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世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

要求⑥

2018-06-03 04:12:56 | 風紋


ゴリンゴは言った。アシメックは顔をそびやかせ、一旦わきにいるダヴィルを見た。ダヴィルはかすかにうなずいた。アシメックはゴリンゴに目を移し、言った。

「わかった。要求はなんだ」

美しい声だ。アシメックの声は、若い男のように澄んでいる。聞いていて気持ちがよい。ゴリンゴはまた目を細め、しばし黙ったあと、言った。

「米が欲しい。われわれも米が好きだ。できるなら毎日食いたいほど、米はうまい。米を、今までよりたくさんもらえたら、ヤルスベ族のものも、気がすんでくるだろう」

それか、とアシメックは思った。ヤルスベ族がカシワナ族への怒りを持ちながらも、大きなケンカをしないのは、米がもらえなくなると困るからなのだ。

アシメックは苦いものを食わされたかのように、しばし黙った。だが頭の中ではすばやく計算していた。背後で役男たちがざわめいている。だが迷っている時間など無駄だ。アシメックは厳粛に言った。

「エルヅを呼べ」




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