音楽中心日記blog

Andy@音楽観察者が綴る音楽日記

グールド=坂本

2009年01月22日 | CDの感想
  
○「グレン・グールド 坂本龍一セレクション」(2008)
 「2008年に出たアルバムの感想を2009年に書く」その4。坂本龍一が選曲したグレン・グールドの2枚組編集アルバム。

 グールドといえば一般には「バッハ弾き」として有名なわけだが、あえてその作品をセレクトしないで、バード、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス、スクリャービン、シェーンベルクなどバッハ以外の作曲家の曲から選んでいるのが、坂本教授らしいひねくれ具合でおもしろい。(ラストに1曲だけバッハ作品が収録されているが、他の作曲家の作品を編曲したもので、純然たるオリジナルではない。)

 最初にベートーヴェンのピアノソナタ30番でみずみずしく始まるのに、二曲目にはベルクの無調っぽい作品が来て、その次にブラームスのロマンティックな作品に揺り戻したと思ったら、今度はウェーベルンの簡潔で抽象的な曲が続く、という振幅の大きさも特徴的。

 モーツァルトやベートーヴェン、ブラームスはともかく、ふだんシェーンベルクやヒンデミットといった20世紀の作曲家の作品をグールドの演奏で聴くということがほとんどないので、新鮮な気持ちで楽しむことができた。

 でも、これからグールドを聴こうという人にとっては、この編集盤、ちょっと敷居が高いような気もする。「リトル・バッハ・ブック」とかの方が適切じゃないかなあ。坂本セレクションは、普段グールドのバッハ演奏をさんざん聴いている人向けだと思う。

 ちなみに、ブックレットに収録されている坂本教授と宮澤淳一氏(日本におけるグールド研究の第一人者)の対談には、なぜこの曲を選んだかという理由が詳細に語られていて、一読の価値ありです。  

 僕がグールドを聴く理由は「彼の演奏がすごくかっこいい」から。ほぼそれに尽きる。
 どんなふうにかっこいいの?と疑問を持った方は、この↓ドキュメンタリーを見てもらうといいと思う。ちょっと長いけど、グールドの歩みがコンパクトにまとめられているし、演奏シーンもふんだんに出てきて楽しめますよ。