月光院璋子の映画日記

気ままな映画備忘録日記です。

『ワルキューレ』(『Valkyrie』))・・・(2)

2009年03月22日 | ◆ワ行

お待たせしました。(1)に失念していたケネス・ブラナーの画像を追加して更新しましたので、そちらを眺めていただいてから、この(2)をお読みいただければ幸いです。 

この映画に限りませんが、ヒトラーのナチス映画をご覧になる場合、やはり押さえておかなければならないのは、どうしてこのような人物が独裁者になれたのか。世界一平和主義的な憲法と称されたワイマール憲法を持っていた当時のドイツで、どうして独裁体制が合法的に生まれたのかという歴史を踏まえないと当時のドイツ国民やドイツの軍人の心理や行動を理解できないのではないかと思います。
映画をご覧になる方は(特にお若い方は)、世界史の中における第一次世界大戦とその後のヴェルサイユ体制というものを思い出してほしいです。いま、学校でどのように教わっているのかわかりませんが・・・・ヒトラーは合法的に第一党の党首となり、ヒンデブラント大統領亡き後はその権限を合法的に委譲されて総統となり、若者を中心に熱狂な支持を受けて権力の頂点に上ったわけです。そして次から次と出された彼の多くの政策は多くの国民から支持されていくわけです。どうしてなのか、是非第一次大戦の戦後処理として締結されたベルサイユ条約の中身とその後のドイツの状況を勉強してほしいと思います。このような未曾有の死者を出した歴史を繰りかえさないために・・・・

さて、映画「ワルキューレ」のご紹介の後編です。

ワルキューレ作戦・・・・、それは、ヒトラーの親衛隊であるSSの中から造反者が現れてヒトラーが暗殺され(死亡し)たという状況を作り、その直後に放送網を押さえ、ベルリンに無傷のまま残っているベルリン防衛のための軍隊を掌握してヒトラーの側近たちを一網打尽にするというクーデター作戦です。
それが、いよいよトム・クルーズたちによって始動します。

そのためには、ヒトラーたちのいる後方の参謀本部に誰かが出かけて爆発物を仕掛けるわけですが・・・万一爆発する前に露見したら、その者の命はありませんし、その人物は、ただ処刑されるのではありません。当然SSによって仲間の名前を吐かせられるべく拷問されるわけです。そのような使命を果たせるのは、軍人しかいない・・・・なぜなら、そもそも、ワルキューレ作戦というのは、政治が背後にあっての軍事行動作戦だからです。そして、ヒトラーの作戦会議に同席できるのもまた高級軍人です。

ということで、片腕片目の体の不自由なシュタウフェンベルク大佐=トム・クルーズと彼の副官である青年、ヴェルナー・フォン・へフテン中尉=ジャイミー・パーカーが厳重な監視体制化の参謀本部に爆発物を仕込んだ鞄を持っていくことになるのですが・・・

後方に大佐の指示通りに動く人物がいなければならない。臆病風に吹かれて決断が鈍るような人物や臆病風に吹かれて行動に踏み切らない人物がいたら、このワルキューレ作戦は失敗する。トム・クルーズに新任されたこの人物、メルツ・フォン・クヴィルンハイム大佐はそのことを誰よりも知っていた。彼を演じているのは、クリスチャン・ベルケルという俳優で、映画『ヒトラー最後の2日間』にも出演していた俳優で、寡黙ながら存在感が凄い。

緊張した面持ちで検問を通過して作戦本部に来たはずの大佐たちが、会議もそこそこに、「総統の密命を受けたたので、急ぎ出発する」と語って検問を後にするも、そのような大佐たちの行動を訝しく思うSSの隊員・・・・直後に作戦会議室が爆発する!

