むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

早くも躓き始めた?馬英九

2005-12-21 03:19:30 | 台湾政治
 台湾語のことわざに「台灣無三日好光景(Tai5-oan5 bo5 saN-jit8 ho2 kong-keng2、台湾では良い景気は三日と持たない)」というのがある。これは、今回地方選挙で大勝した国民党に当てはまるようで、意気揚々のはずの馬英九が早速大ポカをした。
 それは、12月17日土曜日に国民党台湾本土派といわれる王金平立法院長が陳水扁総統と密談したことに対して、馬英九国民党主席が18日に「王氏が行政院長への就任を要請されたが断った」と「暴露」したこと。
これに対して、王氏は「行政院長の人事については話しただけ」といって要請されたことを暗に否定し、さらに、総統府も公式の声明で総統の王氏への打診を否定した。
これは18日の時点では、「王氏が行政院長に就任すれば、国民党が分断されるが、機先を制して暴露して、相手に否定させることで、そちらの芽を事前につみとった」馬氏の作戦勝ちのように見られた。ところが、王氏の否定の後も馬氏が「私が聞いた情報には間違いがない。私は国民党と王氏の立場を慮った」と駄目押ししたことから、馬氏と王氏との関係は一挙にこじれた。
 中国時報20日付け2面のサイド記事「馬急出手 王與黨兩傷(馬英九の焦りで、王氏と国民党の両方にびびが入る)」では、「馬英九は王金平に逃げ道を与えることなく、王金平がもう少しで進退窮まるところまで追い詰められた。これは党内の仲間に対するものとしては、まして相手が党内実力二番手の人物で国会議長という重職にある王金平に対するものとしては、きわめて不当な扱いではないか」「馬のすばやい動きは(陳水扁と王金平の出鼻をくじき)不安要素を取り除き、無に帰するという効果はあったといえるが、しかしその焦りによる行動は王金平の気持ちを慮ることがないもので、たとえ馬に悪意がなくとも、それによって王が受けた傷は、それほど容易には復元しないであろう」「馬が今回『王金平を保護するため』と称して行った動きは、実際には王を袋小路に追い詰めるものである。王がそれに直接反発しなくても、国民党が受けた傷は大きい」と指摘している。どちらかというと宋楚瑜に近そうで、国民党にもパイプが太い中国時報の指摘だけに真実味がある。
 私も台湾人(いわゆる本省人)の感覚にたてば、馬英九の今回の行動は、王金平の面子をつぶすものだし、台湾人なら王金平に同情し、馬英九の「情の無さ」に反感を覚えることだろう。また、さすが、台湾人社会と接点がなく、過保護に育てられた、世間知らずの純外省人の馬英九らしい行動だと思った。
 王金平は、馬英九が国民党主席になってから特に頻繁に陳水扁と会うようになったらしく(聯合報19日「馬任黨魁後 扁王每月聚會」)、また陳水扁は1998年の台北市長選で、王金平は今年7月の国民党主席選で、それぞれ馬に敗れたという恥を共有していることから(経済日報19日、「觀察站》民進黨眷顧王金平?」)、馬英九は両者の急接近にあせっていたとみられる。
まして、行政院長人事について8日にも陳水扁筋が王金平に打診したというニュースが報じれた直後の17日に王金平が陳水扁と密談を行ったことから、馬英九が疑心暗鬼を強めて、「誤った情報をもとに」(総統府筋)焦りと拙速から大騒ぎしたもののようだ(自由時報20日、「扁幕僚:馬恐慌脆弱多數 放假消息」)。
 もちろん、王氏が「組閣の打診」を否定したのは、海千山千でタヌキである彼一流の処世術だろう。実際には馬が放った情報が正しいという気もする。ただ、現状からいって、もし王金平が組閣しても国民党本土派の全員がついてくるかは未知数だし、国民党主流派が王内閣へのボイコット戦術に出れば王内閣もそんなにもたないから、結果的には陳政権にとってはそれほどいい戦略とは思えない。
王金平を活用するなら、せめて一年以上後、できれば07年になってから、国民党本土派と民進党などが本土派大連合を形成して、馬英九の国民党を少数に追い込んで、07年立法委員、08年総統選挙を本土派が乗り切る、というのが最良のパターンだと考えられる。それまで王金平というカードはしまっておくほうがベストだろう。
 そう考えれば、馬英九の話はガセともいえなくもない。ただ、ガセか本当か、いずれにせよ、馬英九は党内に確固とした基盤も系列の議員もおらず、友人もいないため、「地方選挙で勝利に導いた党首」とはいえ、孤独感にさいなまれていたことは間違いない。そして本土派議員や地方派閥に隠然たる影響力を誇る王金平への疑心暗鬼を高め、そうした焦りと疑念が「密談の暴露」につながった、と見るべきだろう。
 だが、今回この問題をめぐって動いた馬英九の表情と言動には、明らかな焦りと余裕の無さが見てとれる。
 私は馬英九という政治家は、能力があまりなく、政治家としてのセンスに欠けると考えてきた。だから今回の地方選挙で国民党が勝利したといっても、馬英九が08年総統選挙を迎えるまでに、どこかで自爆、自滅するような行動に出るのではないかと予想していた。
今回はその予感が少しは当たったように見える。ただ、今回の件は今後馬英九側に知恵があれば、いくらでも修復は可能だろう。まだ07年立法委員選挙までは時間もある。とはいえ、ろくなブレーンも話し合える親しい友人もおらず、まして唯一の後ろ盾だった父親もいない現在の馬英九にとって、修復のための巧妙な作戦を考えることはかなり難しいと見るべきだろう。
 それどころか、あまり挫折を知らない馬英九は今回の綻びに驚いて、さらにあせってほころびを広げるような動きをする可能性が大きい。

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引用したもの:
http://news.chinatimes.com/Chinatimes/newslist/newslist-content/0,3546,110501+112005122000017,00.html
2005.12.20  中國時報
馬急出手 王與黨兩傷

http://www.libertytimes.com.tw/2005/new/dec/20/today-fo1.htm
扁幕僚:馬恐慌脆弱多數 放假消息
自由時報20日

http://udn.com/NEWS/NATIONAL/NATS1/3069595.shtml
觀察站》民進黨眷顧王金平?
【2005/12/19 經濟日報】

http://udn.com/NEWS/NATIONAL/NATS1/3069747.shtml
馬任黨魁後 扁王每月聚會
【2005/12/19 聯合報】

引用しなかったもの:
http://udn.com/NEWS/NATIONAL/NATS1/3069584.shtml
王組閣 台、親支持 國堅持黨對黨
【2005/12/19 聯合報】

http://news.chinatimes.com/Chinatimes/newslist/newslist-content/0,3546,110514+112005122000346,00.html
2005.12.20  中國時報
壓不扁 中時小社論

http://www.libertytimes.com.tw/2005/new/dec/20/today-fo2.htm
王氣憤難消 暗批馬生枝節
自由時報20日


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