短時間ながら圧倒的なエネルギー投射能力を誇る。
 確かに、陽電子衝撃砲に比べて射貫後の破壊力に劣るというデメリットはあったが、それも異常なまでに堅牢なカラクルム級以外を相手にする場合には全く問題のないレベルであった。
 そうしたメリット/デメリットを考え合せれば、波動砲発射準備中の新型艦艇群に大挙して突撃してくるであろうラスコー級やククルカン級(八番浮遊大陸基地奪還作戦においても、装甲突入型ゼルグート級へ波状突撃を繰り返す両級の姿が確認されている)を駆逐しようとする場合、必要十分な威力を有し、既存砲よりも遠距離からより早いペースで敵を撃破可能な収束圧縮型衝撃波砲は最適な兵器だった。
 その点、新型ショックカノンであれ拡散波動砲であれ、一発あたりの破壊力には多少目をつぶってでも、速射性能と面制圧能力を極限まで追求した兵器であり、ある意味では数的劣勢を当然のものとして受け入れざるを得ない地球の戦略的環境が生み出した兵器と言えた。
 これに対し、旧世代艦艇の砲装備は従来型の陽電子衝撃砲であり、射貫後破壊力こそ申し分ないものの、射程や速射性能は新型砲に対して明らかに劣るというのが防衛軍内部での評価であった。
 こうした評価は、設計期間の短縮を目的に非波動機関搭載時の船殻設計をほぼそのまま流用したが故の能力不足として語られることが多く、事実そうした純スペック的要因も一部にはあった。しかし実際には艦艇を取り巻く戦術・戦略環境の変化が要因としては大きかった。



 2202年半ばまで増備が重ねられた旧世代艦艇群の建造目的は、まずもって列強の一線級艦艇に戦闘力で伍する艦をできるだけ早期に、できるだけ大量に整備することであった。次元波動エンジン実用化以前の旧世代艦艇は、出力重量比の小さい機関しか搭載することができず、その必然として艦の規模も限られるという制約があった。しかし、ガミラス帝国からの技術供与により小型次元波動エンジンの開発に成功したことで、これらの艦の戦闘能力は文字通り激変した。地球独自の陽電子砲である陽電子衝撃砲と各種宇宙魚雷の大威力によって、こと個艦レヴェルでの戦闘能力においては諸列強の同規模艦艇すら上回る艦を有することが可能になったのである。
 もちろん、これら戦後になって急速建造された艦の大半が、嘗ての極東管区(日本国)で設計された艦をタイプシップとしている点については、あまりに“政治的過ぎる”として連邦内での批判も少なくなかった。実際、金剛型にしても村雨型にしても最初の基本設計から既に三〇年以上が経過した“老朽艦”であり、世界各国に目を向ければヤマト型程ではないにしても、より新しく先進的な設計を有する艦も多数存在した。にもかかわらず金剛型や村雨型が戦後第一世代戦闘艦のタイプシップとして大々的に採用されたのは正に“政治”以外の何物でもなかった。
 戦役中のヤマト計画の成功と戦後の時間断層の発見、軍需工場化は、紛れもなく旧・極東管区によって達成された輝かしい成果であり、それがそのまま新生地球連邦における極東管区の権威と発言権として顕在化していたのである。
 だが、そうした批判も旧世代艦への次元波動エンジン搭載成功と大量配備を前にしては常に霞みがちだった。2201年以降、地球連邦加盟各国へ供給が開始された新造艦艇群は、各国からの批判を封じるのに十分な物量と性能を両立していたからだ。
 事実、再建から僅か三年余りにも係らず、第八浮遊大陸基地奪還作戦に地球連邦が投入した戦力は殆ど根こそぎ動員ではあったものの五百隻を遥かに超え、その中の一隻である金剛改型宇宙戦艦『ゆうなぎ』は肉薄雷撃によって自らの2倍以上の全長(規模で言えば8倍以上)を誇るメダルーサ級殲滅型重戦艦を単独で撃沈する等、砲雷撃戦における本型の高い攻撃能力を遺憾なく発揮した。

