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福祉について考えるUMEMOTOのブログ

平成19年度の認知症対策等総合支援事業

2007-01-22 19:16:54 | 認知症
現在の全国で認知症高齢者は170万人いると言われている。20年後には倍の数になるという統計まである。
また、認知症とはいえなくても、その予備軍である軽度認知障害(MCI)の人は認知症と診断を受けている人の3倍(現在は400万人以上)はいると言われている。

65歳以上の10人に1人、85歳以上の4人に1人は認知症であり、認知症対策は目下の課題である。そこで、厚労省では認知症対策として『認知症対策等総合支援事業』を計画し、予算化している。
平成18年度の予算額が15億5千万円だったのに対し、平成19年度の予算案では20億8百万円と増額している。それだけ、国も認知症対策に力を入れているという表れであろう。

その中身は、これまでの医療体制の充実、認知症ケアの質の向上等を柱とした事業を継続して推進していくとともに、新たに「権利擁護に関する取り組みの充実」「地域における総合的な支援体制の構築・充実」を推進していく内容になっており、6つの事業に分かれている。
以下、6つの事業を簡単に紹介したい。

1.認知症介護実践者等養成事業
 認知症介護の質の向上を図るため、認知症介護指導者の養成や介護従事者等に対する研修を行う事業。認知症介護研究・研修センターで行われている指導者研修や、県単位で行われている実践者・実践リーダー研修等。
 実施主体:都道府県・指定都市
 負担割合:国1/2 都道府県・指定都市1/2

2.認知症地域医療支援事業
 地域における認知症発見・対応システムを充実するため、認知症の主治医(かかりつけ医)に助言等を行うサポート医を養成するとともに、主治医に対し、認知症の診断や相談等の対応の向上を図るための研修を行う。
 かかりつけ医に対して、適切な認知症診断の知識・技術や家族からの話・悩みを聞く姿勢を身に付けてもらい、認知症の早期発見・支援の体制をつくる。
 実施主体:都道府県・指定都市
 負担割合:国1/2 都道府県・指定都市1/2

3.認知症地域支援体制構築等推進事業(平成19年度新事業)
 各都道府県のモデル地域を選定し、認知症への対応を行うマンパワーや拠点などの「資源」をネットワーク化し相互に連携することができる体制をつくる。具体的には、地域包括支援センターと連携して地域資源マップの作成したり、認知症の専門的な相談に対して助言をすることができる体制、徘徊高齢者のSOSネットワーク等、専門知識のあるコーディネーターが中心となり構築していく。そのモデル地域の取り組みを分析・評価し、情報提供していく。
 実施主体:都道府県
 負担割合:国10/10 ※2年間限りのモデル事業

4.高齢者権利擁護等推進事業(旧:身体拘束廃止推進事業)
 介護施設・サービス事業従事者に対する権利擁護意識の向上を図るための研修を行うとともに、各都道府県内における、高齢者虐待を中心とした権利擁護に関連する専門的相談・支援体制を構築する事業。
 実施主体:都道府県
 負担割合:国1/2 都道府県1/2

5.認知症理解・早期サービス普及等促進事業
 認知症の理解を促進するための普及啓発や、認知症予防・早期対応等の先駆的な活動事例の収集・紹介。認知症の本人や家族が、認知症の本人や家族が地域の経験者等と交流を持つことができる相談窓口の設置や、家族向けの研修会・交流会の開催。
 実施主体:都道府県・指定都市
 負担割合:国1/2 都道府県・指定都市1/2

6.認知症介護研究・研修センター運営事業費
 認知症介護の質の向上を図るための研究や研修を行う「認知症介護研究・研修センター」(全国で3ヶ所(東京・仙台・愛知県大府市))の運営費。
 実施主体:各3ヶ所の法人
 負担割合:定額(10/10)

以上が、来年度の事業内容である。1の認知症介護実践者等養成事業以外は予算が増えている。
実施主体を見ても分かる通り、ほとんどが都道府県が行うため、まずは都道府県が手を挙げ取り組む意志を示す必要がある。そうして初めて市町村が取り組むことができる。つまり、いくら市町村にやる気があっても都道府県にやる気がなければどうしようもないのである。

近年、認知症の当事者が声を上げ始めたことで、認知症に対する関心が高まっている。これを気に、少しずつでも認知症の人が地域で暮らし続けることができるような支援体制が構築されることを願うばかりである。

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