ゴリンゴは言った。アシメックは顔をそびやかせ、一旦わきにいるダヴィルを見た。ダヴィルはかすかにうなずいた。アシメックはゴリンゴに目を移し、言った。
「わかった。要求はなんだ」
美しい声だ。アシメックの声は、若い男のように澄んでいる。聞いていて気持ちがよい。ゴリンゴはまた目を細め、しばし黙ったあと、言った。
「米が欲しい。われわれも米が好きだ。できるなら毎日食いたいほど、米はうまい。米を、今までよりたくさんもらえたら、ヤルスベ族のものも、気がすんでくるだろう」
それか、とアシメックは思った。ヤルスベ族がカシワナ族への怒りを持ちながらも、大きなケンカをしないのは、米がもらえなくなると困るからなのだ。
アシメックは苦いものを食わされたかのように、しばし黙った。だが頭の中ではすばやく計算していた。背後で役男たちがざわめいている。だが迷っている時間など無駄だ。アシメックは厳粛に言った。
「エルヅを呼べ」