日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

花見の旅in信州 2013二日目

2013-04-12 23:40:17 | 居酒屋
風呂に浸かって冷えた身体をほぐした後は、酒場で一日の疲れを癒やします。昨日に続いて訪ねるのは「月の轍」です。
旅先で同じ呑み屋を二日続けて訪ねたのは、弘前の「はすや」と奈良の「蔵」しかなく、会津若松の「籠太」でさえ二日続けたことはありません。もちろん、この「月の轍」がそれらの錚々たる顔ぶれに比肩する名店かというと、昨日申した通りそのようなことはありません。開いている店すらほとんどない淋しい地方都市で、限られた選択肢の中からしいて選んだというのが真相です。しかし、選択肢がないというなら、スーパーかコンビニで惣菜を買い、宿で晩酌する手もありました。わざわざこの店を訪ねたのは、軽く一品つまんでビールをあおり、一日の疲れを癒やしたかったからに他なりません。
たまたまなのかどうか、信州には琥珀ヱビスを出す呑み屋が多く、過去訪ねただけでもこの店以外に松本の「よゝぎ」、長野の「治右衛門」と二軒あります。その中でもこの店の琥珀ヱビスは格別で、肉眼では見分けられないほどの細かい泡がビールと黄金比をなして、見た目からして秀逸。この見た目で期待を裏切るはずもなく、最後の一滴までおいしく呑めます。これほど完璧に注がれた琥珀ヱビスを出すのは、自分が知る限り新橋の「お多幸」しかありません。もしこの店が銘酒居酒屋だったとしても、自分は最初の一杯、場合によっては二杯目まではビールを選ぶでしょう。
このように、今回はあくまでビールが目当てだけに、肴はあくまで軽く一品つまむものという位置づけです。まずは昨日品切れで振られたコロッケがあるかどうかたずねると、「もちろん」と快い返答が。これで選択肢は自動的に絞られ、このコロッケとお通し二品を肴に、琥珀ヱビスをゆるゆるとあおることにします。
長い長い名前のコロッケですが、その正体はコロッケの肉に細切れの牛すじ肉を使ったものでした。ジャガイモは細かくすりつぶして裏ごししたものと粗くつぶしたものを混ぜており、デミグラスソースをかけるところを含めて、具だくさんのクリームコロッケに近い味わいで、ビールのあてに一品という向きには悪くありません。このコロッケにしてもビールにしても、スーパーで買い求めた惣菜と缶ビールでは到底実現できない、店でなければ味わえない品なのですから、それだけでもこの店に足を運ぶ甲斐はあったといってよいでしょう。

★月の轍
伊那市荒井3474
0265-76-1601
平日 1730PM-2330PM(LO)
金曜・土曜・祝日前日 1730PM-030AM(LO)
火曜定休

琥珀ヱビス×2
お通し二品(ジャガマヨ明太・クリームチーズ)
信州牛スジのじっくり煮込み 肉じゃがコロッケ
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花見の旅in信州 2013二日目

2013-04-12 22:57:39 | 甲信越
伊那市街に戻って投宿しました。活動再開時に230km弱だった走行距離は、本日が終わった時点でも250kmを超えたに過ぎません。伊那市街のわずかな移動と高遠までの往復しか走る場面がなかったのですから、当然の結果ではあります。しかし、走行距離が短いということは、むしろそれだけ濃密な時間だったということでもあります。春日城跡、伊那公園、高遠城址の御三家を心ゆくまで訪ね歩いて、思い残すことは何もないような気さえするにもかかわらず、まだ全行程の半分が過ぎただけというのは、この旅が充実していることの証といってよいでしょう。
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花見の旅in信州 2013二日目

2013-04-12 22:07:41 | 甲信越
来た道を引き返して河原に下り、ライトアップの明かりが消えたのを見届けたところで花見は終了です。着いたときには半分ほど埋まっていた駐車場には、両手で数えられる程度の車が残っているに過ぎません。石段を下りる見物客も自分以外に親子連れが一組だけで、やはり金曜といえども土日の賑わいには及ばなかったようです。
日曜の晩、最後の夜桜見物を終えてこの駐車場を出るときには、何ともいえない去りがたさがあるものです。しかし、今回はなんとなれば明日も再訪の余地があるだけに、そのような感慨は全くといっていいほどありません。明日が予報通りに晴れれば日中に再訪するのはもちろんのこと、最終日に舞い戻ることも視野に入れています。道中であと何回再訪することになるのでしょうか。願わくはまた明日お会いしましょう…
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花見の旅in信州 2013二日目

