月光院璋子の映画日記

気ままな映画備忘録日記です。

2008年3月後半の映画三昧リスト(3)

2008年03月30日 | ■2008年 3月の映画鑑賞

3月前半の映画三昧の備忘録、これがラストです。

 ◎は、今回初めて観た映画
 ●は、以前にも観ている映画

 

◎「モーテル Vacancy」 ーーーhttp://www.sonypictures.jp/movies/vacancy/

 

B級ホラーだと思っていたら、なんのその!救いのなさ、逃げ場のなさは怖かったですよ。ホラー映画のお好きな方にはおススメです。

 

◎「Kicking and Screaming」 ーーーhttp://www.imdb.com/title/tt0384642/

ウィル・フェレルのお好きな方にはよろしいかも。

 

●「ホリディ」ーーーhttp://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tymv/id326504/ 

 

ちょっとコメディタッチのラブロマンス。 どうせ見るなら、これよりもっと≪大人≫向けの映画「トスカーナの休日」の方を、観たかったのですが・・・・・、娘が選んだのが、「ホリディ」でしたから、お付き合いしたようなものですね。

 

◎「パイレーツ オブ アトランティス1.2」 ーーー以下を参照。

 

映画としては、何だか既視感全開というか・・・・小学5年生くらいまでのお子さんにお留守番をさせるときにはいいかも。

◎「スターゲイト・アトランティック」 ーーー

お暇な方は、こちらでどうぞ。http://www.gyao.jp/sityou/catedetail/contents_id/cnt0047429/

昔あった「宇宙家族ロビンソン」という外国のTVドラマに出ていたトラブルメーカーのキャラ、「げげげの鬼太郎」でいえば、 ≪ねずみ男≫のキャラクターと同じキャラの天才が出てくるので笑えたけれど、駄作。

 

◎「さくらん」 ーーーhttp://www.sakuran-themovie.com/

遅ればせながら期待して観たのですが・・・・つまらなかったでありんす。音楽も評判ほどではなかったし。正直言って、駄作。 「王様は裸だア」という映画人はいないのか。

 

 


2008年3月後半の映画三昧リスト(2)

2008年03月30日 | ■2008年 3月の映画鑑賞

gooブログは、一度にアップできる文字数に制限があるため3部に分けて掲載します。

◎は、今回初めてみた映画
●は、以前にも観ている映画

 

◎「バガー・ヴァンスの伝説」 ーーーhttp://www.foxjapan.com/movies/baggervance/html/index.html

  

良い映画でした。完全にマイベスト10に入る映画。 ゴルフのお好きな方には必見のおススメ映画ですね。ブログでもアップする予定です。

 

◎「ゼム Them」ーーーhttp://them-movie.jp/

 

異色のホラーサスペンスですが・・・・秀悦。低予算でもこれだけ面白い(怖い)映画が作れるということで感心していたら、ラストに実話だという字幕が入り、すっかり萎縮してしまいました。

◎「There will be blood」 ーーーhttp://www.movies.co.jp/therewillbeblood/

     

ダニエル・ルイ・デニスの演技が見ものです。ラストの神父の若造との台詞のやり取り、唸らされました。

◎「Shoot Em Up」 ーーーーhttp://www.shootemupmovie.com/

ちょっと「シン・シティ」のニューバージョンかと思うような感じもありますが、かなり面白かったです。ブログでアップしたいと思います。

◎「呪怨 2」 ーーーhttp://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=3808

どこが怖いのか期待して観たのですが、やはりちょっと期待はずれでした。商業主義の宣伝でその気になって見ると、最初から「怖い」という刷り込みで見るので怖いと感じるのかもしれないけれど、どこがどう怖いのか不明。

◎「Land of Dead」 ーーーhttp://www.landofthedeadmovie.net/

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最近多いですね、吸血鬼+ゾンビという映画・・・・または、それに+未来社会というSF仕立てのゾンビ映画。もうちょっとどうにかならないのかと。


 


2008年3月後半の映画三昧リスト(1)

