「なかなか釣れないな」
「うん、ここの魚も結構かしこいんだ。おれがしょっちゅう来るから、最近は、おれの影を見るだけで逃げるんだよ」
「ほう」
「だんだん、釣れる魚は少なくなってきてる。でもおれ、今んとここれくらいしかできないんだ。弓作りも習ってるけど、サリクみたいに立派なのは作れない」
「弓作りもおもしろいか」
「うん。結構おもしろい。でも、おれは狩人組に入りたいんだ。もっと、すごいことやりたい。立派な鹿捕まえて、テコラにいいものやりたい」
「愛しているんだな」
そのことばを聞いて、ネオは驚いた。「愛している」などという言葉は、この当時ではめったに聞くことができないものだったからだ。聞いてもしばらく意味がわからないほどだった。
少しの間沈黙してから、ネオはやっと答えた。
「うん」
そう言ってから、涙がにじんだ。自分でもそのわけはわからなかった。「愛」などという言葉がよくわかるほど、この当時の人間は深い経験をしたことがなかったのだ。
「おれ、男の仕事したい」とネオは言った。アシメックは黙ってネオの顔を見た。ネオの目が涙で濡れている。