2002年製作 アメリカ映画
監督:ジェズ・バターワース
(ジョンを演じているベン・チャップリン)
金城武に似たベン・チャップリンと二コール・キッドマン共演のラヴコメ(のつもりの)サスペンス映画。
インターネットの出会い系サイトで見つけたロシア娘との結婚を決意して彼女をイギリスに花嫁として迎えることにしたジョン(=ベン・チャップリン)・・・・。
(出会い系サイトで知り合い結婚詐欺を商売にしている二コール・キッドマン)
空港で彼の前に現れたのは、見るからにはすっぱな化粧で頭の悪そうなロシア娘(=二コール・キッドマン)だった。
しかも、この娘ナディアは英語がからっきしできない。一体ネットでのメールのやり取りはなんだったのか!?
二コール・キッドマンにとってイメージにぴったりという役柄。どうしてこうも頭の足らないはすっぱな娘の役とか育ちの悪そうな娘役とか訳アリの女という役柄が似合うのか・・・・
ジョンは驚愕し困惑し失望して出会い系サイトのようなネット結婚斡旋サイト事務局に電話するが、まったく連絡がつかない。緊急だというジョンの留守録へのメッセージに返事はない。これではまるで詐欺にあったようなもの。そう、詐欺!この映画、ここからして詐欺なのだ。
(二コール・キッドマンとマチュー・カソヴィッツの共演って、違和感!)
緊急連絡に応答がないまま、うぶなジョンはベッドで篭絡されてしまう。ああ、これだから男って!などと言ってはいけない。英語での会話コミュニケーションゼロ!意志の疎通ゼロ・・・・けれど結婚相手!晩生の真面目男と百戦錬磨の女が一つ屋根の下で二人きりなのだから。
婚約したも同然の二人のところに、しかも彼女のバースディという夜、露英辞典をプレゼントして何とかやっていこうかと思っていた矢先、彼女の従弟という二人組みが突然やってくる。ハッピーバースディ♪
面食らうジョン。周囲は一気にロシア語圏となる。私はロシア語がわからないので、彼らが会話するロシア語がどの程度のものなのか皆目見当もつかない。ロシア語で乱痴気騒ぎをする彼らに何とも違和感が募るけれども、やってきた二人がなかなかよろしい。一クセも二クセもありそうで、かつ対照的なキャラ。
一人は、「オーシャンズ13」でフォックス役をやったヴァンサン・カッセル(妻がモニカ・ベルッチ!)
もう一人が、「アメリ」のマシュー・カソヴィッツ!
(陽気なキャラの詐欺師の方を演じたマシュー)
この二人、フランス映画の「憎しみ」(1995年製作マチュー・カソヴィッツが監督!)でも共演しているらしく息がぴったり合っている。切れる体育会系の切れるタイプをヴァンサン。それをなだめる柔のタイプをマチュー・カソヴィッツというのがいい。
ロシア語だらけの中で銀行員のジョンは蚊帳の外。どんちゃん騒ぎの日々に恐れをなしてお引取りを願ったところ、
いきなりナージャを人質にして金を要求され、人の良いジョンは銀行からお金を持ち出してしまう。
ところが、・・・・
人質のはずのナージャと脅していたアレクセイは、実は恋人同士!結婚詐欺グループのお仲間だった。あまりの事実に驚愕し硬直するジョン・・・・
ああ、哀れなジョン!なのだが、
(ホテルのトイレで縛られるジョン・・・)
(ドア一つ隔てた部屋から聞こえてくるアレクセィたちの話とベッドでのナージャのあえぎ声・・・・)
こういう表情って、シリアス映画そのもの。金城武に似たベン・チャップリンでは、だから、イマイチその辺のところがわかりにくいキャラクターになってしまう。
いくら、こんな姿をして見せてくれても、どうも笑えない。やっぱり彼はコメディには向いていない。
一方のナージャは、というと、
ジョンのことなど眼中にない。
そういう悪女役が二コール・キッドマンにはぴったりなのだが・・・・ナージャのお腹の中にはアレクセイの子供がいる。もう十分稼いだから足を洗おうと言うナージャ。この辺から、実は見かけと違って純粋な心を持った女性なのだという役柄を超えた二コール・キッドマンお得意の自己主張が始まる。
(自分に暴力を振るう男にしがみつくというキャラは、彼女にぴったりだが・・・これがコメディ映画で見せる顔だろうか)
けれど、アレクセイは詐欺のために他の男とエッチした彼女が気に入らない。自分の彼女にそういう仕事をあてがった張本人なのだが、そこが実に身勝手なキャラ。まだまだ詐欺を続けたいらしくナージャに暴力を振るい、彼女を縛り上げて置き去りにする。実に酷薄!勿論お金も持ち逃げする。抜け目のなさ!こういう役がまた似合うんだなあ、ヴァンサン・カッセルって!
