我が家の地球防衛艦隊

ヤマトマガジンで連載された宇宙戦艦ヤマト復活篇 第0部「アクエリアス・アルゴリズム」設定考証チームに参加しました。

ヤマトⅢの“護衛戦艦”を箱庭の中で妄想してみる①

2012-08-02 19:56:58 | 1/1000 宇宙戦艦ヤマトⅢ 護衛戦艦
 先日、お友達である大隈さんのブログで、1/1000アリゾナに続き1/1000プリンス・オブ・ウェールズ(以下POW)が新たに竣工されました。
 原作(宇宙戦艦ヤマトⅢ)では一カットしか登場していない希少な艦(失礼^^;)ではありますが、そのデザインは非常に特徴的且つ魅力的で、大隈さんのブログを拝見している内に色々と妄想が浮かんできました。
 幸か不幸か(?)、個人的にポッカリと時間が空いてしまったこともありまして、少しばかりそれら妄想を文章にまとめてみることにしました(^_^)
 大隈さんに御相談しましたところ、ブログ『大隈雑記帳』様にて公開されている画像の転載を快く了承いただきましたので、この度、私の駄文と合せて公開させていただくことができました。あ、言うまでもないことですが、画像の無断二次転載とかは絶対ダメですよd(^_^;)


 尚、これから記していきます妄想は『これが正しい!』という類いの『考察』ではなく、原作設定の枝葉に、私が勝手にあれこれと添え木をつけて成長させた『妄想』ですので、その旨ご了承下さい(ま、ウチの記事は大抵そうなんですけどね^^;)。

 では、一応のルールをば。妄想にあたっては、以下を前提とします。

①原作テレビシリーズ(無印、2、Ⅲ)とPS版ヤマトゲームシリーズ、劇場版完結編を基本とします(設定が競合する場合はゲーム版を優先することが多いです)。
②本ブログ独自の二次的世界観が一部に介在します(登場艦名、艦級名、ガミラス戦役序盤の展開等)。
③現在大絶賛展開中(w)の宇宙戦艦ヤマト2199は・・・・・・基本的に考慮しません(影響は受けてもw)。


 続いて、復習を兼ねて情報の整理です。
 ヤマトⅢに登場した護衛戦艦は、アリゾナ、POW、ビスマルク、ノーウィックです。
劇中でこれらの艦は、第二の地球探しを行う探査船の“護衛”を行うとされていました。
 また、この当時の地球連邦は“州”という行政区分で五つのブロック(アジア、アフリカ、ヨーロッパ、南・北アメリカ)に分けられているとも説明されています。
 更に、上記の戦艦群は劇中ナレーションにて『各国の護衛戦艦が――』と説明されていますので、前述の州を構成する国家独自で所有している戦艦と考えられます。
 以下はその所属予想です(所属州/国家)。


 アリゾナ(北アメリカ州:米国)
 POW(ヨーロッパ州:英国)
 ビスマルク(ヨーロッパ州:独国)
 ノーウィック(ヨーロッパ州?アジア州?/ソヴィエトロシア)


 ソヴィエト連邦については、現在視点で言えばロシア連邦とすべきでしょうが、ここは原作に敬意を払い(?)、ソヴィエト連邦のままとしますw
 そしてこれらの艦は、それ以前の『ヤマト2/さらば』や『永遠に』に登場した地球防衛艦隊艦艇のように、艦種毎に艦型・艦級が統一されておらず、まさに各国独自に設計・建造された艦という印象です。
 うーん、“情報”と言いつつ、最後には印象まで混じってしまいましたが・・・・・・“護衛戦艦”の公式設定って探し回ってもこれくらいなんですよね(^_^;)
 それでも書き始めみると、意外なほど文章ボリュームが伸びましたので、公開は三回に分けることにしました。
 第一回は“護衛戦艦小論”、第二回は“アリゾナ級護衛戦艦”、第三回は“POW級護衛戦艦”です。
 ではでは、妄想設定の始まり♪始まり~♪


(注:本記事内の画像は『大隈雑記帳』大隈様より御了承いただき、転載させていただいたものです。無断転載等は之を固く禁じます)