2013-04-12 21:27:40 | 甲信越
何度も通い、くまなく歩き回ったつもりの高遠城址ですが、今更ながら新しい発見がありました。桜雲橋を渡り本丸へ入ってすぐ左の場所に、とてつもない大木が屹立していることです。塚のように盛り上がった場所に立つ大木は、高さと幹の太さのどちらをとっても、これまでに眺めたどんなコヒガンザクラをも圧倒するような偉容を誇っています。
それにもかかわらずその存在に気付かなかったのは、園内でもやや地味な本丸の一角であることと、他の木々に隠れて全貌が明らかにならないことの二点にあります。実際のところ、カメラに収めようにも他の木々が邪魔して様になりません。二年前に置賜のさくら回廊を旅したとき、樹齢千年級の古木でありながら立地が悪く絵にならない「草岡の大明神桜」を評して、「名木必ずしも名所ならず」と申したことがありましたが、この木もまさにその手の名木といえるでしょう。
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花見の旅in信州 2013二日目

2013-04-12 21:09:48 | 甲信越
小腹を満たしたところで園内を歩きます。河原に泊まっている車の数からして、どれほど賑わっているかと思ったところが、昨日と比べてもさほどの違いはありません。しいていうなら、桜雲橋の人だかりが昨日に比べて若干多い程度でしょうか。観光客で鈴なりになった土日の混雑に辟易させられるのもさることながら、一昨年のように人っ子一人いない淋しい夜桜というのも考えものです。その点今日の人出は多からず少なからず理想的です。
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花見の旅in信州 2013二日目

2013-04-12 20:56:47 | 甲信越
芝生にシートを敷いて、露店で買った焼きそばをいただきます。陣取るのはもちろん、石段を上がったところにある見物客もまばらな三の丸の一角です。ライトアップされた桜の下で、地元から来たと思しき仲間連れが一組だけ花見の宴に興じています。それも北海道の花見のごとく焚火をしながらです。たしかに、この寒空の下では焚火をしたくなるのも無理はありません。やや淋しげな伊那公園のといい、今日の夜桜にはどことなく北海道を連想させるものがあります。
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花見の旅in信州 2013二日目

2013-04-12 20:13:23 | 甲信越
広域農道を快走して高遠に着きました。昨日は数えるほどの車しかなかった河原の駐車場が、今日はざっと半分ほどは埋まっており、土日と比べても大差はないような気がします。気温は2.5度と昨日以上に寒いにもかかわらずこれほど人が出たのは、やはり木曜と金曜の違いなのでしょうか。
今から城址に上がり、消灯の少し手前で切り上げるとすると、実質的な持ち時間は一時間ほどです。しかし、昨日の今日だけにあくせく動く必要はないため、それだけあれば必要にして十分ではないでしょうか。とりあえず、朝のカツ丼以来公園で水を飲んだだけで、空腹感も限界に近づいているため、露店で軽食でもとってから園内を一周します。
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花見の旅in信州 2013二日目

2013-04-12 19:51:22 | 酒屋
高遠への行きがけに立ち寄らなければならない場所がもう一つあります。「酒文化いたや」です。花見で毎年近辺を訪ねていながら、定休日に重なったり時間が押したりで素通りを繰り返し、これが実に三年ぶりの再訪になります。
信濃錦を中心に信州の地酒を揃えた店という印象があったこの店ですが、改めて訪ねると、ただの信州ではないことが分かります。七面ある冷蔵庫のうち二面が信濃錦に、二面が信州の地酒に、残り三面が県外酒に充てられるというのがこの店の品揃えです。そして、信州の地酒は南信か木曽の酒に絞られ、それ以外は北信小布施の"Sogga"しかありません。しかも、それは県外酒と同じ冷蔵庫に並んでおり、この店でいう地酒とは、南信中信の酒を指していることが分かります。
信州を何度か訪ねて、南信と北信は全く違う土地ということは承知していても、ここまで信念を持った品揃えは記憶にありません。地酒に対する店主の並々ならぬ愛情がひしひしと伝わってくるようです。

酒文化いたや
伊那市伊那部日影171
0265-72-2331
900AM-2000PM(日曜定休)
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花見の旅in信州 2013二日目