一人取り残された彼女を警察に突き出そうとするジョン。気弱で心優しい男がバイオレンス男に変貌か!?と思いきや、彼女が妊娠していることを知って心が動く。
(男に捨てられお金も持ち逃げされたナージャだが・・・・)
(彼女を警察に突き出すべきか、助けるべきか。ハムレットになっているジョン)
ジョンは、彼女の罪はソ連崩壊後の経済の悪化だと。生きていくために仕方なく悪の道に入ったのだと考えるようになったのか、そう言い訳する彼女にいつしか同情する。そして自分の無実の罪を晴らそうとするチャンスを棒に振って、彼女をロシアに帰そうと決める。いわば、国際的な詐欺師の国外逃亡を手伝うわけです。それも、どうやら恋に落ちたシェークスピアになっているからです。
まじめなジョン・・・・すでに銀行から大金を盗んだ犯人として全国指名手配中。そんな男が真犯人ナージャを飛行場に見送るのだから、気のよさは天下一品。
ところが、ナージャは抜け目のないアレクセイに見つかって連れ去られてしまう。二人の後を追いかけ、007張りに活躍してナージャを救い出したジョンは、再び彼女を飛行場に。
そこで、グッバイするはずが・・・・・
(男がいなければ何もできないキャラのはずだが、二コール・キッドマンのダメなところは、そういうキャラに徹することができないところ)
何とコーとのポケットに入っていたアレクセイのパスポートとチケットで、二人はロシアに向けてまんまと旅立ってしまうというお話。出入国管理国局の人間の目は、節穴だらけ・・・・ここで初めて笑える映画です。
(二人を追って空港にきたものの、パスポートがない!しまった!)
(空港に行く時間になってホテルの部屋に戻ってみれば、・・・・・どうなってるんだ?というお顔。そもそも盗んだ大金を持って国外逃亡するまであと3時間というときにホテルでゲームなんかするか!?)
空港には間抜けな男が二人残されて、
映画は終わる。
まあ、インターネットの出会い系サイトで外国から花嫁を迎えようとした冴えない男が、恋に落ちた相手と(しかもヤバイ男の子供を妊娠中)、言葉も分からない国(しかもロシア!イギリスとの関係を考えたら、イギリス人ならぞっとするのではないかと思うのだけれど・・・)へ無一文で旅立つ≪勇気ある≫男に変わるという映画。ジョンにとってはめでたしめでたしかも。何といってもそこで初めて彼女の本名を教えてもらえたし。(苦笑)
最後に笑うのは誰?じゃなく、
結局おバカだったのは、誰?という映画ですね。
なのに、どうも面白い映画になっていない。犯人が一人も捕まらないのだから、「コメディタッチ」の「クライムサスペンスの亜種」とも言える映画だけれど、正直笑える場面と分かっていても笑うのに苦労する。
ジョンにとっては、真面目ではあるけれど覇気がなく消極的だった自分が、勇気を出して一歩を踏み出せる男に変わっていく物語でもあるし、ナージャにとっては、自己チューのダメ男と知りつつ肉体的に離れられない関係にあった男とおさらばして新しい人生を踏み出す女の物語。そういう意味ではコメディタッチの成長物語。
なのに、笑えないコメディとなってしまったのは、二コール・キッドマンの野暮ったさとベン・チャップリンの顔のせい。ベン・チャップリンは、本来、本格クライムサスペンスや本格ホラー向きの顔だから。