ロック探偵のMY GENERATION

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さいとう・たかを『ゴルゴ13』

2021-10-03 21:42:40 | 漫画

先日、漫画家のさいとう・たかをさんが亡くなりました。

84歳。
大往生というところでしょう。
このネット時代ではもはや旧聞に属する話となりますが……今回は、この日本漫画界における巨星について書きたいと思います。



私は決してさいとう先生の熱心が読者ではありませんが……『ゴルゴ13』は、全部とはいかないものの、まあそこそこ読んでいるほうです。十年ほど前にアニメ化されたときには、ほぼ全話観たと思います。
おそらく代表作の一つであろう『サバイバル』も読みました。
『サバイバル』で描かれる、社会秩序の崩壊した世界……『ゴルゴ13』におけるデューク東郷が生きているのは、まさにそれと同じ無法の世界でしょう。正義など存在しない、頼れるのはただ己だけ……そんな世界です。このニヒリズムが、大きな魅力でした。
今回調べてみて知ったんですが、80年代に一度劇場版アニメが作られてるんだそうで……そのプレビュー動画がYoutube にあったので、リンクさせておきます。

【本編プレビュー】ゴルゴ13|” THE PROFESSIONAL- GOLGO 13”(1983)

ちなみに、ウィキ情報によると、デューク東郷の「東郷」という名前は、学生時代の教師からとられているそうです。

さいとうたかを少年が、試験など意味がないということでテストの答案を白紙で提出したところ、「答案を白紙で出すのは君の意思だからかまわないが、自分の責任の証明として名前だけは書け」といわれ、それに感銘を受けたといいます。
この責任の感覚が、まさに『ゴルゴ13』をただの殺し屋ではない物語にしているのです。
ゴルゴは、依頼を受けた以上、必ずその約束を守ります。たとえば死刑囚をあえて殺害にしにいくというエピソードがありますが、そのためにわざわざゴルゴは死刑囚として同じ牢獄に入り、ターゲットとともに脱獄し、監獄の外に出たところで依頼を実行に移すのです。死刑囚なのだから、法によって処刑されるわけですが、そこをあえて自分たちの手で葬らなければならないと考えたものがゴルゴに依頼する、そしてゴルゴは、誰が確かめているわけでなくとも、その依頼をやり遂げます。殺し屋という無法の世界においても、己の定めたルールは必ず守る――まさにこれが、ゴルゴのしびれるところでしょう。
その根底にあるのが、「責任の証明として名前を書け」という東郷先生の言葉であるわけです。
この言葉は、まさに、時代や国を超えた普遍性をもっています。
なにをなすにせよ、自分の意思でそれをする以上、自分の名前をあきらかにして責任を負えということです。記録を残さずに責任逃ればかりしている日本の意思決定者たちに欠けているのは、まさにこの部分でしょう。政治家も官僚も、ナントカ委員会の委員たちも、責任を負う覚悟がないからいい加減なことばかりをやっているわけです。
ゴルゴのニヒリズムには戦争体験が反映されているとはよく指摘されるところですが、さいとうたかをの頭には、この日本的無責任への嫌悪もあったことでしょう。責任逃れに汲々とする無様さの対極にあるかっこよさとして、一度依頼を受けた以上自分の責任は絶対に放棄しないデューク東郷という人物を創造したのではないでしょうか。そして、そうであるがゆえに、ゴルゴ13はインターナショナルな存在となったに違いないのです。




こちらは、数年前缶コーヒーにおまけでついていたゴルゴのフィギュア。
さいとう・たかをが生み出したプロダクションシステムによって『ゴルゴ13』はこれからも続いていくということです。デューク東郷のさらなる活躍を期待しましょう。




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