日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

ふらり旅 いい酒いい肴

2013-04-08 19:47:38 | 居酒屋
今月からBS11で「ふらり旅 いい酒いい肴」と題した番組が始まりました。日頃からこのblogで「教祖」と崇めている居酒屋探訪の達人太田和彦氏が、全国各地を旅しつつその土地の酒場を訪ねるというもので、我が愛読書でもある「ひとり旅 ひとり酒」を映像化したような番組と表現するのがよさそうです。
旅チャンネルで10年以上続いた「全国居酒屋紀行シリーズ」の集大成「日本百名居酒屋」が完結してからというもの、続編はもう制作されないだろうと噂されていただけに、他局とはいえ同じ趣向の番組が始まったのは、信者としてまことに歓迎すべきものがあります。ただ、初回を視聴した限り、やや違和感を覚えたというのが率直なところでした。というのも、昼は街を歩き、夜は酒場で呑むという構成を採るため、純然たる居酒屋探訪を主題にした「全国居酒屋紀行シリーズ」や「酒場放浪記」などと違って、前置きが非常に長いような気がしてしまうのです。
名番組の二番煎じ三番煎じを避けるという目的もあってのことなのでしょうから、旅番組然とした構成になるのはある意味仕方がないのでしょう。しかし、倉敷の美観地区などという月並みな観光地が登場するところは少々気になります。例えば「ひとり旅 ひとり酒」なら、昼に訪ねる場所も古い喫茶店や食堂など心惹かれるものが多く、ガイドブックをなぞるようなおざなりさはありませんでした。倉敷の回で美観地区が登場するのは、酒場から宿へと戻る道すがらのことです。他に行き交う人もない静寂の中、川魚が跳ねて水面が揺れ、元の水鏡に戻っていく光景の描写などは、本書の中でも出色の名文だと思います。ところがこの番組では、観光客がひっきりなしに行き交う白昼を選び、しかも教祖自身がカメラ片手に街角を記録するなどという、万人受けを狙った演出まで加わる始末です。酒場での映像にフィルターを入れて、ややかすんだような画にしてしまうところも引っかかります。次回以降も似たような演出がとられるなら、この番組に対する見方はいささか懐疑的なものになるかもしれません。
まあ、仮にそのような展開になったとしても、あくまで旅番組と割り切り、興味のない部分は飛ばしてしまえばよいことではあります。明日放送の第二回は尾道、やはり構成次第では月並みな観光地になりかねない場所です。単なる旅番組なのか、さすがと思わせる構成が飛び出すのか、まずはお手並み拝見ということになりそうです。
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