 だが、地球を取り巻く戦略環境の激変は、これら大幅な性能向上を達成した筈の旧世代艦艇群にも容赦なく襲いかかり、彼女たちに更なる変化を強いることになった。言わば『小艦よく大艦を屠る艦』から『少数を以て大軍を食い止める艦』への変化だ。
 良くも悪くも2201年以降の地球防衛艦隊は波動砲艦隊を中核として構成されていた。より端的に言えば、その戦略、戦術、戦力、更に遡って艦や機体、それらの装備品の調達・開発方針に至るまでの全てが、いかにして波動砲艦隊の隊列を維持しつつエネルギー充填時間を稼ぎ、万全な波動砲射撃を成功させるかを第一に練り上げられたと言っても過言ではない。
 もちろん、宇宙軍という組織が本来果たすべきとされる自勢力圏の保安維持や空間航路防護にも予算と人員が投入され、一定以上の作戦遂行能力を有してはいた。しかしそれはあくまで“副次的”にしか過ぎない点が極めて異色だった。いや、同盟相手であるガミラス帝国軍からは最早異常とすら捉えられていた。
 だが、僅か数年前にほぼ全ての宇宙戦力を失い、母星が滅亡に瀕したことを思えば、彼らが極端に走ったのも無理はなかった。容易に千や万の単位での戦力動員が可能な巨大星間国家に対し、未だ単一星系国家に過ぎない彼らが投入可能な戦力は(時間断層により破格の規模に達した工業力的にはともかく)人員面で百の単位が精々であり、侵略勢力に対して1/10や1/100の戦力で戦わなければならないのは、最初から確定事項だったからだ。
 圧倒的な戦力格差が存在する以上、母星系に対して大規模侵略を受けた際、彼らが選択可能な最も確実な邀撃方法は、自らの戦力集中度が最も高くなる自星系近傍もしくは自星系内で敵侵攻戦力を迎え撃ち、ひたすらこれを叩き続けることだった。もちろん、甚大な付随被害が発生するのも確実であったが、少なくとも連邦首脳部では、それは看過すべき犠牲と認識していた。その点、“滅亡”の恐怖とリアリティーが未だ生々しい時期であっただけに、国家としての意思は極めて冷徹且つ率直だった。



