ハインリヒ・アルデグレーヴァー
ヘラクレスの第二の難事は、百の頭をもつという水蛇、ヒュドラを倒すことだった。一つの頭を切り落とすと、すぐに二つの頭が生える。恐ろしいヒュドラにヘラクレスは苦戦したが、彼は燃える木を使ってヒュドラの首の付け根をやき、もう首が生えてこないようにした。そして真ん中の首を斬り落して岩の下に埋めると、ようやくヒュドラは絶命した。
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多頭の怪物は衆愚の暗喩です。馬鹿というものは、いつも大勢の暗闇に溶けて、恐ろしい獣的エゴを満足させようとし、それですべての秩序を破壊しようとする。そこから、ただひとりの自分に目覚め、衆愚とひとりで戦おうとする者が出てくる時、それが自分自身の始まりなのです。英雄の神話は、人間にとって、暗黒の衆愚から自分自身を生み出す、自己存在の出現の物語と言えます。