ひさしぶりに色をつけてみました。画材はアクリル。絵の具は久しぶりに使ったので、コツを取り戻すのに少し戸惑いました。モノトーンも美しいのですけど、猫を抱かせたら、色を塗ってみたくなったのです。
バーバ・ヤガーはロシア民話に出てくる魔法使いのおばあさんです。鳥の脚の生えた小屋に住んでいて、いつも森中小屋を走らせているそうですよ。そして、悪い子はシチューに煮て食べちゃうそうです。しかもその家ときたら、食べた人間の骨でできているそうです。おやまあ。寝物語に子供に話したら、怖がることまちがいなしですね。
日本の山姥のような、こういう妖精めいた魔女の話は、きっと世界中にあるんではないでしょうか。古いところでは、ギリシア神話キルケーとか、メディアとか。みな、人里はなれた森や島に住んでいて、魔法を使い、人を食うとか見ると石になるとか、怖い怖い話が飛び交っている。あれは魔女だから、近寄らないほうがいいよ。そんな人の話が、いつかしらおもしろい御伽噺になる。
お話のバーバ・ヤガーは老婆ですが、絵の中では若い女性にしてみました。この女性は賢く、才能あり、何かにつけ、目立つ。しかもかなり美しいので、女性や、おろかな男性の嫉妬をまねく。賢いバーバ・ヤガーは、それがどんなことになるかを知っているので、森に逃げる。
遠い昔のメディアやメデューサは、その才能や美しさを隠すことなく使ったので、社会の、多くは男性たちの嫉妬を買い、恐ろしい魔女や怪物にされてしまった。それでむごく殺されたりもした。だけど時代が進んで、先人の失敗に学んだバーバ・ヤガーは、そういう社会を捨て、自ら生きる新しい世界を探す。森で、木や花を学び、それを使って魔法のような仕事をし、人の病気を治したり、美しいものを作ったりする。賢い彼女は、あらゆることに自分を使い、面白いことができるということを知っている。
魔女だ、怪物だと、里の人間たちはあざける。けれども、苦しいことがあると、何かにつけ彼らは、魔女を頼りにくる。彼女が賢いことを、本当は知っているから。
昔から、こんな風に森に逃げた女性は、多くいたのに違いないと、わたしは思っています。賢くてきれいな女性は、生きていけない世界だから。魔女にならなければ、生きてはいけない。だから、自ら、魔女になった。
どんなによいことをしても、人間は絶対に、魔女に助けられたなんて、言わないだろう。彼らが勝手に作った多くの話を聞き流しながら、彼女はただ、自分の仕事をするだけ。
バーバ・ヤガーは、森に住み続ける。木や花や、小鳥や獣や、虫といっしょに。風に神様が流した、世界の音楽を聴きながら、猫のように、孤独に生きる。