一方、ベルリンでは、爆破成功の知らせが届くも、ヒトラーの死が確認できない限り行動は起さないという面々が出てきて、一人窮地に立たされるメルツ・フォン・クヴィルンハイム大佐。

ワルキューレ作戦は、そもそも、総統に万一のことがあったときにその作戦を指導させることが出来る権限を有する立場の人物も特定されている作戦です。その作戦をクーデター用に書き換えたのが、トム・クルーズ・・・・
クヴィルンハイム大佐は、その発動権を持つ(1)で紹介したフロム将軍に代わって作戦を始動させます。

待機命令を受けたベルリンの予備隊の隊長は、その命令を訓練か何かだと判断しつつ、隊員を集めます。この命令に対して非常に忠実で有能な軍人を演じているのは、トーマス・クレッチマン。ドイツを代表する俳優の一人ですね。

まるで、テレビで放映されるピョンヤン前の北朝鮮軍みたいです。

ヒトラーの作戦本部が爆破されたという知らせを受け、あの総統が・・・と愕然とするオルブリヒト将軍・・・・

あの連中、とうとう本当にやってしまったのか!
しかも国内予備軍の総司令官であるフロム将軍に代わって、自分の部下のクルヴィンハイム大佐が指導命令を発令したことを知り、恐れおののくオルブリヒト将軍・・・・俺は関係ない!俺はこの暴挙に関わってなど
いない!本当にヒトラー総統の死が確認されるまでは何もしないぞ!と口にします。金縛り状態です。

ヒトラーのカリスマ性というか、いかにヒトラーが軍人たちにさえ恐れられていたかということですね。

急ぎベルリンに戻ったトム・クルーズは、こうしたことで、作戦に狂いが生じていたことに驚愕します。ワルキューレ作戦を5時間から3時間に短縮させたというのに、何も行動されていなかったのですから、無理もありません。けれど、勝負はまさにここから!まだ間に合う!

彼は勝負に出ます。ヒトラーが死亡しワルキューレ作戦を始動すると職員たちに発表し、皆で力を合わせてワルキューレ作戦に取り掛かります。このとき、臆病風に吹かれて行動しなかった政治家の同士だけではなく、同じ職場で働いていた末端の部下たちの中にドイツの未来を託して行動しようとする同士たちがこんなにもいたのかとトム・クルーズは驚かされるんですよね。まさに、クーデターを成功させるには、一般の人たちの支持と協力があってこそなのだということでしょうか。

こうした一般の声なき声を持っている職員たちが「羊」ならば、高級官僚たるSSは、まさに「狼」となりましょうか。不気味な表情を浮けべていたSS・・・これまでも同様のクーデターを未然に防止してきた彼らは強敵です。

SSは、本当に怖いです・・・ベルリンで指揮を取るトム・クルーズ、次々と作戦を成功させていきますが、そこに入った情報は、トム・クルーズたちの反逆の知らせ。そして、ヒトラーは無事であるという一報でした。まさに「情報を制するものが戦いを制する」となる。

ヒトラーは死んだという知らせと、ヒトラーは無事だという知らせが二つ入った広報部は驚愕しますが、「どちらであれ、正しい側につくべきだ」と語る部下たち・・・・。当時の「正しい側」というのは、ドイツの救世主として政治に腕を振るった第三帝国の総統、ヒトラーの側に付くということに他ならなかった、そういう役人たちがどこの部署にもいたわけです。そして、往々にしてこうした小さなところで歴史の歯車は向きを決定される・・・・

かくして、実戦部隊を束ねるオットー・エルンスト・レーマー少佐の下にも、二つが同時に届くのでした。

「ヒトラー総統は死んだ。ただいまよりワルキューレ作戦を始動せよ。造反したSS本部を押さえ、それに手を貸した大臣と高級官僚たちを一網打尽にせよ」

「ヒトラーは無事である。生きている。爆破を仕掛けた実行犯シュタウフェンベルク大佐と首謀者一味を一網打尽にせよ」

 


『ワルキューレ』(『Valkyrie』))・・・(1)