2008年03月30日 | ■2008年 3月の映画鑑賞

  ◎は、今回が初めて観た映画  ●は、以前も観ている映画です。

◎「1300万ドルの女」ーーーhttp://www.eiga-fan.com/movie/log/100921.html

 クーリオ 

これは、15歳以下は駄目ですね。半分ポルノですが、いつかブログにあっぷしてみようかなと。ネット時代の現代、いろいろと考えさせられる題材がてんこ盛りでしたので、画像を整理したらブログにアップしたいと思います。

◎「マグ二チュード8.5」 ーーーhttp://www.eiga-fan.com/movie/log/101106.html

最後がお気楽な地震パニック映画。

◎「アイス プリンセス」 ーーーhttp://www.movies.co.jp/iceprincess/top.html

  

母と娘の葛藤、母親同士の相手の人生への嫉妬・・・など重たいものもありましたけれど、何と言ってもフィギュアスケーターへの夢に掛ける主人公が愛おしかったですね。コメディタッチのヒューマンホームドラマ風に感じたのは、やはりママ役の彼女のせい。(苦笑)

◎「キングダム 見えざる敵」ーーーhttp://www.kingdom-movie.jp/

     

今年のマイベスト10に入りそうな映画。個別にブログで取り上げます。 

◎「バケット・リスト」 ーーーhttp://wwws.warnerbros.co.jp/bucketlist/

 

同じくベスト10に入る映画。モーガン・フリーマンとジャック・ニコルソンの共演かつ競演というキャスティングが異色でした。ラストの葬儀でのスピーチ、良かったなあと。 先行上映で観てしまいましたが、邦題は「最高の人生の見つけ方」だとか。ラストのエベレスト頂上が映し出されたときのシーン、良かったですね・・・・

 

 


ライラの冒険 黄金の羅針盤

2008年03月24日 | ◆ラ行
黄金の羅針盤 白熊
(illustrated by なる猫さん)


主人公ライラという少女、
近所の遊び仲間たちからは「孤児院」と悪口を言われる寄宿舎で暮らす少女が、
彼女しか持てない(他の人間が持っても意味がない)「黄金の羅針盤」という、
進むべき道を指し示してくれる不思議な羅針盤を持たされて
旅に出る冒険ものですが、
彼女の世界に訪れようとしている危機の正体を、
見定めるために危険な旅に出た学校長のダニエル・クレイグの後を追って、
彼女もまた旅に出ることになるのですが、

このイラストは、
最初に仲間として同行を頼むことになった白熊の運命の戦闘シーンです。

なぜ、運命の戦闘シーンかというと、
白熊は、彼の国では世継ぎにプリンスだったのですが、
下克上と実力主義のその国で、彼の皇位は他の凶暴な大熊に奪われ、
その故国を追放されて以後、ずたずたになった自尊心ゆえに、
酒びたりとなり街の酒場で下働きする身分にまでなっていた白熊が、
強敵に挑む勇気を奮い起こして戦うシーンだからです。

ライラは、危険な旅に出るにあたり、
出会ったハンター(大人の男)から、
この白熊をスカウトするようアドヴァイスを受けたのですが、
一筋縄ではいかない白熊のスカウト・・・・

けれど、嘘つきと称されはしていても想像力が豊かで、
まっすぐな目でものを見つめる正義感があり、
弱者に対しては身の危険を顧みずに示す心のやさしいライラと、
この元プリンスの白熊との間には、
不思議な友情と信頼が育っていくのでした。

旅を進めるの当たって、
この戦闘は、心置きなくライラとの旅を最後まで続けると約束した白熊にとって、
仲間のいる故国を思えば、プリンスとして避けては通れない戦いでもあったのです。
つまりは、自分の使命と責任感から逃げないということ。
そして、ライラとの旅に出るに当たって
後顧の憂いを断つという意味でも・・・・・

けれど、いま、故国はその熊が王様となっており、
トップリーダーとなるには、その王に戦って勝たなければならない。
けれど、相手はずるがしこく凶暴で、しかも、いまや専制君主。
周囲は、王の配下の熊たちでいっぱい・・・・
しかも、皆相当に強い。

