数理論理教(科学教)の研究

数理論理(科学)はどこから来て、どのような影響を与え、どこに行こうとしているのか、少しでも考えてみたいと思います。人文系

ビック・ファーマ(巨大製薬業界) 行政・医療・大学・研究所・議会を支配する巨大帝国?

2023-02-19 13:39:06 | 医薬・製薬
参考:『ビックファーマ 製薬会社の真実』ニューイングランド医学雑誌前編集長 マーシャ・エンジェル著 篠原出版新社を読了しました。
内容は以下のようです。「 」は引用、【 】は私のコメント
 
1.レーガン政権以降の「新自由主義(市場原理主義)」の暗黒面
「…バイ・ドール法により、大学やスモールビジネスが、米国国立衛生研究所(NIH)(NIHは医学研究に対して、巨額の政府資金の配分を行っている機関である)の補助金を得て行った研究で得られた成果に特許を取ることができるようになり、製薬会社に対して排他的なライセンスを与えることができるようになった。…
…もはや製薬会社は新薬開発のために自ら研究を行う必要はなくなり…
…レーガン政権とバイ・ドール法は、医学部と教育病院の性格を一変させた。これらの非営利機関は自らを製薬業界の「パートナー」と考えはじめるようになった。そして自身の研究成果を利用して、金儲けする機会をうかがうだけの商売人になってしまった。…
…1990年代、研究者の間で企業家精神が育まれるにつれ、医学部の研究者は自らの所属施設の動きをまねて、製薬会社との間でさまざまな形で金になる取引きをするようになった。その一つは、医学研究で製薬会社よりに結果を捻じ曲げて報告するというものである。」

ミルトンフリードマン著の『選択の自由』を30年以上前に読んだときは、すごく感動したものでした。政府の官僚組織の硬直性(腐敗)(ケインズ経済学の財政投資が巨大利権化していた?)を打破するための新たな宗教的な経済哲学だと思いました。確かに自由競争によるメリットもあったと思いますが、それの副作用(暗黒面)も大きかったように思います。
 
 この市場原理主義が公平に運用するためには、それを厳格に規制する行政や法体系が必要だと思いますが、その規制体制が自由化ということで、あまりにも緩和されてしまったのではないか。「市場」がすべてなんだとあらゆる規制をなくして、この宗教哲学のご本尊である「市場」を密かに支配する者が途方もなく荒稼ぎできるシステムになってしまったのではないか。そしてすべての人や団体が「市場」に巻き込まれて「カネの亡者(改宗されて)」に成り果ててしまい、倫理的な道徳心がまったくなくなってしまったのではないか。そうなれば、市場支配者(もちろん金融も支配)はこれらの「カネの亡者」を簡単にコントロールできる。
 
 そして、この「市場の支配者」は最終的には「世界市場の支配者」となり、国家を超える力を持つことになり、世界中の市民をも支配することができるようになってしまったのではないか。
 このような状況は、あるマイノリティー集団(金融資本・マスコミ・産業界を独占している)にとっては、都合が良いものだと思います。これにより「国家」は「(選挙で選べられていない)市場支配者」に従属するようになり、「市場支配者」が「傀儡国家」を操り統治するシステムになるのではないか。】

2.法律を駆使して支配力を広める
「…1990年代には、ブランド薬の特許期間をもっと延長させる法律がいくつか制定された。製薬会社はこれらの法律を使ってできるだけ利益を上げるために、今やかなりの数の弁護士を雇っている。…その結果、1980年にはブランド薬の特許の有効期間は約8年間だったのに、2000年には約14年間へと増加している。」

【建前上、法治国家というのは良いイメージがありますが、逆に言えば「法律」を支配する者には大きなメリットがあると思います。
 どんなに道徳的・倫理的に正しいと思われることでも、法律を小細工して、また法律を上手く利用すれば勝訴できるシステムになるとも思います。米国では、あるグループは裁判官や陪審員、司法長官、また議員などもコントロールできるようです。「マスコミと法律」を武器にすれば、悪者に仕立て上げて、反対者を鎮圧することができるかもしれません。
 ある人たちの経典の一つは口伝律法を収めた文書群に膨大な注釈(有名な学者たちの解説)が併記されているようです。この人たちは、これらの「説」について自分の「説」(論理)を主張して徹底的に議論し合うようです。私はこれは法律書の解説にそっくりだと思いました。条文があり、様々な判例があり、有名な学説が併記され、それに対する自分の意見を主張する?この天性の素養のある人たちには「法律」では対抗できないと思いました。
 このような秘密契約が各国政府と締結されているようです。
 なお『法服の王国』黒木亮著を読むと、日本の裁判システムは完全に法務省等の行政にコントロールされているようです。日本のDSはもう当たり前すいて空気のようになっていますね。
 
 