2009年03月22日 | ◆ワ行

3月11日にアップする予定が今日になってしまいました。その間お越し下さった方へのお詫びとして画像を多めにサービスさせていただきます。

赤に白抜きの円形の中に黒のカギ十字・・・・わたくしなどこの旗を目にしただけでぞっとする一人ですが、それは心あるドイツの方達も同じだろうと思います。第二次世界大戦後に東西に分断されたドイツがたゆまぬ忍耐と忍耐強い巧みな外交戦術によって再び統一されたのは1990年。実に55年もの歳月を要したわけです。最近になってやっとドイツでもヒトラーのナチスを歴史的に検証することができるようになってきたように思われますが、それでもドイツの国民にとって”ナチスドイツ”と”ヒトラー”は民族的タブーになっているのではないでしょうか。

この映画は、そのナチスドイツ支配下におけるドイツの状況、ゲシュタポを始めとしてヒトラー総統の下に展開された官僚組織の恐ろしさを理解しないとよく分からないかもしれません。恐ろしいのは、独裁者個人ではなくその独裁者の下に形成される官僚組織や軍組織に組み込まれた人間たちであり、人間をそのように退化させる独裁国家の組織というモノなのだと思わずにはいられない映画でした。

監督:ブライアン・シンガー
主演:トム・クルーズ

なので、実にサスペンスフルな映画で、アクション映画と呼んでいいのかという思いがあります。いわゆる娯楽性としてのエンターテイメント性は決して高くはない映画。何と言っても実話なので結末は分かっているのですから。
★⇒http://www.valkyrie-movie.net/

以下、ドイツで歓迎された本作「ワルキューレ」を眺めていきたいと思います。時代は、終戦となる2年前頃のドイツですが、映画冒頭はいきなりアフリカ戦線。英米空軍の猛反撃に対して前線を知らないベルリンのお馬鹿官僚たちの作戦で苦戦するドイツ軍・・・・

トム・クルーズが演じるのはシュタウフェンベルク大佐。彼は、ヒトラーに忠誠を誓った全てのドイツ軍人の一人ではあるけれども、いまやヒトラーのドイツ国家のためではなく、愛する祖国ドイツのために戦っている兵士の命を一人でも救いたいと思う軍人でした。
映画のこの冒頭で彼が、そういう考えの持ち主であるためにアフリカ戦線に左遷されたたこと、彼の「自分は祖国のために戦っているのだ」という思いが示されれます。ヒトラーやその側近の太鼓持ちで保身に汲々としているベルリンの官僚たちとは違うという思いがここで言下に語られているわけですが、彼のそうした考えに対し上官である将軍が理解を示すところから、映画は始まりますが、そこにいきなりの敵機来襲!激しい銃撃戦で、トム・クルーズはご覧のような状態に・・・・

やがて、本国の病院に運ばれるも、彼は片方の視力と片腕を失った名誉ある軍人となります。

そんな軍人の凛とした妻ニーナ役を演じるのは、映画『ブラックブック』で同じナチスドイツの恐怖の中で生き残ったユダヤ人女性を演じたカリス・ファン・ハウテンで、ほとんど男性ばかりが出てくる中での紅一点。緊張感を増すのに大いに存在感を示したと言えると思います。最初は、『ブラックブック』と重なって見えましたが、あの当時よりははるかにしっとりした大人の女性でした。



大佐たちのヒトラー暗殺クーデター計画を知りながら、どっちつかずの態度で勝ち組に乗ろうと考える性格のフロム将軍(ベルリンの国内予備軍を統括する将軍。立場上も実にスリリングでキャラクターもスリリング。演じているのは、トム・ウィルキンソンではまり役でした。

彼の副官のオルブリヒト将軍もまたスリリング!