白熊が命をかけて向かっていったとしても、
いったいどこに勝算はあるのか、
そういうまさにぎりぎりのところ・・・・

戦いに赴く白熊を涙ながらに見送るライラ・・・

ここが、この映画の最初の見せ場ですね。
とても、好きなシーンでした。


この『ライラの冒険』、正直言って、
ファンタジーものがあまり好きじゃないわたくしでも、
ハマってしまいました。とても面白い!
「ハリー・ポッター」のように
登場人物の名前からして覚えられないのと違って、(苦笑)
ほとんど聞きなれない聞き取れない舌を噛みそうな長い名前は出てこないし、
映像が暗くてよくわからないという映画『H・P 不死鳥の騎士団』違って、
とてもきれいな映像で、おまけに、

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主人公のライラを取り巻く人物たちに、
007と二コール・キッドマンという顔合わせ。
彼らがライラのパパとママ・・・・というのは、映画の中での
ニセ情報か!?(苦笑)

その二コール・キッドマンに対するは、魔女役のエヴァ・グリーン。
そう、映画『007 カジノ・ロワイヤル』で、
ボンドの引退を決心するほどに愛した女性を演じた彼女です。
わたくしは、リドリー・スコット監督の映画『キングダム オブ へヴン』での王女役での方が、
印象深かったですけれど、このエヴァ・グリーンを、
二コール・キッドマンと対峙させたところがニクイですね。(笑)

それにしても、
主人公のライラを演じている少女の表情が実にいい。

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やんちゃでなんじゃこりゃ、と思わせるほど快活で中性的かと思えば、
あどけなくて頼りなさそうな幼子の表情となり、
そうかと思えば、涙を拭う健気な子供の顔になったり、
どきっとさせられるほどに凛とした女性の顔も見せる・・・

ダコタ・ブルー・リチヤーズという
このキャスティングの成功が大きいのではないかと思いましたね。
魅力あるライラです。

映画冒頭では007かと見紛う登場の仕方のダニエル・クレイグだし、
どの人間にもついている一心同体の守護霊の動物たちの姿も
見ていて楽しめたし、
哲学的なイメージも膨らむし、
勇気や愛や友情というネタはしっかり描かれているし、
SFのようでもあり、なかなか絵になるシーンが出てきたり、

ううっ・・・・


ということで、
やっぱり、ネタバレになるといけないので、
この辺で・・・・(ああ、書きたいなァ)

監督は、クリス・ワイツ。
あの映画『Mr&Mrs・スミス』の監督で
旬な俳優や女優を輝かせるセンスは注目に値しますね。
39歳という若さと無縁ではないかも。
続編が楽しみです。


フィラデルフィア

2008年03月24日 | ◆ハ行&バ・パ・ヴ行
この『フィラデルフィア』は、社会派映画のお好きな方、あるいは、
トム・ハンクスのファンには名作の誉高い作品ながら、
初めてこの映画を観たときのわたくしの感想は、

「この脚本家は、泣かせどころを心得ている書き手だわ」

というもので、脚本に対して不満が残りました。

ロン・ナイスワーナーという脚本家で、
映画『旅立ちの季節 プリンス・オブ・ペンシルバニア
がデビューの脚本家です。

ペンシルバニア州の炭鉱町を舞台に、
家族の崩壊に傷つき悩みながら成長してゆく繊細な少年の姿を描いた映画でした。

本作はそれと同じラインだというのが観終えたときの感想で、
撮影を担当したカメラマンに対しても少なからず不満が残ったわたくし。

正直なところ内容に対してさえも、
同性愛に対し昔から違和感がなかったせいか、

「なぜ差別という原罪を問うのに、
 エイズで死んでいく青年を取り上げねばならないのか」

という個人的なリアクションが出てしまった映画でした。

個人的な感情のレベルでのリアクションなれど、
イマイチ不満が残された映画だったのです。

だから、トム・ハンクスの恋人のミゲル役が、
アントニオ・バンデラスだということにも
気づきませんでした。

エイズが社会的な問題となった頃の映画ということもあるのでしょうけれど、
アメリカと日本とでは問題になる背景が異なるという意識が大きくて、
そうしたどうでもいいことに囚われて、
映画を表層的に観て終わってしまっていたことに
今回初めて気づきかされました。

