「モラとテコラのために、おれ、早くおとなの男になりたいんだ。そういうと、サリクはまだ早いって笑うけど」
「おれは笑わないぞ」
「ほんと?」
「ほんとさ。よしわかった。覚えておいてやる。おまえが今言ったこと、覚えておこう」
「そ、それ、どういう意味?」
ネオはアシメックの顔を目をまるまると開いて見た。アシメックはその顔に笑いかけながら言った。
「いい男の仕事をしなければならなくなった時、おまえのことを思い出してやる。そして声をかけてやるよ」
「ほんと?」
「ああ、本当だ。おまえはネオだったな」
「そう、ネオ!」
ネオの顔に明るい喜びが満ちた。族長が自分の名前を覚えてくれていたのだ。それはすごくいいことだった。特に男にとっては、自分を認めてもらえたことに等しい。
「おれ、なんでもやる!!」ネオは叫ぶように言った。
「よし、ほんとだな。男と男の約束だぞ」
「うん!!」
そう言うと、ネオとアシメックは自然に手を握り合った。合意すると、男はそうするものなのだ。そしてその約束は、絶対にたがえてはならない。
いいものを拾ったな。そう思いながら、アシメックはネオを残してオロソ沼を離れた。まだ子供だが、いい目をしている。女のために男が本気になるということはよくあることだったが、あれはどこかが違うようだ。
ものになりそうな男は、子供でも押さえておかねばならない。