2013-04-12 19:09:07 | 甲信越
四月中旬の日は長く、七時を過ぎても西の空にわずかな明かりが残って、空には三日月が昇ってきました。行きがけの駄賃にまずは伊那公園の夜桜を見物します。
過去にも何度か眺めた伊那公園の夜桜ですが、ささやかさは相変わらずです。野球場の脇にある、D51と神社にはさまれた広場にぼんぼりが灯され、ささやかながらライトアップもされているというのがここの夜桜です。広場にはトタン小屋の露店が開かれてはいるものの、そこで飲み食いしているのは二組ほどの宴会客と親子一組だけで、神社の前の芝生で宴会に興じている一組と、滑り台で遊んでいる親子以外に人影はありません。いつ訪ねてもこの調子ですから、今日が平日だからというわけでもないのでしょう。よくこれで商売が成り立つものだと毎度のことながら思います。
しかし、このささやかな夜桜も、見方によっては趣があります。自分の中で思い出されるのは、桜前線が北海道まで北上する時期のことです。今の時期には毎週のように眺める桜も、北海道まで到達するといよいよ見納めといった感が漂ってきて、公園の街灯に照らされただけの名もない桜の木まで無性にいとおしく感じられてくるものです。人っ子一人いない公園の片隅で、街灯の明かりに鈍く光る桜を眺めていると、今日の寒さと相俟って、北海道で最後の桜を眺めているときのような感慨が押し寄せてきます。
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花見の旅in信州 2013二日目

2013-04-12 18:21:42 | 甲信越
夕日が中央アルプスの向こうに隠れて、昼の部はこれにて打ち止めです。
伊那谷の東と西で好対照をなす高遠城址と春日城跡に対し、両者の中間に位置するこの公園は趣を全く異にします。小高い丘に二面の野球場とテニスコートが、その片隅にはD51を置いた広場と小さな神社が置かれて、そのいずれもが見事な桜の木々で囲まれているのです。南西を向けば伊那市街の向こうに中央アルプスが連なり、北東を向けば天竜川の流れとともに伊那谷が延びるという眺めもよく、去年などはここで午後の大半を消費してしまい、高遠へ着くのが夕方になってしまったという経験があります。
日暮れ間近になってここへ移動してきたのは、桜の木々に囲まれた野球場を点景にして、中央アルプスが夕空に染まるという眺めを期待してのことです。いかんせん今日は雲が多く、期待したような絶景は望めそうにないものの、わずかな時間で一通りのものを観られたため、これで十分と納得しています。多少なりとも見物客がいた春日城跡に対して、地元の高校生が時折行き交うだけという閑散ぶりも印象的でした。晴れ出してから実質一時間少々の短い時間だったとはいえ、春日城跡でも伊那公園でも、快晴の日とは一味違う今日ならではの画がいくつも撮れたのですから、一日粘った甲斐はありました。

さて、この後は暗くなり次第夜桜見物へ移行します。結論としては、馬鹿の一つ覚えで高遠へ行こうかと思っています。理由の一つは、春日城跡と伊那公園の夜桜が、少しのライトアップにぼんぼりが灯る程度のささやかさで、時間いっぱい使い切ると少々間延びしてしまうことです。そして何より、伊那に丸々一日滞在しながら、高遠に一度も足を踏み入れずに終わるのはもったいないという心情があります。昨日の今日だけに、今更欲張ってあれこれ見て回ることもないのですが、二日続けて高遠の夜桜が観られるという幸運に感謝しつつ、今日も河原の駐車場から石段を登ります。
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花見の旅in信州 2013二日目

2013-04-12 17:01:25 | 甲信越
その後さらに一時間少々春日城址に滞在し、伊那公園に移動してきました。四時前に今更ながら空が晴れ出し、ここぞとばかりに春日城跡をもう一周した後、さらに欲張って場所を変えたというのがここまでの顛末です。日没までの時間は限られるため、前置きは抜きにして取り急ぎ園内を一周してきます。それでは後ほどお会いしましょう…
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花見の旅in信州 2013二日目

2013-04-12 15:14:05 | 甲信越
一時間が経過。どんより曇った空は相変わらずで、一時青空が広がったのも5分と持たず、ぬか喜びに終わりました。しかし、そのわずかな時間でこれはという画が三枚とはいえ撮れたため、多少なりとも収穫はあったといってよいでしょう。引き続き屋根付きのベンチに腰掛け天候回復を待ちます。
城址の南東にある一角はかつての本丸で、橋を渡った隣の区画にソメイヨシノの大木が立つのに対し、こちらを彩るのはコヒガンザクラです。中央アルプスの方角から冷たい風が吹き下り、はらはらと花びらが散っています。撮影に関しては空振り続きの本日ですが、南アルプスと伊那市街を望む高台のベンチに腰掛け、他に何をする当てもなく花吹雪に吹かれるというのも、ある意味この上なく贅沢な時間ではないでしょうか。
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花見の旅in信州 2013二日目

2013-04-12 14:13:17 | 甲信越
一、二時間先の予報はさすがに的中するということか、先ほどからにわか雨が落ちてきました。文字通りのにわか雨で、傘をさすほどではないものの、明るい曇り空がどんより曇った空に変わって、これでは花見になりません。だからといって他にどこへ行くあてもないため、しばらくは屋根付きのベンチにでも腰掛けながら天候の回復を待ちますが、埒があかないようなら早めに投宿するのも一案でしょう。今日はさしたる収穫もなく終わってしまうのでしょうかorz
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花見の旅in信州 2013二日目

