世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

ティルチェレ物語 7

2013-10-19 04:29:29 | 薔薇のオルゴール
6 人気作家登場

 ヨーミス君が村に住むようになってから、一年が過ぎた。その中で、ヨーミス君にも、仲のよい友達ができた。牧師のグスタフと、小学校のアメット先生、そしてガキ大将のコムである。グスタフは、身よりのないヨーミス君を、いつも心配していろいろと世話してくれた。アメットさんは、一度助けてあげてから、ヨーミス君に、ちょっと好意をよせてくれてるみたいだ。コムとは男同士の友情を結んだ。

 親切で個性的な村の人たちと、友だちに囲まれて、ヨーミス君はとても幸せだった。時々、お守りの期限を忘れて、取り換えるのを忘れていると、待っていたかのように、ファンタンからのドングリ攻撃を受けたが、それがヨーミス君にとって、一番幸せなことのように思えた。ファンタンはいつも、自分を見てくれていると、そんな気がするからだ。クリステラのところにお守りをもらいにいくとき、ヨーミス君はお返しにいつも花束を持っていく。そうすると、クリステラはとても喜ぶ。そんなヨーミス君を、とても優しい子だと、みんながほめてくれる。郵便局長のノーラさんは、ファンタンがあなたを気に入るわけがわかったわという。するとヨーミス君は、顔を赤らめて、照れる。

 そんなある日のことである。村にビッグニュースが走った。湖岸の別荘を、有名作家のヴィダル・ベックが買ったというのである。しかも近日中に来るというのである。村人はびっくりした。ベックはファンタジー作家として国際的な有名作家なのだ。そんな人が来るなんて、村で初めてのことだ。

 ベックが村に来るときは、村長さんが駅に出迎えるほどの大騒ぎになった。後で聞いてみると、村長さんは、別荘地のパンフレットに、ファンタンの話を盛り込んだのだそうだ。するとファンタジー作家のベックがファンタンに興味を持ち、別荘を買ってくれたのである。夏の間を村の別荘で過ごし、その間ファンタンのことを調べて、一冊の本を書きたいと言うのだ。村長は大喜びだった。人気有名作家が、ファンタンの話を書いてくれれば、観光客がたくさん村に来てくれる。

 大勢の村人は、ベックの来訪に好意的だったが、ただクリステラだけはちがった。ベックがファンタンの祠を見に来た時、クリステラは「この悪魔!」と叫んでドングリをぶつけた。村長はクリステラを押さえて、ベックに謝った。ベックは気にしないと言ったが、クリステラの癇癪はとまらなかった。

「なぜあのうそつきの正体がわからないのよ。あんな人が来たら、大変なことになるわよ!」

 クリステラは叫んだが、だれもかのじょの話を聞かなかった。ベックは、村人にいろいろとファンタンの話を聞いて、夏の間に、早々と一冊の本を書きあげた。

(つづく)



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