映画の中でエイズに感染し法律事務所を解雇されたトム・ハンクスが、
不当解雇の理由は差別であると糾明すべく原告となった裁判でのシーン。
原告側の弁護士役のデンゼル・ワシントンが、
雇い主たる被告人に質問をする場面、
以前観たときの記憶として、
ここが印象深く残っていたのですけれど----

原告と公私共に信頼を寄せ合うような交流のあった被告は、
証人席で語り始めます。
輸血時の感染や血液製剤などで感染したエイズ患者に対しては
厚い同情心を示す人物ながら、
自分の行いによって感染した同性愛者に対しては
異様な怒りと反発心を抱いており、
被告は、弁護人からの質問に対し次のように語っていきます。

いかに同情すべき症状の患者であっても、
それは人間としてどう生きるかのルールに
違反した行為で感染したのだから、自己責任だと。
いわば、自らが蒔いた種なのだから、
自分で刈らねばならないのだと。

「そのルールとは何か」

「旧約新約の両聖書だ。そこに書かれている」

アメリカの中枢、アメリカ社会の中枢にある
エリートであるWASPの社会通念、良心、信心が
どこにあるかがその一語で表されていると
当時のわたくしは思いました。

いわば共和党的理念でもあるアメリカ社会の指導層の理念。
感情面では被告に対し心揺れる被告にとって、
原告のトム・ハンクスはもはや価値を共有する守るべき仲間ではないのです。
彼には裏切られたという思いさえある。
同性愛者のエイズ感染はいわば天罰だという考えで、
被告の内面も相当に葛藤が生じています。
ジェイソン・ロバーズのような重鎮じゃなければ、
とてもやれない役柄でしょう。はまり役でした。

日本でのエイズ問題ではそうした背景はあまりなく、当時は、
らい病患者に対する偏見と差別に近いものがありました。

政府とらい病患者の方たちとの和解がやっと成立するような社会ですから、
こうした映画によってエイズに対する誤解や偏見も減っていくなら、と。
エイズ患者に対し為されていた不当な差別がなくなるなら、
それを期そうというのが、当時のわたくしの、
正直な映画を観終えての感想でした。

何という浅薄な感想だったかと。 

これだから、映画は怖い。
以前観た映画でも再び観ると、こうも目から鱗----
当時の思い出を懐かしむどころか、
まさに自分を省りみる鏡になってしまう。


泣かせどころを心得ていると申し上げた脚本家への不満も、
皮相なものだったと反省しきり。

なぜ、映画のタイトルが『フィラデルフィア』なのか、
その名がギリシア語で「兄弟愛」を意味し、かつ、
その街がアメリカ合衆国の最初の首都だったことも偶然ではなく、
作品の内容と深く深くリンクしていることに、
不覚にも今回初めて気づかされた次第です。

実は、この映画『フィラデルフィア』を観るまで、
わたくしはトム・ハンクスという俳優を知りませんでした。

当時、

≪エイズで解顧された新進気鋭の弁護士とエイズ恐怖症の黒人弁護士男の2人が、
差別と偏見という見えざる敵に闘いを挑む社会派ヒューマン・ドラマ≫

ということでこの映画を観たわたくし-------
監督はジョナサン・デミですが、「羊たちの沈黙」でブレイクした監督です。



朝方に映画を観終えた後、
いろいろの思いが重なりないまぜになり感極まって、
熱い涙を流してしまいました。

映画の中でデンゼル・ワシントンが法廷対策を話し合おうとした夜に、
トム・ハンクスが流した音楽に胸を揺すぶられるシーン、
それがジョルダーノのオペラ『アンドレア・シェニエ』であること、
死の床で彼が流す音楽がそれであったことで、
ああ、この映画はここまで深く深く愛を問う映画であったのかと打たれ、
感極まってしまったわたくし。