2013-04-12 13:36:21 | 甲信越
一時間ばかり滞在したところで小休止をとります。花盛りの時期としては実質三回目となる春日城跡ですが、改めて眺めると、ソメイヨシノとコヒガンザクラの両横綱を中心として、山桜、エゾヤマザクラ、彼岸桜、紅枝垂にエドヒガンなど様々な桜が植えられていることに気付きます。しかも桜一辺倒ではなく、鬱蒼とした杉木立や間近に迫る中央アルプスの山を背にして桜が立つなど、雄大な絵柄が随所に散りばめられており、単なる高遠城址の二番煎じではありません。この名所の奥深さを今更ながら再認識させられるようです。
かくも見事な桜だけに、今日の煮え切らない空模様だけが惜しまれます。どんより曇った空というわけではなく、ところどころ青空ものぞいており、時折そこから日が差す場面はあります。しかし、曇った時間と日が差す時間の割合でいえば、圧倒的に長いのは前者で、ざっと半々だった昨日に比べて物足りなさは否めません。改めて天気予報を確認すると、昼の一時を除いて終日晴れるとされていたのが、夕方まで雲って一時雨が降るという予報に一変しており、またしても当てにならない天気予報に振り回された形となりました。
出発以来猫の目のように変わってきた天気予報だけに、さらに逆方向へ振れるという可能性はなきにしもあらずとはいえ、昨日に比べて明らかに格落ちの天候では、高遠を再訪する意欲も起きにくくなります。もしこのまま天候が回復しなければ、この後は伊那公園を掛け持ちする程度で切り上げ、日中は伊那市街で完結とします。暗くなったら春日城跡か伊那公園の夜桜を見物して、高遠には近づきもせず終わることになるかもしれません。
これにより、この先の全体構想も若干修正します。嘘か真か明日は終日晴天と予想されているため、多少の混雑を承知で高遠を訪ね、取り付く島もないようなら伊那に戻って春日城跡と伊那公園を再訪し、あとは伊那路を上って松本に泊まります。最終日は安曇野の桜を訪ねた後、当初の予定通りに東信または北信方面へ進むか、あるいは来た道を引き返して諏訪から伊那路を下り、高遠の夜桜で最後を締めくくるかのいずれかになるでしょう。まあ、出発以来の実績からして、天気予報が当てにならないということはよく分かったので、明日の行動さえどうなるか分かりません。普段にもまして風まかせの旅になりそうです。
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花見の旅in信州 2013二日目

2013-04-12 12:05:38 | 甲信越
なんだかんだで時間を食い、今日も花見は実質的に昼からとなってしまいました。まずはお待ちかねの春日城跡を訪ねます。ここまで悠長にしていたのは天候が冴えないからでもあり、朝方には青空が広がっていたものの、時間が経てば経つほど雲が多くなって、今は明るい曇り空になっています。
ここを初めて訪ねたのは五年前、高遠で花見をしてから駒ヶ根に足を延ばし、そこから北上して戻ってきたときのことです。高遠でも桜が散り際を迎えていた頃で、やや先んじて咲くこの城址の桜はあらかた散ってしまい、もう少し早く来ていればどれほど見事だったかと想像したものでした。そのとき以来の宿願を果たして花盛りに訪ねたのは三年前です。空濠を巡らせた小高い山の城跡を桜が埋め尽くす様子は、高遠城址によく似ており、見上げるような大木が林立するところも全く見劣りせず、それでいながら見物客の数は適度と、まさに穴場と呼ぶにふさわしい名所でした。この城址や伊那公園など、高遠城址に勝るとも劣らない名所を訪ね歩いて、伊那の桜の奥深さを認識するに至ったわけです。わずか一日や一晩の滞在ならともかく、今回は十分な時間を確保したのですから、ここに立ち寄らない手はありません。
ここのよいところは、ソメイヨシノとコヒガンザクラが両方観られることです。濃淡の桜色に彩られた城跡の眺めは市街から眺めても見事で、城内には法幢院曲輪も顔負けの大木が頭上を覆い尽くすように立ち並び、さらに進めば桜越しに伊那市街と南アルプスを一望する絶景が広がります。桜と街と山並みの取り合わせとしては、高遠の白兎橋から望む中央アルプス以上ではないでしょうか。道中何度も繰り返した台詞ではありますが、この絶景を知らずに高遠で混雑に揉まれている観光客は、確実に損をしていると断言します。
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