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福祉について考えるUMEMOTOのブログ

ケアプランについて考える

2005-04-10 22:58:21 | 認知症
“認知症を知る1年”が始まり、国の広報活動もスタートしている。朝日新聞と認知症介護研究・研修センターが協力し、認知症の質問を受け付ける取り組みも始まっている。
認知症高齢者を対象にしたケアプラン、「認知症の人のためのケアマネジメントセンター方式(センター方式)」にも注目したい。
介護保険法により介護サービス計画も位置づけられており、各施設内においても介護サービス計画を作成し、計画書に則ってサービスを提供することが求められている。現在、多くの施設で使われている書式は、国の指定を受けている「包括的自立支援プログラム(包括)」や「MDS方式(MDS)」と呼ばれるもので、それに伴いコンピューターで管理するソフトウェアも普及している。しかし、これまでケアプランに対する議論も多くされており、様々な問題点も挙げられている。そのような状況の中で、新しい視点から作られたのが「センター方式」と呼ばれるケアプランなのである。

現在、施設におけるケアプランの使用状況は大きく分けて3通りに分けることができる。まず1つ目は、前述した国の指定を受けたケアプランの様式でおこなっているところ。2つ目は、その他の開発されたケアプランの様式で行っているところ。3つ目は、既存のケアプランでは満足できず、独自のケアプランを開発し取り組んでいるところ、と大きく分けて、このような状況になっている。
なぜ、このような状況になってしまうのか。それは、国指定のケアプランのデメリットが大きいからであろう。
そもそも、ケアプランとはその書式だけ見れば、介護サービスの計画書ということになるが、期待できる役割としてはそれ以上のものがあるし、また望むことができるのである。その最も重要な部分が、“教育”である。多くのケアプランは作成する際、書式に沿って記入していくが、その作業自体に充分“教育”の要素が含まれることになる。記入の指示に、ケアの視点を散りばめることにより、自然とケアの視点が養われていく。逆に、「包括」や「MDS」のように、認知症高齢者の周辺症状を“問題行動”と捉えるような記述になっていると、そのプランに接している人は周辺症状を“問題行動”としか捉えられなくなってしまうのである。また、全体的な方向性として、高齢者の「問題点を挙げ、それを解決していく」というプロセスになってしまっているのである。これでは、正しいケアの視点は養うことはできない。上記のことがデメリットとなり、2つ目、3つ目のような施設の状況が生まれてくるのである。
2つ目の、その他の開発されているケアプランを使うことのメリットは、同じ様式でおこなっている施設同士、意見交換をおこなえることである。ひとつの施設だけでは事例も限られ、本来のケアプランを100%活かしきれないかもしれない。しかし、他の施設と事例検討をおこなえれば、その問題も解決しやすくなるのである。
3つ目の、施設独自のケアプランを開発・使用することのメリットは、既存の様式にはない要素を盛り込めオリジナリティ溢れるプランができること。そして、作成する段階で多くの職員がかかわることで、ケアプランの意図を認識しやすいことが挙げられる。デメリットとしては、前述の事例検討などができないため、行き詰ったときに自分たちで解決しなければならないこと。また、作成するために多くの手間暇がかかることである。

そのような状況のなか作られた「センター方式」は、“教育”の要素がふんだんに盛り込まれている。その特徴的なものとして、“利用者本位”の視点が養われることである。ありとあらゆるところに、「私は~してほしいと思っています」「私の好きなものは~です」など、利用者の目線になることが求められている。そしてもう一つの特徴が、高齢者の問題点ではなく、良いところ、本当に求めていることに焦点を当てていくプロセスである。このとても大切な視点を養うことができる様式となっている。これは認知症の高齢者に限らず、すべての高齢者にとって共通する視点であり、適用できる様式であるといえる。
デメリットとして上がっているのは、記入用紙が多いということである。ただでさえ普段の仕事で忙しい中、何枚もある用紙を記入していく時間と手間をどうするのか。現場としては切実な問題である。
しかし、よく考えてみたい。何枚もある用紙をすべて使わなければいけないということはないのである。いくつも用紙の中から施設に合った用紙を選択し、負担にならない範囲から進めていくということもできる。物は捉えようではないだろうか。利用者をみる視点と同様に、ケアプランも良いところをみていくことはできないだろうか。

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2 コメント

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Unknown (佐藤帝泉浩)
2005-04-15 14:04:53
今年ケアマネの試験を受けます☆

とても興味のある記事です!



私が思うに、”問題点を挙げ、それを解決していく”から”良いところを伸ばす”というケアプランの作成がQOLの向上につながると思います。 現に私はそのような方向性でケアマネと協力しケアプランの作成をしています。



以前、アドリブケアの中田光彦さんもケアプランの方向性について指摘していましたね~

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教材 (UMEMOTO)
2005-04-16 12:14:41
佐藤帝泉浩さん、コメントありがとうございます。



ケアプランと聞くと、一歩引いてしまう人もいますが、ケアにおいて必要で大切なものであることは皆さん理解しているはずです。

しかし、使いこなせている人はどれだけいるでしょうか。そこで一緒に作り上げていくのが、ケアマネやスーパーバイザーの役割です。そのケアマネやスーパーバイザーが正しい視点を持っていれば、ケアプランはとてもよいケアの教材になるはずです。



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