――たとえ自らの血で血塗れになろうとも、一人でも多くの敵を倒し続けよ。巨大な敵が厭戦気分に駆られるまで――

 こうした思考に基づいて作り上げられた組織とドクトリンを、ガミラス人たちが異常と捉えたのはある意味当然だった。戦略環境において、彼らは地球人とは正反対の地平に立っており、自らが“滅亡させる”ことは想像できても、“滅亡させられる”ことをリアルに想像できないからだ。
 その全てが、国家滅亡を賭けた『決戦』の為に築き上げられた組織――それがガミラス戦役で壊滅した後、ほぼ一から再建された地球防衛軍という組織であり地球防衛艦隊という戦力だった。
 彼らの徹底ぶりは、フラッグシップである二種類のアンドロメダ級にも色濃く表出している。一般的にアンドロメダ級は、波動砲を連装で装備した特徴的な艦容や初陣における波動砲射撃の光景があまりに鮮烈であった為、波動砲艦隊(波動砲隊列)の中核と認識されることが多いが、それは部分的には正しくとも、全てを言い当てている訳ではない。
 アンドロメダ級の艦種カテゴリーである『前衛武装宇宙艦』とは、最新最先端の武装を装備しているという意味だけではなく、ドレッドノート級を主力として構成される波動砲隊列――その文字通りの“前衛”として隊列防護を担うことをより重要な任務としているのである。
 より長射程・高発射速度を誇る新型ショックカノンも、ヤマトを遥かに超える防御力と継続時間を有する波動防壁も、ガトランティス軍の投擲兵器の転送座標を狂わせる重力子スプレッドも、空母型の四八機という圧倒的な同時発艦能力も、全てが波動砲隊列がエネルギー充填を完了させるまでの限られた時間、戦場を支配し、波動砲隊列を守り切る為の装備であり、長時間の経戦能力をある程度犠牲にしてでも瞬間的な戦闘能力を最重視した装備であった。
 その点で言えば、アンドロメダ級は波動砲隊列にとって最後の守護者であると共に、その一際目立つ巨躯によって敵戦力と砲火を自らに誘引するための囮でもあった。
 新生地球防衛艦隊の象徴とされたアンドロメダ級ですらそうである以上、他の補助艦艇については言うまでもなかった。補助艦艇群はアンドロメダ級よりも更に前方にあって、波動砲隊列の壊乱を企図して突撃してくる圧倒的多数の敵中小艦を排除することが第一の任務とされた。
 だがそれは、新型の中小艦艇から本任務を引き継ぐことになった旧世代艦艇群にとっては荷の重い任務であった。彼らの建造コンセプトはあくまで一対一の状況で同クラスの艦艇と攻防性能で渡り合う、若しくは圧倒することであり、一対多数の数的劣勢下で敵を制圧・駆逐することではなかったからだ。
 こうした(ある意味過剰な)性能再要求に応えるべく、旧世代艦艇群の改修計画が慌ただしく立ち上がったものの、期待された性能や役割に比して、投じられたリソースは限られたものでしかなかった。言うまでもなく、地球連邦が投入可能なリソースの大半はこの時期、新型艦艇(波動砲搭載艦艇)の増産につぐ増産で食い潰されていたからである。
 結果、改装メニューとしては最も効果的と分かっていても、時間と資源、工業力を大きく消費することになる次元波動エンジンの換装は真っ先に諦められ、最終決定された主要改修項目は以下の三つとなった。

 ・艦首砲を除く陽電子衝撃砲の収束圧縮型衝撃波砲への換装
 ・新型射撃管制システムの搭載
 ・主推進ノズルを大口径高効率型ノズルへ換装



 金剛改型の場合、25.4センチ(10インチ)口径の収束圧縮型衝撃波砲を三連装砲で四基、計一二門を装備する。口径こそ改装前の36センチから大幅に小口径化したものの、その速射性能は改装前の三倍以上に達した。
 過去、後期に建造された金剛改型の数隻がドレッドノート級用装備のテストベッドに供され、D級と同じ12インチ砲を連装四基八門搭載して各種テストを行った。しかし、エネルギージェネレータの出力不足から全門斉射時には目標の速射性能を達成することができず、再改修にあたっては十分な速射性能が発揮可能な10インチ砲が採用されたという経緯がある。
 尚、テストベッドとなった金剛改型の内二隻は、D級用新型波動砲のプロトタイプを艦首に装備し、単体での発射試験は勿論、二門同時発射時の空間への影響調査やアンドロメダ級用連装波動砲開発に貴重なデータを残した。艦の規模が限られる金剛改型に無理やり波動砲を搭載したことで、乗員の居住区やミサイル・魚雷用弾薬庫は大幅に削られ、重量増による操艦性の悪化は無視できないレヴェルにあったが、新型波動砲の大威力を買われ、この二隻は全テストプログラム終了後、内惑星艦隊に配備されている。