この映画『フィラデルフィア』は、
まさに現代のアンドレア・シェニエを主人公とする物語。

フランス革命で断頭台で死んだ詩人が、現代の法廷闘争で、
弁護士ながら原告となりエイズで死んでいく物語だったのです。

愛について感じ入りたい方、
同性愛、異性愛を問わず、性愛を伴う愛について
じっくり考えてみたいという方にお勧めしたい映画です。 



稲妻

2008年03月24日 | ◆ア行
昭和52年頃の東京山の手

家を出て通りで会ったならば、
こうして丁寧にご挨拶するのが当たり前だった時代。
東京は山の手の昭和50年代初頭の風景。

昭和52年ごろの東京下町の様子

一方の下町では、戦後十数年、
さながら樋口一葉の作品に描かれているような住まいと路地が再建され、
その路地を包丁や刃物の研ぎ屋や竿だけ売りや金魚売が行き来し、
夕方になれば、夕涼みや子供たちの遊び場となる路地。
その路地に軒を並べる家々も、
ガラガラと格子戸を開ければ、玄関先で、
親戚や知り合いやご近所さんにお茶やお酒を振舞う生活。

実家のある下町 玄関先での接客
戸には鍵などかかってはおらず、誰でもこんちわ~と出入りするのが、
この映画の主人公の実家です。


そんな実家に集まる主人公の姉兄と姉の夫たち。

実家に集まる異父姉妹とその夫たち

蕎麦を食べながら、商売の話と金策の話とだれそれの悪口ばかり。
戦中戦後に子供時代を過ごした世代の多くは、
大なり小なり、親は食べさせて育てるので精一杯だったことでしょう。
お年頃の三女は、異父兄と姉とその夫たちが嫌で嫌で仕方が無い。
親戚が集まっても二階に上がって下りてこようとしません。
けれど、姉は縁談を持ってきて酌をさせようと呼びにくる。

三女は母に不平をぶつけます。「あの人たちは、嫌いよ」
母は、「仕方が無いじゃないか、親戚なんだもの」と。

4回結婚して父親の違う4人の子を産んだ母親

4度結婚して父親の違う子供を4人産んだ母親。
そんな母に、「いったい何が良くて、4回も結婚なんかしたの」
と問い詰める三女。そんな娘に、母はルビーの指輪を出してきて、
「お前のお父さんからもらったんだよ。
お父さんからもらったたった一つの物。
この指輪をお前にあげよう」と指輪を渡しますが、
「どうせ、ガラス玉に決まっているわ」と取り合わない三女。
「お前のお父さんは、そんな人じゃないよ。嘘なんかつくような人じゃない」
そんな母親の話に、ため息を漏らす三女を高峰秀子が演じていました。




長女

長女は、取らぬ狸の皮算用ばかりの駄目夫に不平不満が絶えず、
妹の夫が急死したというのに、その妹に下りる保険金を当てにする一方で、
商売が繁盛しているやり手の野卑な男を末の妹の縁談相手として押してきます。
が、いつの間にか、その羽振りの良い男に媚を売る始末。
亭主に三行半を渡して見切りをつけ、お金のある男じゃなければ、と
転がり込んで押しかけ女房。相当タフです。


次女

次女の結婚生活も三女にはとても幸せには見えません。
おっとりした次女は、妹に「なぜ結婚なんかしたの」と聞かれ、
「べつに好きなわけでもなかったけれど、
他に当てもなかったから、しようがないじゃないの」
と実に淡々としています。
結婚して幸せかと妹に聞かれて、
そんなことは考えたこともないと言う。
夫が死んでから現れた子連れの女性(愛人)にも嫉妬することもない。
ただただ、遺骨を前に泣くばかり。そして、
妙に亡夫の「妻」の≪務め≫に執着します。