【護衛戦艦小論】



 地球全土占領によって、一度は侵略者である暗黒星団帝国の勝利に終わると思われたデザリアム戦役であったが、地球防衛艦隊(太陽系外周第七艦隊)の活躍と占領下パルチザン活動の成功によって、劇的と評する他ない逆転勝利となった。
 地球においては、全人類を人質同然としていたハイペロン(重核子)弾頭ミサイルがパルチザンによって解体除去され、絶対的切り札を失った占領軍は抵抗空しく降伏を余儀なくされた。
 一方、地球防衛艦隊の長駆侵攻攻撃を受けることになったデザリアム帝国本星も、地球艦艇の波動エネルギーと彼らの銀河特有の星間物質の異常融合反応の発生により、“存在する銀河ごと”消滅するという悲劇的末路を辿った。


 戦役は誰もが予想もしていなかった形で終結し、地球には幾度目かの平和が訪れた。しかし、それはあくまで市民レベルでの感想であり、政府や軍といった公的機関においては解決すべき問題が山積みだった。
 侵略者の攻撃と占領によって喪われた人命や破壊された資財に対する補償と復旧、これほどまで容易に本国を占拠されてしまった原因と責任も追及されなければならなかった。
 デザリアム本星を殲滅したことで救国の英雄扱いを受けていた地球防衛艦隊にしても、こうした動きに無縁ではいられなかった。なぜなら、侵略の初手として撃ち込まれたハイペロン弾頭ミサイルを有効に迎撃できなかったばかりか、侵略兵団主力ともいうべきデザリアム帝国黒色艦隊の接近を月軌道直近まで察知できなかったのは、紛れもなく地球防衛艦隊自身だったからだ。
 だが、その点はまだ序の口だった。太陽系早期警戒網の脆弱さは以前から地球防衛軍と防衛艦隊自身が政府に対し何度も強く主張していたし、相次ぐ戦乱と予算不足から遅々として進まない定置警戒システム建設への予算増額要求も再三に渡って繰り返していた。それを、直近に危機の兆候は存在しないとして渋り続けたのは、寧ろ連邦政府と議会の方だった。
 その結果、地球防衛軍はオマハ級哨戒巡洋艦の稼働率を半ば強引に引き上げることで、早期警戒網を辛うじて維持していたが、所詮は単線の脆弱なピケットラインであり、積極的且つ組織的な探知妨害を見舞われれば一たまりもなかった。特に、敵が基礎から応用まで科学技術力で遥かに地球を凌駕するデザリアム帝国では、“赤子の手を捻るも同然”だったと考えられる。
 それらの背景・事情を考慮すれば、容易に侵攻を許してしまったことに対する非難と負うべき責任の追及は“比較的”軽度に留めることができそうだった(あくまで『一度は国を喪った軍隊にしては』であり、実際には幾人もの軍高官が引責を余儀なくされている)。
 だが、当時の地球防衛軍及び地球防衛艦隊の実務者レベルおいて、より深刻な問題として捉えられていたのは、寧ろ彼らが“救国の英雄”とされた行為の過程で発生した事象の方だった。


 デザリアム戦役勃発当時、地球防衛艦隊に所属する太陽系外周第七艦隊はシリウス恒星系において長期演習中であった。演習中の艦隊とはいえ、第七艦隊は当時の地球防衛艦隊有人稼働艦の三割(大型艦に至っては五割)にも及ぶ艦艇を麾下に収める臨時編成の増強艦隊であり、デザリアム帝国軍も各個撃破の好機として緒戦での殲滅を画策したほどだった。
 幸い、第七艦隊指揮官の機転と、援軍として駆けつけた宇宙戦艦ヤマトの活躍によって奇襲攻撃を企てたデザリアム艦隊は撃破された。そしてヤマトを加えた第七艦隊は、その進路を一路、四〇万光年彼方に存在すると推測されるデザリアム帝国本星へと向ける。