演じているのは、ビル・ナイ。実にはまり役で最後の最後までハラハラさせてくれる人物の一人を確かな演技で好演していました。

この映画が実にサスペンスフルに仕上がっているのは、ドイツの敗戦が濃厚になってきた時期が背景のためもありますが、登場人物達がどっちに転ぶか分からないような人物を俳優たちが実に見事に演じていたからだろうと思いました。本作が成功しているとしたら、キャスティングの見事さだと言っていいのではないかと。

ベルリンに戻ったシュタウフェンベルク大佐は、名誉の負傷で出世しますが、敗戦濃厚な祖国の未来を真剣に憂える気持ちもまたいよいよ強くなっていく中で、彼はある秘密の集まりに招かれます。



そこで、今度こそ成功させなければこの国に未来はないとヒトラー暗殺のクーデター計画を知らされるのですが、気持ちは同感でも彼らに計画実行に必要な勇気が本当にあるのか!?
イマイチ懐疑的なシュタウフェンベルク大佐に、テレンス・スタンプ演じる陸軍参謀総長のルードヴィッヒ・ベックは彼に失敗しない計画を立てるよう要請します。クーデターが成功した場合、彼が新国家元首代行となり、連合軍と停戦の合意をするために尽力すると誓うベック。
これまで何十回と計画されたヒトラー暗殺計画は全て失敗に終わっているだけにメンバーの危機感は相当なレベルにまで達しているのでした。

映画冒頭でトム・クルーズがアフリカ戦線で負傷した頃、ベルリンに帰るヒトラーとその取り巻きの側近たちの乗る飛行機を爆破させる作戦が遂行されますが、

冒頭から、緊張の連続と言っていいでしょう。

観ているこちらも否が応でも緊張させられる場面が多い中で、こうした同志たちが集う場面は一番緊張させられました。

こうしたクーデターの密談の場面というのは、やはり緊張させられます。祖国を憂え、ヒトラー以外のドイツ人がいること(いたこと)を世界に示そうという思いとはいえ、クーデターというのは失敗すれば命を奪われるだけではなく反逆者の汚名を着せられるぎりぎりの選択だからでしょう。

飛行機を爆破させる閃光作戦が失敗し、仲間たちから批判されるトレスコウ小将という人物を演じていたのは、ケネス・ブラナー

彼はこの作戦が失敗した後、前線に送られますが、彼の場合は時期が偶然重なったものですが、この時期のドイツでは少しでもヒトラー体制に対して批判的な思いを持っていると嗅ぎ付けられると、SSによって捕らえられたり、証拠がない場合は左遷(前線で死亡することを期待)されるのですから、独裁者の下での官僚ファシズム体制と、それを支える権力中枢にいる秘密警察というのは、実に恐ろしい・・・・

帰国し我が家に戻ったシュタウフェンベルク大佐の邸宅と家族たちをシーン・・・ここを見ていると、彼がドイツ貴族の名門の出であるがゆえに正真正銘の愛国者であり、また人間的にも優れた教育を受けてきた人物であることが彷彿させられます。良き軍人にして良き夫であり良き父親であり良き家庭人でもあるシュタウフェンベルク大佐・・・・家族とのシーンはワンシーンだけですが、

5人の子供たちの中で一番年少の娘のこの無辜な様子は痛々しいほど・・・・

なぜなら、もしクーデターが失敗した場合、自分だけではなく家族の命もない・・・銃殺されないまでも収容所送りとなるだろうことをおもえば、心が恐れに慄かないはずがありません。
けれど、決心を妻に伝えたとき、



妻ニーナの短い返事は見事な返事で・・・・全てを理解し受け入れるものでした。夫を愛し尊敬し信じればこその強さを垣間見させられました。戦前の日本女性同様に戦前のドイツ女性も強かったんですね。貴族という立場にあった女性たちの全てがこうだったとは思わないけれど、本当のエリートというのは、このように常に死を覚悟できる強さがある男性と女性の事をいうのだと改めて思いました。
そのときに流れるのが、ワーグナーのワルキューレ・・・・