 収束圧縮型衝撃波砲の装備と合せて、射撃管制用電算機も新型への換装が行われた。拡散波動砲実用化時に開発された新型量子コンピュータ――タキオン電算機――がそれで、同時に三〇〇目標の脅威評価・追跡・照準が可能であり、ショックカノンと宇宙魚雷をフルに活用すれば十五目標の同時撃破が可能と判定されていた。
 こうして強化された同時多目標攻撃能力をより有効に活用すべく、更に機動性能の強化が図られた訳だが、幸い、この点についてはヤマトの第一次近代改修が大いに参考となった。
 ヤマトの改修も、次元波動エンジンには手を加えない方針で計画が策定されており、噴射ノズルに新規開発された大口径・高効率型ノズルを採用することで推力向上が図られている。
 改修によりヤマトは各部の装甲増厚や新装備の搭載で大幅に質量が増加していたものの、実質的な速度性能は改装前を上回っており、それはシュトラバーゼでのガミラス反乱勢力――反ガミラス統治破壊解放軍――との戦闘でも証明されている。本戦闘においてヤマトは高速機動によって常に戦闘のイニシアチブを握り続け、九隻のクリピテラ級とゼルグート級の各個撃破に成功していた。その成功は、臨時にヤマト指揮権を継承した土方宙将の果断な戦闘指揮と、島航海長の熟練した操艦技術があってのことではあったが、それと同時に、快速で鳴らすクリピテラ級に対して、容易に頭を押さえさせなかった改修後のヤマトの機動性能も特筆されるべきだろう。
 この大口径・高効率ノズルの更なる改良型が旧世代艦艇の改修にも採用され、機動性能向上に大きく寄与することになった。改修は艦尾E-472ブロック以降を新造ブロックに置き換える形で施工される為、改装対象艦がドック入りする前に新造ブロックが完成していれば、改修期間を大きく短縮することができた。



 以上の改修計画が大車輪でまとめられるのと並行して、試験を兼ねた第一号改修対象艦の選定が慌ただしく行われた。
 白羽の矢が立てられたのが、当時艦隊籍から離れ、防衛軍司令部の直轄艦となっていた金剛改型宇宙戦艦『ゆうなぎ』だった。
 ゆうなぎは第八浮遊大陸基地奪回作戦の最終段階において発生したカラクルム級戦闘艦の地球強襲に際して、防衛軍艦艇では唯一、カラクルム級の追尾、接敵に成功した艦であった。単独でのカラクルム級阻止こそ為し得なかったものの、カラクルム級を撃破したヤマトの砲撃が彼女から送信された座標データに基づいて行われたことを思えば、本戦闘におけるヤマトに次ぐ殊勲艦であることに間違いはなかった。
 しかし、この際のゆうなぎの行動がゆうなぎ艦長の完全な独断専行であったこと、地球防衛軍がカラクルム級の地球到達の失態を糊塗しようとしたことも重なり、彼女の“戦果”が公になることも正当に評価されることもなかった。
 更にゆうなぎにとっての不運は続く。
 彼女の艦長以下複数の幹部乗員が防衛軍司令部の方針に反発、出奔同然にヤマトを駆ってテレザード星へと旅立ってしまったのである。その結果、ゆうなぎと残された乗員たちは即日で艦隊籍を解かれると共に、防衛軍警務隊の厳重な監視下に置かれることになった。
 程なくヤマトの行動が地球連邦政府に追認され、ゆうなぎと乗員たちもようやく監視を解かれたものの、その存在は暫く放置され続けた。
 当時、防衛軍の艦隊籍にはD級をはじめとする新鋭艦が続々と配備されており、艦長や科長級の士官はそうした新鋭艦に優先して配属されていた。それどころか、士官の絶対数が全く足りず、役職に対する深刻な階級のデフレーションが発生していた程だった。そうした状況では、新鋭艦の配備により二線級への格落ちが確実な旧世代艦艇へ後任の艦長や科長が速やかに配属される筈もなく、それどころか固有の乗員まで他艦へ引き抜かれ始める始末だった。
 また、ゆうなぎ自身もカラクルム級を阻止した際の接触により、中破相当の損傷を負っており、その修理にも手が付けられていないままだった。ゆうなぎの損傷は、当初はカラクルム級に衝突した艦首部のみの小破と判定されていたが、後の精密調査によってオーバーブースト状態を強引に継続した主ノズルが異常加熱によって大きく歪んでいることが判明、損害判定が一ランク上方修正されたのである。
 修理の目処も立たず、一時はこのまま廃艦処分にされるのではないかとまで噂されたゆうなぎであったが、波動砲艦隊構想の改訂が彼女の運命を一夜にして大きく変転させることになる。
 金剛改型のヴァージョンアップ改修は、改修期間を短縮する為に、事前に準備した新造パーツや新造ブロックへの換装が主であり、損傷したゆうなぎを修理する際、調達上最大のネックとなっていた主ノズル部をそっくり取り換える計画だったことも彼女にとって有利に働いた。どうせ丸ごと交換する必要があるならば――という訳だ。
 改修工事は一度全乗員を退去させた後、極秘の専用工廠(とだけ乗員たちには説明された)で僅か十日という短期間で完了した。
 十日後、改修と合わせた各部の修理も完了し、真新しい塗料の香りを漂わせて出渠してきたゆうなぎの姿に、乗員たちは一様に感嘆の吐息を漏らしたという。



