月光院璋子の映画日記

気ままな映画備忘録日記です。

「ケイブマン(洞窟男)」(原題「THE CAVEMAN'S VALENTINE」)

2008年12月03日 | ◆カ行&ガ行

●「ケイブマン(洞窟男)」(原題「THE CAVEMAN'S VALENTINE」)
2000年 監督キャシー・レモン(Kassi Lemmons)

http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD1810/index.html  

NYの郊外の洞穴で、ホームレスとして暮らすサミュエル・L・ジャクソン(Samuel・L・Jackson)扮するロミュラスが、凍死体の青年が実は殺されたのだと考え犯人を暴き出そうと孤軍奮闘します。
そのとき、いつも妄想の中で出てきては彼を苦しめる魔王的存在のの敵とその事件の犯人が重なり合う。けれど、この映画の見どころは、そうしたミステリー小説を原作としているからといってミステリアスな展開や彼の探偵ぶりにあると思って見ると、おいしいところを見逃してしまう。

昔観たとき、本作がここまで綿密に音楽を選んでいるとは気づかなかったですね。テレンス・ブランチャード(Terence Blanchard )に脱帽です。
本作は、天才音楽家の精神的な病やおかしな言動を生む自閉的苦悩は半ば煙幕で、人間の≪勇気というもの≫を静かに問う映画。

ジュリアード音楽院を中途でやめてしまった天才ピアニストであり作曲家であるロミュラス、将来を嘱望されながら成功することへの恐怖から逃避し、精神の病すなわち「狂気」というものに捉えられホームレス生活をするまで落ちぶれてしまった彼が、ニセモノの芸術や芸術家が跋扈する世界の放つ腐臭に対し憎悪と恐怖を抱きつつ、その実、自分が芸術と向き合う勇気を持てないでいる。そんな姿を軸にし自閉した世界の住人となっている人間がその運命を乗り越えていくまでを描いています。
真犯人を探す道程は、いわば、自らの運命を受け入れ向き合っていく勇気を持つに至るまでの道で、それを探偵業に仮託しているということで、スクリャービンが本作を読み解くキーかなと。

サミュエル・L・ジャクソンを起用したことで映像的な面白さが突出してはいるけれど、他のキャスティングを見ても分かるように、本作はどこまでも硬派な作品(のはず)である。
さすがに女性監督。キャシー・レモンの繊細な演出が冴えた映画だと再認識。撮影を担当したアメリア・ヴィンセント(Amelia Vincent )も要チェックです。

 


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