SP盤のこのレコードが画面に大写しになったとき、トム・クルーズ=シュタウフェンベルク大佐の中で、ヒトラー暗殺の失敗が許されない計画が進んでいくのでした。

シュタウフェンベルク大佐の副官として、
赴任してきたのはこの若きヴェルナー・フォン・へフテン中尉。

演じているのはジェイミー・パーカーという俳優ですが、なかなか良かった!です。トム・クルーズの思い込みの激しい熱血漢ぶりとは対照的ながら、そんなヴェルナー・フォン・へフテン中尉を好演していたと思います。へフテン中尉もまたも貴族の出身で、副官としてオフィスに着任早々の彼を凝視して語ったシュタウフェンベルク大佐の挨拶がふるっていました。

「わたしはヒトラーを暗殺するつもりだ」

といきなり語る場面・・・・

これにはへフテン中尉ならずとも度肝を抜かれるでしょう。
けれど、ここで出来た信頼関係で、以後へフテン中尉は最期までシュタウフェンベルク大佐と行動を共にしますが、映画は実にテンポが速い。

観終えたときに、敗戦間際のナチスドイツでこうして命がけで国の未来のために勇気ある行動に殉じた青年がいたことに胸が熱くなりました。彼の行動は信じられないほどの勇気がないと出来ないものですが、その行動がどれだけ勇気を必要とするものか、それをジェイミー・パーカーはしっかり演じて見せてくれたように思います。へフテン中尉の行動は見事なほどに静かでした。さすがに貴族として育った青年で道徳的に優れた心性を持つ青年なのだと。きっと実際の副官中尉もこうだったのでしょう。
同類はお互いに分かり合うといった場面です。

日本の2.26事件というクーデターが、貧しい東北出身の将校達だったことと対照的だと思わざるを得ませんでした。

かくして、敗戦間際にヒトラーを暗殺するしかドイツの未来はないと考えて行動を起す「ワルキューレ」作戦が始動しました。
続きは、(2)でアップしたいと思います。

以下はご参考までに。
  ↓

 


「ワイルド チェイス」

2008年09月11日 | ◆ワ行

映画冒頭、連邦銀行を襲撃する黒尽くめの男たち。おお、クライムアクションかしらと期待して観始めたら、一人の男が銃で次から次と・・・・・
銃を使うなんて(人殺しをするなんて)約束が違うと叫んで逃走用の車で一人金塊を積んだ車で逃げてしまうのが、この男。


(冒頭の強盗団の一味として出てきて観客をリードしていくロバート・パストレリ、彼の遺言の意味は・・・・)

ロバート・パストレリという俳優ですが、なぜかいつも心臓麻痺で倒れる(振りをする)役柄が印象的なのは、シュワちゃんの映画『イレイザー』で孤軍奮闘することになったFBI捜査官シュワルツネッガーをたった一人応援することになるとぼけた味わいの、ピザの配達人を演じたときのイメージのせいでしょうか。この映画でもまたまた、取調べ中にFBI捜査官たちに死んだ真似しているのだと思われて結局死んでしまいます。残忍な誰かを恐れて刑務所に避難したというのに・・・

死を予感し、オレにもしものときは、と遺言を託したのが、同じ刑務所にいたこちらのジェイミー・フォックス演じる泥棒。

とぼけたときには限りなく間の抜けた顔になる主演のジェイミー・フォックスより、デヴィッド・モースが出ているので観ることにしたのですけれど、「動物園に行け」「我が家が一番」という遺言を妻に伝えてくれと言われたジェイミー・フォックス。
口の軽さと身軽さが身上の彼から、その遺言を聞き出したもの、そこには何もなく、FBIは捜査のために特別チームを編成し、ジェイミーの顎に超精密機器を埋め込んで、犯人が寄ってくる餌に利用する。囮として利用されていることも知らずに釈放されて喜ぶ彼。


(恋人役のキンバリー・エリス、まじめに働く黒人女性という意味ではお定まりの役柄ともいえますが、なかなか良かったです。)

2年ぶりに恋人を尋ねたら、何と息子が生まれていて、恋人に厳しく要求されて無責任男から離別すべく就職活動を始めるのですが、


(ジェイミー・フォックスの弟役のマイク・エップス。この兄にしてこの弟ありという仲のよさですが・・・・)