 ――“問題”はその過程で発生した。

 第七艦隊の演習は、地球防衛艦隊としては初の、他恒星系を演習域とした艦隊遠征演習であり、期間も半年程度が予定されていた。その為、艦隊には戦闘艦艇のみならず、充分な数の補給・支援艦艇が随伴していた。しかし――三ヶ月と経たずして、彼らが“充分”と考えていた補給・支援体制があまりに貧弱であったことを思い知らされる結果となってしまう。
 当時の地球艦艇の大半は、ワープ航法が可能な無限機関である波動エンジンを搭載しつつも、実質的には太陽系内における短期間の航宙活動のみを考慮して設計されていた。もちろん、ガミラス戦役頃の艦艇に比べれば艦内居住性や慰労設備は隔世の観を覚える程に改善されていたが、密閉空間に長期間、集団で閉じ込められることによって生じる強いストレスを完全に解消するには未だ不十分であった。その結果、クルーの疲労と疲労に伴うヒューマンエラー発生回数は事前の予想を遥かに上回った。
 第七艦隊の航宙は、目的地の正確な所在すら定かでない索敵航宙であり、航宙期間も半年を超えると、大事故に直結しかねない人身事故すら発生するようなっていた。それでも、長期航宙経験豊富なヤマト所属の生活科が積極的に他艦への即効対策指導を行ったことや、各艦独自のトラブルシューティング、そして何より各艦乗員が抱いていた強い危機感(この航宙に失敗すれば、俺たち/わたしたちには帰る星すらない)が艦隊士気を維持させ、デザリアム帝国本星撃滅という大金星を勝ち取ることに成功する。
 だが、それにもかかわらず、戦後の防衛軍上層部には強い不安が残った――現在の我々では、遠隔地での長期作戦行動は不可能だ――という不安が。


 そうした防衛軍の不安をより強く、且つ現実的なものにさせたのが、デザリアム戦役前後から要請が相次ぐようになっていた、新たな任務であった。
 近傍の他恒星系に対する開発支援任務である。
 この時期、第七艦隊が演習を行っていたシリウス恒星系やケンタウルス座アルファ星をはじめとする近傍恒星系には、官民問わず多数の調査船や開発船が送り込まれていた。中には、アルファ星のように簡易テラフォーミングが既に開始されている惑星もあり、それら調査工作船の支援任務は早晩必須のものになると地球防衛艦隊内部でも早くから認識されていた。事実、他星系から得られた希少鉱物・資源を狙う非合法武装組織も航路上で跋扈を始めており、地球防衛艦隊に対して、より直接的且つ継続的支援を求める声も日増しに高まっていた。
 今のところ、地球人類の開発の足跡(到達・発見ではない)は、一〇光年内外の近傍宇宙までであり、数さえ揃えば現有艦艇でも任務遂行に支障はなかった。しかし人類の開発の足跡は、今後急激に(それこそ一〇〇光年・一〇〇〇光年単位で)延伸していくことが当然のものとして理解されており、現有艦艇の限られた居住性では、遠からず任務遂行は困難になるとも予想されていた。
 本来であれば、長期間・長距離任務に合致した専用艦艇の開発や試験艦建造にこそ着手すべきタイミングであったが、事態はそう簡単ではなかった。当時の地球防衛艦隊は、ガトランティス戦役とデザリアム戦役で失われた艦艇や人員の補充すら十分ではなく、まずもって太陽系防護艦隊の充足が重視されていたからだ(政府首脳部のみならず、民意もそれを強く求めていた)。
 また、長距離・長期間任務に合致した艦艇とその支援艦艇群は、従来の地球艦のような近傍宙域用艦艇より相対的に大型且つ高価で、しかも多数の乗員を必要とすることも問題を一層根深いものとしていた。それは即ち、建造にあたっては、補充を急いでいる現行艦艇以上の予算枠と人員枠が確実に必要となることをも意味していたからだ。
 当然と言えば当然すぎる結論に弱り果てたのは地球防衛軍のみではなかった。寧ろ、連邦財政という“財布”を握る連邦政府こそが途方に暮れたと言っても過言ではない。とはいえ、地球防衛軍の太陽系外活動能力、ひいては遠隔地展開能力の獲得は愁眉の急であり、連邦政府首脳部は軍・財務のみならず運輸や科学技術、法務等、関係各省庁官僚団とも議論を重ね、解決に向けての模索を続けていくことになる。
 尚、これほど短期間に各部門の危機感の方向性が統一されたのには理由があった。デザリアム帝国によって地球が完全占領された際、もし太陽系外の別恒星系に政府代替地(避難地)が確保されていれば、より効果的な継戦・抗戦が可能であったという研究報告が、戦訓調査を任せられた政府外郭のシンクタンクから公表され、一般からも大きな反響(結果論的に過去の政府対応を批判する声)が寄せられていたからである。
 そうした声と自らの危機感にも基づき、この時期の地球連邦政府は、政府及び市民の緊急避難先を真剣に検討しようとしていた。しかし、現在開発が端緒についたばかりの一〇光年内外の既知恒星系では、充分な安全距離が確保できないとして真っ先に検討対象から外されている。各省合同の専門部会において得られた結論は、軍事・経済の両面から考慮した避難地の理想は、概ね地球から五千から一万光年の距離とされた。当然、そのような距離に、地球の代替となる惑星を地球人類は把握しておらず、まずはその捜索から開始する必要があった。
 その結果、科学技術省所管の各種惑星探査船、運輸省所管の航路調査船の新規建造計画が俄に加速されることになる。また、同じく運輸省所管で“特・大型輸送船”という名称の超大型移民船のプロトタイプが建造されたのも丁度この頃のことである。
 ある意味、本国を占領されてしまったというデザリアム戦役後の高い危機意識(デザリアム・ショック)が持続していた時期に、こうした判断が早々に下されたのは幸いであった。後に勃発した“太陽危機”やディンギル戦役時、この時期に建造開始されていた各種探査・調査・移民船が完成していなければ、地球は深刻な専用船不足に悩まされていたことは確実だったからだ。