亡夫の愛人から養育費を要求される次女

夫が死んでから現れた子連れの愛人から、
下りた保険金の半分を貰いたい、
生活費と子供の養育費を支払ってくれと言われても、
おろおろするばかり。

傍で聞いている三女は、
「あなたに何の権利があって、そんな要求を姉にするのです」
「妻がいるとわかっていて義兄とお付き合いしたのは、
あなたの自由意志ではないんですか」と苛立ちますが、
それを次女は制します。
話し合いをするのに妹に付き添ってもらいながら、
「夫のやったことですから、妻の務めとして、
あなたとお子には出来るだけのことはします」と言って、
夫の借金を支払えばいくばくも残らない保険金ながら、
まとまったお金を渡してしまう古風な女。

しくしくとよく泣く女性ながら、気は弱そうなのに、
遺族として受け取った保険金の残りを
喫茶店の開業資金に全額つぎ込みます。
それこそ、誰にも相談しないであっという間に決めてしまうほど、
「何もしないでは生きてなんかいけないもの」と、

下心で援助を申し出る男
(いまや夫の下を飛び出した姉がいっしょに暮らしている相手)の援助で、
新しい事業を始めるのはこの次女。

三女

異父の子供を4人も産んで皆一人で育ててきた母親と、
そんな姉たちの様子を見て、
「結婚なんかしたくない」と結婚拒否症になる主人公が三女です。

実家の2階に下宿している家庭教師の仕事をして自立している女性

実家の二階に下宿しながら、
終日机に向かい家庭教師の仕事で食べている自立した女性。
三女はこの女性と話がしてみたい。
蓄音機でクラシック音楽のレコードを聴いている彼女の世界に触れながら、
そのレコードがその女性の母親が
生活費を切り詰めても買い続けたレコードだと聴いて、
せつなくなる主人公。

この三女は、大の読書好き。
遊覧バスのバスガイドの仕事をしています。
(昔、「東京バスガイド」という歌謡曲があったように思うのですが、
昭和20年代後半から30年代の花形職業だったのでは?)

世田谷の下宿先

自分の居場所を求めて、苦悩する三女。
金儲けと商売と、男と女の色欲で生々しくどろどろした実家の人間たちの世界から
逃れるべく、家出を決行し東京の山の手世田谷に下します。
そこで、お金が貯まったら書棚を買い、
その書棚を好きな本でいっぱいにするのだと、
そうしていつかは夜学にも通うんだと夢を膨らませながら、
自分の道を探そうとするのですが、

世田谷の下宿先の隣家の兄妹

下宿先の隣家には仲の良い兄妹が住んでいて、
妹はピアニスト志望、兄は一流会社に勤務しながら、
妹の夢をかなえてやるために家庭教師のアルバイトをし、
指を怪我したら大変だからと洗濯炊事も自分がやるような男。
三女にとって、そんな男性は生まれて初めて。
まぶしくて仕方がない。声をかけられるとうつむいてしまう。

ここで、根上淳演じるその男性と、
もしかしたらと見ている側は期待するけれど、
二人の関係はご近所さんどまりで発展する兆しもないまま。
三女にとってこの隣家の兄妹存在は、眩しすぎる。
憧れと慰めと将来への希望の世界への扉のようなものでしょうか。

泣く母

その下宿先に、ぼろぼろの着物を着た母が訪ねてきます。
長女が捨てた夫を実家に住まわせ世話をしていたのですが、
博打の形に皆持っていかれ、
その男の妻であるまま他の男と同居している長女と、
その男の世話になり始めた次女の間で揉め事が起きて、
次女が出奔して行方知れずだと。

母と娘

三女は、そんな話はもう聞きたくありません。
最初は「お姉さんもそのうち帰ってくるわよ」
と適当に相槌を打ちますが、
さめざめと泣く母、惨めな母に、怒りが爆発。

一度だって幸せを感じたことなんか無かった!と。
どうして、たった一人の人との結婚で終わらせてくれなかったの!と。
どうして、父親の違う子供を4人も産んだのよ!と。
それで、何かいいことあったの!?何もないじゃない!と。