盗難車を転売する稼業の弟から、またいっしょにやろうと陽気に誘われちゃいます。ダメだダメだと言いつつも、まともな仕事に就いたことのないジェイミー・フォックスはあれよあれよという間に流されて危ない橋をわたる状況に。警察に逮捕されてしまったら、計画が水の泡になると焦ったデイヴィッド・モース(FBIの特別捜査チームの責任者)は、


(デイヴィッド・モース★http://www.davidmorse.org/)

ジェイミー・フォックスがヤバイことをして警察に捕まらないように部下たちに命じ、当座の生活費までいろいろな名分で渡すことになります。
襲われた銀行の防犯システムは国防のシステムと同じもの。そのセキュリティを突破した犯人がいる。国家の安全保障上捕らえるか、抹殺するしかないという危機感のため、ですが、
その部下の面々、なかなか好感度の高いチームで、盗聴によってジェイミー・フォックスの人となり(「こいつ、おっかしい!根はなかなかいい奴じゃないか・・・」的)に共感を覚え、一生懸命やってもなかなか雇用されない彼の環境を知っていくに連れて同情的になっていくのですが、ジェイミー・ケネディなどの若手もいい雰囲気を出しているのに、皆名無しの捜査官。(笑)

ジェイミー・ケネディ、コメディ映画で主演 
(ジェイミー・ケネディとカーク・アセヴェド、いい感じでした。)


(こちらもコミカルないい味を出していたミーガン・ドッズ)

こうした部下たちの中で唯一名前のある捜査官として出てくる部下がこちら。


(本作に何ともいえない味わいを加味していたデヴィッド・ペイマー)

上司の言うままによく動くけれど、人間味のあるウィリー捜査官を、デヴィッド・ペイマーがなかなか好演していました。
それがデイヴィッド・モースの持ち味とのギャップとなり、そのギャップが不思議な緊張感をかもし出していたように思います。

何だか身辺がおかしいということに、さすがの能天気のジェイミー・フォックスも気づくときがやってくる。

盗難車の転売の現場に警察が踏み込んだことを知り、訳のわからない男からの不気味なアプローチに、状況を呑み込むようになります。とぼけたときの表情が限りなく軽くて、どうにもならない俳優だと思ってしまうけれど、こういう表情のときには、持ち味がよく出てくるかなと。

何といっても、ジェイミー・フォックスというこの黒人俳優の魅せ場は、やはり、

こうしたときの表情における目でしょうか。
シリアスな映画向きの顔ですね。近作の映画『キングダム/見えざる敵』(原題「The Kingdom」2007年制作」で出演が印象的でした。

こうした主演のジェイミー・フォックスよりも、デヴィッド・モースが出ているので観ることにした本作ですが、

B級アクション映画では脇役専門で、特殊部隊員だったり元海兵隊の悪役だったりでパッとしない役ばっかりというイメージのデヴィッド・モースですが、(でした、と言うべきか)その頃からのファンです。もっと彼の魅力が全開する作品と出会えたらなあ、といつも惜しいなあ・・・と思ってしまいます。

さて、話を戻すと、彼らが懸命に追う犯人がこちら。

出てくるときは眼鏡をかけたこんな感じか、暗い部屋だったりしたせいか、よく顔を覚えていないのが残念。ただ、ちょっと軽かったかな~というのがさらに残念でした。まあ、シリアスなサスペンス映画じゃないので、『ブラックサイト』の青年のような役者では合わないと考えられたのでしょうか。この俳優、ジョニー・デップをかなり意識した歩き方をしていたように思います。ちなみに、誰?

他にも、コメディが得意な役者たちが揃っていたようにも思いますが、写真を撮るまもなく愉しんでしまいました。

あ、そうそう、そういえば、
チョイ役で台詞もなくチラッと出ていたこの黒人俳優、

誰だったかな~と。