 そしてもう一つの懸案事項であった長距離用護衛艦艇整備についても、同部会から非公式(非公開)ながら提言が為されていた。あえて非公式とされたのは、その提言が実質的には連邦政府単独では実施困難であり、連邦を構成する各州・各国に対する影響が非常に大きいと予想されたからだ。
 しかし連邦政府は、未だ各国にも市井にもデザリアム・ショックが継続していると判断、連邦構成五州並びに構成各国家に対して、提言に基づく新制度設立を発表した。


 所謂『星系間護衛艦艇調達助成制度』である。

 本制度はその名が示す通り、今後急増することが確実な星系間航路の保護と民間宇宙船舶の護衛を目的とした艦艇の建造と保有、運用を各国に推奨するものであった。
 ガミラス戦役中盤以降、地球資本・工業力の有効活用という観点から各国独自の大型宇宙艦艇建造保有は厳しく制限されていた。本制度はそれを一部緩和するだけでなく、建造費用の二〇若しくは三〇パーセント分に相当する連邦分担金が減免されると説明された。
 制度適用にあたり満たさなければならない主な基準は、艦の規模と長期航宙任務に合致した各種指定装備の搭載であった。更に、艦の規模によって減免額は異なり、乾重量四万トン以上の艦が『第一種艦』として三〇パーセントの分担金免除、二万トン以上四万トン以下の艦が『第二種艦』として二〇パーセントの分担金が免除された(二万トン以下の艦艇については、長期・長距離任務には適さないとして本制度の適用外とされた)
 他にも、制度適用にあたっての条件として、設計図面をはじめとする全建造データの地球防衛軍への提出、公試時の地球防衛軍艦政本部員の立会い、竣工後の地球防衛艦隊連絡士官の乗艦等が挙げられていた。そして最後の条件として、連邦政府が“有事”と規定する戦乱状態に至った場合、本制度適用艦は地球連邦(地球防衛艦隊)所属艦として即座・無条件に供出することを確約しなければならなかった。
 有事における国家エゴの愚かしさについては、ガミラス戦役序盤における米・中両政府の確執と、両国宇宙艦隊壊滅の記憶が未だ生々しかったこともあり、最終条件について各国から反対の声は殆ど上がらなかった。
 しかし、建造と平時の運用に係る三条件については『各国独自の検討と工夫を凝らした建造艦が実質的に丸裸にされてしまう』『我が国の艦艇に“政治将校”は不要』などの反対表明が多数寄せられた。だが、地球連邦政府と地球防衛軍は、有事の際に指揮下に織り込む艦艇の“全て”を把握していなければ、効果的な運用は不可能であり、連絡士官の乗艦についても、平時からの意思疎通とクルー練度の常時把握の為だという“正論”で以って、反対の声を沈静化させている。
 しかし、各国に説明された正論はともかく、本制度は紛れもなく地球連邦と地球防衛軍が本来果たすべき長期・長距離任務用艦艇の建造と平時における運用、そして現在の地球では非常に希少な宇宙艦艇乗員を各国に分担させる為のものであった。更に、各国から建造・運用データを根こそぎ回収することで、将来地球防衛艦隊が建造するであろう次世代艦艇の設計に活用することすら明確に目的化されていた。
 ある意味、悪辣さすら感じさせるほどの制度であり、最初に本制度を考案した専門部会が提言を“非公式(非公開)”としたのも頷ける。事実、施行を決めた連邦政府自身も制度適用艦の建造を行う国家が実際に現れるか、一部では強い不安を抱いていたと言われている。
 だが、そうした懸念は結果的に全て杞憂に終わった。制度施行から程なく、連邦加盟各国はまるで競い合うようにして制度適用艦建造計画を次々に発表していったからである。
 各国が建造を決断した背景には、地球防衛艦隊所属でありながら、日本国政府の強い影響下で運用されている(と信じられていた)宇宙戦艦ヤマトの存在があった。たとえ有事には連邦政府の指揮下に入るとはいえ、乗艦している人員は自国将兵のままであり、戦時であっても艦の運用に関しては一定以上の影響力が維持できるものと考えられていた(連邦政府や防衛軍もそれを強くは否定しなかった)。そして何より、日本国の連邦政府内での強い発言権に対する現実的な羨望と嫉妬が、各国の背中を強く後押ししたと言われている。