母は、あんまりだと言ってさめざめを泣きます。
どんなに苦労してお前たちを育てたことか。皆かわいいわたしの子だよ、と。


やがて、時は経ち、
三女は、貯金してきたお金を出し母に着物を買ってやろうと思い、
母は、泊まっていけという娘に笑顔を見せ下宿を去りますが、
駅への道すがら、三女は言います。
「あのルビーの指輪ね、調べてもらったら、本物だったわ」
母、「そうだろう、そうだろう、
あなたのお父さんは、嘘をつかない人だった」


そうして映画は終わります。

成瀬巳喜男監督の1952制作の『稲妻』という映画でした。
わたくしは、林芙美子の良い読者ではないので、
この「稲妻」というタイトルをどう理解したらいいのかしらと
最後まで考えさせられつつ見終えました。

敗戦から十数年と思われる東京が、随所に出てきます。
いまだ貧しいながら、復興のプロセスでお金こそが力となっていく中でのし上がっていく男と敗れていく男、戦地から戻って世の中の変化についていけない男。
戦後の日本の殿方のそうした光と影を感じさせられる一方で、

三人の娘とその周りの新旧の女性たちの生き様、
心の在りよう、価値観などが織り成す世界は、考えれば、
かなり深刻なものを皆背負っていながら、三人の娘たちは、
戦前戦中戦後を生きぬいた母親の紛れもないその血を受け継いだ生き様と
性格と資質に違いないものを三者三様に受け継いでおり、

それが昭和のある時代の風景と共に
一本の芯となって映画の底流を支えていたように感じられ、
それが不思議な安定感を作品に与え、
何ともいえない清涼感が残る作品となっているように思われました。

出演者の俳優女優に関しては記載しませんでしたけれど、
ここでご紹介した写真の中の女優さん、
どなたか分かります?



スィニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師

2008年03月24日 | ◆サ行&ザ行
銀の彫り物細工が施されているカミソリのこの輝き!その質感!
観て参りました。昨日、夕方から出かけて、
映画『スウィーニー・トッド』を観てきたばかり。

きっといろいろなブログで映画評は言い尽くされていると思いますので、
以下、個人的な感想に留めますね。


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そもそも映画の時代設定となっている
19世紀(1800年代)のロンドンというのが、
個人的に異様に興味のある時代&都市なので、
当時の街並みや街の空気のようなものが再現された映像には
身震いするほどわくわくさせられたわたくし。

その19世紀初頭のロンドンが、
いかにもCGと分かる映像でも、
好きな色合いの映像であれば満足。
本当に身震いするほど好きな色合いの映像でした。

加えて、冒頭からイケテル音楽で、
港に入る船上からロンドンを一望するジョニー・デップの
悲壮な表情と佇まいを金管楽器が大活躍のオーケストラで一気に盛り上げます。
そこで、思わず、う~んと唸らされちゃいました。

この映画、何と言っても映像と音楽、
この見事な両輪がしっかり回っていくことで、
ティム・バートン好みの世界がスピィーディに劇的に展開されていきます。

過日、公式サイトを眺めたとき、
監督のティム・バートンは無論ながら、
美術担当のダンテ・フェレッティ、そして
撮影のダリウス・ウォルスキーの二人の仕事ぶりに
最初からかなり注目して観ることになったのですが、
期待は裏切られなかったなあと。

女主人と二重唱

ジョニー・デップ、予想通り
ミュージカル映画が向いているぞと思えるほどの出来でした。が、
驚いたのは、パイ屋の女主人ミセス・ラベット役の
ヘレナ・ボナム=カーターの歌。
予想以上の歌唱力と言えばいいでしょうか。
二人の二重唱には心打たれました。

判事とnijyuushou


悪役の判事役のアラン・リックマンとジョニー・デップの二重唱も、
思いがけない味わいで、凄い緊張感ある二重唱でした。それに、
子役のトビー少年役の男の子が
母を慕うようにミセス・ラベットへの思いを歌うソロの美しさは、
この復讐劇の終わりを予感させ
みぞおち辺りをずっしりと重くしてくれましたし、


