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幼虫移行症 (cutaneous larva migrans)

2010-10-24 | Helminth
幼虫移行症:
ヒトを固有宿主としない寄生虫がヒトに侵入した場合、成虫に発育できず幼虫のままヒト体内を移行し種々の症状を引き起こす

幼虫移行症を引き起こす寄生虫:
線虫類
イヌ蛔虫、ネコ蛔虫、アニサキス(海魚のサシミ)、テラノバ、ブラジル鉤虫、イヌ鉤虫、広東住血線虫、有棘顎口虫、剛棘顎口虫、ドロレス顎口虫、日本顎口虫、旋尾線虫、イヌ糸状虫、ブタ蛔虫

吸虫類
宮崎肺吸虫、肝蛭、ムクドリ住血吸虫

条虫類
マンソン孤虫(ホルモン料理・動物臓器)、有棘嚢虫、包虫

幼虫移行症の型:
皮膚幼虫移行症は幼虫が主に皮内や皮下を移行するもので、ブラジル鉤虫(Ancylostoma braziliense)、イヌ鉤虫(Ancylostoma caninum)、顎口虫、旋尾線虫、イヌ糸状虫、マンソン孤虫等が主な原因となる。その内、線状の皮膚炎を起こすものを皮膚跛行症(creeping eruption)という

内臓幼虫移行症
幼虫が肝、肺、脳、脊髄、眼、筋肉、消化管、腎など深部の臓器や組織に移行するもの。ブタ蛔虫、イヌ蛔虫、ネコ蛔虫、アニサキス(海魚の生食)、テラノバ、広東住血線虫、イヌ糸状虫、包虫、多頭条虫、宮崎肺吸虫等があるが、鉤虫類、顎鉤虫類、マンソン孤虫等が深部に移行することもある。


代表的な鑑別として
1. イヌ蛔虫 (Toxocara canis):
2. アスカリス (Ascaris suum etc.):
3. 顎口虫 (Gnathostoma Dolores etc.):ライギョ・ドジョウ・ヘビが感染源、皮下や内臓に感染
4. 住血線虫 (Angiostrongylus cantonensis etc.):アフリカマイマイ・ナメクジが感染源、脳脊髄組織に感染
5. スピロメトラ (Spirometra erinaceieuropaei etc.)
6. 旋毛虫症 (Trichinosis)


1. イヌ回虫症(時にネコ回虫もあり)
疫学:世界各国、子供の異食(子犬の糞便が感染源となる)に伴う感染
感染経路:砂地での虫卵の経口感染
臨床経過:発熱、好酸球増多症、肝腫大、腹痛、喘息、眼病変、痙攣発作
幼虫が消化管から門脈、門脈から全身に広がる、幼虫が臓器に行き詰まると周囲の組織に跛行する
軽症では無症状で好中球の増加のみ、重症化することもあるが感染する臓器による
治療:ほとんどの症例では無治療で自然にゆっくりと軽快するため治療を必要としないことが多い
アルベンダゾールが使用されることがあるが利益となるエビデンスはない


2. アスカリス
世界中で見られ、虫卵を野菜等と共に経口摂取することで感染する
通常は無症状であるが、跛行症としては肺に侵入してLoeffler’s syndrome (pulmonary eosinophilia)として発症することがある
治療はアルベンダゾール

3. 顎口虫
タイ等の東南アジアが流行地域
幼虫の感染した生魚(ライギョ・ドジョウ)や生の鶏肉・ヘビ肉を経口摂取することで感染
Gnathostoma spingerum は好酸球性髄膜炎の原因となる
治療はアルベンダゾール

4. 住血線虫
東南アジアやオセアニアが流行地域
保有宿主はネズミ、感染したカタツムリ(アフリカマイマイ・ナメクジ)、エビ、魚、野菜を経口摂取することで感染
好酸球性髄膜炎の原因となる

6. 旋毛虫
世界各国で認める
保有宿主はネズミ、ブタ
熱が通っていない豚肉・熊肉の摂取で感染する
臨床症状:発熱、眼瞼浮腫、筋肉痛、好中球増多、肺炎、脳炎、心筋炎
治療はアルベンダゾール

幼虫移行症の鑑別として、移動のある・なし、ある場合には移動が速い・遅いでも鑑別できる
移動あり(速い)→旋尾線虫等
移動あり(遅い)→マンソン孤虫症、糸状虫、顎口虫等
移動なし →有鈎嚢虫等

その他、形として線状・索状でも鑑別できる

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