
東京ステーションギャラリーで開催中の(明日まで)「ジャン・フォートリエ回顧展」を見てきました。
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201405_JEAN_FAUTRIER.html
ジャン・フォートリエ:
ジャン・フォートリエ(Jean Fautrier、1898年5月16日 - 1964年7月21日)は、フランスの画家、彫刻家。タシスムの作家として最も重要な一人であるとされる。またジャン・デュビュッフェ、ヴォルスとともに、第二次世界大戦後の抽象芸術の先駆的な存在であるとされる。(ウィキペディアより)

『初期の新即物主義影響下の濃厚で暴露的リアリズムから、暗色の表現主義、そして茫洋(ぼうよう)とした内省への展開をみると、第一次大戦後、画家が“時代の不安”を抱えていたことは確かだろう。ただ、それらはあくまで、一つの時代の絵画表現にすぎない。
それに対して、第二次大戦以降の厚塗りの画面には、一種の時代的必然がある。画家とともに、作品を受け入れる人々によって共有された時代の精神が、そこには息づく。だからだろう、「人質」シリーズ以降、日常の品々や情景をモチーフに、厚塗りの画面に甘さが垣間見られるようになるなかでも、悲惨な経験を内側に秘め、謙虚に日常の平穏を慈しむような切実さはある。』
(藤田一人=美術評論家)東京新聞6/27
http://www.tokyo-np.co.jp/article/event/bi/fautrier/list/CK2014062702000282.html

この画家のことを全然知らなかったので、とりあえず引用で展示の流れをご紹介しましたが、評論家の藤田氏が言うように、初期の「暗色の表現主義」も暗くて不安そう。それが1943年にゲシュタポに捕まり、パリから逃走してシャトネ=マラブリーに避難した体験を経て取り組んだ連作「人質」になると、サルトルは「最も戦後的な画家」と賞賛したようですが、ちょっと私としては紹介するのに苦痛を感じる悲惨さ。(なので、省略)。
けれど、そのシリーズで獲得した表現方法が、その後「アンフォルメル」として結実し、晩年の作品には、不思議な明るさと穏やかさがあって、ようやくホッとすることができました。
展示室の一角にこの画家の生前の映像が写されていて、理屈っぽくて少し気難しい様子が、いかにもフランス人らしくて良い感じ(笑)でした。
東京ステーションギャラリーは、「東京駅の歴史を体現する煉瓦壁」がそのまま生かされた造りで、建物に居ることそのものも楽しめます。
今日は暑さを避けて朝10時の開場と同時に入場。観客が少なくて作品もゆっくり鑑賞できたし、展示場の独特な雰囲気も十分に味わえました。外に出てもまだそれ程暑くなくて爽やか。夏の美術鑑賞は朝イチに限りますね!(三女)