 林立する無数の砲身と大直径化した主ノズルの迫力は艦の印象を一変させ、機能美と同時にどこか優美さを漂わせていた改修前の金剛改型に、禍々しいまでの戦闘的オーラをまとわせていた。
 そして、実際の能力もその印象を全く裏切らなかった。改修後の彼女の砲装備は明らかに中小型艦キラーを指向しており、その代償として対大型艦艇戦闘能力はある程度限定されると考えられていたものの、必ずしもそうとは言い切れなかった。むしろ強化された機動性能により、大型艦への肉薄雷撃が相対的に容易となったとも言える。但し、そうした果敢且つ危険度の高い戦術の実施には(八番浮遊大陸基地奪還作戦時のゆうなぎがそうであったように)、指揮・砲雷・操艦・通信いずれにおいても高い技量が必要であり、そうした人員の確保こそが至難であったが――。

 改装後のゆうなぎにも、ようやく欠員のままだった幹部乗員が相次いで着任し、新艦長には応召の老三佐が就任した。
 彼はガミラス戦役終盤、戦傷の悪化から軍から退いていたものの、ガトランティス軍による第十一番惑星侵攻後、地球連邦政府の戦時体制移行と防衛軍の予備役動員により現役復帰を果たしていた。退役の直接原因となった戦傷は、戦後ガミラスからの技術供与により長足の進歩を遂げたサイバネティックス技術によって治療を済ませており、“これではガミラスさんに文句も言えんな”というのが口癖だった。

 着任早々、彼は最古参の宙曹長の案内で艦内を隅々まで巡視した後、在艦の全乗員を第一砲塔前に集合させた。そこで彼は形通りの着任の挨拶を述べた後、こう繰り出した。

『貴官らの無念は良く分っている。
 誰もがヤマトに命を救われた。だからこそ我々は、今ここでこうしていられる。
 だが――その事と、貴官らや“ゆうなぎ”が受けた屈辱は全く別だ。
 この“ゆうなぎ”を置いていった事を、皆でヤマトに後悔させてやろうじゃないか』

 この訓示に、一瞬その場は水を打ったように静まり返ったものの、次の瞬間、全乗員が勢いよく踵を合せて新艦長へ最敬礼を行った。
 彼らの誰もが、前艦長をはじめとする旧ヤマト乗員に対して尽きぬ敬意を抱き続けていたものの、その内心深くでは“置いていかれた”という負の感情が燻り続けていたのである。そうした乗員たちの、口外することすら憚られる鬱屈を見て取った新艦長は、それを全乗員に向かって最もあけすけな言葉で表現することで、一瞬で公知のものとしてしまったのである。
 明快な目標を与えられた人間は強い。
 この日を境に退廃的なものすら流れていた艦内の空気は一変し、新装備の慣熟訓練を含めたゆうなぎの再戦力化は急速に進捗した。良く知られている通り、ゆうなぎ初代艦長『古代 進』という人物は、あらゆる意味において評価の毀誉褒貶が激しい士官であったが、部下の養成と指導についてはほぼ例外なく高い評価を得ていた。ゆうなぎ乗員は実戦経験に乏しい若年の士官や兵が大半を占めていたものの、古代前艦長の薫陶を受けた彼らの基本技量は同時期に就役した同型艦と比較しても頭一つ頭抜けており、訓練再開後の練度向上も急速だった。
 そして訓練再開の一か月後には、ゆうなぎのパトロール艦隊編入が決定する。白色彗星の認知以降、太陽系外縁部の早期警戒網は大きくピケットラインを前進させており、また、多重的且つ冗長性の高い警戒網への発達・強化には、より多数の艦が不可欠だったからだ。
 時に2202年2月、テレザート星からの汲み上げた膨大なエネルギーにより空間跳躍を果たした白色彗星が太陽系へ来襲する直前のことであった――。




