月光院璋子の映画日記

気ままな映画備忘録日記です。

「ダーク・ナイト」(「The dark knight」)

2008年07月24日 | ◆タ行&ダ行

これは、バットマンの映画というより、ジョーカーのための映画、
すなわちヒース・レジャーの映画だと言っても過言じゃない。



確かに、バットマンのクリスチャン・ベールは映画『リベリオン』のときのイメージを彷彿させるストイックなブルース・ウェイン役で、かつ億万長者としてもミステリアスな魅力を放って、新たなバットマンイメージを作り出しているし、

執事のアルフレッドには彼以外にないというマイケル・ケインを配しているし、

フォックスにはモーガン・フリーマンというキャスティングで、バットマンサイドは文句のつけようがない。加えて、そのバットマンと手を組む二人の正義漢、

警部のジム・ゴードンにゲイリー・オールドマンという曲者を配し、

ハーベイ検事にアーロン・エッカートというキャスティング。何だかメンバーだけ見ると、バットマン映画じゃないみたいだ。

だいたい映画冒頭の銀行強盗からして、



メンバーと幾重にも秘密のプランを持ったに違いないリーダーのキャラクター作りには目を見張らされる展開。まさに『ダイ・ハード』の敵に欲しいキャラクターで、こんな銀行強盗のリーダーは見たことがない。1級のクライムサスペンスアクション顔負けの悪役だ。映画を見ている途中で何度眩惑させられたか分からない。

が、この映画は間違いなくバットマン映画なのである。バットマンが利用する新兵器も出てくるし、ド派手な爆発シーンもあれば、スリリングでこれまたド派手なカーチェイスもある。そうしたシーンが好きなファンにはたまらないことだろう。





けれど、完全にジョーカーの一人勝ちだ。
そういう出来になっていると思うのは私だけだろうか。悪役として登場するボスたちも悪役の常連として存在感を見せる俳優たちがオンパレードである。彼らが出てくる場面だけ見ると、間違ってもバットマン映画だとは思わないだろう。クライムアクション映画だと思ってしまうに違いない。そんな彼らがチョイ役にしか見えなくなるのだから、たまらない。まさにジョーカー一人が際立っている。

この完全にイッチャッテルジョーカーを演じているのが、ヒース・レジャーだと一体誰が事前情報なしで分かるだろう。
ジャック・ニコルソンのジョーカーも名優の誉れ高い俳優のジョーカーでイッチャッテル凄みはさすがというべきものだったけれど、そこには遊びもあった。けれど、このジョーカーにはそれがない。このジョーカーの存在はそれまでのジョーカー以上に哲学的だ。存在自体が問いになっている。

スーパーマン、スパイダーマン、バットマン・・・・etc.と。アメリカ=ヒーローを愛する文化と言ってもいいほどだが、そのヒーロー漫画、じゃなくてヒーロー映画で「ヒーローとは何か」を問う映画にするというのは相当大胆な試みに違いない。
悪と戦って必ず勝つ正義の味方、捕らわれた人をきっと救出してくれる存在、多くの市民の命を危機から救う英雄・・・・がヒーローならば、同時多発テロが発生したとき、あるいは同時テロが予告されたとき、一人しかいないヒーローはヒーローであり続けられるか。





ヒーローとは、何か・・・・・
社会のために失ってはならない人物と恋人が同時に捕らえられたとき、社会正義を体現するヒーローは、どちらを救出するのか。
そもそも、自由民主主義の法治国家において、
ヒーローとは、どういった存在か。
そうしたことをバットマン映画で問うくらいにアメリカも大人になったということだろうか。

★公式サイトのご案内http://wwws.warnerbros.co.jp/thedarkknight//

スタッフ&キャストの委細はこちら(↑)でご覧ください。

最後に、
28歳で急逝したヒース・レジャー。訃報を知ったときは、あまりに惜しい俳優を亡くしたと思い悔やまれてならなかったけれど、映画『ロック・ユー』以来のファンとして、

 

ヒース・レジャーを偲んで、
こちらをご紹介させていただいて終わりにしたいと思います。

 


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