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福祉について考えるUMEMOTOのブログ

いつだって心は生きている ~認知症の絵本~

2006-11-01 18:41:57 | 認知症
『いつだって心は生きている』

このタイトルに、伝えたいことはすべて凝縮されている。
認知症について書かれた本はたくさんあるが、子どもたちに向けられた本はほとんどない。それだけ、認知症という病気が身近ではないということだろう。
それゆえに、地域の中での認知症に対する偏見はなかなか消えることはない。隣近所でおかしな言動をする高齢者がいれば、危ないからすぐに施設に入れたほうがよい、という意見を聞くことがある。
また、認知症の家族が恥ずかしいからと家に閉じ込め、介護サービスも使わずに自分たちだけで介護をしようとする家族も多い。認知症が病気ということすら知らない人も多い。

いつだって一番苦しいのは認知症になった本人なのに、その本人の気持ちなどは無視して、家族の辛さが前面にきてしまう病気。知識がないために、本人も家族も辛いという状況を作ってしまっている。

この絵本を作成した大牟田市の認知症ケア研究会は、絵本を使って、市内の小中学校で絵本教室を定期的に開催している。事前に子どもたちに絵本を読んでもらい、どのように感じたのか感想を書いてもらう。

子どもたちは物語の中から、おばあさんの「いいとこ探し」をすることが大切ということや、徘徊はおじいさんいとっては「冒険」なのではないかという本人視点の大切さを学んでいく。
絵本教室の当日は、絵本の朗読から始まり、認知症は病気だということを子どもたちが興味を引くやり方で話をしていく。その後、少人数のグループに分かれて「認知症とはどのような病気か」「自分たちには何ができるのか」を話し合い、最後に発表をする。

なぜ子どもたちと認知症の勉強をするのか。
それは、認知症は家族だけで支えられるものではないからだ。最終的には、地域の見守りの目や支える手が必要になってくる。その時に、子どもたちは大きな力になるのである。
子どもは純粋なので、しっかりとした知識があれば、先入観なしに接することができる。また、子どもが変われば、親も変わっていく。子どもを中心に、その輪が少しずつでも広がっていけば…というねらいがある。

そして何より、認知症の人を支えるということを真剣に考えると、認知症だけにとどまらず、人(相手)を理解しようとすることにつながっていく。隣に座っている友だちも『いつだって心は生きている』んだということに気付いていく。
認知症の絵本は、「思いやりの心」を教えてくれるのである。

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