久しぶりの設定妄想でしたが、いかがだったでしょうか?
よりにもよって、数か月後には全否定されることが確実な現在進行形の作品に手を出すなんて、我ながら物好きだなぁと思いましたが、思いついてしまったのだから仕方がない――ということで、ご笑覧下さいませ(笑)

今回のアイデア(コンセプト)は極めてシンプルです。
旧世代艦艇に波動エンジン搭載したならば、誰もが想像するであろう砲身式のショックカノンと大口径ノズルを実際に搭載してみた――といったところです。
本当は艦橋部もパトロール艦っぽいマストにしてみたいという気持ちもありましたが、デザイン的なセンスに自信がなく、潔く断念しましたw
あとは、そのコンセプトが設定的に少しでも妥当と感じてもらえるように文章的な肉付けをセコセコと行っていきました。
とはいえ、文章のかなりの部分が地球防衛軍のドクトリンの説明に偏っているのは、いつもの私の性癖だと思って何卒ご容赦下さいませ。
言っていることは、これまで細切れにブログの記事で書いてきたことばかりですが、ようやく一つのまとまった文章にすることができました。

コンセプトと言えばもう一つ、『その後“ゆうなぎ”はどうなった?』というのもありました。
これはまぁ、『その後、シャアザクはどうなった?』にも通じる鉄板ネタな訳ですが、シャアザクと違うところは、主人公たちが離れた後も、固有の乗員が残されてしまうという点でしょうか。
残された乗員たちは、ヤマトの叛乱の嫌疑が晴れるまで、かなり厳しい扱いを受けたんじゃないかなぁと想像しました。
芹沢たちにしてみれば、古代の薫陶を受けたゆうなぎ乗員がサボタージュや、古代たちに対して何らかの支援を行ったりすることを懸念する筈です。
良くてこれ見よがしの監視や行動規制、悪ければ身柄を拘束されてしまうでしょう。
そんな仕打ちを受けたゆうなぎの乗員たちが前艦長にどのような想いを抱くか・・・・・・そうした点について想像したことも、本設定妄想を書いた要因の一つですね。
多分、古代くんの方でもゆうなぎ乗員のことは気にしてるんじゃないかなぁーと思ったり。
できることなら、ゆうなぎの乗員たちも上手く感情を整理して、帰還してきたヤマトと轡を並べられたらいいですね。

――貴艦ノ帰還ヲ祝ス。次アラバ、先陣ハ我等ニ任サレタシ――

みたいなw

ところで、本文を読まれた方の中には、再改修後のゆうなぎについての言及が物足りないという方もいらっしゃるかもしれません。
これは意図的なもので、あれこれと書きかけてはみたものの、このクラスがどれほど奮闘したところで、ガトランティス戦において決定的な役割を果たすことは難しいと考えたからです。
別に本型の能力不足をくさしているのではなく、ガトランティスの侵攻が速すぎるんです。
せめて本格侵攻が半年か1年先なら再改修艦がかなりの割合を占めて、構想された通りの編成と戦い方が可能になると思いますが、第五章の予告を見る限り2203年の2月とか3月とかにはガトランティス軍が殺到してきそうな勢いですし。
時間断層があるとはいえ、1か月程度では改装と改装後の慣熟訓練がとても追い付かないと思いますので、再改修後の艦の姿は全艦隊中にちらほらと見える程度でしょうか。