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恋人のソロ

スウィーニーを救い彼の娘ジョアナと運命的な出会いをする青年
船乗りアンソニー役の青年のソロも、
彼とジョニー・デップと物乞い女との三重唱も耳に残るものでした。

この映画、徹底的にジョニー・デップの魅力全開の映画です。
なれど、その魅力をしても、個人的に気になった場面がありました。

法廷でのシーンが気になったのです。
あれ、なんだったのかしらと。

いい加減な審議で判事が死刑の判決を下した相手、それが子供。
そのシーンを盛り込むことでスウィニー・トッドこと
ベンジャミン・バーカーに無実の罪で終身刑を下した判事の人間性を
表そうとしたのでしょうが、ちょっと、
繋がりが見えにくい場面だったなあと思われました。

しかも、主人公が無実の罪で終身刑を下されるというシーンが
どこにも出てきません。こうなると、
なくてもいいシーンが挿入されていて、
あった方が良かったシーンがないように思われて、
ちょっと肩透かしを食らった気分だったわたくし。

予告を見ていなければ、そして、ジョニー・デップの、
観客に有無を言わせない迫力がなければ、
なぜ主人公がそこまで復讐の鬼と化し狂人となっていくのか、
説得力にイマイチ欠けるというか、
観客に共感させるのにイマイチ弱いぞと感じました。

狂人と化しているのだから仕方がないけれど、

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娘が生きている!
しかも、にっくき判事に籠の中の鳥のように囚われている!
と知っても、ご近所なのに会いに行こうともしないで
復讐を叫ぶジョニー・デップ。(苦笑)
15年間忘れもしなかった愛娘を想い「ジョアナ~~~」と
歌うジョニー・デップ。

そんなところがちょっとヘンで、こうしたヘンさは、
やっぱりティム・バートン監督ならではの作りかなと。
あくまでも余談ですけれど。

ミセス・ラベットの歌う彼女の夢がマルグリットの絵画のようで、
ホラー映画のセンスがそこで変調し次元が変わります。

夢の終わりで映画の中に「現実」を再生させる手法ですね。
映画の中で次元をワープさせるのにマルグリットの絵画世界をもってくる、
そのヘンさがいかにもティム・バートン監督という感じで魅了されました。

感動のミュージカル映画!でもあり、

これぞ感動のスプラッター系ホラー映画!でもあり、

人間の運命に深く感じ入る古典劇映画!とも言えますが、

ミュージカル仕立てながら無駄のないすっきり感!は、
やはり監督の技あり一本というべきでしょうか。

ティム・バートン監督作品のファンの方、
無論ジョニー・デップファンの皆さん、そして、
ヘレナ・ボナム=カーターのお好きな方、
ミュージカルのお好きな方、
(といっても、
「サウンド・オブ・ミュージック」や「オズの魔法使い」系が
お好きな方にはおススメしません)
そしてまた、人間の愚かさ悲しさが
運命の糸で操られていくかのような古典劇のお好きな方、
「復讐するは我にあり」に関心をお持ちの方、そして、
ホラー映画とスプラッター映画のお好きな皆さんには、
必見の映画としておススメします。


黒水仙

2008年03月24日 | ◆カ行&ガ行
●「黒水仙」

いかにも1950年以前のイギリス映画という感じの映画、
黒水仙」ですが、

デボラ・カー
あの誘惑に負けない凛としたクラシカルな美しさは、
残念ながら現代の女優陣には見られない魅力だと再認識させられました。

著作権切れで、いま500円でDVDも購入できます。
共演の俳優、名前を失念しましたが、誰かに似ているなあと。


テニスの王子様

2008年03月24日 | ◆タ行&ダ行
◎「テニスの王子様」

ご存知の方には説明は不要ですね。
テニス漫画の「テニスの王子様」
(小中高の女生徒向けコミック漫画)のアニメです。
もう、あまりのウルトラ超人テニスに爆笑させられました!(爆)