 各国における“星系間護衛艦艇”の設計と建造は、地球連邦政府の予想を遥かに上回るスピードで急速に進んだ。当時は、外宇宙(太陽系外宇宙)進出・開発が世界的にも非常に注目されていた時期であり、安定した外宇宙航行が可能な大型艦艇を独自保有しているだけで、国際的な発言権・影響力を大きくすることができるとひどく単純に考えられていたからだ(そしてそれは限りなく事実でもあった)。
 建造に向けての努力を開始したのは世界二〇ヶ国以上にも及び、建造技術・ノウハウを持たない国の幾つかは、“持てる国”に対して共同建造や建造発注の打診すら行った。本制度においては、たとえ他国から購入した艦であっても分担金減免が (レートの変更や建造国への還元等が発生する為、減免額は非常に限られるが) 認められていたからだ。
 本制度適用下で就役した艦艇は、“第一種艦”が『護衛戦艦』、“第二種艦”が『護衛巡洋艦』として艦種類別されることが決定しており、大国、若しくは嘗て大国と呼ばれた国々は、こぞって第一種艦(護衛戦艦)の建造を急いだ。唯一の例外は日本国で、他国とは異なるアプローチで第二種艦(護衛巡洋艦)の建造を行っている。
 また、中小国の中には、数ヶ国の共同開発によって共通の適用艦建造を行うという動きも見られた。しかし、国際共同開発の難しさは二三世紀に至っても健在であり、実際に建造・就役にまで至ったのは、北欧三国の共同開発艦のみであった。
 後に、とある識者は、こうした状況を皮肉と諧謔を込めて“二三世紀の建艦競争”と呼んだ。