でもまぁ・・・・・・一個艦隊が250万隻の敵を前にしては何をしたところでw
ただ、デスラー砲(ハイパーデスラー砲?)が第八機動艦隊の残余を具体的な数は不明ながら一撃で消滅させていたので、2202世界においては波動砲や拡散波動砲、デスラー砲の威力というのは一門でも千や万の単位を消し飛ばせることになっているのかもしれませんね。
もしそれが確かなら――この波動砲の威力の方がよほど『続編潰し』になる気がします。


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宇宙戦艦ヤマト2202 第四章の感想とか思った事とか(ネタバレ含)

2018-02-03 22:27:09 | 宇宙戦艦ヤマト2202


さてさて、公開開始から一週間が過ぎましたので、そろそろネタバレ含みで行ってみようと思います(^o^)
SNSやネットの評判はもちろん、観客数データを見ても、上々の立ち上がりみたいで何よりですね♪
正直第三章は、観終わった後の鬱屈感があまりにも大きく、劇場で買って帰ったBDを観返すのも少し躊躇う部分がありました。
これに対して第四章は、第一章から第三章の間に積み上がった重く苦しい圧迫感が綺麗に払拭され、『ここまでのモヤモヤは今この時のためにあった!』と叫びたくなるくらいの解放感を味わうことができました。
また、その解放も『全員で背負う』という、2199でのイスカンダルへの旅路をずっと見続けてきたファンにも強くシンパシーを感じさせる作劇と台詞回しは感涙ものです(私も含め、そこで“撃沈”“決壊”しちゃった人も多いでしょうw)。
あのセリフを土方さんに言わせたのも『上手いなぁ』と思いました。
ある意味、土方さんは我々に最も近い立ち位置にいるキャラですものね。
ヤマトには乗らなかったものの、イスカンダルへの旅立ちから帰還、そして戦間期を経て現在までずっとヤマトとそのクルーたちを案じ、見守り続けたという意味では、最も観客に近い立ち位置の人物だと思います。
その土方さんが『全員で』と言うことで、観客もまた一緒に『背負い』『撃つ』んだという一体感が生まれたように感じました。

また第四章では、これまでバカバカしさすら覚えるくらいにチートな存在だったガトランティス側にも初めて綻びや危うさが露呈します。
その一環として個々のガトランティス人にも“個性”や“過去”が付与された訳ですが、この描かれ方も前述した波動砲発射前後の感動をより高質なものにしてくれていましたよね。
第四章全体の展開としては、テレサとの接触にも成功し、ここまで押される一方だったヤマト(地球)側にもようやく光明が射したように感じられた訳ですが・・・・・・これは次章で一度ガツンと奈落に突き落とす為の布石に思えてなりません(^_^;)
第五章の後半部はバルゼー率いる前衛艦隊と地球防衛艦隊の激闘が描かれるようなので、最後はやっぱり・・・・・・。
今のところ、白色彗星の方が地球に近い位置にいるので、上記の戦闘はヤマト抜きで展開する可能性も高そうです。
ただ、最後には大急ぎで帰還してきて、『相変わらず、荒っぽい連中だ』になるかもしれませんが(言うのは山南さんでしょうけどw)

おっと、少し気の早い話をしてしまいましたが、第四章のキーパーソンはやはりデスラーをおいて他にないでしょう。
印象に残る台詞も多くて、個人的には以下の二つが特に印象に残りました。

『時に取り返しがつかないからねぇ・・・・・・。感情に――愛に狂わされるということは』
『ただ――大帝の御心を臣下の誰が理解しているのだろうな?』

一つ目の台詞の『取り返しがつかない』対象が果たして何を指すのか・・・・・・。
自らの帝国とその臣民たちか・・・・・・まさかのスターシャ?
後者だったら私の専門外(笑)なので、置いておきます。
もし前者なら、たとえこの先、請われたとしても、デスラーが再びガミラスの総統に就くことは、彼自身の矜持としてない気もしますね。
むしろ一から新たな国家を築くべく、旅立ってしまいそうです。
もちろん、心底から彼を崇拝し、付き従おうとする者までは拒まないでしょうが。
もしや、だから赤いゲルバデス級が合流してきたのかな?w