3.研究段階から臨床・医者の薬の提供、また巨額の広告宣伝料でマスコミまですべてを支配する
「…2002年の時点で、フォーチュン500に入っている製薬会社10社の利益の合計は、他の企業490社の利益の合計よりも高かったのである。
…製薬業界の研究開発費は確かに巨額だが、利益と比較すれば常にかなり少ない割合である。…勘定科目の中で、単独にして最大のものは、研究開発費や純利益でもなく、会社によって呼び方は多少異なるが、一般に「マーケティング・運営管理費」と呼ばれているものである。」
「…製薬会社は製薬業界向け専用に臨床試験を組んで実施してくれる臨床試験会社に、臨床試験の実施を依頼するようになってきた。こうした医薬品の臨床試験を実施する専門の会社を開発業務受託機関(CRO)と呼び、2001年の時点で全世界に約1千社あり、依頼者である製薬会社から総計およそ70億ドルの収入を得ているのである。 
 こうした臨床試験のうちほんの一部だけが、FDAからの新薬の承認を得るためのものである。臨床試験が行われる多くの薬はすでに市販されているものであり、「市販後臨床試験」もしくは「第Ⅳ相臨床試験」呼ばれている。多くの場合、…既存の薬の市場を拡大するために行われており…」
「…時々、製薬会社は画期的な新薬を売り出すが、ほとんどの薬は母の作った残りもの料理のように、遥か昔に作った薬のバリエーションに過ぎない「ものまね薬」である。つまり「ゾロ新薬」を延々と出し続けているだけなのだ。…こんな茶番が可能なのは、法律に欠点があって、新薬の承認を得るには、試薬会社がFDAに新薬が「効く」ことさえ証明すればよいことになっているからである。つまり、同じ病気の治療に既に使われているよりもその新薬が優れている(あるいは効き目が同じである)ことを示さなくてもいいのだ。」
「…研究開発に最も重要な最終段階である臨床試験は、たいていは薬を製造ずる会社がスポンサーとなって実施されるのである。実際よりも新薬に効果があるように見せかけられるよう、臨床試験を操作してしまう方法は存在しないのだろか。残念ながら、その答えは「存在する」なのである。
…現在では製薬会社は研究デザインの決定、データの解析から、研究成果を公表するかの判断まで、あらゆることに口を出す。こうして研究に介入することで、単に研究結果を歪めてきただけでなく、自分たちの都合のいいように結果を作り変えてきたのである。もはや臨床試験をコントロールしているのは研究者ではなく、スポンサーである製薬会社なのだ。」
「…研究者たちの多くが、現在、20年前にはとても考えられなかったほどの金銭的な恩恵を製薬会社というスポンサーから得ている。研究者たちは自分たちの研究している薬を作っている製薬会社のコンサルタントになったり、諮問委員会の委員や講演会の講師として報酬を得たり、所属研究機関とともに特許の使用料をもらったり、製薬会社が資金を援助するシンポジウムで薬や医療機器を宣伝をしたり、高価な贈り物や豪華な旅行を楽しんだりしてる。」
「…2001年の時点で、製薬会社は年間約百十億ドル分のサンプルを医師たちに渡している。そのほとんどが最新の高価なゾロ薬である。製薬会社は患者や医師にサンプルを使わせれば、サンプルが切れた後もその薬を使ってもらえるから無料で渡しているのだ。
 …この年、製薬会社は、医師たちにサンプルや贈り物を渡して会社の製品を売り込むために、八万八千人もの医薬品情報担当者(MR)を動員している。」

【製薬会社は、画期的な新薬を作るより、そのゾロ新薬を高値で大量に売るための様々な「工作活動」に力を入れているようです。そのためゾロ薬の研究段階(臨床研究も含め)から販売(医者が処方箋として出す)・マスコミ(広告宣伝料の巨額な支出)までコントロールして、すべてを支配下に入れて、巨額な利益を得ているようです】

4.政府、監督官庁も従属化に置く
「…ビック・ファーマの圧力は政府のあらゆる層におよぶ。…議会は、メディケアがその膨大な購買力を行使して薬価を値切るのを禁止する法律を、露骨に作ったではないか。メディケアは製薬会社がつけてくる売り値に文句をいえないし、費用効果性のいい薬だけでなく、高価なゾロ新薬も給付でカバーしなければならない。
…リチャード・J・ダービン上院議員(イリノイ州選出・民主党)の言葉でいえば、「ロビング団体の米国研究製薬工業協会(PhRMA)は連邦議会の生殺与奪の権を握っている」のだ。」
…連邦議会は米国食品医薬品局(FDA)が製薬業界から金を受け取るようにさせた。1992年、処方薬審査料法が成立し、製薬会社からFDAに審査料を支払うこととなった。…じきにFDAの医薬品評価センター(CDER)の予算の約半分を審査料が占めるようになった。そして、FDAが規制しているはずの製薬業界に、FDAが依存する結果となったのである。
…以前にFDA長官の候補となった著名な臨床薬理学者レイモンド・ウーズリー博士も「製薬業界の意に背く意見を持つ人物がFDA長官になれないのははっきりしている」と述べた。」

【製薬業界は政府(議会)・行政(監督官庁)にも巨大な利益を背景に圧力をかけ、議会の生殺与奪の権を握り、監督官庁をただの補助者のようにしているようです。どこの国でも医療費は右肩上がり?こんなに市場が増大し続けている業界もないのではないでしょうか? 米国日本

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