秋といへば岩田の小野の柞原(ははそはら)しぐれも待たず紅葉(もみぢ)しにけり(千載和歌集)
かきくらし時雨そめぬる今日こそは柞(ははそ)の森も色づ きにけれ(文治二年歌合)
ははそ原くれなゐふかく染めてけりしぐれの雨は色なけれども(元永元年内大臣家歌合)
秋山のははそ色づ く今しより露も時雨もなほや染(そ)むらむ(延文百首)
しぐれする岩田の小野のははそはら朝な朝なに色かはりゆく(万代集)
吹きみだるははそが原を見わたせば色なき風ももみぢしにけり(千載和歌集)
山科の岩田の小野に秋暮れて風に色あるははそ原かな(六百番歌合)
佐保山のははその紅葉(もみぢ)うすけれど秋はふかくもなりにけるかな(左兵衛佐定文朝臣歌合)
いろいろの野べ見しよりもははそはら木々のにしきはたちまさりけり(林葉集)
ははそ原ゆくべき道もなかりけり散るもみぢ葉の踏まま惜しさに(中宮亮顕輔家歌合)
もみぢ葉もみな散りはてて柞原(ははそはら)今日はこずゑぞまばらなりける(堀河百首)
わび人の袖は柞(ははそ)の森なれやしぐるるままに色かはりゆく(散木奇歌集)
佐保山の柞のもみぢ散りにけり恋しき人を待つとせしまに(万代集)