二つ目の台詞は明らかに、2199時代の自分と周囲を思っての皮肉ですよね。
王の心は王のみぞ知る、独裁者の孤独は同じ独裁者だけが知る――とでも言うべきでしょうか。
その点、嘗て王であった漢であるだけに、ズォーダーというもう一人の王の内心について彼だけは何か感じ取っているのかもしれません。
デスラーについては、第三章のラストで『死体同然で宇宙を彷徨っていた負け犬』というガトランティス人側のやっかみの声が聞こえたこともあって、このデスラーも蘇生体ではないか?という意見もあるです。
実際、蘇生体のネタ元はオリジナル版の“ヤマト2”で『死体となって宇宙を漂っていたデスラーをガトランティスが回収し、蘇生した』というところから来ていると思います。
その点で言えば、元祖蘇生体(笑)であるデスラーが2202でも蘇生体である蓋然性は高いと思います。
しかし、もし本当に死体となっていて回収されたのなら『死体同然』という表現は使わないでしょう。
私的には、デスラーは死んではおらず、蘇生体にもなっていないと予想します。
もし蘇生体なら、ズォーダーはいつでもデスラーの意識に介在し、乗っ取ることすら可能ですので、わざわざ監視役としてミル君をつける必要性はかなり下がりますしね。
もちろん、ミル君はコスモウェーブが使えるという希少な特技持ちであることが第四章では分かりましたので、ミル君は寧ろそちらの能力を買われてデスラーにつけられたという可能性も残りますが。

さて、このコスモウェーブというワードは、第一章の時からテレサが旧ヤマト乗組員へメッセージを送る際に使用したとして登場していたわけですが、この第四章ではガトランティス側でも使用されていることがはっきりと明示されました。
おそらく、ズォーダーが距離と時間の壁を越えてリアルタイムに蘇生体を操ったり、情報を吸い上げたりできるのも、その特性上コスモウェーブを利用しているのでしょう。
ただ、ガトランティス人が皆、コスモウェーブを使えるということではなく、使える人間は限られているようです。
今のところ使えそうなのは、ズォーダー、ガイレーン、サーベラ―、ミルといったところでしょうか。
ガトランティス人ではないサーベラ―は別格として、他の三人は兵器としてのガトランティス人の中において、指揮統制を司るコマンダータイプという位置づけなのかもしれません(旗艦や指揮車両の通信能力が高いのと理屈は同じです)。
また、任意の個体にコスモウェーブ能力を備えさせることが可能ということは、ガトランティス人を造った文明人もまたより高度なレヴェルでコスモウェーブを自在に操っていたということでもあります。
そんな文明人って――二つくらいしか思いつかんよなぁ・・・・・・w

なんだか前半はともかく後半は感想ではなくなっていた気がしますが、第四章からは一部劇場では四週間も上映していますので、ボチボチと行きましょう。
今日は一旦ここまでにして、次回はすっかり見方が変わってしまったサーベラ―さんについてです(^o^)



昨日、発売が遅れていた第四章のパンフレットを購入してきました(^o^)
個人的には、波動砲発射に至る苦悶と決断の意味を福井氏が解説してくれる冒頭記事や、デスラーに追われたヤマトが陥った異空間とそこに存在した“ちくわ”の正体の考察記事、そしてそして2202アンドロメダとコスモタイガーの設定資料が見どころで、特に設定資料はメカ好きの方は必見です!!
(上の画像はあえて少しぼやかしていますが、実際はクリアです。小さい絵や字も多いので、一度写真に撮ってから拡大して見るのがいいと思います。)
なにしろコスモタイガーⅡのページにはMSV的な機体まで・・・おっと、誰か来たようだ。


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