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世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

クプダ①

2018-06-15 04:12:35 | 風紋


夢の中で、アシメックは山の中をさまよっていた。

秋の採集も済み、山は冬枯れの相を呈してきている。あらかたの木々は葉を落としていたが、紅葉した葉を残している木々も薄暗がりの中で灰色に見えた。

アシメックはオラブの遺骸を探していた。境界の岩はもうとっくに通り越していた。今まで見たこともないような木々の風景が見える。時々おばけのように奇怪な岩が前を遮った。それを飛ぶようによけながら、アシメックは山をさまよい歩いていた。

かん高い鳥の声がして、空を見ると、裸になった木の梢の向こうから、血のように赤くなった太陽が見える。まるで何か、おぞましいことが来ることを教えようとでもしているかのようだ。

オラブの死骸を見つけてはいけないと、言っているのかもしれない。だがアシメックは探したかった。放蕩者がどこでどんな死に方をしたのかを、確かめたかったのだ。

棘の多い藪を越えると、鹿の通り道があった。そこだけ下生えが薄くなっている細い道があるのだ。アシメックはしばしその道添いに歩いた。灰色の風景が続く。そうしているうちに、ふと、大きなイゴの木の根元に、夕焼けの空のような色をした、細長い蛇がいることに気付いた。ケラド蛇だ。毒々しい赤い色をしているが、毒はない。毒があるふりをしている小さい蛇だ。怖がることはない。

そう思って見ていると、蛇はするりと何かの穴の中に入っていった。気になって近寄ってみると、そこに小さい灰色のしゃれこうべがあった。わきにネズミの骨もある。

ああ、オラブだ。さっきの蛇は、この頭蓋骨の目の穴に入っていったのか。




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