 ガミラス戦役中盤以降は国際連合が、そして戦役終結以降は地球連邦が策定した整備計画に基づき、各国は宇宙艦艇を連邦予算下において建造してきた。現在、地球防衛艦隊の中核を為している各種艦艇も、全てそうして建造されてきた艦たちだった。
 建造にあたっては、地球防衛軍艦政本部から各種技術情報が完全開示される為(単なる技術提供・指導だけでなく、建造国毎の仕様や規格の差異を排することも目的としていた)、既に各国共に十分な宇宙艦艇建造能力を獲得していた。とはいえ、連邦政府からの建造割り当ては、各国の国力や基礎技術力によっても決定されるため、国力・工業技術水準の高い国ほど大型・高価値艦艇の建造実績・知見に富んでいるという現実もあった。
 『星系間護衛艦艇調達助成制度』下で建造された各国艦艇は、ベースとなった基本技術こそ地球防衛軍艦艇標準規格に基づくものであったが、各国の国情や運用思想を色濃く反映し、その外観・能力は非常に多種多彩なものとなった。
 また、建造方法も各国それぞれに工夫があり、珍しいところではソヴィエト連邦建造艦『ノーウィック』がある。この艦は、ガミラス戦役時のアーク・シップ(地球脱出船)計画において建造が進捗していたものの、イスカンダルメッセージ到達後の計画方針変更により、建造中止を余儀なくされた過去を持つ。ガミラス軍の目から逃れる為、建造場所が辺境と言う他ないシベリア奥地の仮設地下ドックであったことも災いし、ガミラス・ガトランティス・デザリアム、三つの戦役終結以降も、建造再開も解体放棄もされないまま現地に放置されていた。
 ソヴィエト政府は“それ”に目をつけた。設計年度こそ古いが、年単位の長期航宙を前提とした地球脱出船として計画された大型艦であるだけに、艦内容積は非常に豊富で、更に機関を最新の波動機関に換装すれば、艦内容積は尚一層確保できる見込みであった。過去建造時に搭載が予定されていた大口径フェーザー砲は全てショックカノンに換装、艦首には標準規模の拡散波動砲を搭載する。
 また、建造が中止された時点での工程進捗率は約七〇パーセントにまで達しており、建造予算的に見てもかなり安価に建造できる見込みだった。
 しかし、いざ建造を再開してみると、使用されている部材が2190年代後半という地球が最も逼迫していた当時のものであり、破壊・非破壊いずれの検査においても、大半が“取替ノ要アリ”と判定されてしまった。また、建造当時には当然ながら現在の防衛軍艦艇標準規格など存在せず、現行規格に合わせた改修事項も多数に上った。その為、最終的に計上された建造費用は、ソヴィエト政府が期待したほど安価には収まらなかったと言われている。
 とはいえ、完成した本級は、二〇~二一世紀頃に活躍した宇宙船デザインの延長線上に位置することを直感させるシルエットが特徴的で、現在も根強いファンが数多い。


 デザインの特異性でいえば、ドイツ連邦共和国が建造した『ビスマルク』級も引けを取らなかった。非常に大型・重厚な艦体に、少数の隠遁式ショックカノンと多数のVLSを装備した本級は、竣工時“ミサイル戦艦”“不沈戦艦”などと呼ばれた(波動砲はボロディノ級と同型の拡散波動砲一門を艦首に装備)。
 これは、独国が独自に行った宇宙戦艦ヤマトの戦訓調査と分析に基づき、本級を『いかなる損傷を被っても生還し得る戦艦』として建造した結果であった。ショックカノンよりミサイルを重視する姿勢にしても、ヤマトの過去の戦闘における砲塔損傷率が非常に高かったことに起因している。
 状況に応じてショックカノンを強固なヴァイタルパート内部へ収納可能とするために、砲身長と砲門数は控えめとされ、それを補うべく多数のミサイル装備が施された。
 “拳骨”とも評されるマッシブな艦容に仕込まれた重装甲は、クルップ・スペースインダストリー製の最新型コスモナイト複合合金であり、戦略指揮戦艦の二〇インチショックカノンにも平然と耐え得る装甲強度を誇る。多数が搭載されたミサイル装備にしても、被弾による誘爆がヴァイタルパート内部に被害を及ぼさないよう、配置には細心の注意が払われていた。
 独自思想を前面に建造されたビスマルク級であったが、他の地球戦艦と艦隊行動を行う場合には、攻撃装備の特性が大きく異なるため、残念ながら地球防衛艦隊内での評価はあまり高くなかったようだ。
 しかし、星間物質が濃厚に充満している、重力嵐が吹き荒れている、など周囲状況の把握もままならない不安定宙域における活動では、本級の重防御は乗員たちにとって大きな安心材料になったという。事実、後年の太陽危機において、結果的に本級も地球代替惑星を発見することは叶わなかったが、他国艦であれば探査を回避したであろう難航行宙域にも本級は深く入り込んで、徹底した調査を行ったことで有名である。
 その為、本級を指して“人類最高(最硬)のピケット艦(前路哨戒艦)”と評した専門家もいる。


 以上の二艦はかなり特異な建造例にあたるが、本制度適用下で建造された艦の中には、“ヤマトを超える戦艦(スーパー・ヤマトクラス)”を目指して建造された大艦や、各国から“ベストセラー”と評された艦も存在した。
 前者はアメリカ合衆国が建造した『アリゾナ級』、後者は英国が建造した『プリンス・オブ・ウェールズ級』である。


――つづく。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする